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もしも心電図が小学校の必修科目だったら


著:香坂 俊

  • 判型 A5
  • 頁 192
  • 発行 2013年03月
  • 定価 3,520円 (本体3,200円+税10%)
  • ISBN978-4-260-01711-4
現場視点の実践的な「心電図読影法」をお伝えします!
『週刊医学界新聞』の好評連載「循環器で必要なことはすべて心電図で学んだ」(2010年5月~12年4月/全24回)に加筆して、待望の書籍化。STが上がっていたら? QRSが割れていたら? 循環器診療で心電図を武器にする、気鋭の循環器内科医・香坂 俊の“思考回路”を惜しみなく披露します。臨床の荒波を乗り切るための現代心電図読影メソッドがこの1冊に!
序 文
まえがき(香坂 俊)/推薦のことば(Shunichi Homma)

まえがき

 心電図は苦手です。

 仮にも循環器内科が専門とはいえ,そんな人間が心電図のテキストを書いてしまっていいのでしょうか? とてもではないですが,不可思議な電気生理の...
まえがき(香坂 俊)/推薦のことば(Shunichi Homma)

まえがき

 心電図は苦手です。

 仮にも循環器内科が専門とはいえ,そんな人間が心電図のテキストを書いてしまっていいのでしょうか? とてもではないですが,不可思議な電気生理のメカニズムから六法全書のような各種の心電図所見の定義まで,すべてを網羅するような体系的な教科書は書けそうにありませんでした。

 ですが,心電図が苦手なりに,そのエッセンスを使った臨床の現場の荒波の乗り切り方のノウハウは書くことができそうでした。このコンセプトの執筆にあたっては,米国で研修をしていた時分に否応なしに仕込まれた実践重視の思考回路が拠り所となりました。これは要するに理屈はさておき役に立てば何でもよいというドラスティックな考え方に殉ずるということです。情緒も何もありませんが,まず当直中の救急外来や病棟のベッドサイドで役に立つのはこうした知識ではないでしょうか。

 そうした筆者側の事情で,本書は電気生理の基本に立ち返ったり,心電図所見の数値パラメーターを丸暗記するのではなく,紙面を贅沢に使って臨場感たっぷりに心電図の読みから循環器内科医の思考回路を追っていこうと試みるものです。なお,本書の基となった『週刊医学界新聞』での連載時のタイトルは「循環器で必要なことはすべて心電図で学んだ」でしたが,決して「心電図のすべてを学ぶ」ではなかったことにご注意ください。

 本書では,心電図が苦手な方でもとっつきやすいよう,タイトル『もしも心電図が小学校の必修科目だったら』に則り,昔懐かしい小学校の「科目別」に心電図の各領域を並び替えた構成としました。いささかワルノリが過ぎると感じられる方もいらっしゃろうかと思いますが,これも難解との覚えめでたき心電図に少しでも親しんでいただくための苦肉の策ととらえていただければ幸いです。

 では,早速心電図を通して,広い循環器内科の世界を眺めていきましょう。

 2013年3月
 香坂 俊


推薦のことば

 I am delighted to see that Dr. Kohsaka’s excellent book on ECG interpretation is being published. For students and residents, knowledge of ECG is fundamental to good patient care. It is the most commonly used cardiac test aside from taking history and physical examination.

 Dr. Kohsaka is uniquely qualifi ed to publish this important book. He has a very unique background in that after graduating medical school at Keio University in Tokyo, he has been extensively trained in the US, with more than 10 years of direct patient care experience in internal medicine and cardiology at well-known institutions such as Texas Heart Institute and Columbia University. He has held faculty positions in the US and has engaged extensively in cardiology teaching.

 In particular, Dr. Kohsaka has taught and published widely on risk assessment from findings on ECG tracings. He also is known for many teaching initiatives he has set up. As such, this book combines Dr. Kohsaka’s ability to teach, his deep knowledge of ECG, and very importantly, his insight into clinical medicine. Dr. Kohsaka explains ECG interpretation in a way that is clinically very relevant and easy to understand through the use of various cases. Use of friendly illustrations enhance teaching and makes reading less intimidating. I can see each chapter being read almost as a story from which to learn. It is also a very innovative idea to tie the chapters to how a student may go through his or her school day. I have seen the book in Japanese, but certainly hope that it will be published in other languages to enhance teaching throughout the world.

