実践のための看護過程を学ぶ/教える基本の一冊(雑誌『看護教育』より)
書評者:中村 朝枝(国家公務員共済組合連合会呉共済病院看護専門学校)
看護基礎教育では,ほとんどの学校が講義や演習,臨地実習などで「看護過程」を取り入れているのではないでしょうか。しかし,学生たちは,看護過程を学習すればするほど「苦手だ。難しい」と頭を抱えているような印象があります。また,「実習で患者さんに援助することはとても楽しい!記録(看護過程)がなければ……」...
実践のための看護過程を学ぶ/教える基本の一冊(雑誌『看護教育』より)
書評者:中村 朝枝(国家公務員共済組合連合会呉共済病院看護専門学校)
看護基礎教育では,ほとんどの学校が講義や演習,臨地実習などで「看護過程」を取り入れているのではないでしょうか。しかし,学生たちは,看護過程を学習すればするほど「苦手だ。難しい」と頭を抱えているような印象があります。また,「実習で患者さんに援助することはとても楽しい!記録(看護過程)がなければ……」という声をよく耳にします。学生は,看護を実践するとき,さまざまな情報をもとにしながら,思考をめぐらせますが,その内容を言語化することが難しく看護過程に苦手意識があるのではないでしょうか。また,教員も時間をかけて学生に一所懸命指導するのですが,お互いなかなか達成感が得られないことも少なくありません。
本書は全4章で構成されており,第I章「看護過程とは」では,看護過程の必要性や考え方を日頃の生活やマンガ『サザエさん』での場面を例に挙げ説明されています。看護が実践されるとき,見ることのできない看護師の思考過程が言語化されおり,看護実践に至るまでのプロセスがイメージしやすくなっています。
第II章「看護過程の頭づくり」では,情報を得るために必要な観察力や情報整理の仕方,問題点の優先度の考え方について説明されています。
本章では,解剖生理や病態生理について学習した内容を図式化し,それに自ら得た情報を加えながら患者の全体像をとらえる学習方法について説明されています。学生は解剖生理や病態生理の豆知識と,患者の状態を関連づけて考えることが苦手なため,実習前,実習中の学習に大いに役立つと思います。
第III章「思考過程としての看護過程」では,アセスメント,問題の明確化,看護計画,実施,評価の5段階で説明されています。各段階での考え方が具体的に記されているので,学生は実習でこのテキストを活用しながら,患者の看護を考えられるようになっています。
第IV章「看護過程を事例で学ぶ」では,ヘンダーソン,オレム,ロイの理論で3つの事例が紹介されています。それぞれの理論に基づいた看護の視点とアセスメントの枠組みを活用した観察の視点や方法は,学生が看護を考える道しるべになるのではないでしょうか。
看護過程の記録は,用紙を埋めるための書き方の学習ではなく,看護を実践するための考え方の学習であることを実感できる書籍です。
本書は学習方法やポイント,学習を振り返るためのセルフチェックなどが要所にあり,看護過程が苦手な学生が楽しく学べる書であり,また,教員や実習指導者には学生指導のヒントがたくさんつまっています。初学者から教員まで活用できる書籍としてお勧めいたします。
(『看護教育』2017年4月号掲載)