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≪助産学講座 9≫

地域母子保健・国際母子保健


(第5版)

編集:我部山 キヨ子
執筆:藤内 修二/中谷 芳美/福永 一郎/市川 香織/渕元 純子/神谷 整子/大坪 三保子/奥山 千鶴子/佐藤 喜根子/入山 茂美

  • 判型 B5
  • 頁 280
  • 発行 2016年02月
  • 定価 3,564円 (本体3,300円+税8%)
  • ISBN978-4-260-02191-3
本書の特長
制度・施策についての最新の知識
地域で母子保健活動を推進するうえで必要な地域母子保健行政のしくみをわかりやすく解説、制度・施策の最新の情報を学習できます。
実践につながる内容の充実
第1~4章で基礎的な知識を学習し、第5章で実践的な内容を学習できる構成としました。
最新かつわかりやすい「国際母子保健」
「第6 章 国際母子保健」の記述を刷新。最新の情報に基づいて世界の母子保健の現状と問題点、母子保健活動の実際をわかりやすく解説しています。
*「助産学講座」は株式会社医学書院の登録商標です。
序 文


助産師をめぐる動向
 近年,わが国においては産科医不足や出産取り扱い施設の閉鎖など,母子を取り巻く厳しい状況が報告されている。家族規模の縮小化と養育機能の低下,離婚の増加など,母子・親子関係の根幹が揺らぎ,妊娠・育児を支える家族機能も急速に弱体化しつつある。ま...


助産師をめぐる動向
 近年,わが国においては産科医不足や出産取り扱い施設の閉鎖など,母子を取り巻く厳しい状況が報告されている。家族規模の縮小化と養育機能の低下,離婚の増加など,母子・親子関係の根幹が揺らぎ,妊娠・育児を支える家族機能も急速に弱体化しつつある。また,晩婚化・晩産化・少子化が進行し高度生殖補助医療は日常の医療として定着する一方で,ハイリスク妊娠や妊産褥婦の重症ケースが増え,医療の高度化・複雑化が進行している。育児不安・子どもの虐待など育児をめぐる問題も多様化・深刻化し,児童虐待相談件数の高どまり,若者の性・生活・社会環境の変化から派生する性感染症・薬物依存・栄養障害,在日外国人の母子保健,女性へのドメスティック・バイオレンスやリプロダクティブ・ヘルス/ライツ,受精卵のES細胞や胎児組織の再生・移植医療への応用など,母子や性と生殖に関する多くの課題が山積している。
 このような多種多様なニーズおよび急速な変化に対応するべく,助産師業務も変革をしてきた。国際助産師連盟(ICM)は具体的なケアとして正常出産をより生理的な状態として推進すること,母子の合併症の発見,医療あるいはその他の適切な支援の利用,救急処置の実施から,女性の健康,性と生殖に関する健康,育児まで,女性とその家族・地域をも含めた生涯にわたるリプロダクティブ・ヘルス/ライツへの支援を明瞭に打ち出した(ブリスベン大会,2005年)。また,ICMは助産師教育の世界基準(2010年)で,ダイレクトエントリーの助産師教育課程の最低期間を3年間,看護の基礎教育修了者/医療従事者に関する教育課程の最短期間を18か月間とした。
 わが国においては,2007年には看護職の権限拡大(助産師の場合,会陰切開など)が政府の規制改革会議第2次答申案で出された。2008年には助産師の教育の充実や助産師の資質の向上をはかること(厚生労働省報告書),2010年には助産師教育の内容や質の保証のあり方(文部科学省)が検討された。臨床現場においても,助産師の権限拡大を受けて,産科医不足や妊産褥婦のニーズの多様化・複雑化に対応するために,助産外来や院内助産などが全国に広がってきた。
 助産師教育の充実をはかるために,保健師助産師看護師法の一部改正(2010年4月施行)が行われ,保健師・助産師の教育年限が6か月から1年以上となった。さらに,保健師助産師看護師学校養成所指定規則の改正により,助産師教育の単位数総計は23単位から28単位に増加した(2011年4月)。指定規則の改正に伴い,助産師に要求される実践能力として,(1)助産師における倫理的課題に対応する能力,(2)マタニティケア能力,(3)性と生殖のケア能力,(4)専門的自律能力が示され,今後より強化されるべき助産師の役割と機能も具体的に挙げられている。

改訂の趣旨
 改正された保健師助産師看護師学校養成所指定規則の基本的枠組みを踏襲しつつ,EBMをふまえた基礎的内容と発展的内容を押さえるように,この度,改訂第5版を企画した。そのねらいは,助産学教育の水準を向上させ,助産学の発展・確立に寄与することである。具体的には助産師をめぐる動向で記述したような状況にも対応できる助産師を養成することを目ざすことにある。なお,本講座は第一義には助産師学生の基礎教育テキストであり,助産師国家試験出題基準の内容についても網羅したものとなっている。
 本巻(地域母子保健・国際母子保健)は,第1章から第5章が「地域母子保健」,第6章が「国際母子保健」という構成となっている。
 「地域母子保健」では,地域で活動するために必要な母子保健制度や施策,統計データなど,最新の知識を整理し,実践につなげられる内容となるように工夫した。また,「助産師国家試験出題基準」および「助産師教育の技術項目と卒業時の到達度」の項目を網羅するよう,「地域相談活動」「妊婦訪問指導」「災害時の母子保健活動」の項目を新設した。
 「国際母子保健」では,最新のデータに基づき,国際母子保健の現状と課題を述べ,海外在住日本人母子のケア,在日外国人母子のケアという実践につながる内容となっている。
 執筆者は各領域の最前線で先進的教育や活動を行っている専門家に依頼した。記載形式は読者が理解しやすいように図表を多く取り入れ,見やすさ・使いやすさを工夫している。助産師学生の教科書としてのみならず,臨床や地域で活躍する助産師の皆様の指導書として,本書を広く活用していただければと,せつに願っている。
 なお,本講座は,我妻堯・前原澄子編集による初版を1991年に発行して以来,今回の改訂で第5版を重ねるにいたった。ここに改めて本講座にかかわってこられた編著者各位に深謝したい。

