CRCテキストブック 第3版

もっと見る

CRC(Clinical Research Coordinator)に必要な知識を網羅したテキストの改訂第3版。CRCの教育・養成、また日本臨床薬理学会認定CRC試験の受験に必須となる知識のほか、本書全体にわたりCRCの現場の意見・意向を存分に取り入れた内容構成とした。CRCを目指す人はもちろんのこと、現役のCRCや臨床試験・治験に関わるすべての医療従事者にとっての必携書。
編集 日本臨床薬理学会
責任編集 中野 重行 / 小林 真一 / 景山 茂 / 楠岡 英雄
発行 2013年09月判型:B5頁:376
ISBN 978-4-260-01796-1
定価 4,840円 (本体4,400円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次
  • 書評

開く

第3版 序

 本書の初版は,日本臨床薬理学会の認定CRC試験が2004年から開始されるのに合わせて,2002年10月に出版されました。その後,改訂を重ね,今回第3版を出版することになりました。この10年あまりの間に,学会認定CRC試験の合格者数も年々増えて,その総数が間もなく2,000人を超えようとしています。また,2001年以降CRCの共通の話し合いの場として,毎年「CRCと臨床試験のあり方を考える会議」が開催されています。この会議への参加者も年々増え続け,今や3,000人を超える熱気に溢れた集まりに育っています。
 今回の改訂にあたっては,記載内容の重複を整理し,時代にマッチした新しい項目を加えて,全体の枠組みの見直しを行いました。また,わが国に新しく誕生し,この10年あまりの間に立派に育ってきた実務経験の豊富な8名の認定CRCの方々に,CRCの視点から改訂への協力をお願いして,内容を充実させました。2014年からの認定CRC試験の主として知識レベルの問題は,この第3版をもとにして出題されることになっています。
 わが国における医薬品と医療機器の治験を含む臨床試験は,今やCRCがいないとできないと言われるまでになりました。Clinical Research Coordinator(CRC)の本来の言葉の意味のとおり,治験だけでなく,臨床研究の支援へ活動の輪が広がりつつあります。
 CRCには,知識レベルだけでなく,技能と態度レベルでの研鑽も必要になります。臨床研究におけるCRCの役割は,サイエンスとして信頼できるデータを得るとともに,GCPや倫理指針のような決まりごとを遵守するという点で,「厳密さを求める態度」が必要になります。同時に,被験者となる患者や他のメンバーとのよきコミュニケーションが重要であるという点で,「柔軟さを求める態度」も必須となってきます。厳密さ(strict)と柔軟さ(flexible)の両方を共存できる能力,換言すると,この2つの態度の間をやわらかく行き来できる能力が,CRCには求められています。
 本書がCRCの方々にとって,知識・技能・態度を磨く際の基盤となるだけでなく,医薬品の臨床研究(創薬と育薬)や,医療機器の臨床研究の領域で働く他の多くの方々にとっても役立つものとなることを,編集者・執筆者ともども心から願っております。
 また本書は,医学書院の北條立人氏の細かな配慮と努力なくしては完成しませんでした。ここに編集者と執筆者一同を代表して謝意を表します。

 2013年8月
 責任編集者を代表して 中野 重行

開く

A 総論
 1 臨床研究コーディネーター(CRC)の概念と定義
 2 医療コミュニケーション
 3 臨床試験の歴史
 4 臨床試験と倫理性
 5 医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)

B 医薬品の開発と臨床試験
 1 非臨床試験
 2 非臨床試験から臨床試験への移行
 3 治験薬概要書の読みかた
 4 臨床試験実施計画書の読みかた
 5 臨床試験と医師主導治験
 6 国際共同試験
 7 臨床試験の考えかたと分類
 8 新医薬品の承認審査制度
 9 医薬品情報
 10 医療機器
 11 トランスレーショナルリサーチ(TR)

C 臨床試験・治験の基盤整備と実施
 1 臨床試験・治験に関与する者および体制
 2 治験の実施プロセス
 3 治験事務局
 4 治験審査委員会(IRB)
 5 モニタリング・監査(治験依頼者の立場として)
 6 賠償と補償
 7 医療保険制度と保険外併用療養費
 8 信頼性の確保と調査
 9 CRO(開発業務受託機関)
 10 SMO(治験施設支援機関)

