研究を後押ししてくれる調査研究の入門書 (雑誌『保健師ジャーナル』より)
書評者:岡本 玲子(岡山大学大学院保健学研究科教授)
本書は,
『保健師ジャーナル』誌に2007年4月から,一路&真実のペンネームで12回にわたって連載された「めざせ! 学会デビュー」がきっかけで執筆されたものである。その連載は,読者のみなさんもおそ...
研究を後押ししてくれる調査研究の入門書 (雑誌『保健師ジャーナル』より)
書評者:岡本 玲子(岡山大学大学院保健学研究科教授)
本書は,
『保健師ジャーナル』誌に2007年4月から,一路&真実のペンネームで12回にわたって連載された「めざせ! 学会デビュー」がきっかけで執筆されたものである。その連載は,読者のみなさんもおそらく一度は「これおもしろ~い,読みやす~い」と目にされたことがあるだろう。
タイトルが「調査研究エッセンス」とあって,一見お堅いのではと思うものの,連載時の面白さ,読みやすさを十二分に引き継いでいる。終始一貫して,読者に語りかけるように書かれており,読者はみな,研究に取り組む姿勢を後押ししてもらっている気持ちになるはずだ。
とくによいところは,「私にも研究できるかも」「私も研究してみたい」と思わせてくれるところである。冒頭で著者は,この本がめざすものとして,研究することの楽しさと,「言いたいこと」や「知りたいこと」を研究という方法で形にする喜び,そしてその研究の成果がなんらかのかたちで社会の役に立ったときの喜び,それをぜひ感じてほしいと述べている。著者の,研究に対する熱い思いと研究に取り組む人たちへの愛情がひしひし伝わってくる。
その思いは,各章に散りばめられている囲み例とコラムにも表れている。囲み例では,研究の過程で生じる身近な出来事が例示され,そのあとで「この場合はこう考える」「これはこういう意味」と解説されている。そうすることによって,読者が具体的に理解できるように工夫されている。コラムには,研究者としての著者の経験にもとづく助言や豆知識が書かれており,本論のアクセントとなっている。「『今後の参考にします』と逃げるのではなく,まっすぐ誠意をもって臨むことが大切」という言葉は,学会発表時の助言として,みなに知ってもらいたいことである。
また,よくある研究解説本とは異なる構成にも要注目である。第1・2章は,「問題意識って何だろう」「問題意識の深め方」と題して,研究の第1歩を強調している。その後,すぐに研究計画書の作成方法に行くのではなく,第3章は「因果関係の考え方」,第4章は「エビデンスの考え方」など,研究デザインを考える元となる知識が提供されている。バイアスや基本的な統計,研究結果の発表についても簡潔に説明されており,初学者に有用である。
わたし的に残念なのは表紙。クールな黒に赤のラインではなく,もっと現場の人が手にとって見たくなるように,例えば白地にピンクやグリーンを使ってイラストも入れるなど,明るいものにしてほしかった。ともあれ先日,某保健師研修会でも,これはいい本だと紹介させていただいた次第である。
(『保健師ジャーナル』2010年5月号掲載)