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質的研究のメタスタディ実践ガイド


著:Barbara L. Paterson/Sally E. Thorne/Connie Canam/Carol Jillings 
監訳:石垣 和子/宮崎 美砂子/北池 正/山本 則子

  • 判型 A5
  • 頁 196
  • 発行 2010年07月
  • 定価 3,520円 (本体3,200円+税10%)
  • ISBN978-4-260-00629-3
看護系大学院で看護研究に取り組むための必携書
メタスタディとは、過去の研究の問題点を見出し、また分析結果を新しい視点から統合し、次の研究へと発展させていく方法であり、EBMのための方法としても用いられる。看護系大学院などにおいて看護研究に取り組もうとする学生や研究者にとって必須の方法論である。本書は、メタスタディの唯一の実践ガイドの邦訳である。
序 文


 この本を著わそうと考えた動機は,人間科学的な現象に関する共同研究を行う過程で生じた.その研究とは,慢性疾患患者の内的な体験をテーマにしたものであった.共同研究において,慢性疾患患者の経験に関する質的研究のメタ統合のための方法論的手引きを探した際に,われわれは,そのような研究...


 この本を著わそうと考えた動機は,人間科学的な現象に関する共同研究を行う過程で生じた.その研究とは,慢性疾患患者の内的な体験をテーマにしたものであった.共同研究において,慢性疾患患者の経験に関する質的研究のメタ統合のための方法論的手引きを探した際に,われわれは,そのような研究方法に役立つ実際的で応用可能な情報を得ることがいかに困難であるかに気づいた.同時に,産出される質的研究に潜在的に存在する解説力や応用可能性に気づき始めたヘルスサイエンス研究者の間で膨らんできた質的研究の価値への興奮や期待を認識し始めた.本書は,われわれが数年間かけて質的研究のメタアナリシスやメタ統合という複雑な挑戦をひたすら行って発展させてきた方法論的な理解を読者に提供するものである.本書は,このような研究が概念化され行われてきた過程を説明するものであり,たくさんのプロジェクトから得た学びと,われわれが到達している信頼の大きさを説明するものである.
 われわれの研究チームは,新しく開発した方法を用い,そして慢性疾患とともに生きる経験とそれに伴う努力についての知識を詳しく説明することに貢献したいと考えて研究に携わった.メタスタディは,公表された個個の研究を分析することによって,それぞれが明白に示した研究結果の集合を超えて,研究で使われた理論や方法も含めてその意味するところへの熟慮を加えて新しい知識へと統合する方法を提供する.この研究を通じてわれわれは,質的研究によって引き出されたたくさんの知識群から新しい知識の根拠となるものを導き出すというメタスタディの秘める力を信ずるようになった.
 この本書の基礎となる方法論的な探索をした研究チームの中心者は,バーバラ・パターソン(Barbara Paterson)である.彼女は研究代表者であり,本書の筆頭著者である.3人の共著者に加えて,Sonia Acorn博士,Gloria Joachim教授,Marilyn Dewis教授もまたメタスタディ研究プロジェクトに含まれている.これら1人ひとりが他にないような理論的な見方や,核心をつく見方をプロジェクトにもたらし,さらにこの病気や体験の概念解明への情熱をももたらした.われわれの研究チームは,当初は支えあう研究仲間,ネットワークとして存在し,仲間内でそれぞれの別々の研究についてアイディアを交換していたが,質的研究によって引き出された知識の実践への応用に関する進歩は,本来的には質的研究によって得られている知識群を統合し説明するわれわれの力の向上によっているという結論に達した.1995年の初めに,われわれはメタスタディ研究の複数のプロジェクトを開始した.そのなかでも最も果敢だったのは-そしてだからこそ本書のもとになった経験的な知識の大部分がそのプロジェクトからくるのであるが-過去20年にわたる慢性疾患の主観的経験に関する質的研究のすべてを統合する試みである.他のプロジェクトでは,糖尿病への適応という現象を質的研究から統合し,いろいろな種類の慢性疾患に共通して体験される疲労について統合した.これらの研究からわれわれが得た知識やこの研究を通じて数年間に得た研究方法における熟練は,複雑に入り組んでいると同時に大変興味深いものであって,われわれの残りの研究キャリアに十分に役に立つものである.われわれ1人ひとりは未知のプロセスに入り込み,そしてその結果,慢性疾患経験の複雑さや質的研究から新たな知識を統合することの価値についての考えを改めることになった.


謝辞

 われわれは,共同研究者のSonia Acorn博士,Gloria Joachim教授,Marilyn Dewis教授と研究費を提供してくれたCanadian Nurses Foundationに大きな感謝をささげる.
目 次
第1章 はじめに
 当事者の視点を見ることへの課題
 メタスタディ:研究知見の統合を超えて
 メタスタディの哲学的な基盤
 メタスタディの構成要素
 メタスタディの研究プロセス
 メタスタディのアウトカム
 限界
 本書の構成
 結論
第2章 メタスタディの準備作業
 研究チームの結成
 チームメンバーとの協働
 メタスタディの目的の決定
 研究の問いの考案
 理論的枠組みの選択
 財源の獲得
 学んだ教訓
 結論
第3章 一次研究の検索と査定
 一次研究論文の検索
 論文を包含する基準
 論文を除外する基準
 一次研究論文の評価
 ファイリングとコーディングのシステム開発
 厳密性の確保
 結論
第4章 メタデータ分析
 メタデータ分析の目的
 メタデータ分析におけるデータ
 分析アプローチの選択
 メタデータ分析のためのメタスタディアプローチ
 データ管理
 分析アプローチの一例
 分析的に正直であり続けること
 結論
第5章 メタ方法
 メタ方法の目的
 メタ方法の手順
 個々の一次研究の評価
 一次研究の総合的評価
 結論
第6章 メタ理論
 目的
 メタ理論における理論の性質
 最初の手続き
 理論分析の手順
 主要なパラダイムを特定する
 理論分析の課題
 結論
第7章 メタ統合
 メタ統合の目的
 メタ統合の手順
 メタ統合の成果
 結論
第8章 評価,普及と未来への挑戦
 メタスタディのアウトカムを評価する
 メタスタディの知見の普及
 伝統的な実践に疑問を投げかける
 未来の方向性

付録A
付録B
用語解説
文献
訳者あとがき
索引
原著者について