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腎臓病診療レジデントマニュアル


編集:小松 康宏

  • 判型 B6変
  • 頁 306
  • 発行 2017年10月
  • 定価 3,888円 (本体3,600円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03050-2
大好評のレジデントマニュアルシリーズに待望の「腎臓内科」版が新登場!
レジデントマニュアルシリーズの新しいタイトル。「研修医がひとりでも、最低限必要な知識をもって、安全に実地できる」をコンセプトに、聖路加国際病院を基準とした検査、診断、治療指示の方針・手順がコンパクトにまとめられている。臨床研修の心強い味方となる1冊。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
序 文


 21世紀になり医療現場を取り巻く環境は劇的に変わっています.期待される診療水準が高まり,業務内容も複雑となり,現場の負担が増加しています.高い水準の医療を安全かつ迅速に提供し,医療スタッフの負担と疲弊をへらすには,個々の医師の努力だけではなく,医療チームとしての組織力,シス...


 21世紀になり医療現場を取り巻く環境は劇的に変わっています.期待される診療水準が高まり,業務内容も複雑となり,現場の負担が増加しています.高い水準の医療を安全かつ迅速に提供し,医療スタッフの負担と疲弊をへらすには,個々の医師の努力だけではなく,医療チームとしての組織力,システムの強固さが鍵となります.
 1984年,聖路加国際病院の「内科レジデントマニュアル」初版後,類書が多く発刊されてきました.しかし多くの“マニュアル”は簡便なレファレンス,教科書の要約となっています.レジデントは各自の好みによって異なったマニュアルやUp To Dateなどのリソースをもとに判断し,指示を出す状況も生まれているようです.担当医によって異なった指示が出る状況は,医学的には誤りでなくても,病棟スタッフの負担や混乱をまねき,業務効率が低下するだけではなく医療事故にもつながりかねません.
 私の所属する聖路加国際病院は,2012年にJoint Commission International(JCI)の認証をうけました.JCIは,医療の質と安全を保証するため,各診療科で診療の方針・手順を定め,診療の一貫性を担保することを求めています.病棟で頻回に遭遇する問題への対処法は,定められた方針,手順にもとづいて実施されることが期待されます.21世紀医療の目的は,「患者の視点にたった医療・ケア」の提供です.検査値の正常化や死亡率軽減よりも,患者のQOL向上,満足度向上が最終目標です.医療の標準化やクリニカル・パスは医師の裁量権を否定するものでもないし,「画一化」医療をすすめるものではありません.頻度の高い病態,問題への対処法を標準化することは,個別化,tailored medicineをすすめるための必要条件と考えます.
 本書は,類書のマニュアルとは異なり,当院腎臓内科で実施する検査・治療指示の方針・手順書です.「交通事故対策には右側通行と左側通行のどちらがよいか」という問いに,「どちらも変わらない」という結論を出すのはEBMやシステマティックレビュー,「左右で差はないので,各国は個々の状況に応じてどちらかに統一することを推奨する」がガイドライン,「日本では車は左側通行とする」と決めるのが法律や手順書に相当します.
 ガイドライン推奨があればそれに沿った形で業務手順を具体化してもらいます.一方,高いレベルのエビデンスがなくどちらでもよいことは,個々の判断に任すのではなく,当科ではこのようにする,と決めていきます.同じ病態に対しては,担当医が誰であるかにかかわらず必要な検査,処方が定まっていることで,診療の質も担保されるし,業務の効率化も進みます.繰り返しになりますが,「標準化」と「画一化」は異なります.すべてマニュアル通りということはあり得ません.ガイドライン,標準手順を十分に理解したうえで,個々の患者の病態,希望に応じて個別化を進めることも臨床医の力量です.
 「標準手順書」という点ではまだ完璧でない部分もありますが,本書が腎臓病診療に携わる皆様のお役にたつことができれば幸いです.