 Shunichi Homma, MD FACC
 Margaret Milliken Hatch Professor of Medicine
 Associate Chief, Cardiology Division
 Director, Noninvasive Cardiac Imaging
 Columbia University Medical Center


 香坂君の素晴らしい心電図のテキストがこのたび上梓された。言うまでもなく,心電図の知識は患者さんのケアに必須であり,問診と身体所見の取得に次いで頻繁に用いられる循環器の検査方法である。

 香坂君は,本書を出版するにふさわしいユニークな経歴を持つ。彼は慶應義塾大学を卒業後,テキサス心臓研究所やコロンビア大学といった米国でも高名な施設で10年以上も経験を積んできた。最終的に彼はコロンビア大学のスタッフとしても活躍し,循環器内科の教育にも多大な尽力を行った。

 特に心電図所見のリスク評価については造詣が深く,多数の論文も執筆している。また,医学教育にも独自の方法を導入している。この本は香坂君の教育の実践と心電図の知識,そして臨床に対する考え方を集約したものとなっている。本書では心電図の読み方を現場視点で,さまざまな例を通じて平易に解説している。さらに,なじみやすいイラストが理解を助けてくれている。そして,それぞれの章はエッセーのように読めるようにもなっている。また各章を小学校の授業とつなげていることも非常に新しい試みである。私はこの本の日本語版を拝見したが,他の言語でも出版され,世界の教育の場で使われるとよいのではないかとも期待している次第である。

 Shunichi Homma
 マーガレット・ミリケン・ハッチ記念教授
 循環器内科副主任
 非侵襲的画像検査部門Director
 コロンビア大学メディカルセンター
書 評
  • 心電図が苦手な人にこそ薦めたい1冊
    書評者:青木 眞(感染症コンサルタント)

    ◆求められるパラダイムシフト

     帰国以来20年,評者の営みは熱やCRPを治療する感染症診療から患者を治療するそれに変えようとするものであった。その循環器版を遥かに高いレベルで行われるのが香坂先生である。元来,機械が好き,手技が好きな日本人と循環器科の相性は極めて良い。しかし,そこがまた落とし穴...
    心電図が苦手な人にこそ薦めたい1冊
    書評者:青木 眞(感染症コンサルタント)

    ◆求められるパラダイムシフト

     帰国以来20年,評者の営みは熱やCRPを治療する感染症診療から患者を治療するそれに変えようとするものであった。その循環器版を遥かに高いレベルで行われるのが香坂先生である。元来,機械が好き,手技が好きな日本人と循環器科の相性は極めて良い。しかし,そこがまた落とし穴になる。冠動脈が狭くなっていればそれを広げ,不整脈があればそれを止めて良しとするのではなく,患者を治療し予後を改善しなければならない。何のためらいもなく毎年,検診と称して行われる心電図が,どれほど人々の健康に寄与しているのか,逆に被害を与えているのか……。広い意味でのパラダイムシフトが求められる今日の日本の医療である。本書は単なる心電図の教科書ではなく,循環器の世界観を垣間見せながらわれわれが追求すべきアウトカムを意識した医療を再考させるものである。

    ◆今日から使える内容

     本書では心電図が日常のどの場面で使えるか,逆に使ってはいけないかが極めて明確に記述されており,循環器音痴+心電図アレルギーの評者でも「これは使える……」といったものが目白押しだった。例を挙げると,

    〈診断に関して〉
    (1)心房と心不全:心不全では心室の収縮が障害される前に拡張が障害されており,それが心房の負荷・拡大となって表現される。心房の大きさや心電図上の変化は心不全を考える良い材料である。
    (2)ST上昇を認める病態は複数あるが,鏡面像の変化を伴えば心筋梗塞によるそれの可能性が高い。
    (3)心電計のコンピュータは横方向の異常(例:房室ブロック,脚ブロック)に強く,縦方向のそれ(例:ST上昇)に弱い。一般的に「正常」の診断は信用できることが多いが,「異常」は信用できない。
    (4)心外膜炎,気胸,くも膜下出血に特異的な心電図変化はあるが,臨床現場では身体所見,胸部X線,頭部CTで診断すべきもの。

    〈治療に関して〉
    (1)房室結節リエントリー頻拍といったマクロエントリー回路にはアブレーションによる治癒率は95%を越える。
    (2)低リスクの安定狭心症には至適薬物療法のみで十分。PCIは不要な場合が多い(COURAGE試験)。
    (3)一定以上に割れた左脚ブロックのQRSには両室ペーシングが有用。
    (4)カテーテルによる治療(PCI)にするかバイパス手術(CABG)にするかは内科・外科領域双方の専門家による議論で決定し,その際にはSYNTAXスコアなどを参考にする。

