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外科系医師のための手術に役立つ臨床研究


著:本多 通孝

  • 判型 A5
  • 頁 244
  • 発行 2017年11月
  • 定価 3,780円 (本体3,500円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03259-9
「科学する外科医」になるためのエッセンスが詰まった1冊
外科領域の臨床研究には、内科とは違う特有の難しさがある。しかし、体系的に方法論を学ぶことで、若手外科医でも“手術に役立つ”質の高い臨床研究ができる。本書は、これから臨床研究、学会発表、論文執筆を行うすべての若手外科系医師に向け、研究計画の立て方からトップジャーナルに通用する論文の書き方まで、臨床研究の基本と実際を具体的にわかりやすく解説。本書を読めば、きっとあなたも臨床研究がしたくなる!
序 文
推薦の序(天野 篤)/はじめに(本多 通孝)/本書の特長

推薦の序

 手術術式の発展してきた歴史を語るときに,症例報告が欠かせないと先輩外科医たちから教わってきた。読者の多くも外科の道に入って最初に学術的なまとめを行ったのは1例また...
推薦の序(天野 篤)/はじめに(本多 通孝)/本書の特長

推薦の序

 手術術式の発展してきた歴史を語るときに,症例報告が欠かせないと先輩外科医たちから教わってきた。読者の多くも外科の道に入って最初に学術的なまとめを行ったのは1例または少数例の症例報告だったと思う。成功例や失敗例にこれまでと違う何かが存在し,それが結果に結びついていると仮定して過去の報告例を文献で探っていくと,まだ手術の執刀をしていない若い時期だったが,次に出会う患者さんは必然的にうまくいくと思っていた。外科医として徐々に成熟し,合併症の発生率や術後のQOLを他施設と比較して同僚や他の医療スタッフに周知すると,彼らのモチベーションが上がるだけでなく,患者さんからの評判も上がって,紹介医の満足度が上がり,症例増加につながるという副産物も形成された。もう30年も前のコンピュータが普及していないころの話である。
 しかし,世の中は情報通信技術の発達により,知識や知見は電子データで何でも手に入るようになった。さらにその中からメタアナリシスや前向きランダム化比較試験(RCT)などの研究手法が発達して,患者に対して有益な手術か有害な手術かさえ判定可能になってきた。臨床研究の必要性が叫ばれるのも,このような背景があったからに他ならない。まさにこの時代に外科医として育った本多先生の『外科系医師のための手術に役立つ臨床研究』は,症例報告でとどまらずに臨床研究まで踏み込むことで,外科医が点と点で自分のキャリアを形成していくのではなく,面の上積みで確固たる土台を築く必要性を示しているといえよう。若手外科医が,自分たちの施設で工夫して結果につながってきた術式や患者管理を世の中で通用するものかどうかを問う手段は,臨床研究論文に他ならない。その必要性を示し,具体的な科学的アプローチの方法を論点の想起から始めて,親しみやすいキャラクターを登場させながら計画から論文化していく解説は,本書を読み込んでいくうえで自分もできるかもしれないという“やる気”を創出させる。
 本書はいわゆる原著論文を初めて起こすことが多い大学院生や,より専門性の高い外科のカテゴリーに入っていく探求精神旺盛の若手外科医には,必ず手元に置いて繰り返し読んでほしい内容が網羅されている。読み進んで「さあ,やるぞ」となった時点で昨今問題視される研究倫理や不正についての警鐘を鳴らす章が加えられているのも,本多先生ならではの心配りと思う。御自身の苦労した体験を散りばめながら,少しでも多くの若手外科医を臨床研究へと誘い,科学する外科医の層を厚くして患者貢献とこの業界の発展につなげようとする内容を簡潔明瞭にまとめられたことに敬意を表し,強く推薦する次第である。
 またすでに管理部門に携わるようなベテラン医師には,若手外科医,とりわけ将来性を見込んだ部下に対して,成長を後押しする意味を込めて本書をプレゼントしてあげてほしい。そのこと自体が臨床研究指導に相当し,贈る側の価値を高めてくれると思わずにはいられないからである。

