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≪助産学講座 4≫

基礎助産学[4]

母子の心理・社会学


(第5版)

編集:我部山 キヨ子/菅原 ますみ
執筆:菅原 ますみ/上長 然/松浦 素子/田仲 由佳/岐部 智恵子/川島 亜紀子/酒井 厚/宮坂 靖子/小谷 眞男/村田 泰子/田間 泰子

  • 判型 B5
  • 頁 272
  • 発行 2016年02月
  • 定価 4,104円 (本体3,800円+税8%)
  • ISBN978-4-260-02186-9
本書の特長
ライフサイクル各期における女性の心理的特徴と課題を解説
第1章では、親準備性の発達、キャリア発達と就労継続、妊娠・出産をめぐる諸問題(不妊治療、人工妊娠中絶、周産期喪失と悲嘆など)、マタニティハラスメント、マタニティブルーズ、更年期うつなど、ライフサイクル各期における身体的変化とその心理的受容、心理的課題について丁寧に解説しました。
母子関係、父子関係、夫婦関係の心理的発達と課題を詳説
第2章では、母性の発達、愛着形成、マターナルアタッチメント、父性の発達などについて、心理学的立場から丁寧に解説しました。低出生体重児、障害をもつ子ども、共働き、離婚など、さまざまな状況で子育てをする母親の心理的特徴のほか、児童虐待、DVといった精神病理の要因についても取りあげます。
現代社会における家族・母親・父親の機能と役割、発達課題を解説
第3章では、「家族」の機能と役割、社会的課題について、第4・5章では、現代社会の母親・父親・子育ての社会的課題について、歴史的な背景を踏まえて、国際社会と比較しながら学ぶことができます。結婚・離婚・出産にかかわる法律や、国際結婚、ひとり親家庭、被災地での子育てなどについても取りあげます。
*「助産学講座」は株式会社医学書院の登録商標です。
序 文


助産師をめぐる動向
 近年,わが国においては産科医不足や出産取り扱い施設の閉鎖など,母子を取り巻く厳しい状況が報告されている。家族規模の縮小化と養育機能の低下,離婚の増加など,母子・親子関係の根幹が揺らぎ,妊娠・育児を支える家族機能も急速に弱体化しつつある。ま...


助産師をめぐる動向
 近年,わが国においては産科医不足や出産取り扱い施設の閉鎖など,母子を取り巻く厳しい状況が報告されている。家族規模の縮小化と養育機能の低下,離婚の増加など,母子・親子関係の根幹が揺らぎ,妊娠・育児を支える家族機能も急速に弱体化しつつある。また,晩婚化・晩産化・少子化が進行し高度生殖補助医療は日常の医療として定着する一方で,ハイリスク妊娠や妊産褥婦の重症ケースが増え,医療の高度化・複雑化が進行している。育児不安・子どもの虐待など育児をめぐる問題も多様化・深刻化し,児童虐待相談件数の高どまり,若者の性・生活・社会環境の変化から派生する性感染症・薬物依存・栄養障害,在日外国人の母子保健,女性へのドメスティック・バイオレンスやリプロダクティブ・ヘルス/ライツ,受精卵のES細胞や胎児組織の再生・移植医療への応用など,母子や性と生殖に関する多くの課題が山積している。
 このような多種多様なニーズおよび急速な変化に対応するべく,助産師業務も変革をしてきた。国際助産師連盟(ICM)は具体的なケアとして正常出産をより生理的な状態として推進すること,母子の合併症の発見,医療あるいはその他の適切な支援の利用,救急処置の実施から,女性の健康,性と生殖に関する健康,育児まで,女性とその家族・地域をも含めた生涯にわたるリプロダクティブ・ヘルス/ライツへの支援を明瞭に打ち出した(ブリスベン大会,2005年)。また,ICMは助産師教育の世界基準(2010年)で,ダイレクトエントリーの助産師教育課程の最低期間を3年間,看護の基礎教育修了者/医療従事者に関する教育課程の最短期間を18か月間とした。
 わが国においては,2007年には看護職の権限拡大(助産師の場合,会陰切開など)が政府の規制改革会議第2次答申案で出された。2008年には助産師の教育の充実や助産師の資質の向上をはかること(厚生労働省報告書),2010年には助産師教育の内容や質の保証のあり方(文部科学省)が検討された。臨床現場においても,助産師の権限拡大を受けて,産科医不足や妊産褥婦のニーズの多様化・複雑化に対応するために,助産外来や院内助産などが全国に広がってきた。
 助産師教育の充実をはかるために,保健師助産師看護師法の一部改正(2010年4月施行)が行われ,保健師・助産師の教育年限が6か月から1年以上となった。さらに,保健師助産師看護師学校養成所指定規則の改正により,助産師教育の単位数総計は23単位から28単位に増加した(2011年4月)。指定規則の改正に伴い,助産師に要求される実践能力として,(1)助産師における倫理的課題に対応する能力,(2)マタニティケア能力,(3)性と生殖のケア能力,(4)専門的自律能力が示され,今後より強化されるべき助産師の役割と機能も具体的に挙げられている。

