基礎看護学[1]
看護学概論 第15版

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看護基礎教育の概論として、これから看護を学ぶ学生がまず理解しなければならない概念を、最新の考え方に基づいてわかりやすく解説します。 『基礎看護学[2] 基礎看護技術I』 および 『基礎看護学[3] 基礎看護技術II』 と一貫性のある内容とすることによって、基礎看護学全体に対する学生の理解が深まる構成としています。 看護の倫理など、現在看護に求められている事項を大きく取り上げ、「看護とはなにか」という看護の本質について解説しています。 医療の現場と看護の連続性について学生がイメージできるような工夫をこらしています。 看護の活動の場は、社会情勢の変化に伴い広がっています。本書では、「国際協力」と「災害看護」についても概要をわかりやすくまとめています。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座
茂野 香おる / 長谷川 万希子 / 林 千冬 / 平河 勝美 / 中根 薫 / 岩本 里織 / 柳澤 理子 / 大野 かおり
発行 2012年02月判型:B5頁:360
ISBN 978-4-260-01362-8
定価 2,640円 (本体2,400円+税)
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はしがき

 2011年3月,東北地方太平洋沖地震とそれに伴う原子力発電所事故が発生し,多くの人々が近親者を奪われ,家をなくし,生活の糧を失った。人の「生命(いのち)」が突然奪われ,「暮らし」が一瞬にして破壊されてしまうという,とうてい受け入れることのできないような非情なできごとは誰の身の上にもおこりうる。そのことを,私たちは否応なく経験させられた。
 被災した人々は,こころもからだもボロボロになってしまったはずだが,それでもがんばって生きている。そのような状況のなかにいる人に生きていく力を与えてくれるのは,人と人とのふれ合いであり,支え合いであり,また自分のこころのよりどころを見いだすことだろう。
 看護という職業は,「生」と「死」という,人の一生のなかで最も重要な局面に立ち会う。また,「病」や「老」という,負のイメージを伴う自身の大きな変化に悩む人々を対象とし,その人の健康問題を,その人とともに解決していこうとする職業である。
 看護を志し,本書を手にしている皆さんの多くは,「人の役にたちたい」という願いを持っていることだろう。なかには,大きな病気などを体験し,「自分が受けた看護ケアを人に提供したい」と願う人,直接的な悲しい体験を持ち,その経験から今後は自分が「人を支える立場になりたい」と願っている人もいるだろう。あるいは,両親をはじめ周囲の人々のたくさんの愛といつくしみにはぐくまれ,「自分が受けたたくさんの愛をなんらかのかたちで返したい」という思いを持っている人もいるだろう。
 皆さんは本書をとおし,看護とはなにか,看護師とはどのような職業かを学ぶ。そして,人を世話するにあたって基本となる姿勢・考え方や,どのような援助が人のためになり,または人のためにならないかなどについて学んでいく。それは言いかえれば,いま皆さんが持っている「人の役にたちたい」という気持ちを,実際の行為として具現化する方法を学んでいくことである。基本的知識がなければ,せっかくの援助もただのおせっかいになったり,人の気持ちを害すことになったり,かえってその人の生きる力を萎えさせてしまうことさえある。それゆえに,ここでしっかりと,看護を志す初学者としての基本的な“考え方”を身につけてほしい。
 “考え方”と言ってしまえば簡単に聞こえてしまうかもしれないが,看護においては,これが本当にむずかしいことだと,筆者は考えている。なぜなら,看護の対象となる人々は,ひとりとして同じ人がいないからである。年齢・性別はもとより,疾病の状況も異なれば,疾病に対する受けとめや向き合いかたも異なるし,価値観・人生観もさまざまである。それゆえに,同じ状況に思える複数の対象者がいても,ある人には効果的と思われたかかわりが,別の人にはそうではないことも多い。このような意味で,「正解がない」ということが,看護の大きな特徴の1つといえる。
 中学校や高等学校における皆さんの学習のほとんどは,設問に「正解する」ことが目的であっただろう。しかし,看護の場面においては,「どちらともいえる」「どちらも部分的には正しい」など正解が明確ではない部分も多く,その場面や援助にかかわる多くの人々(看護職どうしだったり,看護職以外の他職種も含んだりする)との話し合いが重要になる。それゆえに,これからの学生生活のなかで,たくさんの人々と意見を交わし,取り入れるべきところを取り入れ,そのなかから自分の“考えの素地”をつくり上げていくことが重要になる。
 本書では,第1章で看護の基本的な考えかたを扱うほか,ある施設を例に,臨床での実際の取り組みを紹介し,第2章で看護の対象である人間のさまざまなとらえ方を紹介している。この第1・2章が「看護学概論」の基盤となる部分である。
 ついで,第3章で私たち日本人の健康やわが国の保健医療の状況を統計から客観的に把握したうえで,第4章でわが国の看護職の成立や養成制度,第5章で看護倫理,第6章で看護制度や看護政策,看護管理,医療安全などを学ぶ構成となっている。看護倫理は,この第15版ではじめて独立した章となったが,これは近年の倫理の重要性の高まりを反映している。第7章は応用的な意味合いを持ち,現在の看護の活動領域の広がりを反映して,国外での看護や在日外国人への看護,災害時の看護を紹介している。
 このように,本書にはたくさんの素材が盛り込まれている。しかし,これらを活用するのは学生である皆さん自身だということを肝に銘じてほしい。読んだことを「そうなんだ……」と鵜呑みにしてしまう前に,これはどのような意味があるのだろう,どう考えていけばよいのかなどの疑問を持ち,ディスカッションの素材として使っていただければ幸いである。
 最後に,本書を執筆するにあたり,長きにわたってご助言・ご指導いただいた諸先生方,また,じっと見まもり耐えてくれた家族に,感謝の意をあらわしたい。
 2012年1月
 著者を代表して
 茂野香おる

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第1章 看護とは (茂野香おる)
 A 看護の本質
 B 看護の役割と機能
 C 看護の継続性と情報共有
第2章 看護の対象の理解 (茂野香おる)
 A 人間の「こころ」と「からだ」
 B 生涯発達しつづける存在としての人間
 C 人間の「暮らし」の理解
第3章 健康のとらえ方と国民の健康状態 (長谷川万希子)
 A 生活者の健康を専門家の視点でとらえる
 B 健康とはなにか
 C 健康の関連要因
 D 社会の変遷と健康観の変化
 E 人々の生活と健康に関する統計
第4章 看護の提供者 (林千冬・平河勝美・中根薫)
 A 職業としての看護
 B 看護職の養成制度と就業状況
 C 看護職者の教育とキャリア開発
 D 看護職者の養成制度の課題
第5章 看護における倫理 (林千冬)
 A 現代社会と倫理
 B 医療をめぐる倫理の歴史的経緯と看護倫理
 C 看護実践における倫理問題への取り組み
第6章 看護の提供のしくみ (林千冬・岩本里織)
 A サービスとしての看護
 B 看護サービス提供の場
 C 看護をめぐる制度と政策
 D 看護サービスの管理
 E 医療安全と医療の質保証
第7章 広がる看護の活動領域 (柳澤理子・大野かおり)
 A 国際化と看護
 B 災害時における看護

 資料1 主要な看護理論家の看護概念
 資料2 戦後における看護の変遷
 資料3 保健・医療・福祉関係者養成制度
 資料4 看護にかかわる定義および綱領
 索引

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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