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認知症疾患治療ガイドライン2010 コンパクト版2012


(在庫なし)

監修:日本神経学会 
編集:「認知症疾患治療ガイドライン」作成合同委員会 

  • 判型 A5
  • 頁 256
  • 発行 2012年02月
  • 定価 3,740円 (本体3,400円+税10%)
  • ISBN978-4-260-01337-6
好評のガイドラインをベースに診療現場で役立つポイントをまとめた1冊
日本神経学会監修 「認知症疾患治療ガイドライン2010」 をベースに、臨床で役立つ診療のポイントを簡潔にまとめた1冊。本家のガイドライン同様、認知症の定義や疫学、治療などの総論的な内容から、Alzheimer病やLewy小体型認知症など個別の原因疾患ごとの具体的な特徴や診断基準、薬物療法・非薬物療法といった各論的な内容まで網羅的にカバー。全編クリニカル・クエスチョン形式で解説する。
序 文
「認知症疾患治療ガイドライン2010 コンパクト版2012」発行にあたって(水澤英洋/辻 貞俊)/序に替えて(中島健二)

「認知症疾患治療ガイドライン2010 コンパクト版2012」発行にあたって
日本神経学会
 代表理事 水澤英洋
 ガイドライ...
「認知症疾患治療ガイドライン2010 コンパクト版2012」発行にあたって(水澤英洋/辻 貞俊)/序に替えて(中島健二)

「認知症疾患治療ガイドライン2010 コンパクト版2012」発行にあたって
日本神経学会
 代表理事 水澤英洋
 ガイドライン統括委員長 辻 貞俊

 日本神経学会では,2002年に「痴呆性疾患治療ガイドライン2002」を発行しました.2002年の発行からかなりの期間が経過し,認知症疾患に関する新知見の増加や治療薬も承認されるようになった現況から,「治療ガイドライン2002」を全面改訂し,「認知症疾患治療ガイドライン2010」を2010年10月に発行いたしました.
 「認知症疾患治療ガイドライン2010」の作成に関しては,協力学会として日本精神神経学会,日本認知症学会,日本老年精神医学会,日本老年医学会,日本神経治療学会にご参加いただき作成されました.快くご協力いただきました各学会には,この場を借りて深謝いたします.
 「認知症疾患治療ガイドライン2010」は,諸般の事情から若干大部になりました.更にはコンパクト版作成の要望があり,「認知症疾患治療ガイドライン2010」を使用される皆様の利便性を考えて,「コンパクト版」を発刊することになりました.また,「認知症疾患治療ガイドライン2010」の文献検索は2008年までであり,3年前のエビデンスに基づいたガイドラインとなっているので,「コンパクト版」では新たな文献も若干追加しています.
 治療ガイドラインの改訂にあたっては,本学会としてすべての治療ガイドラインについて一貫性を求め,利益相反に関しても本学会として適切な指針を定めた上で,各治療ガイドライン作成委員会の構成を行いました.
 この改訂治療ガイドラインは,evidence-based medicine(EBM)の考え方に基づいて作成されていることは「治療ガイドライン2002」と同じでありますが,Q&A(質問と回答)方式で記述されている点が2002年版とは大きく異なり,読者の皆様には理解しやすい構成になっています.
 治療ガイドラインは,決して画一的な治療法を示したものではないことにもご留意いただきたいことです.同一の疾患であっても,最も適切な治療は患者さんごとに異なり,医師の経験や考え方によっても診療内容は異なります.治療ガイドラインは,あくまで,治療を考える医師がベストの治療法を選択する上での参考となるように,個々の治療薬や非薬物治療の現状における評価を,一定の方式に基づく根拠をもとに提示したものです.したがって,治療ガイドラインは医師にガイドライン通りの治療を求めるものではなく,ガイドライン通りに行えない治療法が当然あることにもなります.
 コンパクト版が,診療現場で活躍する学会員の皆様の認知症疾患の診療に有用なものとなることを願っております.認知症疾患の診療も日進月歩で発展しており,今後も定期的な改訂が必要です.コンパクト版を会員の皆様に活用していただき,さらに学会員の皆様からのフィードバックをいただくことにより,ガイドラインの内容はよりよいものになっていきます.コンパクト版が,会員の皆様の日常診療の一助になることを期待しますとともに,次なる改訂に向けてご意見とご評価をお待ちしております.