 2017年10月
 順天堂大学教授・心臓血管外科/順天堂医院病院長
 天野 篤


はじめに

 「なぜ外科医が臨床研究を学ぶ必要があるのか?」という質問に対する答えは,簡単なようで難しいいくつかの論点が含まれています。私が研修医のころ多くの先輩方から,「外科医は手術の修行が第一である。学会発表ばかりしていても手術が下手なら外科医としての価値はない」「英語や統計の勉強などする時間があるのなら,うまい外科医の手術を見学しに行け」「ビデオを繰り返し見て,実際に手を動かすトレーニングを怠るな」といわれていました。

まさにそのとおりであります。

 さらには,「手術はアートである,理論はあるがその価値は主観的であるべきだ。手術は師から弟子に伝承されてきた崇高な技術である。それに科学的に批判,検証を加えること自体,外科手術の発展,歴史的成り立ちを否定することである」ともいわれました。

 まさにそのとおりであり,反論の余地がありません。本書は外科の手技的研鑽を否定するものでも,先人の作りあげてきた外科学における数々の偉業を否定するものでもありません。

それでもなお,外科医は臨床研究を学び,実践すべきなのです。

 その理由を一言でいえば,「やりがいをもって仕事を続けていくため」です。毎年たくさんの若い医師が外科医として人生のスタートを切ります。私の時代はストレート研修でしたので卒後すぐに外科医のはしくれとして病院の名簿に名を連ねたものです。しかし卒後15年目の今,周囲を見渡してみると多くの同僚が疲弊し,挫折し,進路を変更しています。その一方で地域医療の外科医不足は深刻であり,各学会などが定期的に行うアンケート調査では地域の悲痛な叫びが聞こえてきます。手術件数ランキングなど,医療の質と関係のない情報が病院を勝ち組,負け組に二分化し,モチベーションを保てない医師が続出しています。
 こんなご時世だからこそ,「臨床研究」なのです。今後,臨床研究を学び,実施することが地域医療を活性化するキーワードになるでしょう。本書を通じて,その意義を明確化し,今現在地域医療を支える若手医師がさらに飛躍する一助になればと心より願っております。

 2017年11月
 本多 通孝

本書の特長

 私は大学院生のとき基礎研究を行う教室に所属していましたが,幸運にもいろいろな偶然が重なって臨床研究の方法論を体系的に学ぶ機会を得ることができました。その後,第一線の臨床現場に戻り,それまでに学んだ研究理論をどうやって外科領域の臨床研究に適応させ,手術手技の向上に役立てればよいのかということを考え,試行錯誤してきました。
 内科系の臨床研究と大きく異なる点は,「手術」という非常に大きな侵襲が発生し,その前後で劇的に患者さんの状態が変化することです。いったんは,患者さんの身体に少なからぬダメージを与え,その後徐々に回復してくるというダイナミックな生体現象をどのように測定し,記述し,そして分析するか,とても興味深く,奥が深いことだと思います。
 臨床試験や生物統計を扱った解説書,論文執筆のノウハウがまとめられた良書は数多く存在しますが,「手術」という介入でありイベントでもあるこの現象を評価する方法論については,確立した理論体系があるとはいえないのが現状ではないでしょうか。本書が扱うのは,臨床試験や生物統計の理論ではなく,もっと外科医にとって身近で日常診療に即した疑問を解決するための方法論です。手術の研鑽にいそしむ若手医師を対象に,あくまで外科医の目線で考え,そして若手の外科医が実践する「手術に役立つ臨床研究」ということにこだわって解説を試みています。私は消化器外科医ですが,あえて本書では循環器外科,整形外科,泌尿器科,脳神経外科,呼吸器外科,産婦人科など幅広いフィールドから興味深い実例を用意しました。
 診療科や臓器にこだわらず,外科医が手術手技の研鑽に役立てるために実施する臨床研究について,計画の立て方から論文執筆の実際まで,多くの実例を用いて読者の皆様と一緒に考えていきたいと思います。
書 評
  • 無限の可能性を持った若手外科系医師たちへ
    書評者:紺野 愼一(福島県立医大教授・整形外科学)

     従来,大学での医学研究は基礎的な研究が主流だった。テーマは教授から与えられ,それを従来の手法で行うのが常だった。しかし現在では質の高い臨床研究によりさまざまな疾患の診断や治療の科学的な根拠を明らかにすることが可能となった。臨床研究の質は,研究デザインの質とそのアウトカムが個人や社会にどの程度大きな...
    無限の可能性を持った若手外科系医師たちへ
    書評者:紺野 愼一(福島県立医大教授・整形外科学)

