臨床外科看護各論 第9版

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・本講座の専門分野「成人看護学」では、各臓器の疾患とその看護を系統別に記述しています。しかし、個々の疾患の病態像は同じでも、適用される治療は内科的治療と外科的治療では著しく異なっています。外科看護は手術という非常に厳しい手段を治療の主体とするため、十分な知識と技術が求められます。本書は、このような視点から外科看護の各論として発行されたものです。
・第9版では、最新の知見に基づく記述を行い、医学面では、下咽頭がん・喉頭がんなどの頭頸部の疾患、小児の口唇口蓋裂などに関する記述を追加しました。看護面では、術前・術後のアセスメントから看護の実際まで、わかりやすく科学的根拠に基づいた記述を心がけました。
・​​​​​​​外科看護は、的確な判断能力に加えて、質の高いチーム医療、さらに倫理的態度などが求められます。こうした視点も盛り込まれています。
・​​​​​​​図や写真を多く用いて、ビジュアル的にも一段とわかりやすい内容に仕立てています。

*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。

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はしがき

本書のねらい
 既存の「系統看護学講座」の多くは,「成人看護学」として,各臓器の疾患とその看護について系統的に詳しく解説されているのが一般的である。また,それらは1つの系統の疾患に対する病態生理,およびその治療および看護を,内科・外科の区別なく一貫して学習できるように記述されている。もちろん,これは学習方法として評価しうる。個々の疾患は,内科的・外科的側面からみても病態像および診断法は同じであると理解できる。しかし適用される治療法となると,内科的治療と外科的治療とでは,その内容は著しく異なってくることが多い。とくに外科的治療においては,手術という侵襲的な方法を治療の主体とするために,これらの治療に対する精神的不安を惹起し,患者にとって大きな負担となることは周知の事実である。さらに,手術によって引きおこされる生体反応は短期間に肉体的に大きな変化を示すために,その処置と看護には適切な外科学の知識・技術,および豊富な経験が要求される。
 とくに近年,外科の各領域においてそれぞれが専門細分化して,低侵襲・個別化が手術の基本概念になっている。それゆえに各分野においてロボット手術を含む内視鏡下手術が主流となっている。その結果,医工・産学連携が推進され,各種の新しい手術器具が取り入れられている。
 現在の外科看護学では,個々の疾患の病態生理に対する深い理解と知識が要求される。とくに的確な手術適応のもとに,安全・安心な手術が行われる。さらに術後合併症の対応や患者の生活の変化も十分に理解・認識し,それに迅速に対応できるよう必要な知識・技術を習得しておかなければならない。そうしてこそ外科看護のあるべき姿が浮き彫りにされると確信している。
 このような観点にたって編集したのが本書である。
 本書の執筆にあたった各筆者は,いずれも看護教育に対して豊富な経験をもち,前述のごとく現代における先進的外科看護学の必要性をつねづね痛感し,現代の外科診療に対応できる外科看護学書がぜひとも必要であると感じていた者ばかりである。期せずして,これに賛同した執筆者が集まり,本書の編集に着手したしだいである。まさに時代のニーズにあった,先進外科看護における需要と要求が本書を生み出したといってよいと思う。
 外科看護を学ぶうえの参考書あるいはテキストとして,別巻「臨床外科看護総論」と合わせてこの「臨床外科看護各論」を活用され,看護に必要な最先端の外科的疾患の病態と治療を理解し,患者が望む安心で安全な看護を行ううえでの基礎的知識を十分に身につけられることを願っている。また執筆にあたっては,ベッドサイドで実際に役だつ内容を,つねに念頭において記載されており,本書が臨床外科看護の必携書となれば編集者として望外の喜びである。