 2012年2月


序に替えて
「認知症疾患治療ガイドライン」作成合同委員会
 委員長 中島健二

 日本神経学会,日本精神神経学会,日本認知症学会,日本老年精神医学会,日本老年医学会,日本神経治療学会の認知症診療に関連する6学会は,協力して認知症疾患治療ガイドラインの改訂作業を進め,2010年10月に「認知症疾患治療ガイドライン2010」(以下,通常版)を発刊した.その序論でも述べたように,本改訂は2006年の日本神経学会治療ガイドライン評価委員会による改訂に向けての提言では,「痴呆疾患治療ガイドライン2002」における総説的な記載を残すように指摘され,解説・エビデンスをガイドラインとしては若干詳しく総説的に記載した.また,当初,「認知症疾患治療ガイドライン」作成合同委員会としては,“検索式・参考にした二次資料”はホームページ版に掲載し,書籍版では割愛する予定であったが,他のガイドラインとの統一性のため書籍版にも記載することになった.これらのため,本ガイドライン通常版は若干大部になった.一方,2002年版において小冊子版も発行された経緯もあり,今回も小冊子版を作成するように評価・調整委員,アドバイザーから求められた.そこで,認知症疾患治療ガイドライン使用の利便性を期待して“コンパクト版”を発刊することになった.
 本ガイドラインは一般医師を対象として作成されており,本コンパクト版はあくまで通常版の小冊子版であり,作成の基本的な考え方は通常版と変わりない.適切な医療・ケアを受ける権利は平等に保障されるべきであり,認知症や高齢であることなどを理由に差別を受けるようなことがあってはならない.また,本ガイドラインは,臨床現場の診療を制約したり,医師の裁量を拘束するものではない.それぞれの認知症者の診療において個別に必要な医療・ケア・情報などの提供を検討する際の診療支援の一つとして,本ガイドラインが利用されることが期待される.そのために,診察室の机の上などに置いておいて必要に応じて参照して頂き,日常診療において手軽に活用して頂けるよう,本コンパクト版を作成することとした.そこで,より詳細な記載内容を確認されたい場合や関連文献の確認などを希望される場合には,随時通常版を参照頂きたい.
 本コンパクト版においては,内容は通常版に沿い,短縮・簡略化を図って読者の簡便さを重視した小冊子とし,通常版がB5判で400頁であったのに対し,コンパクト版はA5判で256頁に圧縮した.クリニカル・クエスチョン(以下,CQ)は,通常版に準拠するが簡便化を図り,可能な範囲で若干のCQ統合を行うとともにCQ表現の簡略化や若干の変更を行った.例えば,非薬物治療に関しては,Alzheimer病(AD)の場合と認知症の場合で共通する記載が多く,短縮・簡略化によりそれがよけいに目立つようになったところから,コンパクト版においては認知症全体における記載に統一し,ADにおける記載は割愛した.また,“背景・目的”は削除するとともに“解説・エビデンス”も簡略化し,引用文献も減らすようにした.コンパクト版における各CQにおいては対応する通常版のCQに関する記載を確認しながら活用して頂くのが望ましく,通常版のCQ番号を記載して必要に応じて通常版を確認して頂きやすいようにした.また,推奨レベルは,通常版と同様に,文献のエビデンスレベルに従って推奨グレードを決定している.このため,本邦では保険で認可されていない薬剤でも推奨レベルが高い場合もある点をご理解頂きたい.
 一方,通常版の文献検索は2008年までであり,発行時にはすでに3年前のエビデンスに基づくことになってしまった.通常版の発行後にも新たな報告があり,例えば,2011年にはNational Institute on Aging and the Alzheimer's Association workgroupから認知症,AD,軽度認知障害(MCI)の診断基準が示された.そこで,これらの新たな文献も若干追加して記載することとした.また,Lewy小体型認知症における治療薬に関する新たな論文も追加した.さらに,通常版発行後に,認知症の診療においては“せん妄”も重要でありその追加記載の要望が寄せられたところから,そのCQ(CQIIIA-4:55頁)を設けた.また,2011年に3種類のAD治療薬が認可され,本邦においても複数の治療薬の選択が重要になったところから,AD薬物治療のアルゴリズムを作成した(CQV-5:137頁).一方,2011年9月に厚生労働省から“医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて”の文書が配布され,一部の非定型抗精神病薬においても“器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性”などに対して使用した場合に審査上認められることになった.しかし,認知症における使用時の対応などがまだ必ずしも明確でないと思われるところから,非定型抗精神病薬が“保険適応外”であるとの旨の記述は変更しなかった.
 前述のようなガイドライン発行後に報告された新たな知見について,ガイドラインを改訂しなければならないほどではないが周知しておきたい報告などに関しては,年に1回,学会ホームページで紹介することにしている.また,本ガイドラインに関して頂いた質問に関する回答も学会ホームページに記載することになっているので,そちら(http://www.neurology-jp.org/guidelinem/index.html)も参照して頂くと良い.
 本コンパクト版におけるエビデンスレベルの記載は通常版と同様であり,治療に関するエビデンスレベルはMinds分類(表1)を用い,それ以外については原則としてOxford Centre for Evidence-based Medicine Level of Evidence分類(表2)を用いた.また,用いた推奨グレード(表3)も通常版と同様で,Minds分類に従った.これらは参考のため次頁に再掲する.
 本コンパクト版は簡潔な記載内容としたことにより,むしろ通常版よりもさらに治療ガイドラインらしい,とも思えるような出来栄えになったとも考えられる.本コンパクト版の活用により認知症疾患治療ガイドラインのより一層の普及が期待され,それにより認知症医療が発展していくことが「認知症疾患治療ガイドライン」作成合同委員会の希望である.さらに,本認知症疾患治療ガイドラインの再度の改訂を近い将来に必要とするような,認知症医療の進歩を願っている.

