訪問看護元気化計画
現場からの15の提案

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在宅への流れを加速したい医療行政の思惑とは裏腹に、在宅医療も訪問看護も伸び悩んでいる。しかし、誇るべき訪問看護は確かにある。それがまだ点にしか過ぎないだけ。それをどうやって線としてつなげ、面として展開していくか。訪問看護のパイオニアである著者らが全国の訪問看護の現場を訪ね歩いたなかから、この先10年の再興のビジョンを現場からの発想に徹して見事に描き出した。
宮崎 和加子 / 川越 博美
発行 2010年06月判型:B6頁:208
ISBN 978-4-260-01055-9
定価 1,980円 (本体1,800円+税)
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はじめに

全国行脚をさせていただきました

 私たち二人は、不思議な縁がありました。年齢は十歳くらい離れているのに何だが気があって約二十年弱の付き合いになっています。私たちが知り合ったのは、一九九二年訪問看護ステーションの制度がスタートした年です。東京で各々がステーション立ち上げに奮闘し、その後、一九九三年に東京訪問看護ステーション連絡会設立の中心的メンバーとして動き、そして現場からの発信を試みてきました(宮崎は「北千住訪問看護ステーション」、川越は「白十字訪問看護ステーション」)。
 二人で、全国の訪問看護の現場訪問しようと話し合ったのが二〇〇七年六月です。川越は大病を患い、宮崎は東京都某区長選挙に出て敗れるという大きな経験をした後のことでした。二人のライフワークである日本の訪問看護を、原点に戻って考え直そうと思ったのです。そこで、全国の現場を訪ねて現場の皆さんと語り合い、今後をともに考えることを呼びかけました。
 二〇〇七年九月から二〇〇八年八月まで、月一回の現場訪問を十二回にわたって実施しました(本稿文末一覧表参照、本サイトでは省略)。そしてその報告を、雑誌『訪問看護と介護』(医学書院発行)に連載で掲載させていただきました。
 全国行脚の主な内容は次の三つです。(1)訪問看護に同行させてもらい、その実際を肌で感じる。(2)取材したステーションのみならず近隣のステーションにも声をかけていただき、都道府県の訪問看護ステーション連絡協議会などの皆さんと本音で語り合う、(3)「訪問看護││来た道、行く道」と題して講演させてもらい、私たち自身の経験も披露する。
 十五か所の訪問看護ステーションで受け入れてくださり、三十五件の利用者宅を同行訪問。語り合う会では、豪華な食事を共にし(ところによっては一緒に宿泊)、結果的に延べ一、二〇〇名の訪問看護師の方々に講演を聞いていただきました。受け入れてくださった方々、本当にありがとうございました。この場をお借りして、心よりお礼を申し上げます。
 全国行脚で、私たちの中で、そうだろうと思いつつ、いま一つ自信がもてなかった考え方、あるいは、これまで経験してこなかった訪問看護の新たな側面にふれるなど、多くを見て経験することで、自分たちの見方や考え方を相対化できたように思います。それを本書でご報告させていただきます。

私たち二人の“夢”の表現であり、“提言”です

 政治も、社会保障も、国民の生活も先行きがわからない状況の中で、二〇〇八・二〇〇九年を一つの定点として、日本の訪問看護を概観してみました。また、二人いっしょに、ときに別々に世界のさまざまな国の在宅ケア・訪問看護の研修・視察に行きました。そこで学んだことも勘案し、今後の日本の訪問看護のあり方について、二人で“夢”を語り合いました。提言もさせていただきました。「まだまだ言い足りていない」と思われる方、逆に「こんなことできるはずない」と、両面からのご批判があるでしょう。しかし、これが私たち二人の現在の到達点です。
 第1部では、日本の訪問看護の現状を全国行脚で見たこと・出会ったことと統計とをミックスして表しました。第2部は、二〇二五年の日本の訪問看護の姿を二人で討論してみました。理屈ではなく、目に浮かぶ姿を表現してみたのです。それを15の提言にしてみました。今後の日本の訪問看護、いいえ地域での看護師の活動についての提言と呼びかけです。私たちは二〇二五年に生きているかどうかはわかりませんが、こんなことを考えていた看護師がいるということの一つの証です。
 私たち二人は、あまり制約を受けずに自由に発言できる身分です。エビデンスがしっかりしていないとお叱りを受けるかもしれませんが、長くこの分野に携わってきた者として、未来に向けての精一杯の発信です。

若い世代の看護師に期待します

 私たち二人に共通していることは、(1)現場を大事にすること、(2)看護の限りない可能性を信じていること、(3)看護観が似ていること、そして、(4)自由奔放な性格、(5)五十歳を超えたことでしょうか。もう少し詳しく言うと、つぎのようになるでしょう。
 学者・研究者・行政の立場ではなく、とにかく訪問看護を受ける人と実施する人がつながる“現場”が最も大事だと思っていることです。いい学説があっても現場で展開されてこその“実践の学問であること”で一致しています。現場の訪問看護師が生き生きしていて、利用者さんたちがいい顔で生きること、これが私たちの評価の基準です。
 また、診療補助業務(医療行為)だけでなく、療養上の世話(日常生活支援)を看護の基本的な使命として展開しようという看護観もかなり一致しています。そして看護職が病院内とか医療という範疇だけでなく、幅広く地域の中であらゆる健康レベルに適応・支援できる力をもっているという「看護の社会的責務と可能性」についても同じような考え方です。
 何より、歯に衣を着せないで言いたいことを言うこと、世界のさまざまな国の実情を見学し、そして、それを踏まえながら日本の将来を語ることなど自由奔放な気性(わがままであることも)も、お互いに大事にしていることです。
 最後に、二人とも五十歳、六十歳を過ぎ、これからの若い世代の看護職に大いに期待したいのです。私たちも命の続く限り頑張りますが、二十歳代、三十歳代のみなさんがこれからをつくっていく方々です。既成の枠にとらわれず、自由で独自の思考で、現場に基づいて展開していただきたいのです。一緒に未来を切り拓きましょう。

二〇一〇年二月
宮崎和加子

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はじめに

第1部 日本の訪問看護の現状
 訪問看護のこれまで、そして今
 地域で暮らす利用者・対象者の特徴と変化
 訪問看護ステーションの現状
 試行錯誤のステーション運営
 生き生きと活躍する訪問看護師
 訪問看護の“中身”を考える
 始まりつつある新たな動き

第2部 訪問看護発展のための15の提案
 夢から正夢に
 学生、病棟で働く看護師へ
  1 二十代で訪問看護の経験を
  2 “生活”と“人生”を支えるプロになろう
  3 看護で“社長”になろう
 現場の訪問看護師へ
  4 在宅ケアチームのリーダーになろう
  5 専門を極めよう
  6 組織マネジャーになろう
 看護師教育を変える
  7 訪問看護基礎教育の抜本的改革を
  8 大学と実践現場が協働しよう
  9 専門看護師、認定看護師に期待する
 制度・政策・その他
  10 二十四時間医療的ケアができる体制に
  11 三位一体型ステーションへ
  12 「地域ナーシングセンター」の実現を
  13 制度をシンプルに! 医療保険に一本化も
  14 訪問看護師十三万人体制の実現を
  15 訪問看護の全国組織を一つに

おわりに

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