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服薬支援とケアプランに活かす

非定型抗精神病薬Q&A


編集:萱間 真美/稲田 俊也/稲垣 中
編集協力:宮本 有紀/瀬戸屋 希

  • 判型 A5
  • 頁 344
  • 発行 2012年11月
  • 定価 3,240円 (本体3,000円+税8%)
  • ISBN978-4-260-01566-0
よりよいケアのために知っておきたい、薬物療法の考え方
統合失調症治療の中心が非定型抗精神病薬治療になっている今日、患者をよりよい方向に導く介入の1つに、薬の変更や減量単純化、服薬アドヒアランスの向上がある。しかし、看護師はとかく薬の知識に乏しく、観察の成果を薬物療法にフィードバックすることも苦手、医師任せとなっているのが現状である。本書は、個々の薬の特徴、精神科薬物療法の考え方と看護介入について分かりやすく解説した。精神科看護のさらなる向上に資したい。
序 文
はじめに

この本が作られた経過
 平成18年度から3年間にわたって,私たちは「精神疾患を有する人の地域生活を支えるエビデンスに基づいた看護ガイドラインの開発(厚生労働科学研究費補助金,地域医療基盤開発推進研究事業)」を行いました。研究で作成したガイドラインの構成を...
はじめに

この本が作られた経過
 平成18年度から3年間にわたって,私たちは「精神疾患を有する人の地域生活を支えるエビデンスに基づいた看護ガイドラインの開発(厚生労働科学研究費補助金,地域医療基盤開発推進研究事業)」を行いました。研究で作成したガイドラインの構成をもとに,精神医学・精神薬理学の第一線で活躍されている専門家による執筆をいただき,本書「服薬支援とケアプランに活かす非定型抗精神病薬Q&A」になりました。
 精神科病棟や地域で働く医療職にとって,薬物療法によるアプローチは,心理社会的アプローチとともに不可欠です。今日,非定型抗精神病薬による薬物療法への転換が進み,薬物療法は大きく変化しました。処方は医師が患者との信頼関係を基盤に,その症状や経過をもとに行う診立てと治療の見通しに基づいて行います。看護職はその薬物療法がどのように機能しているか,あるいはさらなる調整が必要であるかについて経過を観察し,24時間のケア対象者の様子や精神的・身体的反応について医師に情報を提供します。
 抗精神病薬は,こうした看護職の役割を果たすうえで,理解や調整が決して容易な薬物ではありません。非定型抗精神病薬は,作用・副作用ともに定型抗精神病薬とは重視すべきポイントが異なっています。さらに,同じ種類や量の薬物を摂取しても,その時のケア対象者の精神的・身体的な状況によって,その効果や副作用の出現が一様でなく,常に見守りが必要です。また,ケア対象者の症状の緩和はときにかなわず,病的体験が一向に収まらない場合には,ケア対象者自身の安全を保つとともに,病棟全体,あるいは地域の環境調整を含めた,治療的環境を作り出すことに困難を伴うこともあります。

看護職が薬物療法を理解すること,関わることの大切さ
 看護職は処方をしないのに,なぜ薬物療法の本を読み,理解することが必要なのでしょうか。それには2つの理由があります。
 1つは,医療の役割の大前提である,「ケア対象者に害を与えない」という原則です。ヒポクラテスの誓いの一節には,「自身の能力と判断に従って,患者に利すると思う治療法を選択し,害と知る治療法を決して選択しない」という言葉があります。看護職は,ケア対象者が最終的に薬物を摂取する場面である,「与薬」に関与する職種です。さまざまな状況や場面で,この薬を飲むことが適切であるという判断を経ずに,機械的にこの役割をとってはならないのです。ナイチンゲールは,ナイチンゲール誓詞のなかで,「毒となるものを知りつつ与えることを決してしない」と述べています。私たちは,ケア対象者がどんな薬を飲んでいるのか,それによって何が起こり得るのかを知ったうえで,その場にいる必要があると思います。
 もう1つは,ケア対象者の生活の質の向上です。統合失調症患者への看護は,従来の症状の沈静化から,当事者自身の生活を取り戻す,回復・リカバリへと焦点を移しつつあります。慢性疾患である精神障害では,病気との付き合いは長期にわたります。再燃を繰り返すことが機能の低下につながることが広く知られ,また啓発されるようになり,継続したコントロールを得るための処方のうえでの工夫もなされるようになりました。服薬と患者自身の人生の調和(コンコーダンス)が志向されるようになっています。
 薬との付き合いが長くなるということは,その間に感情的に,病状に変化が起こりうるということです。主治医からの説明に,ある日は納得して服薬を続けようと思ったとしても,本人にしかわからない「飲み心地」や,自分の体の思わぬ反応,症状,そして気持ちの波によって服薬への思いもまた揺れ動きます。それは当事者だけでなく,家族もまた同様です。身近であるがゆえに,薬を飲み続けることへの不安や疑問,そして家族自身の受けとめ方を当事者にぶつけてしまうこともあります。こうしたときに,病棟・地域で服薬について話せる看護職が身近にいれば,揺れ動く気持ちを最初に受け止め,当事者や家族が「腑に落ちる」的確な説明を提供する資源となります。説明と同意は一度で完了するのではなく,生活の中のさまざまな出来事や変化のたびにその体験と密着した内容で,繰り返し,正確に行われる必要があります。

