はしがき
第8版の序
解剖学と生理学とは,人体の「構造」と「機能」を学ぶ学問であり,看護師を含む医療専門職の教育において最重要の基礎となる。高齢化社会を迎えて医療の責務がますます大きくなっている今日,医療の教育においても十分な質を確保し,効率的に学習することが求められている。本書は1968年の第1版から始まり,時代の流れを先取りした改訂により版を重ね,これまでに100万人をこえる人たちの学習に用いられてきた。
前回の第7版では,伝統を引き継ぎながらも,新しい時代に対応した魅力的で学習しやすい教科書を目ざし,書物の骨格そのものをかえる大きな改訂を行った。その骨子は,①解剖学と生理学の融合,②器官系を有機的に結びつけた章構成,③全ページのカラー化であったが,幸いにも高い評価を得て,多くの人たちに受け入れられることとなった。
今回の改訂では,解剖学と生理学の内容をより洗練させ,学習者に使いやすいという本書の特徴をさらに強化するとともに,医療専門職の将来のあり方を見すえて新しい内容を付け加えた。大きな変更点は,①体表から見た人体の構造についての章を新しく加えたこと,②循環器と呼吸器についての章を分離したこと,③本文中の図をより精緻で分かりやすいものに差しかえたこと,である。さらに,学習の幅を広めるコラム(ZOOM UP)も4割ほど追加をした。また,本文中の図によって十分な学習効果が得られると判断して,口絵の解剖写真は省くことにした。前回および今回の改訂を通じてとくに心がけたのは,内容が正確であるのはもちろんのこと,解剖学と生理学を融合させて人体の構造と機能が平易に学習できること,臨床的な視点をいかして学習者の動機付けをはかることである。
本書の執筆は,前回の改訂から解剖学を担当する坂井と,生理学を担当する岡田が,編集部と緊密な打合せのもとに行っている。もともと思考の流れが違う解剖学者と生理学者の記述を綱渡りのごとく橋渡しをして違和感なく融合させた編集部の努力に敬意を表したい。伝統をふまえて新しい発展を目ざしている本書が,医療のあらゆる分野で幅広く活用されることを願っている。今後とも忌憚のないご意見,ご批判,ご叱正をお願いする次第である。
2008年11月
坂井建雄 岡田隆夫