改訂のねらい
 外科的治療によって侵襲を受けた患者は,その回復過程において,身体の損傷に伴う疼痛,臓器の喪失に伴う機能障害,整容上の変化,自尊感情の低下などが生じ,さらに生活行動が規制されるため,より専門的で熟練した看護ケアが求められる。現在は,医療技術の進歩と看護ケアシステムの発達により,患者がよりよい医療を受けられる環境および条件は整ってきている。その一方で,看護に携わる者1人ひとりが,人々のヘルスニーズや健康問題,さらには健康問題に対する人間の反応を的確に判断する能力をもち,さらに実践した看護行為に責任をもつ倫理的態度,チーム医療・チームケアの質を高めていく職業的アイデンティティを確立することが,ますます求められてきている。このような包括的で,個人的な看護ケアを提供するためには,看護の専門的知識やクリティカルシンキングの技能,ケアリングの能力が必須となってきている。
 本書は,1980年に初版が発行されてから,実に35年以上を経過している。その間,定期的に改訂を行ってきた。
 前回の第8版では,周手術期経過の全体像を知り予測性をもって看護を行うことができるように,代表的な術式において実際の病院で用いられるクリニカルパスを掲載した。さらに全ページカラー化し,図の描きかえや写真の追加をすることで,より視覚的にわかりやすいテキストとなるよう心がけた。また可能な限り科学的根拠を含めるかたちで加筆を行い,従来,本書で貫いてきた,インフォームドコンセント,患者の意思決定,リスクマネジメント,コンフォートケア,チーム医療とパートナーシップなどの重要な概念については全体の記述に反映させるようにした。
 今回の第9版の改訂では,第8版での方針を大きく変更することなく,時代の変化に応じた外科的治療法の大きな進歩に対応することを目ざした。看護の基本は時代が変化しても変わるものではないが,治療法が変化することで看護における観察内容やケア内容も,それに対応して変化していくことが求められる。したがって,より今日の外科的治療にそったかたちでの実際の看護を具体的に記述することを目ざした。また看護の初学者にとって,基本的な概念などを説明することなく看護診断用語を安易に用いることは,かえって混乱をもたらす可能性があると考え,看護上の問題点の表記については,できるだけ平易なものとするように心がけた。さらにアセスメントについては,視点だけでなく異常の判断ができるような記述を心がけた。これらにより,さらに学習効果が高まることを期待している。
 今回の改訂でも,これまでご活用いただいた教育現場からの多くのご質問やご意見を参考にさせていただいた。今後とも忌憚のないご意見をお寄せいただき,より良いテキストにしていければ幸いである。
 2016年10月
 編者

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序章 はじめに (北島政樹・江川幸二)

第1章 肺および胸部 (池田徳彦・池田正・江川幸二・佐藤冨美子)
 I 肺・胸部の疾患
  A 肺および気管支の疾患
  B 胸膜・縦隔の疾患
  C 胸部外傷
  D 乳腺の疾患
 II 肺・胸部疾患患者の看護
  A 肺切除術を受ける患者の看護
  B 胸部外傷患者の看護
  C 乳房の手術を受ける患者の看護
  D 乳房再建術を受ける患者の看護

第2章 心臓および脈管系 (田口眞一・四津良平・志水秀行・尾原秀明・高島尚美)
 I 心臓・脈管系の疾患
  A 心臓の疾患
  B 血管の疾患
  C リンパ系の疾患
 II 心臓・脈管系疾患患者の看護
  A 心臓手術を受ける患者に共通する看護
  B 主要な心臓手術を受ける患者の看護
  C 血管手術を受ける患者の看護

第3章 消化器および腹部 (小澤壯治・北川雄光・北島政樹・前田耕太郎・渡邊昌彦・井原厚・
 吉田昌・島津元秀・北野正剛・太田正之・松井淳一・和田則仁・星長清隆・日下守・佐藤正美)
 I 消化器・腹部の疾患
  A 食道の疾患
  B 胃・十二指腸の疾患
  C 腸・腹膜の疾患
  D 肝臓・肝外胆道系の疾患
  E 脾臓の疾患
  F 門脈の疾患
  G 膵臓の疾患
  H ヘルニア
  I 副腎の疾患
 II 消化器・腹部疾患患者の看護
  A 開腹術を受ける患者の看護
  B 腹腔鏡手術を受ける患者の看護
  C 消化管手術を受ける患者の看護
  D 肝がん患者の看護
  E 胆嚢・胆道の手術を受ける患者の看護
  F 膵臓の手術を受ける患者の看護
  G 副腎摘出術を受ける患者の看護

第4章 脳および神経 (吉田一成・福井康之・石川雅之・中村聡・朝本俊司・林みよ子)
 I 脳・神経の疾患
  A 脳の疾患
  B 脊髄の疾患
  C 末梢神経の疾患
 II 脳・神経疾患患者の看護
  A 開頭術を受ける患者の看護
  B 脳室ドレナージ術を受ける患者の看護
  C 脳室-腹腔短絡術(V-Pシャント術)を受ける患者の看護
  D 頭部外傷患者の看護

第5章 頭部および頸部 (甲能直幸・高見博・大釜徳政)
 I 頭部・頸部の疾患
  A 口腔・咽頭・喉頭・頸部の疾患
  B 甲状腺・副甲状腺(上皮小体)の疾患
 II 頭部・頸部疾患患者の看護
  A 顔面外傷患者の看護
  B 頭頸部がん患者の看護

第6章 小児の外科 (韮澤融司・金子剛・森川康英・加藤木利行・宮谷恵・金城やす子・二宮啓子)
 I 小児の外科疾患
  A 小児外科の基礎知識
  B 顔面・口唇口蓋疾患
  C 消化器および一般外科疾患
  D 先天性心疾患
  E 脳・神経疾患
 II 小児の外科患者の看護
  A 新生児期手術患者の看護
  B 乳幼児期手術患者の看護
  C 主要な手術を受ける小児の看護

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