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演習を通して伝えたい

看護援助の基礎のキソ


著:川口 孝泰/佐藤 政枝/小西 美和子

  • 判型 B5
  • 頁 160
  • 発行 2013年04月
  • 定価 3,024円 (本体2,800円+税8%)
  • ISBN978-4-260-01774-9
日常生活と看護の基本的機能を結びつけ、看護技術を「基礎のキソ」から身につけよう!
当たり前のように行われる日常生活。が、看護対象者にはそこに援助が必要となります。本書は、看護学生が日常生活援助技術の重要性を認識し、基本的で科学的なエビデンスに裏付けられた看護技術を、「基礎のキソ」から身につけてほしい、という願いからまとめられました。演習の進め方や学生のレポートの実際を通して、目前の課題を分析し解決していくために必要な基礎づくりに、看護教員がいかにかかわれるかを示した参考書です。
序 文
まえがき

 本書は,2009(平成21)年4月から「看護教育」(医学書院)に2年間にわたって連載したものを加筆・修正し,看護基礎教育の教科書として使用できるように編纂したもので...
まえがき

 本書は,2009(平成21)年4月から「看護教育」(医学書院)に2年間にわたって連載したものを加筆・修正し,看護基礎教育の教科書として使用できるように編纂したものです.著者らの出発点は,昨今の看護を志望する学生の日常生活経験と知識の少なさに驚いたことから始まります.今日,学生たちを取り巻く環境は,便利な生活機器の進歩や社会システムの近代化により,基本的な生活行為の重要性を学び・体験できる場が少なくなっています.
 今後,地域医療における看護ニーズはますます複雑多様化し,それらに対処できる専門的な知識や技術が求められています.このような現状のなかで,看護教育の急速な大学化が進み,次代に必要な専門的な看護援助技術を身につけた看護師育成のための教育課程の再検討がなされています.これらの詳細については,第1章の冒頭で紹介しているとおりです.

 本書は,これから看護専門職を目指す若者たちが,毎日当たり前のように行っている日常生活の重要性を認識し,基本的で科学的なエビデンスに裏づけられた看護技術を,「基礎のキソ」から身につけてほしい……という願いからまとめました.

 本書の内容は,看護援助技術の教育を受けるための準備教育の部分に主眼をあてています.本書が,次代の看護界を担う学生たちにとって,看護学という学問的背景に立脚した最新の知識と,目前の課題を科学的に分析し,解決していくために必要な基礎づくりに,大きな役割を果たすことができる学習書となることを著者らは確信します.

 2013年3月1日
 川口孝泰
書 評
  • 基礎看護学の授業展開や演習の工夫が視覚的に理解しやすい良書
    書評者:川島 みどり(日本赤十字看護大学名誉教授/健和会臨床看護学研究所長)

     「看護を志望する昨今の看護学生の日常生活経験と知識の少なさに驚いた」。著者らの本書執筆動機は,看護教育に携わる教員らの共通の思いに違いない。背景には,長年にわたって培われてきた“当たり前”の感覚や慣習が忘れ去られつつある現代社会の変貌がある。著者らは,それを当然の流れとはしなかった。看護の初心者の...
    基礎看護学の授業展開や演習の工夫が視覚的に理解しやすい良書
    書評者:川島 みどり(日本赤十字看護大学名誉教授/健和会臨床看護学研究所長)

     「看護を志望する昨今の看護学生の日常生活経験と知識の少なさに驚いた」。著者らの本書執筆動機は,看護教育に携わる教員らの共通の思いに違いない。背景には,長年にわたって培われてきた“当たり前”の感覚や慣習が忘れ去られつつある現代社会の変貌がある。著者らは,それを当然の流れとはしなかった。看護の初心者の学生たちに看護の役割を伝える上で,まずは準備教育としての看護技術の“基礎のキソ”にフォーカスを当てることが重要であるとした。そして,2002年の「看護学教育の在り方に関する検討会」の報告書を土台に,看護技術を支える重要な柱を(1)技術提供の前提 (2)技術の考え方と展開方法 (3)エビデンスに基づく手順という3要素とした。そして,「看護の基本的機能」を縦糸に「日常生活援助のための看護技術」を横糸にした知の枠組みのタペストリーを提示したのである。

     例えば,排便に焦点を当てた排泄の項では,援助を受ける立場からの気がかりなことを,学生のレポートを基に再構成するなど,日常の基礎看護学の授業展開や演習を踏まえた工夫が随所に見られる。豊富なイラストにより,視覚的に理解を深める工夫もされていて,親しみのもてる著書である。