    ◆心電図が苦手な人にこそ薦めたい

     評者は素人的に循環器の領域を弁,冠動脈,心筋・膜,リズムなどに分けている。このうちリズム以外の領域は超音波その他の画像検査などにより,その対象を視覚化できるのに対し,リズムだけは心電図という抽象化された情報を扱うことになり背景にある電気生理を含めて苦手とする医師は少なくないと思う。しかし自身にとって処女作となる心電図の論文をStrokeという超一流誌に載せることからキャリアを始めた筆者は,心電図の背景にある複雑な電気生理を十分理解しつつ「現場で使える」部分のみを切り取りわれわれに提示してくれた。その点で本書は数式を用いない統計学の本に似て親しみやすく,同時にノーベル賞クラスの理論物理学者が小学生に算数を教えるような広さ,高さ・奥行きを示している。

     評者のように心電図を学ばんとしては敗退を繰り返してきた方にも,循環器を専門とする方にも強くお薦めします。
  • 臨床情報を加味した心電図の解釈にお薦めの一冊
    書評者:金城 紀与史(沖縄県立中部病院総合内科)

     タイトルが人の目を引く。章立ても1時間目「国語」から7時間目「数学」まで学校の時間割になっている。P波は心拍の音頭取りであるというイメージから「音楽」の時間として取り上げられている。心電図の所見と,おのおのの学科がどう関連しているのかを読み解くのも楽しい。

     本書の書き出しは「心電図は苦手で...
    臨床情報を加味した心電図の解釈にお薦めの一冊
    書評者:金城 紀与史(沖縄県立中部病院総合内科)

     タイトルが人の目を引く。章立ても1時間目「国語」から7時間目「数学」まで学校の時間割になっている。P波は心拍の音頭取りであるというイメージから「音楽」の時間として取り上げられている。心電図の所見と,おのおのの学科がどう関連しているのかを読み解くのも楽しい。

     本書の書き出しは「心電図は苦手です」である。初学者にとって心電図はとっつきにくく,難解である。食わず嫌いにならないようさまざまな比喩やイメージを引用する。読者を引き付けるためのいろいろな工夫があるが,内容は極めて真面目である。小学校の必修科目のように,どの科の医師でも習得するべき心電図のエッセンスは何か,というコンセプトで本書は構成されている。例えば心電図の所見だけで診断しようとせず,常に病歴・身体所見をもとに心電図を使うことを強調している。まれな所見を読影できるようになることよりも,絶対に見逃してはいけない事項が取り上げられている。要所にエビデンスが引用されており,非循環器内科医の評者も勉強になった。ともすれば心電図の読影は職人芸のような印象があるが,本書は心電図の臨床的意義,そして限界を教えてくれる。心電図を盲目的に学習して苦手になってしまうことのないよう,重要ポイントを理詰めで解説してくれるのでありがたい。

     日米両国で循環器臨床に携わってきた著者ならではの経験談が挿入されている。例えば健康診断で全員に心電図をとる日本と,低リスク患者では心電図を推奨しない米国。冠攣縮性狭心症がほとんどない米国と,よくある日本など。循環器疾患に関するエビデンスが次々に欧米から発信されるなかで,日本で臨床をする読者にバランス感覚をもってエビデンスを解釈するように教えてくれる。

     この本一冊で心電図が読めるようになるわけではない。まったくの初学者にとってはもう少し基本的な教科書で心電図の基礎を押さえたほうがよいと思う。本書はある程度心電図が読める段階になり,患者の臨床情報を加味して心電図を解釈するのが難しいと感じている医学生高学年や研修医,医師にお薦めである。
  • 「文系」の香りで心電図を身近に感じさせる好著
    書評者:山下 武志(心臓血管研究所所長・付属病院長)

     『もしも心電図が小学校の必修科目だったら』という一風変わった書名を見て思い出したのは,そう……,ベストセラーとなった「もしドラ」(『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』,ダイヤモンド社)だ。考えてみれば,本の着想もよく似ている。「もしドラ」は,ドラッカーの『マネ...
    「文系」の香りで心電図を身近に感じさせる好著
    書評者:山下 武志(心臓血管研究所所長・付属病院長)

     『もしも心電図が小学校の必修科目だったら』という一風変わった書名を見て思い出したのは,そう……,ベストセラーとなった「もしドラ」(『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』,ダイヤモンド社)だ。考えてみれば,本の着想もよく似ている。「もしドラ」は,ドラッカーの『マネジメント』という若干とっつきにくい本(病院長には必読の書である)をわかりやすいストーリー展開で身近に感じさせようとしたものだ。この本も,心電図という基本でありながら,ややもすればとっつきにくいと思われる検査を,小学校という舞台を使って身近に感じさせようとしている。