 2016年1月
 編者ら
目 次
第1章 地域母子保健の意義
 A 地域の概念
  1 コミュニティとしての地域
  2 生活圏や医療圏としての地域
 B 地域の特性と地域母子保健
  1 地勢と気候
  2 歴史と文化
  3 人口構成
  4 交通条件
  5 産業構造と経済状況
  6 医療資源
 C 地域母子保健活動の意義
  1 地域母子保健活動の目的
  2 地域母子保健活動の5つの目標

第2章 母子保健の現状と動向
 A 統計資料の分析
  1 人口動態統計
  2 母体保護統計
  3 統計資料の入手
 B 母子保健をめぐる諸問題と課題
  1 人口構造の変化
  2 人口の移動と過密・過疎
  3 疾病構造の変化
  4 育児環境の変化
  5 医療環境の変化

第3章 地域母子保健行政の体系
 A わが国の母子保健行政
  1 母子保健行政の進展
  2 母子保健関係法規
  3 国・都道府県・市町村の役割
 B わが国のおもな母子保健制度
  1 母子保健制度の概要
  2 健康診査
  3 保健指導
  4 療養援護
  5 医療対策
  6 予防接種
  7 不妊に対する相談と治療費助成
  8 ひとり親家庭の支援
  9 職域における母子保健
  10 女性保護
 C わが国の母子保健施策
  1 健康日本21と健やか親子21
  2 少子化社会対策大綱と次世代育成支援対策推進法
  3 市町村母子保健計画の推進

第4章 地域母子保健活動の基盤
 地域母子保健活動の基盤
  1 関係機関との連携
  2 地域母子保健ニーズの把握
  3 地域母子保健ニーズの施策化
  4 地域における合意形成
  5 事業計画の評価・修正・変更案の作成

第5章 地域母子保健活動の展開
 A 女性のライフサイクルへの支援
  1 幼児期・学童期
  2 思春期
  3 成熟期
  4 更年期
 B 母子保健活動を展開する場と特徴
  1 助産所
  2 病院・診療所
  3 産後ケア施設
  4 母子健康センター・市町村保健センター・保健所
 C 妊婦訪問指導の理論と実際
  1 妊婦訪問の現状
  2 母子保健法に基づく妊産婦訪問
  3 児童福祉法に基づく養育支援訪問事業
  4 妊婦訪問指導の実際
  5 事例から学ぶ妊婦訪問指導
 D 新生児訪問指導の理論と実際
  1 新生児訪問が実施されるまでの手順
  2 新生児訪問の目的と対象
  3 新生児訪問の留意点
  4 新生児の生活環境の観察点
  5 新生児のおもな観察点
  6 新生児訪問の実際
 E 褥婦訪問指導の理論と実際
  1 褥婦訪問の目的と対象
  2 産褥期の生活指導の目安
  3 母乳栄養の確立
  4 産後の精神衛生
  5 家族計画
  6 産褥訪問の実際
 F 地域組織活動
  1 地域組織活動の必要性と目的
  2 地域組織活動の実際と助産師の役割
  3 地域組織活動の実践例
 G 地域子育て支援活動
  1 子育て家庭の現状
  2 地域子育て支援の意義と役割
  3 わが国の子ども・家庭支援への期待と展望
 H 地域相談活動
  1 助産師による無料電話相談
  2 行政が行う不妊専門相談や女性の健康相談
  3 百貨店やスーパーでの無料対面相談
 I 災害時の地域母子保健活動
  1 災害の定義
  2 災害の種類
  3 災害サイクルと各期の対応
  4 東日本大震災時の地域母子保健の実情
  5 母子保健支援者へのケア

第6章 国際母子保健
 A 諸外国の母子保健活動
  1 母子保健の現状と課題
  2 母子保健施策の現状
  3 開発途上国における母子の問題と母子保健活動の実際
 B 海外在住日本人の母子保健
  1 海外在住日本人妊産褥婦に求められる助産ケア
  2 海外で出産する日本人女性
  3 妊娠した海外在住日本人女性が直面する問題とその対策
  4 海外で生まれた乳児の健康にかかわる問題とその対策
 C 在日外国人の母子保健
  1 在日外国人母子の現状と課題
  2 在日外国人母子が利用できる母子保健制度
  3 在日外国人母子への助産ケア
  4 外国人母子への情報提供
  5 地域における他職種との連携

索引