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症例から学ぶ和漢診療学 第3版

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世界中で訳された、「和漢診療学」入門の定番書、待望の改訂第3版。東西の叡智を結集し、有効で安全な治療形成のために、現在行われている一般的な症例をベースに、日々蓄積される漢方薬のエビデンス情報を交えながら解説。より分かりやすく、より親しみやすく和漢診療学を学べる。
寺澤 捷年
発行 2012年01月判型:A5頁:404
ISBN 978-4-260-01386-4
定価 5,060円 (本体4,600円+税)

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第3版 序

 本書は1990年に初版が出版された。幸い多数の方々のご支持を頂き第9刷を刊行するに到ったが,引用文献の更新と不十分な諸点の書き換えが必要であったことから,1998年に改訂第2版を刊行した。爾来,13年が経過したが,この間に医学教育モデル・コア・カリキュラムが設定され(2001年),「和漢薬を概説できる」ことが目標として掲げられた。薬学教育においても6年制への移行に伴い伝統医学教育の充実が図られつつあり,薬剤師国家試験への出題も具体化される動きにある。
 このような伝統医学を巡る新たな動きは,実は国民の強い要請に基づくものである。いわゆる西洋医学が主流をなす我が国の医療体系であるが,国民は伝統文化の1つとして和漢薬の有用性を認識しており,医療を提供する側に,正しい情報提供と東西の医学の適切な活用求めているのである。
 我が国は世界に誇る国民皆保険制度を有しており,しかも147種類の漢方エキス製剤と約200種類の生薬が医療保険でカバーされている。このような医療制度をもつ国は我が国を措いてない。東西の両医学の長所を伸ばし,短所を補完することの重要性は筆者が日々の臨床で実感しているところである。
 しかし,漢方医学のパラダイムと西洋医学のパラダイムはまったく異なっている。したがって,漢方医学を適切に活用するには,この異なったパラダイムの理解が必要であることはいうまでもない。本書はこのもう1つのパラダイムを理解して頂くための入門書である。
 大変に喜ばしいことに,広く漢方製剤が臨床応用され,水準の高いエビデンスが得られるようになるに伴い,その薬理作用の研究も大いに進展していることである。しかも分子生物学や免疫学などの目覚ましい進歩が漢方製剤や生薬の作用機序の解明に新たな知見を提供している。
 そこで,近年のこのようなさまざまな成果を追加収録する必要が生じてきた。これが改訂第3版を刊行するにいたった最大の理由である。改訂に当たって「臨床の眼」の文献はすべて1995年以後のものに刷新した。さらに改訂第2版で新設した第8章「証」決定演習は思考のステップの記述が不親切であったことから,これをより明確なものにするために全面的に書き改めた。
 この改訂作業に当たっては千葉大学医学部附属病院・和漢診療科の仲間のご協力を得た。執筆協力者の一覧を掲げ,感謝の意を捧げたい。

 2011年12月
 著者識す

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第1章 はじめに
 1 和漢診療学における生体の理解
  1.生体の恒常性維持と気血水の概念
  2.気血水の生成
  3.五臓の概念
  4.五臓の相関関係と気血水の消長
  5.気血水の循環
  6.五臓の代謝作用と気血水の相関
 2 和漢診療学における病態の認識
  1.病的機転の認識
  2.病態の認識
第2章 気血水の概念による病態の把握
 1 気虚
 2 気鬱
 3 気逆
 4 血虚
 5 お血
 6 水滞
第3章 五臓の概念による病態の把握
 1 肝の異常
 2 心の異常
 3 脾の異常
 4 肺の異常
 5 腎の異常
第4章 陰陽・虚実・寒熱・表裏による病態の認識
 1 陰陽の認識
 2 虚実の認識
 3 寒熱の認識
 4 表裏の認識
第5章 六病位による病態の認識
 1 太陽病期の病態と治療
 2 少陽病期の病態と治療
 3 陽明病期の病態と治療
 4 太陰病期の病態と治療
 5 少陰病期の病態と治療
 6 厥陰病期の病態と治療
第6章 診察の実際
  1.望診
  2.聞診
  3.問診
  4.切診
第7章 証:診断と治療のプロセス
  1.証の定義
  2.証の決定
  3.漢方方剤のベクトル論的位置づけ
  4.証と西洋医学的病名との関連
第8章 「証」決定 演習
  1.アトピー性皮膚炎
  2.頸腕症候群の肩こり,頭痛
  3.ネフローゼ症候群
  4.非定型好酸菌症
  5.虚弱児の反復性上気道炎
  6.慢性頭痛
  7.腰痛を伴う間歇性跛行

