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疾病の成り立ちと回復の促進[2]
疾病各論[1]

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教科書シリーズ「コアテキスト」の第3巻目。本書は「疾病の成り立ちと回復の促進」の目標3の前半にあたる部分で、内容としては「疾病各論」である。「出題基準」の小項目でも具体的な疾患(疾病)は現れていないという状態を本書で補って、医療職者として最低限学習しておいてほしい重要な疾患を各項ごとにあげ、それらの疾患について簡潔な解説を加えた。
シリーズ コアテキスト 3
編集 下 正宗 / 前田 環 / 村田 哲也 / 森谷 卓也
発行 2006年08月判型:B5頁:400
ISBN 978-4-260-00125-0
定価 3,520円 (本体3,200円+税)
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  • 目次
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第1部 中枢神経・感覚機能および精神機能の障害
 第1章 脳の機能低下をおこす疾病
  A. 脳血管系の循環障害
  B. 意識障害・神経障害をおこす代謝性疾患
  C. 頭蓋内圧(脳圧)亢進を伴う疾患
  D. 脳の脱髄・変性疾患
  E. 脳・髄膜の炎症性疾患
 第2章 感覚器の障害をおこす疾病
  A. 視器(視覚器)の障害
  B. 聴器の障害
 第3章 精神機能の統合および発達の障害
  A. 精神機能の統合の障害
  B. 発達障害
  C. 心的外傷や心理的要因の大きい障害
第2部 生命維持機能の障害
 第4章 呼吸・循環・体温調節の障害
  A. 呼吸障害をおこす疾患
  B. 循環不全をおこす疾患
  C. 体温調節異常
 第5章 造血および免疫機能の障害
  A. 造血機能の異常
  B. 免疫機能の低下・異常
  C. 全身的な生命の危険を示す徴候
  D. 死の徴候
推薦図書・参考文献
索引

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基礎・臨床医学を総合的に学習し専門技能を磨く土台を作る
書評者: 田中 文彦 (帝京大教授・臨床検査学)
 私は平成18年度より医療技術学部・臨床検査学科(新設)の学生さんたちの教育を担当することになった。看護師,臨床放射線技師などと並んで,臨床検査技師は昔からいわゆるパラメディカルスタッフと呼ばれていた職種である。文字通りには医師の傍に(para-)侍る小間使いという意味合いが強い。最近ではこれをコメディカルスタッフ,すなわち医師と共に(co-)作業するスタッフと呼んでいる。

 近年の医療の発達はめざましいものがあり,医師だけですべての診断,検査,治療,リハビリテーション,予防など責任をもって遂行することは不可能になった。医師でない者が遂行すれば危険と法的に見なされる,いわゆる“医行為”だけでも最近は大変な重圧であり,高度な専門知識を持ったコメディカルスタッフによる支援の必要性はますます高まっている。

 そのような時代の流れを受けて,従来は各種コメディカルスタッフを養成する機関は三年制の専門学校がほとんどだったが,それらは次第に四年制の大学に移行しつつある。私が就任したのもそういう四年制大学の臨床検査学科である。

 しかし一言に高度な専門知識を持ったコメディカルスタッフの養成と言っても,では教科書として何を使うか,就任前から頭を痛めていた。医学部の学生さんであれば6年間かけてじっくり育てることができるから,解剖学,組織学,生化学,生理学,微生物学,病理学など各教科についてそれぞれ1冊ないし数冊の国内外の教科書や参考書を紹介できるが,四年制の大学ではそれだけの教育期間の余裕はない。

 一方,従来の専門学校用の教科書では,やはり“パラメディカルスタッフ”と呼ばれていた時代の名残で,“医師のお手伝いさん”の教育だから,この程度のことを知っておいてくれればいいだろうというコンセプトが見え隠れしてしまう。決してそれらの著者が執筆に手を抜いたわけでないことはわかるのだが,これからのコメディカルスタッフにとっては「この程度でよい」という医学知識の限界はない。医学部の学生が将来医師として活動するために学習する基礎医学の基盤と同等の範囲の広範な知識を,コメディカルスタッフの学生さんたちも身につけておいてもらわなければ,卒業後に医師と対等のレベルで協調していくことは難しい。

 このような教育目的のために執筆されたのが,「コアテキスト」シリーズということである。本シリーズは「看護師国家試験出題基準」に構成を準拠して,全4冊でその中の医学・生物学分野をまとめ上げたものであるが,幸い医療・看護系職種の国家試験出題基準は似通った構成をとっているので,本書は医療系の職種を目ざす異なる領域の学生の教科書として汎用しうるものとなっている。第3巻と第4巻は,各種の疾病(疾患)扱った巻である。

 編集者の4人は私と同業の病理医であり,名前を見れば,ああ,この人か,とすぐわかる仲間である。病理医は普段は主として病理標本の作製や鏡検によって病理診断(いわゆる最終診断)を行っているが,モチベーションの高い病理医の関心は決して単なる病理学,形態診断学の範囲に限定されることなく,生化学,生理学,微生物学などの領域にまで広がっているものだ。編集者たちは間違いなくそのようなモチベーションの高い病理医である。

 したがって本書は,膨大な数の疾患を単に診断病理学的に整理してあるばかりでなく,基礎医学各科の知識と有機的に組み合わせて解説してあり,むしろ狭義の病理学の記述は控え目でさえある。だから学生さんたちは“病理学”の講義にありがちな臓器や組織標本の写真の羅列に辟易することなく,まだ基礎医学各科が現在のように細分化されていなかった時代に“病理学者”の知的好奇心を刺激し続けていた命題,「病気とは何ぞや?」について,最新の現代的視点から総合的に学習することができると思われる。