 2012年2月

 表1 エビデンスレベル(Minds分類)
  I システマティックレビュー/RCTのメタアナリシス
  II 1つ以上のRCTによる
  III 非RCTによる
  IVa 分析疫学的研究(コホート研究)
  IVb 分析疫学的研究(症例対照研究,横断研究)
  V 記述研究(症例報告やケースシリーズ)
  VI 患者データに基づかない専門委員会や専門家個人の意見

 表2 エビデンスレベル(Oxford Centre for Evidence-based Medicine Levels of Evidence分類)
  1a RCTのシステマティックレビュー
  1b 個々のRCT
  1c 悉無研究
  2a コホート研究のシステマティックレビュー
  2b 個々のコホート研究
  2c “アウトカム”研究:エコロジー研究
  3a ケースコントロール研究のシステマティックレビュー
  3b 個々のケースコントロール研究
  4 症例集積研究
  5 系統的な批判的吟味を受けていない,または生理学や基礎実験,原理に基づく専門家の意見

 表3 推奨グレード
  A 強い科学的根拠があり,行うよう強く勧められる
  B 科学的根拠があり,行うよう勧められる
  C1 科学的根拠がないが,行うよう勧められる
  C2 科学的根拠がなく,行うよう勧められない
  D 無効性あるいは害を示す科学的根拠があり,行わないよう勧められる
書 評
  • 圧倒的に読みやすくなったガイドラインの活用を
    書評者:下濱 俊(札幌医大教授・神経内科学)

     本書は,日本神経学会,日本精神神経学会,日本認知症学会,日本老年精神医学会,日本老年医学会,日本神経治療学会の6学会の協力により作成された『認知症疾患治療ガイドライン2010』の『コンパクト版2012』である。2012...
    圧倒的に読みやすくなったガイドラインの活用を
    書評者:下濱 俊(札幌医大教授・神経内科学)

     本書は,日本神経学会,日本精神神経学会,日本認知症学会,日本老年精神医学会,日本老年医学会,日本神経治療学会の6学会の協力により作成された『認知症疾患治療ガイドライン2010』の『コンパクト版2012』である。2012と銘打ってある通り,わが国で昨年相次いで承認された2種類のコリンエステラーゼ阻害薬(ガランタミン,リバスチグミン),1種類のNMDA受容体拮抗薬(メマンチン)が臨床の場で使用可能となったこと,従来のNational Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke and the Alzheimer's Disease and Related Disorders Association(NINCDS-ADRDA)研究班のアルツハイマー病の診断基準がNational Institute on Aging(NIA)とAlzheimer's Association(AA)により2011年に改訂が示されたことなどが本書に反映されている。具体的にはアルツハイマー病の薬物治療の項に新たに「病期別の治療薬剤の選択アルゴリズム」の図が加えられ,記載について改訂がなされた。上述の新たなアルツハイマー病の診断基準も収録されている。日常臨床でしばしば難渋する「せん妄」の治療法についても,新たに項が設けられ解説されている。レビー小体型認知症に対するNMDA受容体拮抗薬についての文献が追加され,それに合わせて推奨内容も改訂されているなど,この3年間の進展に対応した内容となっている。

