リハビリポケットブック
臨床評価ガイド

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PT/OTをはじめリハビリ関連領域の医療従事者が、臨床において患者さんと接する際に必要となる評価や対処の方法など最低限押さえておくべき情報を凝縮したコンパクトガイド。各種評価法や検査法の紹介にはじまり、循環器系や筋骨格系の解剖、生理など臨床医学に関する情報が網羅されている。箇条書きの記述に、図表、イラストをおり混ぜ、ポイントが簡潔で分かりやすくまとめられている。
Ellen Z. Hillegass
監訳 清水ミシェル・アイズマン
発行 2009年10月判型:三五変頁:280
ISBN 978-4-260-00765-8
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

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監訳者の序

 原書との出会いはカナダで開催された学会でした.持ち運びができ,閲覧しやすいスタイルは,評価を必要とするリハビリテーション関連領域にたずさわるすべての医療従事者に役に立つのでは? とすぐに感じました.各国で好評を得ているこのリハビリテーションノートを,多忙をきわめる日本のリハビリテーション医療従事者のための本としてぜひ紹介したいと思いました.
 現在,多種多様に分かれ複雑化した医療分野の知識をすべて把握しておくことは非常に困難と思われます.本書は,そんな私たちが患者のための基礎情報をすばやく把握するための手助けとなることでしょう.リハビリテーション関連領域で働く理学療法士,作業療法士,看護師やその他の医療従事者にとって,この携帯用の本が役立つものと思います.
 本書では評価ツール,循環器系や筋骨格系,その他のさまざまな情報を大きく8つに分けてまとめています.
 評価のセクションでは,病歴聴取,リスクファクターの評価,システムレビュー,疼痛評価,正常歩行パターン,加齢による影響,虐待の徴候,必要な栄養指標など,数多くのデータが紹介されています.
 心肺のセクションでは,聴診の解釈,呼吸評価,呼吸介助,心臓の解剖,異常な心音,血圧,運動時の生理学的反応,循環の評価,浮腫の評価,診断学的検査,運動評価,運動介入など,多くの情報が記載されています.
 筋骨格のセクションでは,スクリーニングのデータ,疼痛評価,関節可動域,筋力評価,神経支配領域,膝の安定性の評価,姿勢評価,歩行分析,日常生活動作の評価,診断学的テスト,失禁に関する評価,筋肥大を目的とした運動などについて記載されています.
 神経筋の評価のセクションでは,脳神経の機能,神経運動発達,主要な筋群の神経支配,皮膚反射,痙性のグレード,筋緊張の定義,小児の反射検査,感覚検査,関連痛の特徴,バランス評価,記憶の評価,自律神経検査,認知機能の評価,診断学的検査,神経筋に対する介入,コミュニケーション障害などについて紹介されています.
 皮膚の評価に関するセクションもあり,熱傷の診断と合併症,褥瘡の分類と危険因子,皮膚の問題,介入,ポジショニング(良肢位)などについて記載されています.
 検査のセクションでは,生化学検査値とその意味,リハビリテーションの影響,内臓機能の検査,血液学的データなどが紹介されています.
 薬剤のセクションでは,さまざまな現行の薬剤とそれらの適応,作用と副作用,使用上の注意と禁忌について記載されています.
 リファレンスとインデックスのセクションは患者/クライアントの管理,臨床における問題解決,書類記載の原則,アウトカムツールについて詳述されています.
 なお,翻訳にあたって,原書に記載された内容やデータは日本の医療現場で使用されているものに修正しています(例:薬剤や検査データは日本の医療システムに対応させています).
 最後に,惜しみない協力と支援を頂いたF.A.Davisと医学書院に感謝します.
 日本の医療従事者のために本書を出版する機会に恵まれたことを大変光栄に思い,すべての人にとって有効かつ有用であることを望んでいます.

 2009年8月
 清水ミシェル・アイズマン

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評価
心肺
筋骨格
神経筋
皮膚
検査
薬剤
参考資料

索引

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リハビリ医療情報が凝縮されたコンパクト本
書評者: 鶴見 隆正 (神奈川県立保健福祉大教授・理学療法学)
 「手の中にすっぽりと収まる小さなサイズの本にもかかわらず,ずっしりとした存在感が伝わってくる」というのが,初めて本書を見開いたときの第一印象である。

