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重症頭部外傷治療・管理のガイドライン 第3版

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医療の質を一定の水準に保ち診療に資するというガイドラインの基本理念に則った「重症頭部外傷治療・管理のガイドライン」の改訂第3版。今回のガイドライン作成にあたっては、従来の作成委員に加え、第一線で活躍中の医師が新たに執筆者として参画、初版、第2版を踏襲しながら新しい知見を取り入れた。さらにスポーツ頭部外傷、外傷に伴う低髄液圧症候群、外傷に伴う高次脳機能障害の3つを補遺として追加した。
監修 日本脳神経外科学会 / 日本脳神経外傷学会
編集 重症頭部外傷治療・管理のガイドライン作成委員会
発行 2013年03月判型:A5頁:284
ISBN 978-4-260-01685-8
定価 3,300円 (本体3,000円+税)
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第3版のガイドライン改訂の経緯


「重症頭部外傷治療・管理のガイドライン」の改訂(第3版)にあたって
 「重症頭部外傷治療・管理のガイドライン」(以下GL)は2000年に日本神経外傷学会(現:日本脳神経外傷学会)から初版が発刊された.これは治療GLとしては日本での嚆矢であり意義深いと思われる.その後2006年の第2版に次ぎ,第3版が今回作成された.GLの基本理念はすでに初版に述べられているように,医療の質を一定の水準に保ち診療に資することである.それには,日本の医療環境を踏まえた上で,診断・治療・管理の標準化のためのminimum essentialが求められる.また新たなエビデンスに対応して常に改訂する必要もある.今回GL作成にあたっては,従来の作成委員の他に第一線で活躍中の諸先生を新たに執筆者として加え,継続的にガイドラインの刷新を図ることとした.内容に関して初版,第2版を踏襲しながら,新しい知見を取り入れ,新たにスポーツ頭部外傷と社会的に問題の多い外傷に伴う低髄液圧症候群,外傷に伴う高次脳機能障害の3つを補遺として追加した.推奨レベルに関しても分類変更を行った.エビデンスレベルの少ない現状で,従来の6段階の推奨レベルはややそぐわないこともあり,これを集約化し3段階に分類した.しかしこれらの推奨に関しては必ずしも十分な科学的エビデンスに沿ったものではなく,頭部外傷expertsのコンセンサス,ならびに日本脳神経外傷学会のコミティー・コンセンサスとしてとらえて欲しい.

医療訴訟におけるGLの利用について
 最近の傾向として,医療訴訟の場において,医療水準の判断材料として治療GLが広く利用されている.しかし初版や他の多くの治療GLに述べられているように,GLはあくまで医療上の参考に供するものであり,医師の裁量を規制するものではない.ましてGLにそって治療しなかったという理由で訴訟の資料に使用されるべきではないと思われる.特に重症頭部外傷においては,RCTを施行することが難しく高いエビデンスによるGL作成が困難な状態にある.また救急処置が要求される重症頭部外傷では,治療の選択は医師の裁量に委ねられることが多いが,十分な注意義務を果たすことは容易ではなく,患者との信頼関係を築くにも時間的余裕が少ないことも事実である.しかし一方,患者が医療機関で治療を受けた場合には,患者の疾患について最善の注意義務をつくして治療するという診療契約が成立することを我々は周知しなければならない.したがって,医師は適切かつ十分な説明義務を果たすことが必要となる.診療に当たっては,医師の技量,患者側の状況,時間,施設の特殊性,保険適応などを考慮し,その時点における最善の医療を行うことが望ましい.それには,治療ガイドラインを含め,常に最新の情報,エビデンスの把握に努め,高度な裁量を遂行できるような判断能力を高めることが大切と思われる.

今後の課題,展望について
 日本ではエビデンスとなる信頼性の高いclinical dataがまだまだ不足しており,今後prospectiveなstudyも含め,基礎,臨床面での研究が一層活発化することが望まれる.幸い,日本頭部外傷データバンク(JNTDB)委員会から,多くの貴重なデータの蓄積と成果が発表されていることは喜ばしいことで,本GLに反映されるようさらなる発展を期待したい.社会的問題では児童虐待,高齢者頭部外傷,柔道を含めたスポーツ外傷,後遺症としての高次脳機能障害などがある.今回本文,補遺などでこの点についても言及はしているが,これらの予防,治療ではまだ解決すべきことが多くあり今後の課題と言えよう.
 最後に本ガイドラインが広く活用され,患者の転帰,予後によい結果をもたらすことを期待する.

 2013年1月
 ガイドライン作成委員長 小沼武英
 副委員長 有賀 徹,島 克司
 事務局 小川武希


第3版のガイドライン改訂の経緯
■2008年12月26日 重症頭部外傷治療・管理のガイドライン検証会
 於:東京慈恵会医科大 検証委員による検討
■2009年4月16日 ガイドライン作成委員会(第32回日本神経外傷学会会期中) 山口
 検証結果と第3版の改訂時期の検討
■2009年10月14日 ガイドライン作成委員会(第68回日本脳神経外科学会会期中) 東京
 第3版のタイムスケジュール,内容,コンセプト,ガイドライン作成委員改選検討
■2009年11月15日 ガイドライン作成委員会(東京慈恵会医科大)
 第3版のタイムスケジュール,目次,内容の確認
 推奨レベルの検討,執筆者,責任者の割り当て決定
 推奨レベル分類の改訂の検討
■2010年3月4日 ガイドライン作成委員会(第33回日本脳神経外傷学会会期中) 東京
 ガイドライン作成委員の再編,新たな執筆委員選出
 ガイドラインの作成計画,経過の報告
 基本方針:初版,第2版を踏襲し,内容の充実化を図る
 第3版の目次,執筆者,責任者決定
 推奨レベル分類の改訂の検討:従来の6段階から3段階に集約

