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精神腫瘍学


編集:内富 庸介/小川 朝生

  • 判型 B5
  • 頁 436
  • 発行 2011年10月
  • 定価 8,640円 (本体8,000円+税8%)
  • ISBN978-4-260-01379-6
精神腫瘍学全般にわたって、基本から実践までまとめたテキストブック
インフォームドコンセントを前提としたがん医療が推進される時代において、あらゆる情報公開が加速し、患者、家族、そして医療者も、ますます衝撃的な情報と取り組まなければならなくなった。緩和ケアはかつては終末期のイメージがあったが、これからは、がんの診断、治療、リハビリテーション、再発・進行、積極的抗がん治療の中止など全臨床経過において、精神科医の関与が求められるだろう。サイコオンコロジーについて知りたい医療者必携の書。
序 文


 『サイコオンコロジー:がん医療における心の医学』(山脇成人監修,内富庸介編集,診療新社刊)が世に出たのは1997年であった.当時はまだ,日本サイコオンコロジー学会が設立(1986年)されて10年余り経たころであった.日本発の研究成果はあまり多くなく,がん告知も一部の医師が行...


 『サイコオンコロジー:がん医療における心の医学』(山脇成人監修,内富庸介編集,診療新社刊)が世に出たのは1997年であった.当時はまだ,日本サイコオンコロジー学会が設立(1986年)されて10年余り経たころであった.日本発の研究成果はあまり多くなく,がん告知も一部の医師が行っているのみで,がん患者の心のケアを専門に扱う施設も数えるほどであった.1995年には,第2回国際サイコオンコロジー学会が故河野博臣会長のもと神戸で開催され,国立がんセンターに精神腫瘍学部門が創設された.まさに啓発期から学術発展期への移行期に上記の出版は企画されたものであったが,結果としてその中では主に海外の知見に基づいてがん患者・家族の心のケアの重要性を紹介する内容になってしまった.
 その後,情報化社会の波に洗われ,がんの告知が少しずつがん医療に浸透しはじめた.がんの情報開示が患者医師関係の信頼構築に結び付くことが認識されるようになると,現場の医療者による心のケアの実践や精神腫瘍学の専門家による治療を求める声も大きくなり,がん患者を担当する精神科医,心療内科医をはじめとする医療者も増加してきた.そして,信頼できる心の評価手法や質問紙法が開発され導入されたことにより,日本発の研究報告も21世紀に入り著明に増加してきた.
 2007年にがん対策基本法が施行され,「早期からの緩和ケア」が謳われたことにより,厚生労働省の委託事業として,がん患者の心のケアの教育研修事業は爆発的に促進した.一般社団法人化を果たした(2009年)日本サイコオンコロジー学会が協力して,がん医療に携わる医師すべてにうつ病,せん妄,コミュニケーション技術の学習機会を日本全国で提供することになった.国立がん研究センター主催の緩和ケアチーム研修会では,全国の緩和ケアチームを対象に多職種による精神症状緩和に関する実践的な教育が行われている.日本サイコオンコロジー学会は会員数1,000人を超える学術団体となり,医師,看護師,心理職を対象とした研修会を継続的に開催している.さらに患者・家族から信頼される医師を紹介する目的で,登録精神腫瘍医という制度も始めた.
 文部科学省は,がんプロフェッショナルプランで専門家養成に精神腫瘍学領域の科目を数多く採用している.また,厚生労働省はがん医療に携わる医師のための学習プログラムeラーニングを構築し,その中に精神腫瘍学に関する基本教育および専門教育のプログラムが整備された.このプログラムを利用することにより,すべての医療者がいつでも,どこでも精神腫瘍学の教育プログラムに触れることができるまでになった.さらに,教育の機会を提供するだけではなく,提供される精神心理的ケアの質を評価するための全国調査も実施された.日本の精神腫瘍学は,学会創設(1986年)から啓発の10年,学術発展の10年を経て,現在,教育の10年の半ばに達している.
 最後に,精神腫瘍学の発展のために現在最も活躍中のサイコオンコロジストの方々に寄稿していただいたことに深く感謝申し上げたい.また,丹念に編集に協力してくださった,医学書院医学書籍編集部の安藤 恵,大橋尚彦の両氏に深謝いたします.本書が,広く精神腫瘍学を学ぶ医療関係者の参考になり,患者,家族のQOL向上に貢献できたらと願う.また,本書が日本のサイコオンコロジーの目覚ましい発展の証左となるだけでなく,次世代が担うべき数多くの未解決の問題を明らかにし,挑戦する際の礎となればと願う.