 長年,米国と日本の両国で臨床活動と理学療法士・作業療法士の教育にかかわってこられた清水ミシェル・アイズマン教授監訳による『リハビリポケットブック―臨床評価ガイド』が出版された。原書を手にしたときの感想を監訳者は,「この本はリハビリテーション関連領域の医療従事者に役立つ」と直感したと序文に記しているように,本書には,リハビリテーション対象患者の評価から治療を実施する際に重要となる情報が凝縮されており,まさに臨床現場で活用できるポケットブックといえる。

 本書の緑色の帯に記された「あなたは患者を正しく評価できていますか?」のフレーズはインパクトがあり,われわれの日々の臨床業務の原点が問われているようで,監訳者の臨床マインドと教育マインドを読みとることができる。近年の理学療法士・作業療法士の養成校の増加に伴って臨床実習の質的なあり方が議論されている。特に限られた実習時間内でカルテや他部門からの患者情報収集,身体機能に関する評価から始まる一連の理学・作業療法過程を実習生がいかに的確に実施するかが大きな課題となっているだけに,本書の出版は実にタイムリーであるといえる。

 本書は大きく,病歴聴取やリスク要因などの基本的な評価,呼吸循環機能に関連する心肺の評価,運動器疾患に関連する筋骨格の評価,平衡反応や神経反射などの中枢神経系に関連する神経筋の評価,熱傷や褥瘡などに関連する皮膚の評価,血液や生化学などに関連する検査,リハビリテーション医療に多用される薬効と副作用などの薬剤情報,参考資料の8章構成からなっており,各構成とも臨床現場で必要不可欠な評価内容がコンパクトにまとめられている。本書は,一見して理解できるように図表とイラストを豊富に配置し,箇条書きの記述形式に統一されており,読者本位の工夫がなされている。特に参考資料の欄にあるリハビリテーションの臨床場面で用いられる各種のアウトカムツール一覧とSOAP記載法は臨床効果を確認する上で重要であり,より実践的な書となっている。

 本書は,理学療法士・作業療法士をめざす学生はもとより新人理学療法士・作業療法士が患者評価,治療指導する際にポイントとなる情報をシステマチックにわかりやすく掲載されているだけに,必携の書としてお薦めしたい。
ポケットサイズで臨床のその場ですぐに確認できる
書評者: 伊橋 光二 (山形県立保健医療大教授・理学療法学)
 本書を手にして,「やっとリハビリテーション医療者向けのポケットガイドが出版されたか」との思いがした。これまで医師や看護師向けのポケット版のマニュアルやガイドブックは数多く出版されており,本学図書館の蔵書検索でも数十編が検索される。一方,リハビリテーション専門職,特に理学療法士や作業療法士向けのポケットガイドはこれまで出版されておらず,本書が初めてと思われる。

 理学療法や作業療法をはじめとするリハビリテーション医療の対象は大きく拡大しており,さらに高齢患者などでは多くの合併症を有しているケースも多く,リスク管理が非常に重要になってきている。加えて,診療報酬体系の変更などにより,臨床の第一線では非常に忙しい勤務状況になっている。次々と現れるさまざま疾患の患者を前にするとき,その場でポケットからさっと取り出して種々の情報を確認できるポケットガイドが待ち望まれていたところでの本書の出版は,まさに時宜を得たものということができる。

 本書の良さは,まず,何といってもその絶妙なサイズである。縦140mm,横84mm,厚さ10mmであり,白衣(ケーシ型)のどのポケットにも入るし,ズボンのポケットにも入る。そして邪魔にならない。実際に本書をポケットに入れて種々の運動療法や移乗動作介助を行ってみたがまったく気にならなかった。

 もちろん内容も大変充実している。評価,心肺,筋骨格,神経筋,皮膚,検査,薬剤,参考資料の8章構成であり,必要な領域を網羅している。各論部分である心肺,筋骨格,神経筋,皮膚の部では,解剖・生理学的知識,必要な評価,そして基本的な介入方法が簡潔に示されている。

 検査の部では生化学検査をはじめとする種々の検査の基準値が記載されているだけでなく,異常値の意味と原因,さらにリハビリテーションへの影響も記載されていて大変有用である。薬剤の情報があるのも便利である。そして,多くの図表とカラーイラストや写真が使われており理解を容易にしている点も特筆すべきであろう。

 本書を既に臨床実習を終了している本学部4年のゼミ生に紹介したところ,「臨床実習の前に出版されていたら良かった」との感想であった。もちろん学生だけでなく新人理学療法士・作業療法士などにも是非薦めたい。さらに中堅からベテランまで,常に携帯すれば必ず役に立つ場面があると思われる。リハビリテーション医療専門職に必携の一冊である。

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