チーム医療と薬物療法へのかかわり
 このような薬物療法へのかかわりは,看護職のみで行うことではありません。主治医の,薬剤師の,そして当事者と家族の力を活用しながら,ともに回復に向かうチームとして取り組みます。チームとして働くうえでは,それぞれのチームメンバーに力量が必要です。薬のことは医師に,薬剤師に聞けばよいということではないでしょう。必要な知識を持ち,判断をし,その上で相談や協議をすることが必要です。そのためには,正確な知識と当事者の体験に向かう想像力,そしてコミュニケーションの力が求められるのです。
 近年,地域では福祉職とも共同してケアにあたるチームが育っています。多職種であればあるほど,それぞれの職種に期待される役割の全てが重要です。看護職にとって薬物療法や身体症状を理解するための知識の量と質とは,チームの機能を大きく助けるものであり,チームの中で期待されている役割です。

 この本は,精神薬物療法に関する最新の知識を,実践・研究・教育に取り組む,第一線の専門家が解説したものです。看護師,准看護師,保健師などの看護職はもちろん,精神科チーム医療に参加する,保健,医療,福祉領域のすべてのメンバーにとって,わかりやすく,最新の知識を得ることのできる構成になっています。あらゆる場で展開される精神医療の質の向上のためにお役に立てることを,心から願っています。

 平成24年 秋
 編者を代表して 萱間真美
書 評
  • 医師と看護師が共同執筆というユニークな薬の本 (雑誌『精神看護』より)
    書評者:風祭 元(帝京大学名誉教授/元都立松沢病院長)

     わが国の精神科病院入院患者の大部分を占める統合失調症圏の治療に、最初の「定型」抗精神病薬が導入されたのは1955年頃である。これらの定型抗精神病薬は精神病症状の改善や再発の防止には著しい効果を示し、精神科医療に画期的な改革をもたらしたが、錐体外路性や自律神経性の副作用が高率に出現し、医師や看護師は...
    医師と看護師が共同執筆というユニークな薬の本 (雑誌『精神看護』より)
    書評者:風祭 元(帝京大学名誉教授/元都立松沢病院長)

     わが国の精神科病院入院患者の大部分を占める統合失調症圏の治療に、最初の「定型」抗精神病薬が導入されたのは1955年頃である。これらの定型抗精神病薬は精神病症状の改善や再発の防止には著しい効果を示し、精神科医療に画期的な改革をもたらしたが、錐体外路性や自律神経性の副作用が高率に出現し、医師や看護師は、副作用に対応しながら、いかに薬を続けるかに苦心したものであった。

     1990年代から2000年代にかけて、リスペリドンなどの「非定型」抗精神病薬が用いられるようになった。非定型抗精神病薬は、従来の定型抗精神病薬に比べて副作用が少なくなったが、その一方で、体重増加や代謝異常の出現などの新しい副作用が起こることが知られてきた。

     精神疾患の治療には、服薬を続けながら、生活療法や社会復帰支援を加えた、医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどの多職種チームによる包括的援助が必要であり、そのためには治療に関与する多くの人たちが、薬の効果や副作用をよく知って、適切に対処することが求められる。

     本書は、厚生労働省の補助による地域医療基盤開発推進研究事業で「精神疾患を有する人の地域生活を支えるエビデンスに基づいた看護ガイドライン」の作成に関与した、精神医学・看護学領域の第一線で活躍している臨床家により執筆された。わが国で用いられている、リスペリドン、オランザピン、クエチアピンフマル酸塩、アリピプラゾール、ペロスピロン塩酸塩水和物、ブロナンセリン、クロザピン、パリペリドンなどの非定型抗精神病薬について、それぞれの剤形、効果や副作用の特徴について詳細に解説し、さらにQ&A方式によるわかりやすい説明を加えたものである。

