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看護学生のための物理学 第5版

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医療や看護の現場には、物理学の観点から考えると明快に理解が深まる点が多く、人体の構造にも感激して自身の存在を偉大に感じられるようにもなる。本書は、物理学の法則や数式を覚え、それを使う訓練をすることを目的とはせずに、日常生活に身近な物理現象をわかりやすく解説することで物理学的思考のセンスを磨くことを目指している。看護教育に永年携わってきた物理学教師が“物理嫌い”の学生の目をさまさせてくれる!
佐藤 和艮
発行 2014年10月判型:B5頁:200
ISBN 978-4-260-02051-0
定価 2,420円 (本体2,200円+税)
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第5版の序


 著者が看護教育に携わりはじめた約半世紀前(1960年代後半)には,物理学が看護学にどのように役立つのか手探りの状態で,とりあえずは一般教養的な資質向上のために学ぶという要素が大きかった。大部分の学生は物理学に大の苦手意識を持っていたため,伝統的な物理学をやさしく解説しても,受け入れられることは難しかった。看護学生が興味を示し,実際に看護学に役立つ物理学教育を考えるのには,長い時間を要した。最近の医療現場では,技術革新に伴ってより多くの物理学的要素を必要とする状況に変化してきたこともあり,また看護学の分野でも「根拠のある看護」の追求を前面に据えた教育を進めていることもあって,今では物理学に対する学生の関心も高く,興味を持って積極的な姿勢で看護物理学を学ぶようになってきた。このことは喜ばしい傾向である。
 本書は初版刊行からはすでに四半世紀が経ったが,その間の看護界の進展はめまぐるしく,看護学生の勉学意識も変わってきた。そうした状況に合わせ本書の内容も改訂を重ねてきた。
 第5版では,より興味をもって学んでもらえるように幅広い日常的諸知識を交え,皆さんが学んできたさまざまな学問的手法も利用して,知的遊び心を取り入れて解説してある。従来の古典的物理学の枠を越えて,工学や数学にも触れた。看護学生は概して,とても真面目で,かつ几帳面で,何事も隅から隅まできちんと理解しないと満足しない人が多い。しかし,学問をそれほど堅苦しく考えないほうがよい。世の中にはそんな考え方もある,こんなことも看護学と関連があるなど,参考までに留め置く程度にして物事を幅広く捉えても,視野が広がり,勉学がより面白くなるものである。皆さんが今までにあちらこちらで学んできた事柄は,すべて看護学の学習に役に立つし,これから経験するすべての事柄も,有用なことばかりである。1つ1つの出会いには必ず何か学ぶことがあり,どんな経験でもそれをどう扱うかによって,皆さんの人生はどのようなよい方向にも進めていくことができる。そんなつもりで,皆さんは看護師をめざしながら,身近なところから物理学を大いに役立ててもらいたい。

 看護業務の内容をよく吟味してみると,物理学の要素が多数あり,物理学の観点から考えると明快に理解が深まることが多い。たとえば人体の構造は,物理学の観点から考えるとびっくりするほど感激し,自分自身の存在が偉大に感じられる。看護というものは,試行錯誤しながらも科学的根拠に基づいて自分の頭で考えていくもので,その看護の奥深さに対するさらなる探究心をそそる。皆さんは自分のめざす職業に対して誇りを強めていき,自分の人生の確信にもつながっていくはずである。
 最近は看護学生の構成が多彩になってきた。高等学校からの多くの若い学生たちに混じって,社会人経験者や子育て中のお母さんたち,そして男子学生など,さまざまな看護学生が,それぞれの特徴や能力を出し合って助け合いながら学んでいる。それが大変よい影響を互いに及ぼしており,とても頼もしい思いがする。看護学生ならではの大変なご苦労も当然あろうかと思うが,ぜひ頑張ってもらいたい。世の中には,皆さんの熱心で優秀な看護を期待する人々が大勢待っている。ぜひその期待に応えてほしい。

 第5版の執筆に当たり,看護教員の皆さんや現場ではたらく看護師の皆さんに,いろいろと教えていただき,多くのアドバイスもいただいた。また,講義を聞いてさまざまな反応や感想をくれた看護学生たちからも,多くの有益な教えをいただいた。そして,医学書院の担当者の尽力によって,ここに第5版が完成した。こうした多くの皆さんのご支援に対して,心より感謝します。

 2014年9月
 著 者

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1 重いものを持つにはどうしたらよいか
 A.力のモーメント
  1.力とは
  2.力のモーメントとは
  3.アンプル
  4.ものを支えるとは
  5.力のモーメントの応用
  6.看護動作に見られる力のモーメントの応用
  7.椎骨の突起の役割
  8.足や肘の骨の出っ張り
 B.てこの原理の人体中での応用
 C.筋肉の張力と関節にはたらく力
  1.僧帽筋の張力(第1種のてこ)
  2.腓腹筋の張力(第2種のてこ)
  3.上腕二頭筋の張力(第3種のてこ)
  4.人体メカニズムの力学模型
 D.腰にかかる力
  1.第5腰椎ならびに脊柱起立筋にはたらく力
  2.腰を傷めないために
  3.重いものを持つときの5つの基本
  4.正しい姿勢は美しく見せる
 練習問題