 医学部の学生は,解剖学を1クール,組織学を1クール,生化学を1クール,病理学を1クール,といった形で各個学習した後,自分でそれらの知識を再統合して基礎医学全般を身につけ,それから臨床医学へと進んでいくのだが,本シリーズはこの過程をほぼ一括して学ぶことができ,教育年限が医学部よりも2年短いコメディカルスタッフの学生さんが将来医師と協同して作業していくうえで必要な医学知識を集中的,効率的に身につけるために,またとない教材であると推薦に値するものである。さらに執筆陣には臨床の第一線の医師も加わっているので,卒業後も多様なコメディカルスタッフの実践の場で,臨床医が何を求めているのかを的確に把握する能力を飛躍的に向上させることも可能である。コメディカルスタッフの種別は多様であるが,それぞれの分野の専門技能を磨いていく土台となる基礎・臨床医学の知識が本書には満載されている。

 もちろん本書はあくまで教科書であり,これを読破すれば一生こと足れりという種類のものではないが,各職種の国家試験合格後も手元に置いて,さらに高度な専門知識を吸収するための土台にしたり,学生時代の知識の復習の一助とすればよいと思われる。告白するが,私もまた,学生時代に学習したままその後の医師としての人生でほとんど遭遇することのなかった疾患について,それらに関する知識を本書でブラッシュアップさせていただいた。厚く御礼申し上げます。

活きた用語の使い方を知ることのできる教科書
書評者: 森 浩志 (阪医大教授・病理学)
 コアテキスト・シリーズ『疾病の成り立ちと回復の促進』の第3,4巻(疾病各論)が発刊された。これで医学・医療系臨床教科を学ぶための専門基礎分野の教科書が揃ったわけである。3年前に第1巻『人体の構造と機能』を目にしたときから,使いやすいよい教科書シリーズになりそうだと注目していたが,期待通りの教科書となっている。これまで,医療系学科/学部の専門基礎分野の講義が非常勤の医学部教員によって行われ,教科書もまた医学部教員によって執筆されることが多いために,解剖学,生理学,医化学,病理学など学問体系ごとの分冊となる傾向があった。シリーズを揃えると重複部分があるため割高な値段であるうえに,執筆者の専門分野のみを記述するセクショナリズムに陥り,読者には不親切な内容の教科書となることが多いのである。

 初めて「病気」を学ぶ学生諸君にとっては,正常な人体の機能と構造が,どんな原因でどう変わって病気になり,どんな症状を呈するのか,それらをまとめて教えてくれるのが有り難いはずである。体系立った○○学や××学の教科書の,それぞれ関連するページから適切な情報を抜き出して,自分なりに知識を組み立てるような自発的学習態度は多くの学生諸君には望めない。一冊の教科書の中で関連事項がコンパクトにまとめられていれば便利である。この教科書はそのために,病理学・細菌学・薬理学・検査/診断学,そして治療方法についても,関連する場面で解説する記述体裁をとっている。

 この教科書シリーズは10年前に看護学生を対象に企画されたようである。当時,「看護教育は簡便医学ではなく看護学であるべき」との中央省庁の看護教育基本方針の見直しに従って,臨床看護学に重心を移して,解剖学や生理学の授業内容が簡略化された。ところが医学・医療の進歩に伴って,理解し覚えなければならないことがどんどん増え,看護師国家試験問題も幅広い生命科学の基礎的知識を持たなければ,解けない問題が増えてきた。これは矛盾である。修学年限を延長して基礎医学相当部分に充てる授業時間数を増やす(看護大学化)のは簡単にはゆかない。現実的な解決策は勉強しやすい,読みやすい,よい教科書を作ることである。

 この教科書の親切な点は,本文以外に「Word」,「ワンポイント」,「ステップアップ」などが設けられていることである。重要事項に限ったはずのコアテキストとは言いながら,教育熱心な教員(著者)は,あれも知ってほしい,これも教えたいと欲が出るため,どうしても教科書が厚くなる。そうすると読むのが億劫になる。この教科書はその対策として,多くの学生諸君に学んでほしいスタンダードの本文のほか,より発展的な知識を学ぶことのできる「ワンポイント」や「ステップアップ」を用意している。自発性のある学生諸君には親切な企画である。また随所に出てくる「Word」は普通の教科書にはない親切心である。医療系の専門分野の勉強は実は,専門用語を正確に理解することである。専門用語は症状や病変を定義するもので,くどくどと説明しなくても簡潔に意味が通じる便利さがあるが,あくまでも正確に理解してこそである。その大切さはわかるが,辞書のように専門用語だけを次から次へと羅列されると,うんざりして覚える気がしなくなる。その点,この教科書は初めてその用語が使われる場所で定義が示されるので,活きた言葉の使い方の実例を知ることができる。

 この教科書は,当初想定の看護学生だけではなく,コメディカルと呼ばれる医療関連分野の学生諸君にも利用価値が高いといえよう。全ページを精読する必要はなく,各自,その時点で必要な部分だけを読めばよいからである。実は私は医学生の教科書としても通用すると思っている。最近の医学部の授業は医師国家試験の前倒し施行などのために,6年間ではなく5年制になっている。加えて,座って聴く講義は身につかない,グループ討議による自学自習が優れているということになり,講義時間が少なくなった。勢い体系的な知識を提供してくれる教科書を読むよりも,具体的な項目をインターネットで検索して,断片的な情報を継ぎ貼りするような勉強方法になってしまっている。それは医学生向け教科書が分厚すぎるのも原因であろう。物議を醸すことを承知で言えば,この教科書は看護学生向けにしては欲張りすぎた内容である。むしろ近頃の基礎学力の落ちた医学生に適した教科書であると思われる。これは,医学部と看護学校を含むコメディカルの授業を,試験評価も含めて20年近く担当してきた病理学教員としての実感である。

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