     本書は,『認知症疾患治療ガイドライン2010』と同様に,認知症の概要・疫学,鑑別診断に必要な諸検査,薬物および非薬物療法,治療原則などが記載された前半の総論部分と,8つの代表的な認知症疾患(アルツハイマー病,血管性認知症,レビー小体型認知症,前頭側頭型認知症,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,ハンチントン病,プリオン病)についてクリニカル・クエスチョン形式で記載された各論からなる後半部分に分けられる。これにより日常診療でしばしば遭遇する疑問点の多くに,回答というよりはむしろEBMに基づいた助言が得られる構成となっている。

     『認知症疾患治療ガイドライン2010』がB5判で400ページと,ともすれば辞書的な印象を与えるものであるのに対し,本書はA5判256ページに伝えるべき情報を減ずることなく手際よくまとめられており,通読が可能なコンパクトな書籍へと姿を変えている。この書評にあたり,改めて両者を並べて比較することで,今回のコンパクト版の圧倒的な読みやすさを実感することができた。記載内容が整理され適度に取捨選択されることで,必要な情報を手際よくその背景を含め理解できる内容にブラッシュアップされている。このことは,ガイドラインの本来の目的である,認知症を専門とする医師以外にも必要な認知症診断および治療についての指針となり得るEBMに基づいた情報を広く伝達するという意義に立ち返ったときに,大きな意味を持つと考えられる。

     近年の急増する認知症の患者さんへの対応は地域の基幹病院の共通の悩みであり,多くの認知症の専門外来は数か月待ちの状況が続いている。患者さんへの治療オプションが提示できるようになった今こそ,本書が神経内科医・精神科医にとどまらず認知症の患者さんを診療する一線の諸先生の手元で参照され,活用されることを切に願っている。
  • 日常の診療で手軽に活用できるよう工夫された一冊
    書評者:羽生 春夫(東医大教授・老年病学)

     現在のわが国における認知症患者は65歳以上の老年人口の8%,約230万人と推定されていたが,最近発表された厚労省研究班による疫学調査の中間報告によれば,65歳以上人口の15%を既に超え,推計患者数は約460万人にも達することが明らかとなってきた。このうちAlzheimer型認知症が300万人を超え...
    日常の診療で手軽に活用できるよう工夫された一冊
    書評者:羽生 春夫(東医大教授・老年病学)

     現在のわが国における認知症患者は65歳以上の老年人口の8%,約230万人と推定されていたが,最近発表された厚労省研究班による疫学調査の中間報告によれば,65歳以上人口の15%を既に超え,推計患者数は約460万人にも達することが明らかとなってきた。このうちAlzheimer型認知症が300万人を超えるという。さらに,20年後には患者数は倍増するだろうといわれている。したがって,認知症は老年者の最もcommonな病気となり,今後は専門・非専門を問わず,すべての臨床医が対応していかなければならないだろう。

     2002年に,日本神経学会が中心となり「痴呆疾患治療ガイドライン2002」が公開された。それ以降今日に至るまで,認知症領域においては,痴呆から認知症という名称の変更はもとより,新たな発見や治療の進歩がみられ,治療ガイドラインの改訂が求められていた。そこで2010年,日本精神神経学会,日本認知症学会,日本老年精神医学会,日本老年医学会,日本神経治療学会の協力の下に,中島健二委員長(鳥取大学教授・神経内科学)を中心に『認知症疾患治療ガイドライン2010』(通常版)が作成され,さらに今回,そのコンパクト版が発刊された。

     今回のガイドラインにおいては,認知症の定義や疫学に始まり,診断,治療の原則,経過,予防などの総論に続いて,軽度認知障害からAlzheimer病,血管性認知症,Lewy小体型認知症,前頭側頭型認知症,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,Huntington病,プリオン病の各疾患の診断や治療がクリニカル・クエスチョン(CQ)を用いた形式で記述されている。本書は,通常版をより短縮,簡便化するために若干のCQの統合やCQ表現が簡略化されるとともに,共通する記載を統一するなどの工夫が施されている。

     一方,2011年にはAlzheimer病や軽度認知障害の診断基準が示され,この文献を追加記載するとともに,せん妄のCQが加わり,わが国でも昨年から使用できるようになった新たなAlzheimer病治療薬の特徴や治療アルゴリズムも記載されるなど,通常版よりさらに最新の情報も加えられている。