2 看護ボティメカニクスの物理
 A.ベッド上の患者を起こす方法
  1.動作の観察
  2.動作の物理的考察
 B.小さな力でも大きな効果が
  1.仰臥位から側臥位への体位変換の方法
  2.ベッドメイキングでのしわ
 C.看護ボディメカニクスの物理的重点事項
  1.ベッドをフラットに,高さも調節
  2.両足を広げ,安定性を増す
  3.膝を曲げて低い姿勢をとる
  4.持ち上げるより水平にずらす
  5.自分に近づける方向に引っ張る
  6.自分の横方向への作業は非能率
  7.力を節約するための工夫
  8.最も重い部分を広い面積で支える
  9.強い筋肉を優先的に使い,自分の体重も利用する
  10.急激な速さの変化や方向の変化を避ける
 練習問題

3 身近かな圧力
 A.圧力とは何か
  1.力と圧力の違い
  2.片足立ちした人が地面に及ぼす圧力
  3.注射針の先端が皮膚に及ぼす圧力
  4.注射を刺すときの針の刃面の向き
  5.褥瘡を防ぐために
  6.体重を支える長骨の圧力
  7.スケーリングの話
  8.生体における面積と体積の関係
 B.もし気圧が変わったら人間はどうなるか
  1.大気圧の表し方
  2.大気圧の大きさ
  3.水柱圧
  4.高圧力のもとでの人間
  5.低圧力のもとでの人間
  6.耳の圧力変化に対する工夫
 C.入浴とベッドの圧力効果
  1.浴槽内の水圧効果
  2.入浴は血圧のジェットコースター
  3.スプリングベッド
  4.ウォーターベッド
 練習問題

4 呼吸器と吸引の物理
 A.肺はどのようにして呼吸をするのか
  1.呼吸運動のメカニズム
 B.吸引(ドレナージ)
  1.重力式胸腔ドレナージ
  2.電動式胸腔ドレナージ
  3.気管吸引
 C.サイフォン
  1.サイフォンとは
  2.サイフォンの原理
  3.石油ストーブの手動式給油ポンプ
  4.胃洗浄
  5.真空採血管による採血
 練習問題

5 点滴静脈内注射の物理
 A.点滴静脈内注射のセッティング
  1.ソフト・プラスチックバッグの点滴セッティング
  2.ガラス製ボトルの点滴セッティング
  3.プラスチック製ボトルの点滴セッティング
  4.複雑な点滴セット
 B.流量の調節
  1.ローラークレンメの役割
  2.点滴所要時間
  3.輸液ポンプ(自動輸液装置)の輸液速度
 C.バッグの高さ
  1.静脈圧
  2.バッグの高さ
  3.点滴終了後のチューブ内の空気は
 練習問題

6 循環器の物理
 A.ポンプとしての心臓
 B.血液循環と血圧
  1.血流抵抗の大きさ
  2.ドロドロ血とサラサラ血
  3.動脈硬化
  4.高血圧の原因
  5.低血圧
  6.血圧と血流量の変化
  7.毛細血管
 C.血圧が測定できる理由
  1.血圧測定の歴史
  2.水銀血圧計を使った血圧測定の原理
  3.マンシェットの減圧速度は
 D.いろいろなタイプの血圧計
  1.水銀血圧計
  2.アネロイド血圧計
  3.自動血圧計
  4.“水”血圧計による血圧測定
 E.血圧の重力による影響
  1.なぜ血圧は心臓の高さで測定するのか
  2.立ちくらみ
  3.静脈血はなぜ心臓まで戻れるのか
  4.静脈血が滞留してしまうと…
  5.キリンの血圧
 練習問題

7 感覚器の物理
 A.感覚の大きさ
  1.感覚は刺激の変化に敏感
  2.刺激量を加工して感じる
 B.聴覚の大きさ
  1.音の大きさ
  2.音の高さによる聞こえ方の違い
 C.対数目盛を使った感覚範囲の拡大
  1.算術目盛とは
  2.対数目盛とは
  3.生物の感覚器官
 D.対数目盛の感覚で聞いている音程
 E.生理現象も対数関係
 F.感覚は変化に敏感で,時間とともに弱まる
  1.変化を敏感にキャッチ
  2.感受性は時間とともに鈍化
 G.視覚の機能
  1.暗いところでの見え方
  2.暗順応の寄せ集め機能
  3.明るいところでの見え方
 練習問題

8 体温制御の物理
 A.身体各部の温度
 B.身体の熱流モデル
 C.体温調節のための機能
  1.基礎代謝率
  2.筋肉運動による代謝率
  3.呼吸などによる熱伝達率
  4.筋肉のふるえによる代謝率
  5.皮膚からの蒸発による熱伝達率
  6.皮膚からの対流による熱伝達率
  7.皮膚からの放射による熱伝達率
  8.各部分間の熱伝達率
 D.身体の熱収支の計算例
  1.激しい運動時
  2.裸で静かに座っているとき
  3.中程度の運動時
 E.体温調節のための制御機能
  1.フィードバック・システム
  2.体温調節のフィードバック・システム
  3.設定値
  4.ダイエットとリバウンド
 F.体温異常のメカニズム
  1.発熱とうつ熱の違い
  2.発熱と解熱のメカニズムの仮説
  3.発熱の意味は
 G.熱温存のための巧妙な仕組み
  1.対向流
  2.動静脈吻合血管
 練習問題

付録 観察と思考の物理
  1.看護師はきつい!?
  2.まずよく観察する
  3.思考する愉しみ
  4.事実を他人に正しく伝える
  5.理系の表現
  6.寺田寅彦の科学随筆
 寺田寅彦全集より
  線香花火
  夏
  涼味

参考図書
練習問題の解答
さくいん

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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