はしがき
学習にあたって
みなさんは,これまで『専門基礎』『基礎看護』において,看護の基礎的な知識と技術を学んでこられたが,本書では,その知識や技術を,具体的にどのように展開したらよいかについて学習しよう。
看護は,つねに人間が対象であることも学んだ。しかし,人間には,おとなもいれば子どももいるし,男性と女性の区別もある。いったい,男性と女性はどのように違うのだろうか,おとなと子どもはどのように区別して看護したらよいのだろうか。あるいはまた,これらの人々が病気にならないためには,日常どのような注意が必要なのだろうか。みなさんが准看護師となるためにはこれら1つひとつについて学び,それぞれにふさわしい看護のしかたを身につけなければならない。
本書では「母性」と「小児」の看護について学習していく。
「母性」ということばは,母子保健法第2条に「すべての児童がすこやかに生まれ,かつ,育てられる基盤である」として,「尊重され,かつ,保護されなければならない」と国によって明らかにその意義が定められている。
「母性看護」では,「母性とはなにか」という特徴をつかみ,また一生を通じて母性の健康を保持・増進し,疾病を予防し,正常な妊娠・分娩・産褥,さらに育児を通して,健康で平和な家庭生活を営むことができるための知識と技術を習得しなければならない。そのためには,母性をどのように理解・保護し,看護していくかを学ぶ必要がある。これは,目の前の母と子だけでなく,未来にわたる次の世代の健康に関することでもある。
また「小児看護」では,この世に生を受けた子どもが,一個の人格をもった社会の一員として,心身ともに健康に成長・発達する過程を理解するとともに,小児を疾病や危険からまもり,正常な子どもも心身に障害のある子どもも,ともに健やかに育成するためにはどのような援助と愛護を必要とし,どのような看護が必要とされるかについて学習する。
母性にも小児にも,健康を阻害するいろいろな因子や病気がある。また,年齢による違いや個人差もある。このようなそれぞれの特徴をもった対象を,よりよく援助し看護するための理念や知識・技術を学びとりたいものである。
改版の経緯
本書はこのような考えから,1970年に初版を発行し,以来数回の改訂を重ねる中で,全国の准看護師教育のための教科書として活用されてきた。しかし,看護を取り巻く最近の医療の進歩は目ざましく,疾患の診断面・治療面の進歩はもとより,「小児」「母性」を取り巻く社会状況が看護の面にも複雑な変容をもたらしている。
まず,最近の内分泌学・MEなどの進歩によって,ハイリスク妊娠という概念が発展し,母子の保健を管理するシステムが普及してきたが,そのスクリーニング方法の改良によって,プライマリケアから二次・三次医療における看護の役割がしだいに明確になってきた。
母性看護の中心が,妊娠・分娩・育児などにかかわる成熟期にあるのは当然であるが,それゆえに母性看護は,母性がめばえる思春期から老化が開始する更年期,さらに老年期までの,女性の一生を通した総合看護・継続看護の性格をもってきた。いうまでもなく,母性は妊娠の有無にかかわらず,環境・地域,あるいは勤労・家族・加齢などの影響を受ける。さらに,プライマリ-ヘルスケアの中で,母子看護は母性みずからが自分の健康と生活について自助と自決ができるような援助を行い,母性のニーズに応じる役割が大きくなってきた。母子看護は生命の創造に関与する看護であるから,生命の尊厳を原点とした正しい倫理観と人間愛が求められている。
子どもの環境も,少子化・核家族化が進み,携帯電話やメールの普及などによるコミュニケーションの変化に伴い,ますます変動している。こうした中で,母子関係,子どもの育て方が従来にもまして重要になってきた。最近では,不登校や発達障害など,単に医学的な治療の対象となるのみならず,教育機関や福祉機関との連携が必要とされることも増えてきている。
このような医療の現状や社会事情を十分に考慮して改訂の手を加え,内容の刷新と補完に努めた。
新カリキュラムの施行にあたって
1999年,「看護婦制度の統合」と「准看護婦の資質の向上」を目標に,懸案の准看護婦教育に抜本的な検討が加えられ,教育体制・教育内容の両面にわたって大幅な強化がはかられることになった。あわせて,そのための新カリキュラムが発表され,2002年度から適用されることになった。
これを機に『新看護学』では巻の構成を一新し,専門基礎科目を5分冊,専門科目を10分冊として,准看護師教育の新たな第一歩に対応することとした。新カリキュラムでは,「母子看護」についてはあまり大きな変化はなかったが,少子化傾向のなかで,ますます重視される母子の健康問題に対処していくためには,さらなる努力とたゆまぬ学習が求められている。本書の学習を通じて基本的な知識と技能を修得し,看護実践能力をたかめる一助としてほしい。
今後とも准看護師教育の向上と発展をめざして,看護の学習に有用な,使いやすい教科書の発行を目ざしていきたいと考える。十分にご活用いただき,ご利用各位の忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いである。
2010年1月
著者ら