     従来,大学での医学研究は基礎的な研究が主流だった。テーマは教授から与えられ,それを従来の手法で行うのが常だった。しかし現在では質の高い臨床研究によりさまざまな疾患の診断や治療の科学的な根拠を明らかにすることが可能となった。臨床研究の質は,研究デザインの質とそのアウトカムが個人や社会にどの程度大きなインパクトを与えるかにより決まる。質の高い臨床研究を行うことは容易ではない。それを教育する資材は極めて乏しい。本書は外科系医師のための臨床研究を行う教材としては最も優れた本といえる。

     1990年代に臨床研究のエビデンスが重要視されるようになり,外科的な疾患に対する診断や治療のエビデンスが求められるようになってきた。本書は,『外科系医師のための手術に役立つ臨床研究』というタイトルである。まず第一に臨床研究を行う場合,質の高い臨床研究をデザインすることが求められる。本書はそのための手順を初心者にでも理解できるように平易に記述している。一つの手術手技のエビデンスを明らかにすることは簡単ではない。しかし時代がエビデンスを求めている以上,それに応える臨床研究を行うことが今われわれ外科系医師に求められている。若い医師からベテランの外科医に至るまでぜひ読んでいただきたい一冊である。

     治療はもちろんエビデンスが全てではない。アートも求められる。したがって実際の臨床では必ずしもエビデンスに依存することはない。しかし日常診療で日々さまざまな疑問が浮かんでくる。本当にこの診断や治療は科学的に有効なのだろうか。若い医師には特にその日常の疑問を明らかにできる無限の可能性がある。ぜひこの一冊を利用し,日々の疑問を科学的に証明する努力を惜しまずに行ってもらいたい。本多通孝先生は福島県立医大低侵襲腫瘍制御学講座教授としてバリバリの臨床家であると同時に,一流の臨床研究を活発に行っている。彼に負けない臨床研究をできる外科医がたくさん育つことを祈念している。
  • 外科医だけでなく,臨床研究を志す全ての医師に
    書評者:吉川 貴己(神奈川県立がんセンター・消化器外科部長)

     ヒトの体や病気のメカニズムは全て解明されているわけではなく,完璧な治療法もありません。医師は,限定された情報の中で,先人が積み上げてきた,知識や経験,臨床研究の結果を生かしつつ,現時点で最善と判断される方法で,患者さんの診療にあたっています。診療をしていくなかでは,数多くの疑問が生まれます。生まれ...
    外科医だけでなく,臨床研究を志す全ての医師に
    書評者:吉川 貴己(神奈川県立がんセンター・消化器外科部長)

     ヒトの体や病気のメカニズムは全て解明されているわけではなく,完璧な治療法もありません。医師は,限定された情報の中で,先人が積み上げてきた,知識や経験,臨床研究の結果を生かしつつ,現時点で最善と判断される方法で,患者さんの診療にあたっています。診療をしていくなかでは,数多くの疑問が生まれます。生まれた疑問は,成書や文献で解決できるものもあれば,できないものもあります。解決できない疑問をどうするか,どうすれば解決できるか,ここに臨床研究の意義が生まれます。

     医師として外科医として生きていく以上,診療と研究は切り離せないものです。もちろん,全ては診療から始まります。主治医として,期待通りの結果が得られれば,患者さんも笑顔を見せてくれますし,医師としてもこの上ない喜びでしょう。ですが,1人の外科医が一生で患者さんによい結果がもたらせる数など知れています。せいぜい数百人,数千人でしょう。一方,患者さんの予後やQOLを改善できるような臨床研究の結果を世界に発信できたとしたら,その報告で世界中の数多くの外科医が診療を変えたとしたら,患者さんへのインパクトは数万人,数十万人となることでしょう。

     診療の方法は,成書や文献,上席医師から学ぶことができます。若手医師にも手に取れる,平易な本も数多く,出版されています。では,臨床研究はどうでしょう? どのように進めていくのか,勉強するチャンスはなく,「見よう見まね」で行ってきた先生が多いのではないでしょうか?