     コンパクト版も通常版同様,evidence-based medicine(EBM)の考え方に基づいて作成されている上,CQ形式で読みやすく構成されており,何よりも簡潔な記載内容となっている。診療の最中に,分厚い成書を調べたり,論文を検索することは現実的に困難であるが,本書は,一般医師が日常の診療で手軽に活用できるよう工夫されており,診察室の机の上に置いていただければ,必要に応じて参照できる。最新の情報をハンディにまとめた本書は,急速に増加している認知症患者の診療に大いに役立つことと思う。
  • 看護学生・看護師が使える医学専門書
    書評者:六角 僚子(東京工科大教授・看護学/認知症ケア研究所代表理事)

     医学専門書の書評を依頼されたのは初めてで,果たして私が理解できるのかと疑問を感じながら,あっという間に読み終えた興味ある本でした。

     まず,このガイドラインは認知症の定義から始まり,診断,治療原則,経過と治療計画,原因別疾患などについて,Evidence-Based Medicineの考え方...
    看護学生・看護師が使える医学専門書
    書評者:六角 僚子(東京工科大教授・看護学/認知症ケア研究所代表理事)

     医学専門書の書評を依頼されたのは初めてで,果たして私が理解できるのかと疑問を感じながら,あっという間に読み終えた興味ある本でした。

     まず,このガイドラインは認知症の定義から始まり,診断,治療原則,経過と治療計画,原因別疾患などについて,Evidence-Based Medicineの考え方に基づきながら,Q&A方式で解説されています。非常にわかりやすい形式です。質問に対して簡単な回答,解説・エビデンスという構成です。簡単な回答に5段階の「推奨グレード」が付いており,多くはグレードB,C1が表示されていました。ちなみにBは「この回答は科学的根拠があり,行うように勧められる」,C1は「この回答は科学的根拠がないが,行うよう勧められる」というグレードとなります。その後は詳しい解説・エビデンスですが,回答を裏打ちする研究結果をいくつか紹介しています。それに対してもOxford Centre for Evidence-based Medicine Level of Evidence分類とMinds分類のエビデンスレベルを提示しています。どのような研究方法で結果を出したのかというものです。

     そして質問内容が精神医学,病理学,薬理学,看護学(介護)など幅広く扱われていることに感動しました。書名が治療ガイドラインということで,治療内容や薬物に特化しているというイメージでしたが,認知症者の周囲を囲む専門職にとっても有益な内容であることが理解できました。介護者の負担や家族介護者に対する心理社会的介入など,家族介護者の問題についても触れ,わかりやすい解説となっています。専門職者のみならず,看護学生の臨床実習時に行うアセスメントや卒論での文献学習で十分に活用できるものと考えます。さらにコンパクト版ということで,エッセンスが凝縮していること,持ち歩きやすいことは読者にとってはうれしいことです。

     より興味が引かれたのは「終末期のケア」です。ケアの鍵となる4つのテーマとして,(1)認知症者の終末期の予測が困難であること,(2)コミュニケーションが成立しにくいこと,(3)医療処置に関すること,(4)緩和ケアの適切さに関すること,が提示されています。一方,家族介護者にとって患者の死は,自身が解放されたとした者が72%,また90%以上の介護者が患者本人の救済にもなったと信じていることも書かれていました。認知症者に関する終末期の医療ケアの研究は先ほどの4つのテーマに配慮し,倫理的熟慮も必須であるため,研究自体はあまり充実していないとのことです。このように,1つのQ&Aだけでもエビデンスを眺められ,今後のケアに役立てられると思います。

     後半では原因別疾患に関する知識だけではなく,必ずケアの解説が付いています。最後はプリオン病で締めくくられていますが,読み終えたとき,「看護師・看護学生が活用できる医学専門書」と推奨したいと思いました。専門職者に幅広く読まれることを期待したいと思います。
目 次
第I章 認知症の定義,概要,経過,疫学
第II章 認知症の診断
第III章 認知症の治療原則と選択肢
 A.認知症症状への対応・治療
 B.薬物治療各論
 C.非薬物療法
 D.合併症とその治療
 E.医学的管理のありかた
第IV章 経過と治療計画
 A.予防
 B.軽度認知障害
 C.重症度別対応
第V章 Alzheimer病
第VI章 血管性認知症
第VII章 Lewy小体型認知症
第VIII章 前頭側頭型認知症
第IX章 進行性核上性麻痺
第X章 大脳皮質基底核変性症
第XI章 Huntington病
第XII章 プリオン病

略語一覧
索引