 2011年9月
 内富庸介,小川朝生
目 次
1 Introduction
  I 精神腫瘍学の歴史

【A】基本編
1 悪性腫瘍総論
  I 腫瘍生物学
  II 腫瘍病理学
  III 腫瘍診断学
  IV 腫瘍外科学総論
  V がん薬物療法
  VI 腫瘍放射線治療学総論
  VII Oncology Emergency
2 罹患・生存と心理社会的問題
  I 心理社会的問題とがん罹患・生存に関する疫学
  II 心理社会的要因とがん発症
  III 心理社会的要因とがん予後
  IV がん罹患後の未就労・離婚
  V アルコールとがん発症
  VI パーソナリティとがん検診受診行動に関する疫学研究
  VII がん患者における喫煙問題と医療者の役割
  VIII 検診と心理的問題
3 がんに対する通常の心理的反応とその基本的対応
  I がんの臨床経過に添った患者の心理的反応

【B】実践編
1 コンサルテーションとアセスメント
  I コンサルテーションの基本
  II 精神腫瘍学における初期アセスメントの方法;包括的アセスメント
2 身体症状マネジメントをめぐる問題
  I 疼痛
  II 倦怠感
  III 悪心・嘔吐
  IV 呼吸困難
  V その他の身体症状
  VI 栄養,輸液
  VII 終末期がん患者の予後予測
  VIII 終末期の鎮静をめぐる問題
3 精神医学をめぐる問題
 A がんによって生じた問題
  I 睡眠障害
  II うつ病,適応障害
  III 希死念慮,自殺企図,自殺
  IV 不安障害
  V せん妄
 B がんに並存する問題
  I 認知症
  II 統合失調症
  III 発達障害
  IV 物質依存
  V パーソナリティ障害
  VI てんかん
  VII 薬剤による精神神経症状
4 介入方法
  I 薬物療法,精神科薬物療法(抗精神病薬)
  II 薬物療法(抗うつ薬)
  III 薬物療法(抗てんかん薬,抗不安薬,睡眠薬,認知症治療薬)
  IV 薬物間相互作用
  V リハビリテーション
  VI 心理社会的介入
5 福祉・介護に関する問題
  I 福祉・介護概論
  II 補完代替医療概論
  III 緩和医療概論
6 心理社会的問題
  I QOL尺度
  II 患者・家族が望むこと
  III ライフサイクルについて
  IV 終末期の精神医学的問題
7 コミュニケーション
8 精神腫瘍学と連携

【C】その他さまざまな課題
1 疾患別
  I 呼吸器系腫瘍
  II 消化器系腫瘍(上部)
  III 消化器系腫瘍(下部)
  IV 肝・胆・膵における腫瘍
  V 乳がん
  VI 泌尿器系腫瘍
  VII 頭頸部腫瘍(食道がんを含む)
  VIII 婦人科系腫瘍
  IX 造血器系腫瘍
  X 皮膚がん,骨軟部腫瘍
  XI HIV
  XII 内分泌系腫瘍
  XIII 原発不明腫瘍
  XIV 中枢神経
  XV 臓器移植をめぐる精神医学的問題
2 小児がん
3 高齢者腫瘍学
4 サバイバーシップ
5 家族,遺族
  I はじめに
  II 家族のメンタルヘルス
  III 遺族のメンタルヘルス
  IV 家族・遺族のコンサルテーション
6 家族性腫瘍
7 医療倫理および関連する法律
8 意思決定能力

【D】教育,研修,研究
1 教育研修
2 海外各国の精神腫瘍学の取り組み
  I 国際サイコオンコロジー学会(IPOS)
  II ガイドラインの作成と各地域での取り組み
  III 東アジアにおける精神腫瘍学の取り組み
3 精神腫瘍学の研究

索引