はしがき
看護における臨床検査の重要性
今日の医療は,医師,看護師,薬剤師,理学療法士,臨床検査技師など複数の医療職者による「チーム医療」という形で実施されている。各医療職者がそれぞれの業務を果たすことによって,全体として,より質の高い,適切な医療を提供することが期待される。他方,病気や心身の障害などを伴って病院を訪れ,また闘病の経過で異なる状態を示す患者に対して,医療者側として,患者のそのときどきの状態を正しく把握することがまず前提となる。この機能を担う医療的な手段として,臨床検査は必要不可欠である。医療職者としての看護師にも臨床検査の基本的な知識が要求される第一のゆえんである。
さらにチーム医療においては,看護師が医療職者による業務連携の調整役としての役割を担うことが多い。チーム医療は臨床検査データなどによる患者の状態把握に基づき運用され,患者の医療情報は共有される。この点で,十分な臨床検査の知識が必要となる。
看護師は患者と密接に,頻繁にかかわる。看護業務の1つとして「観察」は重要であり,近年,とくに看護師によるフィジカル(身体的)アセスメント機能の重要性が強調されるようになっている。重症患者の場合は,看護師はモニター画面のデータを見ながら患者を監視し,患者の状態変化に迅速に対応する必要もある。こうした観察や監視に臨床検査に関する知識は必須のものである。
もう1つの看護師の独自の業務として,臨床検査の介助がある。患者に必要な助言や説明を行って,検査に関する患者の不安を取り除き,検査が適切に行われるように導く役割である。また看護師は検査に必要な器具類を準備し,検体を適切に採取,保存,あるいは移送する。検体の採取や取り扱いの過程で生じる危険や誤りを回避し,予防する義務もある。生体検査の場合には準備や直接の介助を行うほかに,一部,検査を自ら行う場合もある。
以上のような多面的で重要な役割を看護師は担っており,今日の医療のシステムにおいては看護師が臨床検査の基本的な知識をもたなければ,適切な診療を行うことは不可能だといっても過言ではない。本書は,看護業務に臨床検査の基本的知識は不可欠だとの認識に基づき,これをわかりやすく学んでもらうことを目的に作られた。看護学生の教科書としてだけでなく,卒業後も参考書として日常の臨床業務に利用してほしい。
改訂の趣旨
本書の第5版は,幸い多数の看護学生に使用していただいた。6年を経て第6版では,著者が交代したことに伴い,その部分を新規に書き起こし,さらに全ページにカラー印刷を導入した。そのほか内容に関しては,検査で「生体の内側(生体内の情報)」が見えるように,という点を考慮した。また小さな点だが,用語の解説にはとくに意を用いた。
基本的な構成は5版とほぼ同じであるが,おおよその内容と特徴は次のとおりである。
第1部「臨床検査の基礎」の第1章「臨床検査とその役割」には,科学的な医療における臨床検査の位置づけが記載されている。第2章では,臨床検査に果たす看護師の役割と,検査に関連して生じる医療事故防止のために,看護師に要求される対応や注意点が述べられている。第3章では,各系統の疾患について臨床における検査の役割が,診療の流れに即して概説されている。
第2部の「おもな臨床検査」では,一般,血液,化学,免疫・血清,ホルモン,微生物,病理,生理機能の各臨床検査領域が,章に分けて取り上げられている。これらのうち排泄物や身体から採取した検体を用いる検査では,検査の性質や,検体の採取にあたって準備すべき器具,注意点のほか,検査の意義や検査値の臨床病理的な意味,検査結果の解釈のしかたなど,臨床に沿った事項が述べられている。
一般,血液,化学,免疫・血清の各検査領域では,第5版発行からの医学の進歩を反映させるべく刷新が行われ,検査項目の追加や,記述の変更が行われている。
微生物検査は全面的に書き換えられ,実際的な内容が豊富に盛り込まれた。検体の採取過程で生じる検査上の問題や感染の予防に関連して具体的な注意点が述べられている。
病理検査では検査結果が診断に直結するので,検体の取り扱いに力点を置いて解説されている。
生理機能検査では,直接検査機器を身体に接続して測定するため,患者の心理を考慮して,検査の方法や特徴のほかに,患者の不安をやわらげるための助言や介助の要領が述べられている。
最後に,本書の実用性を考えて,主な検査項目の基準値を付表に整理して巻末に再掲し,また詳しい索引を付けた。
本書が看護学生に広く利用され,医療の一端で役立てられることを願っている。今後の改訂に向けて,読者のみなさんから忌憚のないご意見をいただければ幸いである。
2007年12月
編者