クリニカルクエスチョンにこたえる!
臨床試験ベーシックナビ

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各科専門医や研修医が、臨床試験に関する基本的な知識を網羅的に修得できるよう、本書では臨床現場で感じるクリニカルクエスチョンに基づき、プロトコール(臨床試験実施計画書)の作成手順や記載内容に沿って、必須事項を分かりやすく、かつ簡潔にまとめた。臨床試験に関する基礎知識の修得と、適正な計画立案・実施をするために不可欠な1冊。巻末にはUMIN登録の方法も収載。
編集 臨床試験を適正に行える医師養成のための協議会
発行 2012年02月判型:A5頁:176
ISBN 978-4-260-01430-4
定価 2,200円 (本体2,000円+税)

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 「臨床各領域の専門医たるものは臨床試験の基礎知識を有しているべき」との理念のもと,わが国において適正に臨床試験(治験を含む)を行える医師を養成する目的を掲げ,数年間の準備期間を経て,2010(平成22)年2月に「臨床試験を適正に行える医師養成のための協議会(臨床試験医師養成協議会):Physicians' Education Council of Japan for Clinical Trials(PECJCT)」が高久史麿氏(日本医学会会長)を会長として設立されました。
 その後,わが国の専門医制度を統括している日本専門医評価・認定機構理事長・池田康夫氏のご協力を得て,認定機構加盟75学会に2回のアンケート調査を実施しました。その結果,第1回目の調査(回答率82%)で上記の理念に賛成との回答が90%,統一した教育プログラムが必要との回答が93%の学会から得られました。続く第2回目の調査でも数多くの学会から本協議会の活動に協力していただける旨の回答をいただくことができました。
 そこで,本協議会として「臨床試験計画の立てかた,基本的な必須事項について分かりやすく解説したテキスト」を作成し,臨床試験を適正に実施できる医師養成の一助とする方向で話がまとまりました。高久氏から,臨床薬理学に造詣の深い先生方が本テキストを作成したほうがよいとのご助言を受け,臨床薬理学教育に深く関わっておられる日本臨床薬理学会の先生方や臨床試験(治験)に実際に関わっている多方面の方々に執筆をお願いし,刊行に至るまで幾多のディスカッションを重ねてまいりました。
 本書は,臨床各現場で先生方がクリニカルクエスチョンを感じ,臨床試験を通してそれを検証する際のプロセスに沿ってまとめられています。つまり,クリニカルクエスチョンに基づき,プロトコール(臨床試験実施計画書)の作成順序や記載内容に沿って,必須事項や考慮すべき事項をわかりやすく解説している点が特徴です
 臨床試験の実施におけるナビゲーション的役割をもつ本書は,臨床試験を初めて実施してみようとする先生方(研修医)にとっては非常に参考になるものとなりましょうし,またすでに臨床試験を実施されている指導的立場の先生方(指導医)にも教育のツールとしてお使いいただけるものであると確信しています。
 前述のアンケート調査の結果を受け,今後,臨床の各専門分野の医師が臨床試験の基本的知識を有し,臨床試験を適正に実施できるようになるために,本書に提示されている事項が多くの学会において専門医取得のための教育研修項目の一つとなることを期待します。加えて,第一線で日常診療に関わる先生方においても臨床試験を適正に実施するための基礎知識を有していることが必要であると考え,わかりやすく簡潔に解説していますので,ぜひご一読を願います。
 日常診療におけるクリニカルクエスチョンに対する適正な研究方法を多くの医師が理解し,わが国の医療の発展に貢献できるようになるため,本書がその一助となれば幸いです。まずは,本書の最初の数頁を読んでみてください
 最後に,本書の作成にあたり,ご助言,ご協力をいただいた日本医学会,日本専門医評価・認定機構,日本医師会,日本製薬工業協会をはじめ多くの方々に深謝申し上げます。