D CRCの役割と業務
 1 臨床試験の実施準備
 2 被験者のリクルート・スクリーニング
 3 インフォームドコンセント
 4 被験者対応
 5 スケジュール管理
 6 各種検査への対応
 7 有害事象等発生時の対応
 8 症例報告書(CRF)の作成支援
 9 モニタリングと監査の対応
 10 実地調査への対応
 11 医師との連携
 12 関連部署とのコーディネーション
 13 啓発・教育活動

E 薬物治療・臨床試験に必要な薬理作用と薬物動態のポイント
 1 薬理作用
 2 薬物動態
 3 薬理作用・薬物動態の個人差
 4 薬物相互作用
 5 薬物有害反応
 6 合理的薬物治療
 7 服薬アドヒアランス(コンプライアンス)

F 小児・高齢者および病態時の臨床試験の留意点
 1 腎障害
 2 肝障害
 3 心不全
 4 新生児・小児
 5 高齢者
 6 悪性腫瘍
 7 精神・神経疾患

付録
 1 CRCに必要な英語の知識
 2 日本臨床薬理学会認定CRC試験について
 3 認定CRC試験の例題と評価のポイント

略語一覧
索引

開く

悩めるCRCへの「道標」となる教科書
書評者: 森下 典子 (国立病院機構大阪医療センター臨床研究センター臨床研究推進部臨床研究推進室長)
 もしあなたの周りで,ある日突然上司から「明日から臨床研究コーディネーター(Clinical Research Coordinator ; CRC)になって」と言われて悩んでいる人がいたら,あなたはどうしてあげますか? また,CRCになったものの,仕事の進め方に悩んでいる人がいたら,どのようにアドバイスをしてあげますか? あるいは,病棟に勤務する看護師の中には,担当する患者さんが治験や臨床研究に参加している場合もあるかもしれません。そんなとき,私は迷わず本書を差し出します。

 今,治験や臨床研究を活性化するための取り組みが国レベルから個々の医療機関のレベルまで盛んに行われています。そのため,医療人としての臨床研究や治験に関する知識と,研究にご協力くださる患者さんのケアのポイントは最低限押さえておきたいものです。そんなとき,とても頼りになるのが本書です。研究者や臨床研究をサポートするCRCに限らず,医療機関で働く人なら誰でも一度は手に取っていただきたい必見の書とここに推薦いたします。

 本書は初版が出版されて以来,日本臨床薬理学会が実施する認定CRC試験を受験するための対策本として活用されてきました。現在CRCとして活躍している人の多くが一度は目を通したことがあると言っても過言ではない,まさにCRCの「教科書」であり「道標」となっています。そして初級者だけではなく,経験を積んだCRCにとっても,日常業務で悩んだり困ったりすることがあったときに,解決に導くためのヒントが随所に記載されています。そんな“痒いところに手が届く”本書の魅力は,多彩な執筆陣のうちその多くを現役で活躍しているCRCが占めていることにもあるでしょう。

 昨今,臨床研究の環境は目まぐるしく変化しています。その変化に対応するために本書は5-6年ごとに改訂され,初版から11年目を迎えた今回,第3版となりました。第2版と比べてみると,従来からの質を維持しつつも「医療機器」「トランスレーショナルリサーチ」などの項目が新たに加わり,CRC業務も「検査の基準値と精度管理」「EDCシステム利用時の支援」などが追加されています。本書の項目を追っていくだけでも,この5年間でCRCに求められる役割が,従来の医薬品を用いた治験の支援から,早期・探索的臨床試験,ICH-GCPに準拠した大規模臨床試験へと拡大していることが見て取れます。ですが,どれだけ臨床研究環境が変化しようとも,臨床試験の科学性・倫理性・信頼性を担保し,被験者の人権を守るという点について,CRCの役割が何ら変わることはありません。

 本書を読んで育った多くのCRCの仲間たちが,今日もどこかで本書を片手に奔走している姿を思い浮かべて,私も頑張ろうという気持ちが湧いてきます。

 これまで日本のCRCの養成と育成にご尽力くださり,影となり日なたとなり見守り続けてくださった責任編集者の中野重行先生,小林真一先生,景山茂先生,楠岡英雄先生には心から感謝を申し上げます。そしてこれからCRCをめざす人,CRCとしてエキスパートの道を極めたいと考えている人,臨床研究に携わるすべての方々の傍らにおいてほしい,まさにお薦めの一冊です。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。