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慢性頭痛の診療ガイドライン 市民版

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日本頭痛学会のエキスパートドクターが編集した 『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』 を頭痛に悩む患者さん向けに再編集。読みやすいQ&A(クリニカルクエスチョン)形式はオリジナル版そのままに、最新の頭痛診療を噛み砕いて解説。また頭痛病名も最新版の 『国際頭痛分類 第3版 beta版』 に準拠した。患者さんはもちろんのこと、医師やコメディカルの方々にも患者さんへの説明用としてお勧め。
編集 日本頭痛学会「慢性頭痛の診療ガイドライン 市民版」作成小委員会
発行 2014年11月判型:A5頁:156
ISBN 978-4-260-02059-6
定価 1,980円 (本体1,800円+税)
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『慢性頭痛の診療ガイドライン 市民版』発行によせてはじめに

『慢性頭痛の診療ガイドライン 市民版』発行によせて
 頭痛に悩む人は,今や15歳以上の日本人のおよそ「3人に1人」といわれています。
 頭痛で仕事や家事ができない悩みに加え,最近は小児や思春期に頭痛外来を受診する人も多く,「頭痛ごときでどうして学校に行けないのだ」と,悩みは本人だけでなく,家庭全体にも及びます。
 でも皆さん,自分がどういうタイプの頭痛なのか,わかっていますか?頭痛といえばお馴染みなのは,頭が脈打つようにズキンズキンと痛み,吐き気がすることもある「片頭痛」,そして,肩や首のコリとともに,頭全体が締めつけられるように痛む「緊張型頭痛」。この2つが,日本人に多い,いわば二大頭痛です。
 それぞれに頭痛の原因が違います。正しい診断と,適切な治療が必要なのに,つい,痛み止めの薬ですませようとする人も少なくありません。1錠で効果がないと時間をおかず,ついもう1錠という人も。用量・用法を守らず市販薬を飲みすぎてしまうと,頭痛を長引かせ慢性化させるだけでなく,新たな頭痛を引き起こしてしまうこともあります。
 あなたを悩ます頭痛,何も一種類だけとは限りません。頭痛の種類は多種,多彩。2013年に発表された国際頭痛学会の最新の分類によれば,頭痛の種類はなんと,およそ350種類もあるのです。種類が違えばもちろん治療法も対処法も違ってくるはずです。片頭痛や緊張型頭痛だと思い込み,治療を続けているのに,いつまでたっても治らない。二大頭痛の陰に,まったく別の頭痛が隠れている可能性もあります。
 本書では,日本頭痛学会の頭痛専門医が,頭痛の種類や治療法をわかりやすく解説しています。編集責任者の立岡 良久先生をはじめ多くの先生方が,皆さんのお役に立つように頭痛の最新情報を伝えてくれました。
 頭痛の悩みの多くが本書で解消されることを,期待しています。