     本書は,臨床研究のやり方を丁寧に教えてくれます。著者の実経験に基づくと思われる上席外科医と若手外科医のやり取りやその様子,過去に行われた臨床研究の実例を挙げての解説や分析,英語論文執筆の道のり,査読者とのやり取り,研究時間や研究費の確保など,すぐに実戦応用できるように書かれています。そこには,“若手外科医に臨床研究の方法を教えてあげたい”という,著者の“愛”が感じられます。若手外科医が陥りやすい視点に対して,わかりやすくコミカルに解説されています。手に取った先生は,楽しく本書を読み進めることができるでしょう。

     若手外科医であれば,一度,本書を通読してください。そのあとに,本書を傍らに置き,進捗に合った章を見返しながら,実際の臨床研究を進めていってください。臨床研究に精通した上席外科医であれば,本書を読むことで知識の整理ができ,若手外科医にどう指導すればよいかを学ぶことができるでしょう。耳の痛い話かもしれませんが,臨床研究をするための環境づくりも進めていただきたいと思います。タイトルは「外科系医師のための~」となっていますが,外科医だけに役立つ本ではありません。臨床研究を志す全ての医師に,手に取ってもらいたいと思います。
目 次
推薦の序
はじめに
本書の特長

序章 外科医が臨床研究を始める前に
 1 臨床研究とは何か,じっくり考えてみよう
 2 外科医は臨床研究を診療に取り入れているか?
 3 研究テーマは自分で決める
 4 外科系臨床研究の種類
 5 外科領域のトップジャーナルとその動向
 6 本書の進め方

第1章 計画編 1 臨床研究計画書を書く 作成上の要点と注意点
 1 臨床研究計画書の作成は必須である
 2 研究の背景・目的を書く
 3 研究の対象者を決定する

第2章 計画編 2 研究仮説とデザインを書く
 1 学会発表の研究デザインは明確か?
 2 介入の割り付け方法を記述する
 3 研究デザインを記述する
 4 探索的研究から仮説検証型の研究へ
 5 「前向き研究」と「後ろ向き研究」とは何か

第3章 計画編 3 調査項目とアウトカムを書く
 1 調査項目の数と研究にかかるコストは比例する
 2 調査項目を決定するために
 3 研究計画書に調査項目を書く
 4 デザインの設計によりバイアスを予防する
 5 エンドポイントの記載
 6 例数(サンプルサイズ)設計とその根拠を書く

第4章 実行編 1 臨床研究を論文にする
 1 論文投稿までの道のり
 2 Introductionを書く-Introductionは完璧な論理を追求しよう
 3 Patients and Methodを書く
 4 Resultsを書く-苦手な統計解析に踏み込む
 5 Discussionを書く
 6 投稿後・reviewerとの闘い
 7 revise原稿を書く

第5章 実行編 2 ランダム化比較試験の功績・観察研究の利点
 1 臨床研究の叡智
    -プラセボコントロール・ダブルブラインド・ランダム化比較試験
 2 CAST studyの衝撃
 3 外科領域の臨床試験におけるランダム化とダブルブラインド
 4 外科領域の臨床試験にプラセボコントロールは必要か
 5 ブラインドと情報バイアスのコントロール
 6 見直される観察研究
 7 内的妥当性と外的妥当性
 8 RCTの実施要件と外科医の倫理を再考する
 9 RCTの利点・観察研究の利点のまとめ

第6章 実行編 3 忙しい若手外科医のための時間の作り方・モチベーションの保ち方
 1 研究とは孤独との戦いであることを自覚し,覚悟を決める
 2 平日の業務を休む
 3 データシート作成に時間をかけない
 4 研究資金を獲得する,できなければ自腹を切る
 5 正確なデータを得るためには業務を変えなければならない
 6 メンターをみつける

第7章 終章 研究倫理・不正について
 1 HTA(health technology assessment)とは
 2 研究倫理と不正行為
 3 なぜ外科関連の研究にはspinが多いのか
 4 医学研究指針の改正と個人情報を取り巻く現状

おわりに
索引
著者紹介

column
 (1)メタアナリシスはずるい研究?
 (2)お医者さんの世界はおおらかである
 (3)いわゆる後ろ向き研究の利点を考える
 (4)術後合併症の評価法について
 (5)多施設共同研究の場合は入院バイアスに注意
 (6)自己決定バイアス
 (7)海外データとの比較から考えるバイアスと交絡
 (8)分野融合とは,言うは易し・行うは難し
 (9)spinについて
 (10)回帰分析における変数選択について
 (11)査読で「新規性がない」といわれたら……
 (12)器械と薬剤の違い