看護の統合と実践[3]
災害看護学・国際看護学

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●新カリキュラムの留意点で取り上げられている「災害直後から支援できる看護の基礎的知識」ならびに「国際社会において、広い視野に基づき、看護師として諸外国との協力を考える」について、基礎から実践までを網羅し、学生の理解を促す内容となっています。 ●第1章で発展を続ける災害看護学や国際看護学の概略を述べたうえで、第2章で災害看護の基礎的な知識から、災害サイクル別や被災者特性別の看護、さらにはこころのケアについて述べています。 ●第3章では、第2章を受け、より実践的な事例を通じて、災害現場における看護の展開が理解できる内容となっています。 ●第4章では国外での災害時における看護の役割を取り上げ、健康問題を考えるうえで必要となる全地球的な考え方を第5章で述べています。 *2011年版より表紙が新しくなりました。
シリーズ 系統看護学講座
編集 日本赤十字社事業局看護部
発行 2010年01月判型:B5頁:264
ISBN 978-4-260-00908-9
定価 2,420円 (本体2,200円+税)
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はしがき

発刊の趣旨
 人類は,有史以来,自然がもたらす脅威に対峙し,土地や河川の整備などの人々の命や健康をまもるための対策を講じ,さらには文明の発達とともに増加していく人為的災害にも対応しながら,地域や都市,国づくりを発展させてきたといっても過言ではない。
 わが国は,地震や風水害などの自然災害が多発し,被災地の人々は命や健康をそこない,財産を奪われるなど,多くの被害を受けてきた。近代までは,地域の人々のたすけ合いにより,このような災害をしのいできたが,明治期になると,被災地外からの医療従事者や日本赤十字社などの救護団体の救護活動が行われるようになった。
 第二次世界大戦後は,災害救助法(1947年)や災害対策基本法(1961年)を制定するなど,国や地方公共団体をはじめとした公共機関の責務を明確にし,防災対策をすすめてきた。しかし,本格的・総合的に災害対策が講じられてきたのは,1995年に発生した阪神・淡路大震災を経験したのちからである。災害拠点病院の設置や災害救護チームの育成,医療職者以外の職種やボランティアとの協働などの総合的な対策が講じられてきた。
 近年,地球温暖化に伴う気候変動などの影響もあり,災害の頻度や規模が拡大し,被害も増大している。このような状況の中で,被災傷病者の医療・看護への期待は大きく,看護職者は人々の健康にかかわる看護の専門職として,役割を発揮していくことが求められている。
 2009(平成21)年度より適用となった看護基礎教育の新カリキュラムにおいて,新設された統合分野における留意点として「災害直後から支援できる看護の基礎的知識について理解する内容とする。」が加わった。今後は,看護基礎教育課程において災害看護を理解し,災害時には適切な災害看護活動を行うことが,広く期待されることになる。
 本書は,看護基礎教育課程において,災害看護を実践できる基礎的能力を身につけることができるように構成した。
 災害時の救護活動は,看護職者だけで行えるものではなく,救護チームとして活動し,国や地域の災害対策にのっとり実施される。したがって,災害活動の法的根拠や,医師をはじめとした医療従事者およびその他のさまざまな職種の人々と協働し,災害時の看護活動を円滑に行うために必要となる災害医療の基礎知識を解説した。
 また,非日常のできごとである災害現場の状況をイメージできるように,発災直後の急性期から復興・静穏期までの災害サイクル別に,活動現場に応じた看護活動を具体的に提示した。とくに,近年の災害の経験から,災害時には,災害時要援護者といわれる小児,妊産婦,高齢者,障害者,慢性疾患をもつ人々に対する関心と手厚い医療・看護が課題となっている。そのため,被災者特性に応じた看護の展開を述べるとともに,救援者も含めたこころのケアを具体的に解説した。
 これらの知識の提供に加え,災害現場を具体的にイメージしながら,刻々と変化する状況の中で,看護師はどのように活動していくのかが理解できるように,地震災害を設定した事例を設け,災害看護活動のペーパーシミュレーションを試みた。看護過程の展開の理解のための演習や災害活動演習に活用していただきたい。
 災害看護は,災害現場全体が緊張感に包まれ騒然となっている状況下で,多くの救護チームと協働し,緊急かつ適切に行われる必要がある。知識がどれだけあっても,円滑に行動することは困難であり,知識と技術と態度が統合されてはじめて落ち着いて行動できるようになる。そのためには,防災訓練や救護訓練などの体験学習を重ねて体得することが重要であり,ここで示した看護の展開を役だてて欲しい。
 さらに,国際救援活動と国際看護学における看護の役割について述べた。グローバリゼーションがますます進展している現在,各国のできごとは,相互に影響を及ぼしあい,けっして1つの国のできごととしてはおさまらない状況にある。そしてなにより,同じ地球に住む人間として,相互に関心をもち,たすけ合うことが「人のこころ」であり,地球をまもり,人類全体が健康に生きていくことへとつながっていく。
 先進国であるわが国には,保健医療の側面に対しても,国際的に活動することが大いに期待されている。国外へも目を向け,活躍されることを期待している。
 最後に,本書の執筆にあたっては,本書で学ぶ皆さんが,災害を理解し,災害時の看護活動ができるように,実際の災害状況や看護の実際のイメージ化に努め,具体的に解説することを心がけた。看護学生の皆さんにはテキストとして,さらに看護教育施設の教員の方々には救護演習などの場面においても,さまざまな工夫をして活用いただければ幸いである。
 また,救護活動の要請が増加している現状において,臨床で勤務しておられる看護師の方々にもご活用いただき,「憂い」の前の「備え」としていただければ幸甚である。
 2009年11月
 著者ら

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第1章 災害看護学・国際看護学とはなにか (浦田喜久子・喜多悦子)
 A 災害看護学を学ぶにあたって
 B 国際看護学を学ぶにあたって
第2章 災害看護学 (小原真理子・丸山嘉一・三井俊介ほか)
 A 災害医療の基礎知識
 B 災害看護の基礎知識
 C 災害サイクルに応じた活動現場別の災害看護
 D 被災者特性に応じた災害看護の展開
 E 災害とこころのケア
 F 災害看護活動の課題
第3章 地震災害看護の展開 (池田由美子・荒井美千代・阿部妙子)
 A 発災直後から出動までの看護
 B 急性期の看護
 C 亜急性期の看護
 演習の解答と解説
第4章 国際救援活動における看護 (田中康夫・松尾文美)
 A 国際救援の定義
 B 国際救援活動の基本理念
 C 近年の世界における災害と国際救援活動の現状と課題
 D 国際救援活動における看護の役割
第5章 国際看護学 (喜多悦子・関育子・本田多美枝・上村朋子・森山ますみ)
 A 看護とグローバリゼーション
 B 国際看護学とはなにか
 C 開発と健康
 D 保健医療の国際協力
 
付録
索引

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