     最初に、統合失調症の薬物治療の基礎知識を述べた序章があり、「Part 1 非定型抗精神病薬はどんな薬?」「Part 2 各非定型抗精神病薬の効果と副作用の特徴」「Part 3 薬が効かないときに考えること」「Part 4 患者の生命およびQOLに影響する副作用のモニタリング」「Part 5 患者が薬を飲み続けられるための援助」などの章が続き、最後に、看護師が薬物療法にかかわる意義が述べられている。

     本書は、通読すれば、現在用いられている非定型抗精神病薬をよく知ることができ、また、ナースステーションなどに置いて、診療に疑問が起こったときにも、手軽に参照することができる。

     治療の現場に毎日携わっている医師と看護師との共同執筆という点でもユニークで、広く精神科の医療の実践に役立つ良書として、多くの方に読まれることが望まれる本である。

    (『精神看護』2013年7月号掲載)
目 次
 はじめに

序章 統合失調症の薬物治療の基礎知識
 A 抗精神病薬とはどんな薬か
 B わが国の統合失調症に対する薬物療法の現状
 C 統合失調症に対する薬物療法の考え方とアルゴリズム

Part 1 非定型抗精神病薬とはどんな薬?
 Q1 非定型抗精神病薬には,どんな特徴がありますか?
 Q2 非定型抗精神病薬は効果がわかるまで,
    どれくらいの期間様子をみればいいですか?
 Q3 非定型抗精神病薬には,どんな剤形がありますか?
 Q4 非定型抗精神病薬はどのくらいの量を,どのくらいの間隔で飲みますか?
 Q5 一緒に飲めない薬はありますか?
    また,アルコールやタバコとの併用による影響はありますか?

Part 2 各非定型抗精神病薬の効果と副作用の特徴
リスペリドン risperidone
 Q1 リスペリドンはどんな特徴がある薬ですか?
 Q2 リスペリドンにはどんな剤形がありますか?
 Q3 リスペリドンはどのくらいの量を,どのくらいの間隔で飲みますか?
 Q4 リスペリドンにはどんな副作用がありますか?
 Q5 リスペリドンを服用するとき,気をつけることはありますか?
オランザピン olanzapine
 Q1 オランザピンはどんな特徴がある薬ですか?
 Q2 オランザピンにはどんな剤形がありますか?
 Q3 オランザピンはどのくらいの量を,どのくらいの間隔で飲みますか?
 Q4 オランザピンにはどんな副作用がありますか?
 Q5 オランザピンを服用するとき,気をつけることはありますか?
クエチアピンフマル酸塩 quetiapine fumarate
 Q1 クエチアピンはどんな特徴がある薬ですか?
 Q2 クエチアピンにはどんな剤形がありますか?
 Q3 クエチアピンはどのくらいの量をどのくらいの間隔で飲みますか?
 Q4 クエチアピンにはどんな副作用がありますか?
 Q5 クエチアピンを服用するとき,気をつけることはありますか?
アリピプラゾール aripiprazole
 Q1 アリピプラゾールはどんな特徴がある薬ですか?
 Q2 アリピプラゾールにはどんな剤形がありますか?
 Q3 アリピプラゾールはどのくらいの量をどのくらいの間隔で飲みますか?
 Q4 アリピプラゾールには,どんな副作用がありますか?
 Q5 アリピプラゾールを服用するとき,気をつけることはありますか?
ペロスピロン塩酸塩水和物 perospirone hydrochloride hydrate
 Q1 ペロスピロンはどんな特徴がある薬ですか?
 Q2 ペロスピロンにはどんな剤形がありますか?
 Q3 ペロスピロンはどのくらいの量を,どのくらいの間隔で飲みますか?
 Q4 ペロスピロンにはどんな副作用がありますか?
 Q5 ペロスピロンを服用するとき,気をつけることはありますか?
ブロナンセリン blonanserin
 Q1 ブロナンセリンはどんな特徴がある薬ですか?
 Q2 ブロナンセリンにはどんな剤形がありますか?
 Q3 ブロナンセリンはどのくらいの量を,どのくらいの間隔で飲みますか?
 Q4 ブロナンセリンにはどんな副作用がありますか?
 Q5 ブロナンセリンを服用するとき,気をつけることはありますか?
クロザピン clozapine
 Q1 クロザピンはどんな患者に処方されますか?
 Q2 クロザピンはどんな特徴がある薬ですか?
 Q3 クロザピンにはどんな剤形がありますか?
 Q4 クロザピンはどのくらいの量を,どのくらいの間隔で飲みますか?
 Q5 クロザピンにはどんな副作用がありますか?
 Q6 クロザピンを服用するとき,気をつけることはありますか?
パリペリドン paliperidone
 Q1 パリペリドンはどんな特徴がある薬ですか?
 Q2 パリペリドンにはどんな剤形がありますか?
 Q3 パリペリドンは,どのくらいの量を,どのくらいの間隔で飲みますか?
 Q4 パリペリドンにはどんな副作用がありますか?
 Q5 パリペリドンを服用するとき,気をつけることはありますか?