 2014年10月
 (社)日本頭痛学会 代表理事
 坂井 文彦


はじめに
 日本において,頭痛を自覚する人は1年間に4000万人にのぼることが知られています。この大部分は,どこにも原因となる病気がなく頭痛だけが症状である「一次性頭痛」といわれる頭痛です。一次性頭痛は生命を脅かすものではありませんがくりかえし慢性的に痛みが現れ,時には就労や登校ができなくなるなど生活の質を低下させます。頭痛医学は近年格段に進歩していますが,頭痛があってもこれをうまく退治し快適な生活を送るためには単に薬を服用するだけでなく,自身の頭痛に関する正しい知識をもつことが重要です。また頭痛診療の現場では,くも膜下出血などの「二次性頭痛」といわれる何らかの基礎疾患によって起こる危険な頭痛をすみやかに診断することも重要です。
 本書『慢性頭痛の診療ガイドライン 市民版』は患者さんやその家族の皆さんに必要と思われる頭痛に関する知識をわかりやすく紹介したものです。同じ目的で2006年に『これで治す最先端の頭痛治療—慢性頭痛の診療ガイドライン 市民版』の初版が発行され,8年が経過しました。その後も頭痛診療に多くの進歩があり,その進歩を反映させた第2版となるのが本書です。
 初版(保健同人社 刊)のガイドライン市民版は,2006年に医師向けに発行された『慢性頭痛の診療ガイドライン』の内容を患者さんやその家族の皆さんにわかりやすく噛み砕いて解説したものです。2013年にはその後の頭痛医学の進歩に対応して,新たに医師向けの 『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』 が作成されました。これは日本神経学会と日本頭痛学会が中心となり,日本神経治療学会と日本脳神経外科学会も加えて結成された39人の委員によって作成されました。およそ2年間の歳月をかけて,頭痛診療に携わる医師の臨床的判断を支援する内容を吟味し,まとめたものです。
 『慢性頭痛の診療ガイドライン 市民版』は,この『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』から患者さんやその家族の皆さんに必要な個所をわかりやすく書き直したものです。日本頭痛学会の選定した18人の作成委員により作業が行われ,市民版に必要な新たな内容も書き加えられています。
 頭痛診療を進めるにあたって判断しなければならない問題点をクリニカル・クエスチョン(CQ;clinical question,臨床的疑問)とし,それぞれに回答を与える形式の内容としています。そのなかで「エビデンス」という言葉が使われていますが,これは「ある病気における治療法の有効性を証明する証拠や根拠」という意味です。ある治療薬が有効であることを証明するためにはランダム化比較試験を行う必要があります。これは本物の薬と偽物の薬を患者さんに試してもらう試験です。どの薬が本物か偽物かは処方した医師にも患者さんにも最後の統計処理をするまで知らせないで行います。それぞれの患者さんについて有効性を評価し,本物の薬を処方された患者さんのグループと偽物の薬を処方された患者さんグループの間で有効性に明らかな差が認められたときに初めて薬の有効性が証明されたことになり,これを「エビデンスがある」といいます。
 ガイドラインでは各CQに対する回答のエビデンスの質に応じて表のような推奨度を与えています。

 グレード A  行うよう強く勧められる
 グレード B  行うよう勧められる
 グレード C  行うよう勧められるだけの根拠が明確でない

 頭痛の診断は,国際頭痛学会の編纂〈へんさん〉した「国際頭痛分類」に当てはめてなされます。医師向けの『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』は「国際頭痛分類 第2版」に準拠しています。その後 『国際頭痛分類 第3版 beta版』(ICHD-3β,2014年医学書院 刊)が発表されたため,『慢性頭痛の診療ガイドライン 市民版』では可能な限りこちらを採用しています。
 本書には一般の方々には少し難しい内容も含まれていますが,主治医の診療の際の判断がどのようになされるかを理解することにも役立つと思います。本書により頭痛に悩む皆さんの,頭痛に関する知識が深まり,頭痛があっても上手にこれを退治して快適な生活が送れるようになることを願っています。

 2014年10月
 日本頭痛学会「慢性頭痛の診療ガイドライン 市民版」作成小委員会
 委員長 立岡 良久

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 『慢性頭痛の診療ガイドライン 市民版』 発行によせて
 はじめに
 パブリッククエスチョン(よくある質問)

I 頭痛一般
   1 頭痛はどのように分類し診断するのでしょうか
   2 どのような場合に危険な頭痛である二次性頭痛を疑うのでしょうか
   3 くも膜下出血はどのように診断するのでしょうか
   4 頭痛外来,また頭痛専門医とは何でしょうか
   5 簡易診断アルゴリズムとは何ですか また,どのように使用するのですか
   6 問診票,スクリーナーをどのように利用したらよいでしょうか
   7 頭痛ダイアリーとは何でしょうか また,それにはどのような利点があるでしょうか
   8 どのような一次性頭痛が治療の対象となりますか
   9 一次性頭痛の入院治療の対象と治療法にはどのようなものがありますか
  10 一次性頭痛は不安/抑うつを伴うのでしょうか
  11 市販薬による薬物治療をどのように計画するのでしょうか
  12 漢方薬は頭痛に有効でしょうか
  13 薬物治療以外にどのような治療法があるのでしょうか
  14 学校医は生徒の頭痛にどうかかわるのでしょうか
  15 解離性動脈瘤に伴う頭痛はどのように診断するのでしょうか
  16 特発性低頭蓋内圧性頭痛はどのように診断しますか
     また治療はどうするのでしょうか