〔付〕
 〔1〕漢方製剤使用上の一般的注意事項
 〔2〕漢方製剤一覧表
 〔3〕方剤一覧A(保険薬価基準収載方剤)
 〔4〕方剤一覧B(保険薬価基準未収載方剤)
 〔5〕富山大学附属病院和漢診療科健康調査表

索引 事項/疾患・症例/方剤

症例目次
 全身倦怠感・軽度肝機能障害に補中益気湯
 頻尿,尿失禁,夜尿に小建中湯
 意識消失を伴う腹痛発作に香蘇散
 気管支喘息に柴朴湯と八味地黄丸の兼用
 常習性頭痛に柴胡疎肝湯
 ベーチェット病に清熱補気湯
 動悸・めまいに桂枝加竜骨牡蛎湯と苓桂朮甘湯
 胃腸虚弱と下肢の冷えに良枳湯と補中益気湯
 胃切除後の冷汗,嘔気,食欲不振に良枳湯
 右肩甲間部痛と頭痛に肘後方・奔豚湯
 左下腹部痛と月経不順にきゅう帰膠艾湯
 尋常性乾癬に当帰飲子
 多発性関節痛に疎経活血湯とよく苡仁湯
 月経痛に桂枝茯苓丸
 皮膚蟻走感とのぼせ症に加味逍遙散
 視床梗塞後遺症に疎経活血湯
 不妊症に当帰芍薬散
 関節リウマチと皮疹によく苡附子敗醤散
 起立性低血圧と全身倦怠感に苓桂朮甘湯
 膝関節痛・心肥大に防已黄耆湯
 呼吸困難に木防已湯
 半身の疼痛発作に苓桂甘棗湯合呉茱萸湯
 めまい感に真武湯
 右側胸部痛・チック様症状に抑肝散
 肩こり,高血圧,糖尿病に三黄瀉心湯
 持続する軟便に啓脾湯
 反復するアフタ性口内炎に清熱補気湯
 アレルギー性鼻炎に麻黄附子細辛湯
 老人の持続する咳嗽に滋陰降火湯
 腰痛,性欲の減退に牛車腎気丸
 肩こり,高血圧症に黄連解毒湯
 気管支喘息に四逆湯と茯苓杏仁甘草湯
 不眠に柴胡加竜骨牡蛎湯
 腹部膨満感に大建中湯
 慢性肝炎に柴胡桂枝乾姜湯
 感冒後の咳嗽に麻杏甘石湯
 慢性の下痢に四逆湯
 夜間の異常発汗に防已黄耆湯
 頭痛と肩こりに大黄牡丹皮湯
 桂枝湯証
 葛根湯証
 麻黄湯証
 桂麻各半湯証
 小青竜湯証
 帯状疱疹に葛根湯
 咳嗽発作に麦門冬湯
 糖尿病性下痢症に半夏瀉心湯
 胃癌術後の肩甲間部痛に延年半夏湯
 網膜色素変性症に柴胡桂枝湯
 アレルギー性鼻炎に柴胡桂枝乾姜湯
 前脊髄動脈症候群に桂枝茯苓丸
 食中毒の下痢に葛根黄連黄ごん湯
 大後頭神経痛に五苓散
 頭痛に白虎加桂枝湯
 中枢性高体温症に白虎加人参湯
 陽明病期に陥った感冒に白虎加人参湯
 多発性関節痛と手指のしびれに大承気湯
 四肢の筋力低下・脱力に桃核承気湯
 非A非B肝炎に茵ちん蒿湯
 心窩部のつかえ感と胸内苦悶感に人参湯
 食後の腹痛と夜尿症に小建中湯
 月経不順・下肢の湿疹に当帰芍薬散
 関節リウマチに桂枝加朮附湯
 麻痺性イレウスに厚朴生姜半夏甘草人参湯
 感冒に麻黄附子細辛湯
 遷延した下痢に真武湯
 少陰病期の感冒性下痢症に真武湯
 不眠症に黄連阿膠湯
 慢性閉塞性肺疾患に茯苓四逆湯
 アトピー性皮膚炎
 頸腕症候群の肩こり,頭痛
 ネフローゼ症候群
 非定型抗酸菌症
 虚弱児の反復性上気道炎
 慢性頭痛
 腰痛を伴う間歇性跛行

