第7版 序
標準薬理学改訂第7版が刊行される運びとなった.本書は,医学教育課程における最小限度の薬理学の知識を簡潔にまとめるという基本方針のもとに編集されてきた.初版の刊行から34年が経過し,薬理学および関連領域では,ゲノム情報の解読をはじめとする目覚ましい進展があった.そのため知識量は急速に増加した.一方で,以前はブラックボックスであった薬理作用のメカニズムが,遺伝子やタンパク質分子などの機能にもとづいて,整理して理解できるようになってきた分野も数多くある.本書では,初版からの基本方針は貫きつつ,新たな執筆陣を加えて,このような最近の進展を盛り込むようにした.また,必要に応じてAdvanced Studiesという項目を設けて最先端の情報についても言及し,さらに詳しい学習にも対応できるようにした.
本書の特徴である3編構成は堅持した.第Ⅰ編では,薬理学の基本的概念を説明してどのように学ぶかについて述べた後,薬理学の概要を解説した.第Ⅱ編では,薬物の生体に対する作用を理解する上で重要となる細胞機能制御メカニズムについて整理して概説した.第Ⅲ編では,主要な治療薬について解説したが,多数の薬物を羅列するのは避け,薬物を臨床応用する際に必要な概念を説明することを主眼とした.本改訂版では,第Ⅰ,Ⅱ編の冒頭と第Ⅲ編の各章に新たに構成マップを設け,何を学ぶのかについて視覚的に把握できるようにして,初めて薬理学を学ぶ際にもとりかかりやすくするとともに,読後の理解をまとめやすくする工夫を加えた.
薬理学は,疾患の治療法の基盤として重要な役割を担っており,その重要性は今後益々大きなものになると考えられる.薬理学の基本的な原理を理解することは,日々進歩する医学・医療に対応する力を身につけることにもなるはずである.薬理学を学ぶ方々に本書を活用していただければ幸いと考える.
2015年3月
編者ら