II 片頭痛
 1 片頭痛の概要
   1 片頭痛はどのように分類するのですか
   2 片頭痛はどのように診断するのですか
   3 日本における片頭痛の有病率はどの程度ですか
   4 片頭痛の病態はどのように理解されているのですか
   5 片頭痛の前兆にはどのようなものがありますか
   6 片頭痛の誘発因子にはどのようなものがありますか
   7 片頭痛は年齢とともに改善しますか,
     それとも悪化したり慢性化したりするのでしょうか
   8 片頭痛患者の健康寿命,生活の質(QOL)の阻害はどの程度ですか
   9 片頭痛の共存症にはどのようなものがあるのでしょうか
  10 慢性片頭痛とはどのような病気でしょうか
  11 片頭痛は脳梗塞の危険因子でしょうか
  12 片頭痛患者は低用量経口避妊薬(ピル)を安全に使用できるでしょうか

 2 急性期治療
   1 片頭痛の急性期治療には,どのような方法があるのでしょうか
     またどのように使用するのでしょうか
   2 トリプタンはどのタイミングで使用すればよいのでしょうか
   3 複数のトリプタンはどのように使い分けるのでしょうか
   4 点鼻薬や注射剤の非経口トリプタンはどのような片頭痛に対して,
     どのように使用したらよいでしょうか
   5 アセトアミノフェン,非ステロイド系消炎鎮痛薬は片頭痛治療に有効ですか
   6 急性期治療(頭痛発作時の治療)において制吐薬の使用は有用なのでしょうか
   7 その他の片頭痛の急性期治療薬(頭痛発作時の治療薬)には
     どのようなものがあるのですか
   8 妊娠中,授乳中の片頭痛治療はどうすればよいのですか
   9 月経時片頭痛の診断と治療はどうすればよいのですか

 3 予防療法
   1 どのような場合に片頭痛の予防療法が必要なのでしょうか
   2 予防療法にはどのような薬剤があるのですか
   3 複数の予防療法をどのように使い分けるのでしょうか
   4 予防療法はいつまで続ける必要があるのでしょうか
   5 片頭痛の予防によいサプリメントにはどのようなものがありますか
   6 閃輝暗点(片頭痛の前兆)のみで頭痛を伴わない場合にはどのように対処しますか
   7 慢性片頭痛にはどのように対処しますか

III 緊張型頭痛
   1 緊張型頭痛にはどのような分類があるのですか
   2 緊張型頭痛はどのように診断するのですか
   3 緊張型頭痛の有病率はどの程度ですか 誘発因子などはありますか
     また予後(長期的経過)についてはどうですか
   4 緊張型頭痛の病態はどのように理解されているのですか
   5 変容性片頭痛はどのような頭痛ですか,緊張型頭痛と区別できますか
   6 緊張型頭痛の治療にはどのようなものがありますか
   7 緊張型頭痛の急性期治療にはどのような種類があり,
     どのように使い分けるのでしょうか
   8 緊張型頭痛の予防治療にはどのような種類があり,
     どのように使い分けるのでしょうか
   9 緊張型頭痛の予防療法で薬物治療以外にどのようなものがありますか

IV 群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛
   1 群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛には
     どのような分類・病型がありますか
   2 群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛はどのように診断しますか
   3 群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経頭痛の有病率はどの程度ですか
     また,危険因子や増悪因子はどうですか
   4 群発頭痛急性期治療薬にはどのような種類があり,どの程度有効ですか
   5 群発頭痛発作期の予防療法にはどのような薬剤がありますか