 2017年9月
 小松康宏
目 次
I 診療にかかわる基礎知識
 1 腎臓内科の役割
 2 医療の質改善 Quality Improvement
 3 医療安全・感染管理
   医療安全
   感染管理
 4 インフォームドコンセント,共同の意思決定(SDM)
   インフォームドコンセント
   患者中心のケアと共同の意思決定
 5 患者教育・行動科学
 6 診断・治療の決定(思考)プロセス
 7 コンサルテーションの仕方

II 初期アセスメントと診療
 8 腎臓内科入院患者の初期アセスメント・指示
 9 急性腎障害(AKI)
 10 造影剤腎症(CIN)
 11 慢性腎臓病(CKD)
 12 血液透析患者(導入・合併症)
   血液透析導入
   合併症
 13 腹膜透析患者(導入・適正透析評価・合併症)
   腹膜透析導入
   適正透析評価
   合併症
 14 低ナトリウム血症・高ナトリウム血症
   低ナトリウム(Na)血症
   高ナトリウム(Na)血症
 15 低カリウム血症・高カリウム血症
    低カリウム(K)血症
    高カリウム(K)血症
 16 低カルシウム血症・高カルシウム血症
   低カルシウム(Ca)血症
   高カルシウム(Ca)血症
 17 低リン血症・高リン血症
   低リン(P)血症
   高リン(P)血症
 18 マグネシウム異常
   低マグネシウム(Mg)血症
   高マグネシウム(Mg)血症
 19 浮腫と利尿剤
 20 血液ガスの読み方
 21 酸塩基平衡異常
   代謝性アシドーシス
   代謝性アルカローシス
   呼吸性アシドーシス
   呼吸性アルカローシス
 22 検尿異常・腎生検
   検尿異常
   腎生検
 23 ネフローゼ症候群
 24 IgA腎症
 25 急速進行性糸球体腎炎症候群(RPGN)
 26 尿細管間質性腎炎
   急性間質性腎炎
   慢性間質性腎炎
 27 高血圧と高血圧緊急症
   高血圧
   高血圧緊急症
 28 妊娠と腎障害・高血圧
  [1]妊娠により生じる腎障害・高血圧症
   妊娠高血圧症候群
   無症候性細菌尿と尿路感染症
   急性腎障害(HELLP症候群)
  [2]妊娠を希望する腎疾患患者への対応
 29 TMA,HUS,TTPの初期管理
 30 腎臓病・透析患者の周術期管理
 31 腎移植患者の内科管理

III 特殊処置・治療
 32 腎機能低下例に対する薬物処方
 33 急性血液浄化療法
 34 末期腎不全に対する腎代替療法の処方と選択
 35 血漿交換療法
 36 免疫抑制療法開始前の注意
   副腎皮質ホルモン療法の合併症予防

付録
 1 腎機能・電解質異常の各種検査と公式
   糸球体濾過値
   尿細管機能
   電解質,水バランス
   蓄尿から得られる情報
   透析関連の公式
   各種物質の原子量・分子量
 2 腎不全において注意が必要な基準値一覧

索引

MEMO
 質 Quality とは
 手指衛生の遵守度を上げるには
 腹部コンパートメント症候群(ACS)
 腎性全身性線維症(NSF)
 Edelman式
 3%NaClを1mL/kg投与すると,血清Na濃度は1mEq/L上昇する
 Chvostek徴候/Trousseau徴候
 下剤の使用と高Mg血症
 薬物中毒による代謝性アシドーシス
 AG正常代謝性アシドーシスにおける尿中AGの使用
 クロール欠乏性アルカローシス
 外来・病棟での一過性の高度血圧上昇
 褐色細胞腫クリーゼの血圧管理
 腎機能の回復が期待できない中等度の腎機能障害を認める場合
 包括的腎代替療法,PDファースト
 GFR低下速度(ΔGFR)を評価する
 早期穿刺可能なグラフト
 在宅血液透析
 社会保障
 先行的腎移植/先行的献腎移植
 保険適用