     著者の香坂俊先生は,新進気鋭の,そして米国帰りの循環器内科医であり,また同時に優れた臨床研究家だ。米国と日本という文化の違う環境で行われる循環器医療を両方熟知しているという強みがある。評者は,心房細動を対象にして日本でJ-RHYTHM試験という無作為化比較試験を行ったが,この研究でデータの解析や発表に加わってもらい,その力を存分に発揮してもらった。

     「まえがき」の最初の文章には,「心電図は苦手です」と書かれているが,彼の最初の論文がなんとP波についてなのである。苦手なものを対象にして一流誌に論文を載せられるわけがない。彼は,謙虚なハードワーカーに違いない。そして,実際に本書を読めば,彼の心電図,また心臓電気生理学に関する幅広い知識に基づいていることがわかるだろう。

     本書を読み始めると,いわゆる心電図の教科書とは異なることにすぐ気が付く。心電図を用いながら,循環器病学あるいはその基礎を語ろうという本に思える。私見だが,これまでの心電図に関する教科書はどちらかというと「理系」だった。電気現象なのでそうなりやすいのだ。原理・原則・定理みたいなものを覚えて出発する数学や物理の世界である。しかし,この本はなぜか「文系」を感じるのである。実際,1時間目:国語,2時間目:体育,3時間目:音楽,4時間目:社会,5時間目:英語と文系科目が続き,理科と数学は最後に少し顔を出す程度である。評者はいわゆる心電図や心臓電気生理学を専門としてきたので内容はよく知っているものの,同じ内容であってもなぜかこれまでとは違った香りと新鮮味を感じた。そう,聞きなれた音楽を異国の地で聞くような感覚である。

     読み始めると一気に読み進められる好著である。心電図の基本だけを知ってこれから深く学びたい人,内科研修医,循環器専門医を目指す人,また循環器専門医でもう一度心電図を学びたい人に勧めたい。ただ……この小学校,短いBreak Timeは2回あるものの,昼休みがなく,なんと7時間授業の学校だ。これも,香坂先生の熱意とハードワーカーぶりを示したものなのだろう。
目 次
1時間目 国語
 1 声に出して読みたい心電図
 Column
  巨大陰性T波,もう1つの疾患

2時間目 体育
 2 病態生理に全く触れないST低下の話
 3 腕立て伏せ1分間に100回 目の前で心停止が起こったら
 Column
  運動後の心臓はいつまで「負荷」を受けているか

3時間目 音楽
 4 Good Rhythm? P波を追ってみよう(その1)
 5 Good Rhythm? P波を追ってみよう(その2)
   心房ブロック(と論文の査読制度についてのあれこれ)
 6 ~間奏~ SVTと演奏記号について
 7 心臓最大の不協和音 心房細動(その1)
 8 心臓最大の不協和音 心房細動(その2) 心房細動治療のジレンマ
 9 心臓最大の不協和音 心房細動(その3) 不整脈治療の本質とは?
 Column
  なぜ心電図はPから始まるのか?
  高血圧性心不全とHFpEFについて
  カバナとマントラ

Break Time 1
 10 不整脈の起源とは?

4時間目 社会
 11 割れてしまったQRS(その1) 左室と右室のコミュニケーション
 12 割れてしまったQRS(その2) 異常Q波と断片化されたQRS
 13 割れてしまったQRS(その3) 脚ブロックが「病気」に昇格できないわけ
 Column
  Choosing Wiselyキャンペーン

5時間目 英語
 14 スパズムはこの世に存在しない? 虚血性心疾患をめぐる日米のアプローチの違い
 15 安定狭心症はどれだけ「安定」しているか?(その1)
 16 安定狭心症はどれだけ「安定」しているか?(その2)
 Column
  虚血の記憶(Ischemic Memory)

Break Time 2
 17 災害時に役立つ心電図の知識

6時間目 理科
 18 ST上昇-ありとあらゆる側面から(その1)
 19 ST上昇-ありとあらゆる側面から(その2) STEMIとDoor-to-Baloon Time
 20 ST上昇-ありとあらゆる側面から(その3) 本当は怖い? 右脚ブロック
 21 ST上昇-ありとあらゆる側面から(その4) ST上昇の“深読み”
 22 ST上昇-ありとあらゆる側面から(その5) もしすべての誘導でSTが上がっていたら
 Column
  心筋梗塞の分類 あれこれ

7時間目 数学
 23 QT延長で学ぶ微分積分(その1)
 24 QT延長で学ぶ微分積分(その2)
 25 コンピューターが人間に勝つとき~心電図版~
 Column
  QT延長による薬効評価
  U波の神秘

あとがき
巻末 心電図用語解説
索引