V その他の一次性頭痛
   1 片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛以外の一次性頭痛にはどのようなものがありますか
   2 雷鳴頭痛とはどのような頭痛ですか
   3 ほぼ毎日頭が痛いのですが,検査は異常ありません 何という頭痛でしょうか

VI 薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)
   1 薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)とはどのように診断するのですか
   2 薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)の患者さんはどれくらいいるのですか
   3 薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)の治療法と予後はどうですか

VII 小児の頭痛・遺伝子
   1 小児にはどのような頭痛が多いのですか
   2 小児の片頭痛はどのように診断するのですか
   3 小児の二次性頭痛にはどのようなものが多いのですか
   4 小児の片頭痛にはどのような治療薬が用いられるのでしょうか
   5 小児に慢性連日性頭痛はどのくらいありますか
     頭痛で学校の欠席が多い場合どうしたらよいのでしょうか
   6 片頭痛には遺伝的要因があるのですか

索引

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頭痛診療をスキルアップしたい非専門医にも役立つ
書評者: 大生 定義 (立教大社会学部教授/立教学院診療所所長)
 日本頭痛学会「慢性頭痛の診療ガイドライン 市民版」作成小委員会(委員長 立岡良久先生)編集による『慢性頭痛の診療ガイドライン 市民版』が医学書院より上梓された。これは同学会と日本神経学会が共同でまとめた,頭痛診療医向けの『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』を患者向けに要約・編集したもので,本来の出版目的は患者への啓発用にということであろう。この目的には大変有用であり,患者が個人で読み,理解するには役立つであろうし,さらに診察室内での説明用,待合室に備えつけとしても使える本である。しかし,あらためて読ませていただくと,患者のみならず,頭痛診療を見直し,スキルアップを考えている非専門医にも役立つ内容にもなっており,この点の活用も十分重要と思われ,患者・医師両者に向けてご推薦したいと思い筆を執った。

 本書の特徴は第一に記述が簡潔で簡単明瞭である。テーマに対する答えが短く,時間がない時も一瞥するだけで答えが得られる。第二にはサイドメモが充実している。ここで頭痛のバリエーションやさらなる情報の入手先がわかる。第三にあくまでも質問から出発している構成になっていることである。医師であれば,すぐに読了できる量と内容である。第四に『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』以後に発表された,最新の頭痛分類(国際頭痛分類 第3版beta版)に準拠していることである。

 第三の特徴である,質問形式であることは,患者への説明場面に大変便利である。特に目次と本文の間に「パブリッククエスチョン(よくある質問)」を4ページ割いて示している。患者とかかりつけ医との間での会話を彷彿とさせる身近な疑問で,ここから関連する本文のクリニカルクエスチョンとその回答と解説(ほぼ1ページあるいは見開き2ページ程度)に飛べるようになっている。

 以前評者は片頭痛患者が医療に何を望むかを調査をしたことがある。すると患者は,痛みの軽減よりも大切なものとして,頭痛をきちんと診てくれる医師がいること,薬の説明をきちんと受けること,痛みの原因をきちんと説明してくれることを挙げていた。この本が患者へのコミュニケーションのツールとして活用されればと願う。本書を活用すると,頭痛患者の説明してほしいことに対する的確な回答を直ちに示すことができる。先進的な患者はそうではないかもしれないが,一般の患者が自分で読むには少し難しい内容もある。しかしこの本を仲立ちにして患者・医師の成長や信頼関係の確立・維持もできるのではないかとも考える。

 医療の均てん化の促進も叫ばれている。総合診療医のあり方も議論されている。「頭痛診療は無関心」でも,「専門医に任せてばかり」でもいけない社会の要請もある。患者の痛みや生活に対する影響の認識,適切な診療を進めて行く上で,本書は患者・非専門医双方に役立つものと確信する。

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