はしがき
高齢の患者は重症者が多く難治性であり,多臓器障害のため看護が複雑である。しかし,だからこそ,看護学のなかでも最も看護師の知恵と能力が必要な分野であり,やりがいのある分野でもある。
老年看護学の基本的技術のうえに看護の心が必要なことが指摘されて久しい。認知症の患者を看護するうえで精神行動異常症状は最も看護困難な症状の1つである。認知症患者の時間や場所の誤認,さらには視力や聴覚の衰えも加わり,現実にはおこりえないことを話したりすることに対する家族のいらだちや戸惑いが,患者につらくあたり,精神行動異常症状の改善を妨げていることも指摘されている。家族にかぎらず,看護師が忙しさについ同様な気持ちあるいは態度をとることも散見される。
看護師といえども,人間の看護行為であり,間違いも当然おこるものと考えられる。しかし,このとき,看護師が認知症の精神行動異常症状は家族の態度によっても左右されるという客観的事実を把握していることにより,看護の方向性がはっきりみえるため,専門職として自分を規制し,より客観的に患者を看護できよう。老年看護学は高齢者の特質を記述し,看護の方向性を示したものといえる。
本書は1999年に第1版が発行され,2003年に第2版が発行されている。第3版では近年の目覚ましい老年看護学の発展に対応するため,日本老年医学会で最もご活躍の,新進気鋭の鳥羽研二教授と荒井啓行教授に得意の分野をそれぞれご執筆いただき,ますます充実した『老年看護 病態・疾患論』となり生まれかわった。本書が老年看護学をこれから学ぼうとしている看護学生の方々にお役に立てば幸いである。
2008年10月
著者代表 佐々木英忠