第11版の序
このたび,歴史と伝統のある『標準眼科学』の第11版を出版することになった.これまで長年にわたり本書を育んでくださった多くの読者をはじめ,執筆者,編集関係者の皆様に心から感謝の意を表するものである.
この『標準眼科学』は1981年1月1日に第1版が発行され,これで満29年を迎えたことになる.この間,広範な眼科学の体系を少しでもわかりやすく教科書としてまとめるため,多くの編集者,執筆者が大変な努力を重ねてこられた.特に現代の眼科学はその進歩,発展が著しいため,世界の最新情報を漏らさず記載できるよう,3年ごとに定期的な改訂を継続し,今回で第11版を数えることとなった.したがって,本書は初版後すでに29年を経過しているが,毎回の改訂版には常に最新の情報が満載されており,改訂を重ねるたびにあたかも新しい教科書が初めて出版されたような斬新さを常に保ってきた.本邦では,本書が最も重要な眼科教科書の一つとして多くの医学生から幅広く支持,愛読されてきたのは,この斬新さの故である.
今回も新たな第11版の改訂に当たり,何度も編集会議を開いてよりよい『標準眼科学』への改変を検討した.そして,第11版では重要事項のまとめとして,各章にいくつかの『Point』を創設した.この『Point』は全体で150項目に及び,重要項目がよりわかりやすいように工夫した.また,医師国家試験出題基準を念頭に置き,太字化された重要事項を全編にわたりすべて見直した.これにより,眼科学を学ぶ上での重要事項が,教科書全体にわたってより明確に把握できるよう心がけた.また,執筆者も常に世代交代を心がけている.第10版での24名の執筆者のうち,今回は4名の方々に退任していただき,新たに新進気鋭の若手教授の先生方に今回初めて執筆をお願いした.これに伴い,世界の眼科学の新しい潮流をも含む最新の現代眼科学の進歩をすべてカバーし,詳述していただくことができた.また,第10版では最終章に医師国家試験で出題された眼科関連の重要事項を初めての試みとしてまとめ,解説したところ,好評を得た.このため,第11版ではこの章の内容もすべて更新し,最新の医師国家試験で出題された眼科関連問題の丁寧な解説を組入れた.
ただしこの第11版でも,豊富なシェーマや色鮮やかなカラー写真をできるだけ多用し,わかりにくい長文の解説はさけるという従来からの『標準眼科学』の伝統はきちんと守ることができた.
眼科学の進歩,発展は他の医学,生物学をも凌ぐ勢いであり,いくつかの眼疾患ではいよいよヒトを対象に遺伝子治療が開始された.再生医療のヒトへの応用も,眼科領域では非常に速いスピードで実用化に向けて研究が進みつつある.外界の情報を正確・迅速に感知し,行動する際の最も重要な感覚器はいうまでもなく眼球,視覚器である.この第11版では眼球,視覚器の生理と病理を最新の診療情報とともに詳細に網羅することができたと自負している.
今回の『標準眼科学』第11版が向学心溢れる医学生はもちろん,臨床研修医,眼科初期研修医,さらにはコメディカルの方々や薬学関係者,眼科診療にかかわるすべての皆様方に少しでもお役に立てれば,著者一同大いなる喜びとするところである.
2010年1月
監修・編集者代表 大野重昭