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現代医療における漢方の価値・意味を,わかりやすい言葉で再定義した名著の決定版!
書評者: 津田 篤太郎 (JR東京総合病院・リウマチ膠原病科医長)
 レナード・バーンスタインに「答えのない質問」という映像作品がある。これはハーバード大学での連続講義を収録したもので,モーツァルトからストラヴィンスキーまで,クラシック音楽がどのような構造や構成を持ち,音楽がいかに普遍的なメッセージを持つに至るのかを解き明かす,という内容である。

 この作品について,20世紀前半の大指揮者,例えばフルトヴェングラーならこんな講義をしなかっただろう,いや,こういう講義をする必要性すらなかった,と評する人がいた。バーンスタインは20世紀後半を代表する指揮者なのだが,この半世紀の隔たりは大きい。素晴らしい演奏がただ存在し,その価値が自明のものであった時代は既に過ぎ,なぜクラシック音楽なのか,クラシック音楽とはなにか,が問われるようになったのである。

 日本のクラシック医学である漢方も,20世紀後半に入り,同様の問いを提起されていると言えるであろう。漢方の書籍には,名医の治療経験をまとめたものが多い。それはそれで非常に素晴らしく価値があるのだが,西洋医学が爆発的に知識や技術を発展させた今日,どうして漢方医学なのか,そもそも漢方医学とは何か,という問いは切実さを増している。かつての名医の経験談も,「使った・治った・効いた」の“3た論法”に過ぎぬ,と切って捨てられる時代なのだ。

 著者の寺澤先生は,漢方医学に向けられた現代の問いに対し,正面から答えようとしている。気血水とはなにか,陰陽虚実とはなにか,五臓とはなにか,六病位とはなにか,漢方医学の基本概念を丁寧に解説するところから始め,その道具立てを使って漢方医が実際の症例に臨んでどのように漢方処方の適応(「証」)を決定するかを説明する。それは,古典籍や先人の言の引用を羅列するのでもなければ,漢方を現代医学的に「証明」することのみに拘泥しているわけでもない。この本は,西洋近代医学の教育しか受けていない人々にも理解し得る言葉で漢方を再定義し,医学のあり方として西洋医学以外にもう一つの世界・普遍性を持った体系が存在することを描き出そうとする試みだ。

 この本には「答えのない質問」と同様の,現代から投げかけられた問いに答えるという時代意識がにじみ出ているが,それだけではないように私は感じる。著者は,江戸時代の古方派と呼ばれる,医史学上の大転換期を築いた名医たちの研究でも有名である。

 古方派は医学が普遍的な事実に基づくべきだと主張し,幕末以降は近代医学の受容を陰で支えた。古方派の伝統を受け継ぐトップランナーである著者の,漢方が普遍性を持った学問として現代の世の中にもっと認知されて欲しい,という熱い思いもこの本からは伝わってくる。漢方の「次の100年」を拓く本であると言えよう。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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