     しかし,全体を通読して気付いたのは,看護に対してまっさらな初心者にとっての「基礎のキソ」が,これまでの基礎看護学の範疇とほとんど重なっていることでよしとすべきか,ということであった。とりわけ演習を通して伝える基礎のキソであるなら,何よりも他人を援助することの意味と価値を知り,その醍醐味を体験できるような導入をめざすべきではなかったか。違和感となったのは,「看護基礎教育の教科書として」と位置付けながら,内容は教師に向かって書かれたものであることから来ていた。だとすれば,生活感覚の薄れた新入生への基礎技術以前の基礎とは何かを,看護教育界全体の課題として論議すべきであると思う。その際,本書は種々の有用な問題を提起するであろう。
  • 演習を通して自己学習能力を伸ばすのに有益な良書 (雑誌『看護教育』より)
    書評者:早川 和生(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻教授)

    ◆ユニークで有益な経歴の著者による解説が効果的

     本書は,川口孝泰氏らが「看護教育」に連載した内容をまとめたものである。筆頭著者の川口氏は,看護学を専攻して大...
    演習を通して自己学習能力を伸ばすのに有益な良書 (雑誌『看護教育』より)
    書評者:早川 和生(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻教授)

    ◆ユニークで有益な経歴の著者による解説が効果的

     本書は,川口孝泰氏らが「看護教育」に連載した内容をまとめたものである。筆頭著者の川口氏は,看護学を専攻して大学を卒業した後に大学院で建築工学を修めて,さらに美術と芸術学も深く専門的に学んだユニークで非常に有益な経歴を有する。それゆえ,氏らしい複眼的で広範な視座の観点から基礎看護学の基本が非常にわかりやすく平易に解説されている点が特徴となっている。さらに,本書では各章・各節ともに川口氏ら3名の筆者がそれぞれ独自のオリジナルの演習を随所に取り入れていることが,読者の理解を具体的でより効果的にしていると思われる。

    ◆人間学としての看護の基礎を簡潔に

     かねてから看護学は,一人ひとりの人間全体を丸ごと対象にした総合科学であると考えられており,「人間学」としての基礎知識が基盤となる。本書においては,看護学を学ぶうえで極めて重要な身体機能やボディメカニズム,安全・安楽,コミュニケーション,日常生活(食べる,眠る,排泄,清潔,運動,環境調整)等にとどまらず,人権保護や倫理面など多彩な内容項目について人間学の基礎として簡潔に書かれていることから,実際に学ぶ看護学生はもちろん看護教育に携わる大多数の人々にとって,重要な役割をはたすことができる学習書になっていると思われる。

    ◆看護学生が成長するための基本となる科学的視点が充実

     著者らの多彩で豊富な学問的背景と専門的学術基盤に立脚した看護技術の基本が書かれた本書は,将来の看護学の発展を担う若く柔軟な思考を有する看護学生の教育に,ぜひ推奨したいものである。看護学生が成長するために基本となる重要な科学的視点を養い,演習を通して自己学習能力を伸ばすことができる充実した示唆に富む有益な内容になっていることも特徴の1つである。

    ◆「基礎のキソ」に託す熱い視線と心意気を感じる

     本書は,本当のプロフェッショナルな看護職を育てるうえで,基盤となり得る内容の良書であり,看護教育に専心する筆頭著者の川口孝泰氏のみならず佐藤政枝氏,小西美和子氏の3名の執筆者各々が担当した各章から,看護専門教育のなかでも特に重要な「看護援助の基礎のキソ」に託す熱い視線と心意気が強く感じられる文章で構成されている。その点においても好感がもてるものである。

    (『看護教育』2013年6月号掲載)
目 次
まえがき

第I章 看護援助の基礎のキソ
 1.「基礎のキソ」とは
  1)「看護学教育」に求められる基礎教育とは
  2)看護援助を具現化するための「知の枠組み」
 2.演習を通して学ぶことの意味
  1)看護技術習得に向けた学習法
  2)文献によりエビデンスを引き出す
  3)演習体験をレポートすることの重要性

第II章 看護援助のための基本的機能
 1.環境調整
  1)看護援助における環境調整
  2)ナイチンゲール病棟にみる療養環境
  3)人間-環境系と看護
  4)環境調整に関連するエビデンス
  5)「体験学習」で育む環境調整の視点
   演習問題 環境調整
  6)基本的日常生活援助につながる環境調整の視点
 2.コミュニケーション
  1)コミュニケーションとは
  2)コミュニケーションの種類
  3)援助関係に必要なコミュニケーションの要素
   演習問題 コミュニケーション
  4)場面と状況を設定したコミュニケーションの体験
   (1)最適なコミュニケーションの位置を探す
   (2)ベッド上臥位の人のパーソナルスペースを測る
   (3)ベッド上で臥位姿勢をとっている人から話を聞く
 3.ボディメカニクス
  1)ボディメカニクス(body mechanics)とは
  2)ボディメカニクスを保つための姿勢と動作
  3)日常生活にみられる姿勢
  4)力学的基盤と看護作業
   (1)運動の法則の利用
   (2)安定性の利用
   (3)てこの原理とトルクの利用
   (4)摩擦の利用
   演習問題 ボディメカニクス
  5)自分の日常生活を観察する
  6)ボディメカニクスの観点から体位変換の方法を考える
  7)失敗体験からみえてきたこと
 4.倫理
  1)看護援助における倫理
  2)患者の権利と倫理原則
   (1)7つの患者の権利
   (2)5つの倫理原則
  3)看護実践における倫理的概念
  4)看護実践場面における倫理的ジレンマ
   演習問題 倫理
  5)事例を通して学生に体験してほしいこと
   (1)事例を通して「まずは自分と向きあう」
   (2)事例を通して「他人の意見を聴く」
   (3)倫理原則を用いて「状況を整理する」
   (4)新たな理論や分析ツールを用いて「分析をさらに深める」
  6)演習で倫理的思考の素地をつくる
 5.安全・安楽
  1)看護援助における安全・安楽
  2)ケア対象者/提供者における安全・安楽
  3)ヒューマンエラーと安全
   演習問題 安全・安楽
  4)安楽な体位の工夫を体験して
  5)病院で起こる事故の種類と,その予防策