Part 3 薬が効かないときに考えること
 Q1 薬が効かないときはどうするのですか?
 Q2 他にどんな場合に薬を変えますか?
 Q3 「減量単純化」とは何ですか? また,どのように行うのですか?
 Q4 スイッチングとは何ですか?
 Q5 スイッチングにはどのような方法がありますか?
 Q6 スイッチングにふさわしい時期はありますか?
 Q7 スイッチング後,次の薬が効くまでどのくらい待てばよいですか?
 Q8 スイッチングによっておこる症状はなんですか?
    看護師がとくに観察したり対処したりすべきことがありますか?

Part 4 患者の生命およびQOLに影響する副作用のモニタリング
糖尿病
 Q1 非定型抗精神病薬を飲むと糖尿病になりやすいのですか?
 Q2 糖尿病を予防するための観察ポイントは?
 Q3 糖尿病のリスクや血糖値の問題がある患者には
    どのようなケアをすればよいでしょうか?
脂質異常症(高脂血症)
 Q1 非定型抗精神病薬を飲むと脂質異常症(高脂血症)になりやすいのですか?
 Q2 脂質異常症(高脂血症)を予防するための観察ポイントは?
 Q3 脂質異常症(高脂血症)のリスクや問題がある患者には
    どのようなケアをすればよいでしょうか?
体重増加
 Q1 非定型抗精神病薬を飲むと体重が増加しやすいのですか?
 Q2 体重増加を予防するための観察ポイントは?
 Q3 体重増加のリスクや問題がある患者には
    どのようなケアをすればよいでしょうか?
性と生殖
 Q1 性と生殖に関するアセスメントのポイントは何ですか?
 Q2 非定型抗精神病薬を服用している患者にも,
    性と生殖に関する副作用は現れるのですか?
 Q3 患者に性と生殖に関する悩みがありそうな場合には,どうすればよいですか?
 Q4 妊娠・育児の可能性がある患者に,どのように助言をするとよいですか?
錐体外路症状
 Q1 錐体外路症状とはどんな副作用ですか?
 Q2 非定型抗精神病薬でも錐体外路症状は現れますか?
 Q3 錐体外路症状を早めに見つけるための観察ポイントは?
 Q4 錐体外路症状がみられたら,どのような対応をすればよいでしょうか?
悪性症候群
 Q1 悪性症候群とはどんな副作用ですか?
 Q2 非定型抗精神病薬でも悪性症候群はおこりますか?
 Q3 悪性症候群を防ぐための観察ポイントは?
 Q4 悪性症候群の徴候がみられたら,どのような対応をすればよいでしょうか?
多飲症・水中毒
 Q1 多飲症・水中毒とはどのような病態でしょうか?
 Q2 非定型抗精神病薬でも多飲症や水中毒はおこりますか?
 Q3 多飲症を早めに見つけるために注目すべき点は?
 Q4 多飲症患者に水中毒の徴候が認められた場合,
    どのような対応をすればよいでしょうか?
便秘・尿閉
 Q1 統合失調症患者ではなぜ便秘・尿閉がよくみられるのでしょうか?
 Q2 便秘・尿閉を早めに見つけるための観察ポイントは?
 Q3 便秘・尿閉の徴候がみられたら,どのような対応をすればよいでしょうか?

Part 5 患者が薬を飲み続けられるための援助
 Q1 「薬を飲み続けなければいけないのですか?」と聞かれたら,
    どのように対応すればよいでしょうか?
 Q2 患者が薬を飲むのをやめてしまうのはどうしてですか?
 Q3 患者が薬を飲み続けられるためにどんなケアができますか?
 Q4 非定型抗精神病薬のほうが定型抗精神病薬よりも飲み続けやすいのですか?
 Q5 デポ剤はどんな患者に使われますか?
 Q6 現在,使用されているデポ剤の特徴を教えてください
 Q7 デポ剤はどのように使われますか?
 Q8 デポ剤を使用するにあたって,どんな注意点がありますか?

付 看護師が薬物療法にかかわる意義

 索引