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統合失調症治療ガイドライン 第2版

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精神医学講座担当者会議が監修する統合失調症治療ガイドラインの改訂版。病期別に薬物・身体療法、心理社会的療法を統合して提示した包括的治療ガイドライン。引用文献にはエビデンスレベルを明示、第2章「治療計画の策定」において治療オプションの推奨度を加えた。最近の新規抗精神病薬の詳細情報、認知行動療法、J-ACT、早期精神病など、最新トピックスが満載。日本の実情に即した記述で、日常臨床にすぐに役立つ実践的な内容。
監修 精神医学講座担当者会議
編集 佐藤 光源 / 丹羽 真一 / 井上 新平
発行 2008年09月判型:A5頁:352
ISBN 978-4-260-00646-0
定価 5,170円 (本体4,700円+税)

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第2版の序

 “精神分裂病こそ,人格の核心を侵す眞の精神病である”〔『精神医学の基本問題』, 医学書院〕と内村祐之先生が書いたのは,今から36年も前のことである.今では病名も統合失調症に変わり,急性期,回復期,安定期に応じて薬物療法と心理社会的療法をバランスよく組み合わせた治療法が普及し,初発患者の多くが回復して社会参加を期待できるようになった.それには精神医学の長足の進歩があり,脆弱性-ストレス-対処モデル(vulnerability-stress-coping model)の普及がある.それを取り入れた本邦初の本格的な治療ガイドラインが本書の初版〔2004〕であり,エビデンスに基づいて作成され,ノーマライゼーションを最終ゴールにしたのが特徴的であった.
 その後,新たな新規抗精神病薬が登場し,重症患者の地域ケアを目指したACTが実践され,初発精神病エピソードの未治療期間(DUP)の短縮と臨床的臨界期(critical period)における適切な治療によって再発や予後の改善を期待できるといった多くのエビデンスが集積されている.さらに,ICD-10やDSM-IV-TRの改訂を視野に入れて疾患概念や診断分類の見直しが進んでいる.
 こうした最近の精神医学の進歩を取り入れ,さらに国際早期精神病連盟のガイドライン〔2005〕,米国精神医学会の治療ガイドライン改訂版〔2006〕や世界生物学的精神医学連盟の統合失調症治療ガイドライン〔2006〕などを渉猟して大幅に改訂したのが,この改訂版である.
 本書は,おもに医師の卒後研修と生涯教育に役立てることをめざして作成された治療ガイドラインである.海外のすべての治療ガイドラインがそうであるように,本書も標準的な治療方針をエビデンスに基づいて推奨し,最新の治療法を解説しているが,それはあくまでも診療の際の推奨であり,治療の実践は患者ごとの見たてや検査所見に基づいた主治医の裁量に委ねられている.したがって,本書に記載された推奨をもって訴訟などの法的判断や保険をめぐる紛争解決の基準にすることはできない.また,今回の改訂にあたっては,現在の講座担当者会議の治療ガイドライン委員会に諮り,初版時に担当委員であった私たちが編集を担当することになったことを付記する.
 おわりに,今回の改訂作業にご協力いただいた執筆者各位に心から感謝し,編集と出版に多大なご努力をいただいた医学書院の方々にお礼を申し上げたい.

 2008年7月
 編集者代表 佐藤光源

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第1章 疾患の概念
I 概念
II 疫学
III 臨床症状
IV 経過と転帰

第2章 治療計画の策定
I 精神医学的管理
 A 医学的管理
 B 治療計画の立て方
II 急性期治療
 A 急性期の症状の評価
 B 治療の場の選択
 C 薬物・身体療法
 D 心理社会的療法
III 回復期治療
 A 回復期の症状の評価
 B 治療の場の選択
 C 薬物・身体療法
 D 心理社会的療法
IV 安定期治療
 A 安定期の症状の評価
 B 治療の場の選択
 C 薬物・身体療法
 D 心理社会的療法
 E 治療の終了
 F 再発防止と再発への早期介入

第3章 治療法の解説
I 薬物・身体療法
 A 従来型抗精神病薬
 B 新規(新世代型)抗精神病薬
 C その他の向精神薬
 D 電気けいれん療法
II 心理社会的療法
 A 社会生活技能訓練
 B 心理教育的家族療法
 C 認知行動療法
 D 職業リハビリテーション
 E 包括型地域生活支援プログラム(ACT)
 F ケアマネジメント
 G 自助グループ活動

第4章 その他の重要な問題
I 自殺
II 身体合併症
III 早期精神病

第5章 今後の改訂と研究成果への期待

索引

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首尾一貫した明瞭な疾患概念 すべての精神科医療者に贈る良書
書評者: 鮫島 健 (日本精神科病院協会会長/鮫島病院院長)
 「統合失調症治療ガイドライン」は,初版以来約4年ぶりに改訂第2版が出版された。精神医学の最新の進歩を広く取り入れながら,エビデンス・ベースドの治療ガイドラインをめざした本書は,発刊後多くの医師だけでなく多職種の精神科医療関係者に読まれ支持されてきた。