第III章 日常生活における援助項目
 1.食べる
  1)「食べる」ことの意義と看護の視点
  2)「食べる」機能と嚥下反射
  3)食欲の仕組み
   演習問題 食べる
  4)「食べる」姿勢と食べやすさ
   (1)ベッド傾斜角度と食べやすさ
   (2)食とニオイに関する分析
   (3)食にかかわる文化的行事
  5)「食べる」にかかわる援助の基本
 2.排泄する
  1)「排泄」の定義とメカニズム
  2)「排泄」の仕組み─排便に焦点を当てて
  3)「排泄する」場の住文化的意味を考える
   演習問題 排泄する
  4)自らの日常生活における「排泄する」に着目した観察体験
  5)床上排泄における気がかりを考える
  6)介助を「する側」「される側」の体験からの気づき
  7)排泄姿勢と排泄のしやすさへの援助とは
  8)環境調整を重視した「排泄する」への看護援助とは
 3.活動する,運動する
  1)人間が「寝たきり」になるとどうなるのか
  2)生活姿勢と人体の抗重力メカニズム
   演習問題 活動する,運動する
  3)長時間同一体位体験の苦しさ
  4)他動的な運動支援の難しさ
  5)「寝たきり」にさせない看護援助とは
 4.眠る
  1)「眠る」ことの意義
  2)睡眠の種類とメカニズム
   (1)睡眠の種類:レム睡眠とノンレム睡眠
   (2)睡眠のメカニズム:疲れたから眠る? 夜になったら眠くなる?
   (3)体内時計と睡眠
   (4)ホルモンバランスと睡眠
  3)「眠る」ことの社会的・文化的な意味
  4)「眠る」に関連する「看護の基本的機能」あれこれ
   演習問題 眠る
  5)「眠る」ことに関する習慣・こだわり
  6)「眠る」ための習慣・こだわりを看護援助につなげる
  7)「眠る」ことへの看護援助を創造する
 5.清潔にする
  1)「清潔にする」ことの意義
  2)皮膚の構造と機能
   (1)老化による皮膚機能の変化
   (2)感覚受容器を備えた皮膚
  3)「清潔にする」ことの社会的・文化的な意味
   演習問題 清潔にする
  4)「清潔にする」ことに関する習慣・こだわり
  5)心地よい湯の温度は人によって異なる
  6)患者役,看護師役の体験からの気づき
  7)体験をふまえ,心地よい清潔援助に求められる視点をつかむ
  8)対象者の活力回復に向けた「清潔にする」看護援助とは
 6.移動する
  1)「移動する」ことの意義
  2)「移動する」ための能力
   (1)「移動する」能力としての歩行
   (2)「移動する」ことを補助する道具
  3)「移動する」に関連する「看護の基本的機能」あれこれ
   演習問題 移動する
   (1)まずは日常の「移動する」を確認する
   (2)いつもと違う手段や方法で「移動する」
  4)「移動する」ことを日常生活の延長として捉える
  5)「移動する」ことへの看護援助を創造する

第IV章 「看護援助の基礎のキソ」を看護技術教育につなぐ
 1.実践の学として看護を考える
  1)「技術」概念の変遷
  2)アルス(ars)の技術概念
  3)テクノロジー(technology)の技術概念
  4)工学にみる技術学とは
  5)看護実践における技術の特質
  6)技術学としての看護学
 2.実践能力を育む技術教育の展開
  1)e-learningを活用した方法
  2)シミュレーション教育
  3)模擬患者(simulated patient)を活用した教育
  4)オスキー(OSCE)

あとがき
索引

コラム|column
・レポートを書くうえでの注意点
・横糸と縦糸を紡ぐための演習の組み立て
・学生の体験からエビデンスを引き出す
・ロボットに助けられて食べる
・学びのサイクルを活性化する演習課題
・ネットで文献検索してみよう