 2012年1月
 臨床試験医師養成協議会副会長
 日本臨床薬理学会元理事長
 昭和大学医学部臨床薬理学教授
 小林 真一

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 序

序章 クリニカルクエスチョンに基づく臨床試験の考えかた・進めかた

第1章 臨床試験の基礎知識とそのポイント
 1.研究チーム
 2.臨床試験
 3.治験
 4.臨床研究の種類
 5.第I相試験(中心的な試験:臨床薬理試験)
 6.第II相試験(代表的な試験:探索的試験)
 7.第III相試験(代表的な試験:検証的試験)
 8.第IV相試験(市販後の調査・試験)
 9.非臨床試験
 10.国際共同試験
 11.大規模臨床試験
 12.医師主導臨床試験
 13.研究デザイン
 14.ランダム化(内的妥当性の確保)
 15.エンドポイント
 16.プラセボ(placebo)
 17.成績の解析(ITT,PPS解析)
 18.臨床試験に必要な統計的考えかた
 19.品質管理(モニタリング)と品質保証(監査)
 20.補償責任と賠償責任
 21.Evidence-based Medicine(EBM)
 22.薬物作用の個体差・人種差
 23.薬理ゲノミクス
 24.インフォームドコンセント
 25.被験者保護と個人情報などの保護
 26.匿名化
 27.安全性の確保
 28.バイアス
 29.臨床研究審査委員会(IRB)

第2章 臨床試験に関する指針・規定のポイント
 1.臨床薬理学
 2.臨床試験の歴史
 3.ヘルシンキ宣言
 4.臨床研究に関する倫理指針
 5.各種倫理指針
 6.医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP)
 7.薬事法
 8.医薬品の承認システム
 9.医薬品添付文書の活用
 10.保険制度
 11.保険外併用療養費制度
 12.薬事行政
 付録 UMIN登録の方法

索引

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新薬・医療機器開発に不可欠な臨床試験のガイドブック
書評者: 猿田 享男 (慶大名誉教授/医療研修推進財団理事長)
 日本において新薬や医療機器の開発の遅れが指摘されてから,かなりの年月が経過した。厚生労働省,医療関係者および企業の方々の努力にもかかわらず,いまだ思うような成果がみられていない。文部科学省でも,医科系大学や研究所の最先端研究を少しでも早く実用化させるため,橋渡し研究の拠点を整備し,新薬や新しい医療機器の開発支援に力を入れている。このような動きを加速させるために重要なことは,新薬や医療機器の開発において欠かすことができない臨床試験をもっと推進させることであり,それには医師,薬剤師,看護師をはじめ臨床試験に携わる多くの方々に臨床試験の重要性を理解してもらう必要がある。

 臨床試験にはいろいろな種類があり,新薬や医療機器の開発ばかりでなく,各診療領域において,診断や治療に関する日本人のエビデンスを得るための大規模臨床試験も重要な試験であり,その普及も強く求められている。

 このように,近年,臨床試験がますます重要となってきたことから,臨床各領域の専門医たるものは,臨床試験の基礎知識を有すべきとの理念の下,わが国において適正に臨床試験(治験を含む)を行える医師を養成する目的で,臨床試験医師養成協議会(委員長:高久史麿 日本医学会会長)が2010年2月に設立された。その後,日本専門医制評価・認定機構加盟75学会の支援を得て,この協議会として臨床試験を適正に実施できる医師養成の一助とする方向でテキストの作成が求められた。そこで,日本臨床薬理学会元理事長 小林真一教授が中心となり,臨床薬理学に造詣の深い先生方が力を合わせて刊行したのが本書である。

 本書は,今後の医療における臨床試験の重要性を考慮し,医師や医学生ばかりでなく,臨床試験に関与するすべての方々に役立つように,大変わかりやすくまとめられている。まず,臨床試験とは何か,臨床試験の種類やその実施の意義など,総論的な解説に続いて,実際に臨床試験を実施していく手順やその進め方について,臨床薬理学に精通している先生方のこれまでの経験に基づき,詳細に解説されている。すなわち,研究デザイン,研究方法と研究対象者の選出法,試験期間やエンドポイントの設定法,統計処理,さらに試験の品質管理,臨床試験に伴う医療事故やその補償についても記載され,極めて有用なテキストになっている。さらに,臨床試験の実施手順とともに,実施に際して知っておくべき諸事項,例えば薬剤効果の個人差・人種差,薬理ゲノミクス,薬事関係の法的規制に関しても記載されており,この一冊を読めば臨床試験に関するすべてが理解できる素晴らしいテキストである。

 これからますます重要となる臨床試験について,医師,薬剤師,看護師をはじめ,医療職をめざす学生の方々にもぜひ読んでいただき,日本で立派な臨床試験を実施してもらいたい。

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