    従来の推奨 6段階表示(初版,第2版)
        1.~が望ましい
        2.~が多い
        3.~の傾向がある
        4.~することもある
        5.~は望ましくない
        6.~は禁忌と考えてよい

    新たな推奨 3段階表示(第3版)
        1. 行うよう勧められる    (旧1,2)
        2. 行うことを考慮してもよい (旧3,4)
        3. 行うことは勧められない  (旧5,6)

■2010年10月27日 ガイドライン作成委員会(第69回日本脳神経外科学会会期中)
 ガイドライン第3版のタイムテーブルの確認
■2011年6月20日,9月26日 ガイドライン素案検討会(東京慈恵会医科大)
■2011年10月13日 ガイドライン作成委員会(第70回日本脳神経外科学会会期中) 横浜
 全素案に対して,内容検討し進捗状態を報告
 第2版の英文化の進捗状態の報告
■2012年
 Neuro Med Chir(Tokyo)52に第2版の英文版が掲載

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 序
 第2版の序
 初版の序
 第3版のガイドライン改訂の経緯
 第2版のガイドライン改訂の経緯
 初版のガイドライン作成の経緯

1 救急医療体制と脳神経外科(医)
 1-1 病院到着までの救護(prehospital care,病院前救護)
 1-2 専門施設への搬送基準,搬送方法,情報伝達システム
    全ての外傷患者に対して
    頭部外傷・意識障害を有する患者に対して
 1-3 専門施設でのチーム医療における脳神経外科医の役割など
    二次救急施設
    三次救急施設

2 初期治療
 2-1 外傷初期診療
 2-2 気道の確保と呼吸管理
 2-3 循環管理
 2-4 切迫脳ヘルニアの認識と対処

3 画像診断
    総論
    各論(検査時期による各検査法の適応)

4 ICU管理
 4-1 モニタリング
 4-2 頭蓋内圧(ICP)測定の適応と方法
 4-3 頭蓋内圧(ICP)と脳灌流圧(CPP)の治療閾値
    ICPの治療閾値
    CPPの治療閾値
 4-4 外科的処置(外減圧,内減圧,髄液ドレナージ)
    外減圧
    内減圧
    髄液ドレナージ
 4-5 鎮静,鎮痛,不動化
    鎮静
    鎮痛
    不動化(筋弛緩薬)
 4-6 頭位挙上
 4-7 過換気療法
 4-8 マンニトール,グリセオール®,高張食塩水
 4-9 バルビツレート療法
 4-10 ステロイド
 4-11 低体温療法
 4-12 頭蓋内圧亢進の治療手順
 4-13 抗てんかん薬
 4-14 栄養管理
 4-15 抗菌薬の使用方法

5 手術適応と手術方法
 5-1 閉鎖性頭蓋骨陥没骨折
 5-2 開放性頭蓋骨陥没骨折
 5-3 穿通外傷
 5-4 急性硬膜外血腫
 5-5 急性硬膜下血腫
 5-6 脳内血腫,脳挫傷
 5-7 びまん性脳損傷
  5-7-1 びまん性軸索損傷
  5-7-2 びまん性脳腫脹
 5-8 外傷性頭頸部血管障害
    診断のための検査
    治療
    外傷性血管断裂
    外傷性動脈閉塞
    外傷性静脈洞閉塞(血栓症)
    外傷性脳動脈瘤
    外傷性動静脈瘻
    外傷性くも膜下出血と脳血管攣縮
 5-9 外傷性髄液漏
 5-10 視神経管骨折・視神経損傷
 5-11 麻酔

6 頭蓋顔面損傷への対応
 6-1 眼窩底破裂(吹き抜け)骨折(blow-out fracture)
 6-2 顎顔面損傷

7 小児・高齢者重症頭部外傷
 7-1 小児重症頭部外傷
    病院前救護
    専門施設への搬送基準
    来院時の診察上の注意点
    来院後の初期治療
    ICUでの管理
    頭蓋内圧(ICP)の治療閾値
    脳灌流圧(CPP)の治療閾値
    鎮静薬,鎮痛薬,筋弛緩薬の治療的使用に関して
    脳室ドレナージによる頭蓋内圧(ICP)管理
    高張剤による治療
    過換気療法
    バルビツレート療法
    体温管理療法
    減圧開頭法
    ステロイド
    栄養管理
    抗てんかん薬
    頭位挙上について
    虐待による頭部外傷(Abusive Head Trauma:AHT)
 7-2 高齢者重症頭部外傷
    高齢者重症頭部外傷の定義
    高齢者重症頭部外傷の特徴
    高齢者重症頭部外傷の治療・管理
    手術適応と手術方法
    Talk and deteriorate
    急性硬膜下血腫
    減圧開頭術

8 軽症・中等症頭部外傷への対処
 8-1 基本的な治療指針
    軽症・中等症頭部外傷の診断
    脳振盪後症候群
    画像診断
    治療指針
    仕事(または学校)復帰の推奨基準
 8-2 軽症・中等症頭部外傷への対処-重症化の危険因子
    重症化の予測因子
    重症化の危険因子

9 補遺
 9-1 スポーツ頭部外傷
  9-1-1 スポーツ頭部外傷への対応
    現場での対応
    脳振盪の診断・対応
  9-1-2 スポーツに関連した「繰り返される脳振盪」について
  9-1-3 コーチ,選手などへの指導のポイントについて
 9-2 外傷に伴う高次脳機能障害
 9-3 外傷に伴う低髄液圧症候群
    作業部会によるコンセンサス
    欧米文献の検証
    日本脳神経外傷学会「外傷に伴う低髄液圧症候群」の診断基準

 参考文献
 索引

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