改訂の趣旨
 改正された保健師助産師看護師学校養成所指定規則の基本的枠組みを踏襲しつつ,EBMをふまえた基礎的内容と発展的内容を押さえるように,この度,改訂第5版を企画した。そのねらいは,助産学教育の水準を向上させ,助産学の発展・確立に寄与することである。具体的には助産師をめぐる動向で記述したような状況にも対応できる助産師を養成することを目ざすことにある。なお,本講座は第一義には助産師学生の基礎教育テキストであり,助産師国家試験出題基準の内容についても網羅したものとなっている。
 本巻(基礎助産学[4]母子の心理・社会学)では,国家試験出題基準「基礎助産学I」の中項目における「女性のライフサイクル各期における心理社会的課題」「家族のライフサイクル」「母性・父性と親性の発達」を中心に扱う。第1章と第2章では,さまざまなライフステージにおける女性・母親の心理的特徴を解説するとともに,産前・産後うつやドメスティック・バイオレンス,児童虐待といった病理に陥る心理的要因についても取り上げる。第3章では,現代の家族の機能・役割・発達課題と,家族に関する法律について,歴史的変遷を踏まえて解説する。第4章と第5章では,現代社会における母親・父親・子育ての特徴と課題について社会学的な視点から解説する。これらを通して,現代社会に生きる女性,母親・父親,子どもを,助産師として適切に支えるための視点を養う。
 執筆者は各領域の最前線で先進的教育や活動を行っている専門家に依頼した。記載形式は読者が理解しやすいように図表を多く取り入れ,見やすさ・使いやすさを工夫している。助産師学生の教科書としてのみならず,臨床や地域で活躍する助産師の皆様の指導書として,本書を広く活用していただければと,せつに願っている。
 なお,本講座は,我妻堯・前原澄子編集による初版を1991年に発行して以来,今回の改訂で第5版を重ねるにいたった。ここに改めて本講座にかかわってこられた編著者各位に深謝したい。

 2015年12月
 編者ら
目 次
第1章 女性のライフサイクル各期における心理・社会的課題
 A 女性のライフサイクルにおける心理・社会的課題
  1 女性の生涯発達における心理・社会的課題
  2 家族関係の形成と子どもの発達
 B 思春期・青年期女性の発達と心理・社会的課題
  1 思春期・青年期の身体発育・性的成熟とその心理的受容
  2 対人関係の発達(親子関係・友人関係)
  3 親準備性の発達
  4 発達課題(アイデンティティの探索)
  5 メンタルヘルス(摂食障害・月経関連の障害等)
 C 成人期初期・中期女性の発達と心理・社会的課題
  1 自立の達成
  2 恋愛と結婚
  3 妊娠・出産をめぐる諸問題
  4 職業発達と就労実現・継続
  5 メンタルヘルス
 D 更年期・老年期女性の発達と心理・社会的課題
  1 更年期の身体的変化とその心理的受容
  2 更年期症状・更年期障害
  3 結婚生活の変遷と離婚
  4 職業生活の変化
  5 対人関係の変化
  6 老年期の身体的変化と受容
  7 対人関係の変化
  8 メンタルヘルス
第2章 家族関係の発達と課題
 A 母子関係の形成と課題
  1 母性の発達過程
  2 妊娠期の母子関係
  3 新生児期・乳児期の母子関係
  4 幼児期・児童期の母子関係
  5 思春期・青年期の母子関係
  6 母子関係の病理
  7 さまざまな状況で子育てする母親の心理
 B 父子関係の形成と課題
  1 父性の発達過程
  2 父子関係と子どもの発達
  3 父親のメンタルヘルスと家族へのリスク
 C 夫婦関係と子どもの発達
  1 夫婦関係の形成と発達
  2 夫婦関係と子どもの発達
  3 離婚の問題
  4 夫婦関係と個人の病理
 D 家族・地域のネットワークと子ども・親の心理的な発達と適応
  1 多様な家族関係ネットワーク
  2 子どもと地域をつなぐ親の役割
  3 親子をめぐる現代的ネットワーク
  4 支援の必要な親子・家庭へのサポート
第3章 家族と社会
 A 家族の機能と役割
  1 家族の定義
  2 家族を分析する基本概念
  3 家族の機能
  4 家族の役割と家族の発達課題
 B 家族の変化-近代家族から現代家族へ
  1 近代家族の成立
  2 近代家族から現代家族へ
 C 現代における家族の再編-男女によるケアの共有へ
  1 個人化する家族
  2 ケアされる権利・ケアする権利
  3 ワーク-ライフ-バランス(仕事と生活の調和)の実現
  4 福祉レジームとワーク-ライフ-バランス
  5 男女による「分業」から男女による「共有」へ
 D 家族と法
  1 戦後日本における家族法の歴史
  2 現行家族法の基本的ルールと問題点
  3 家族法の現代的課題
第4章 母親・父親と社会
 A 母親と社会
  1 社会学・ジェンダー論からみた母性
  2 共同体のなかの母親
  3 近代化のなかの母親
  4 現代の母親
 B 父親と社会
  1 歴史のなかの父親
  2 現代社会のなかの父親
  3 日本の父親と世界の父親
第5章 子どもと社会
 A 社会のなかの子ども
  1 昔の子どもと子育て
  2 近代社会における「子ども」の発見
  3 現代の子育て支援への道のり
 B 現代日本の子育て支援
  1 現在の子育て支援制度
  2 さまざまな子育て支援の取り組み
 C 世界の子育て支援
  1 諸外国の制度との比較
  2 日本社会の課題

索引