 本書は「治療ガイドライン」でありながら,第1章「疾患の概念」のなかで,統合失調症の概念,疫学,臨床症状,経過と転帰などが簡潔に要領よくまとめられていて,必要で最新の知見の概要を学ぶことができるように構成されている。また,第4章「その他の重要な問題」として,自殺,身体合併症,早期精神病などが取り上げられており,第5章の「今後の改訂と研究成果への期待」では,脆弱性-ストレス-対処モデルの精密化など,統合失調症に関する今後の重要な課題のいくつかについてわかりやすく述べられている。

 ちなみに,本書は全体的に疾患概念として,脆弱性-ストレスモデルが採用されていて,この観点から臨床症状の理解や治療の選択が説明されている。専門家による分担執筆でありながら統一された解説となっているゆえんである。

 第2章は本書の中心部分となる治療について,治療計画の策定という視点で詳述されている。まず,精神医学的管理では,医師-患者関係を確立して維持しながら,患者を全人的に理解し包括的な計画を立てて治療を進めていくなど,基本的な事項と治療計画の立て方が述べられている。具体的には,急性期治療,回復期治療,安定期治療という病期に分けて,症状の評価,治療の場の選択,薬物・身体療法,心理社会的療法について詳しく書かれている。さらに,安定期においては,治療の中止や再発防止・再発への早期介入の記述もある。網羅的ではあるが,標準以上の内容を具体的でわかりやすく説明され,治療オプションの推奨度が明記されているなど,実際の治療の参考として有益である。

 第3章の「治療法の解説」では,薬物・身体療法,社会心理療法のそれぞれについて最新で十分な解説が書かれている。第2版は初版の全章を部分的に改訂しているが,特に第3章は大改訂されている。新規抗精神病薬に関して,最近発売された新薬の記載もあり,処方の際の留意点や重複と漸減の方法,交差-用量設定法,直接切り替え法など実際的な技法も書かれている。社会心理療法についても,社会生活技能訓練,心理教育的家族療法,職業リハビリテーションなどに,認知行動療法,ACT,ケアマネジメント,自助グループについての最新の知見と解説が今回書き加えられ,今日的な内容になっている。

 本書は,精神科病院管理者,精神科医師,研修医師,看護師をはじめコメディカル職種のスタッフ,学生など広い範囲の人々にそれぞれに読まれるべき良書である。今後,継続して改訂され,さらに充実していくことを期待する。
新たな項目も加わった,時宜を得た改訂
書評者: 樋口 輝彦 (国立精神・神経センター総長)
 4年半ぶりの改訂である。ガイドラインは治療法が進歩する速度に比例して改訂される運命にある。言い換えれば,改訂されないと治療の現状と合わず,古くなり,使い物にならなくなることを意味する。そのようにして見ると,本書の改訂が実質的には4年弱で行われたことは,この領域の治療の進歩の速度が速いことを意味するのであろう。

 今回の改訂は大幅に行われた。改訂の作業が部分的にとどまる場合は,さほどの労力を伴わないが,今回のような大幅改訂には大きな労力と長い時間を要する。一方,あまり時間をかけて改訂作業をすると,完成したころにはすでに古くなっている危険性がある。本書の場合,長い時間をかけずに要領よく改訂が行われている。その証拠に市販されている向精神薬の解説に直近の新薬が加えられており,新鮮さが感じられるのである。

 本書は5章で構成されている。これは初版と変わらない。第1章は疾患の概念,第2章は治療計画の策定,第3章は治療法の解説,第4章はその他の重要な問題,第5章は今後の改訂と研究成果への期待であるが,中心は第2章と第3章である。したがって,改訂もおのずとこれらの2章を中心に行われている。中でも変化の激しい薬物療法に関する章や項は全面改訂されており,その他のほとんどの章・項も部分的改訂がなされ,新たな引用文献が追加されている。ざっと数えただけで本改訂版には新たに150編の論文が引用されている。また,新たな項目として,認知行動療法,ACT,ケアマネジメント,自助グループ活動,早期精神病などが加えられているが,これらはいずれも最近注目されている課題であり,時宜を得たものと思われる。

 さまざまなガイドライン(エビデンス・ベーストやエキスパート・コンセンサスなど)が世界中で出版されているが,本書は可能な限りエビデンスに基づいた治療のガイドラインを目指している。初版の場合には当時出版された米国精神医学会(APA)の治療ガイドラインが参考にされたようであるが,今回はそのAPAの治療ガイドラインの改訂版(2006)に国際早期精神病連盟のガイドライン(2005)や世界生物学的精神医学連盟の統合失調症治療ガイドライン(2006)を加えて,より幅の広いエビデンス・ベーストのガイドラインとなっている。本書のようなガイドラインは半永久的に改訂を重ねることが求められる。監修,編集,執筆に当たられた方々の熱意と労力に敬意を表したい。

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