身体機能作業療法学

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作業療法士として,人間を1つのシステムとして全体的に見る目を養うことを編集の主眼とし,身体機能と機能障害,各種の身体機能作業療法についての歴史,治療原理,実践の過程と事例について章を設けて解説。特に治療原理の項では図・絵・写真を多用して読者の理解を助けている。
シリーズ 標準作業療法学 専門分野
シリーズ監修 矢谷 令子
編集 岩崎 テル子
発行 2005年04月判型:B5頁:400
ISBN 978-4-260-26714-4
定価 5,170円 (本体4,700円+税)
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序章 身体機能作業療法学を学ぶ皆さんへ
 『身体機能作業療法学』学習マップ
 A.作業療法士になるための知識の階層性
 B.なぜ身体障害ではなく身体機能か
第1章 身体機能作業療法学の基礎
 GIO,SBO,修得チェックリスト
I 身体機能作業療法学の基礎
 A.身体機能作業療法の3つの目的
 B.ニーズを充足させるための治療の選択
 C.臨床的推論
 D.身体機能作業療法過程
II 身体機能障害の治療原理
 A.対象者とセラピストのためのボディメカニクス
 B.関節可動域の拡大
 C.筋力と筋持久力の維持・増強
 D.筋緊張異常とその治療
 E.不随意運動とその治療
 F.協調運動障害とその治療
 G.知覚再教育
 H.廃用症候群とその対応
 I.物理療法の基礎
 本章のキーワード
第2章 身体機能作業療法の実践
 GIO,SBO,修得チェックリスト
I 作業療法の過程
 A.主治医から作業療法部門への処方・依頼
 B.リハビリテーション実施計画書とインフォームドコンセント
 C.作業療法評価―情報収集の順序と内容
 D.評価のまとめと問題点・利点の抽出
 E.治療計画
II 病期に応じた治療・援助内容の違い
 A.病期
 B.病期に応じた治療・指導・援助内容と実施場所
III 実施場所に応じた治療・指導・援助内容の違い
 A.医療領域における治療・指導・援助
 B.保健・福祉領域における身体機能障害者への指導・援助
 C.職業関連領域
IV ライフサイクルに応じた治療・指導・援助の違い
 A.ライフサイクルと発達課題
 B.発達段階に応じた治療・指導・援助の違い
 本章のキーワード
第3章 身体機能作業療法の実践事例
 GIO,SBO,修得チェックリスト
I 脳血管障害と脳外傷
 A.脳血管障害とは
 B.脳血管障害の作業療法
 C.脳外傷とは
 D.脳外傷の作業療法
II 頸髄損傷
 A.頸髄損傷とは
 B.頸髄損傷による神経症状と合併症
 C.作業療法の実際
 D.機能再建術における作業療法士の役割
 E.まとめ
III 神経変性疾患
 A.神経変性疾患とは
 B.代表的疾患の特徴
 C.医学的治療
 D.作業療法評価
 E.治療・指導・援助
 F.注意事項
 G.今後の学習アドバイス
IV 末梢神経損傷
 A.腕神経叢損傷とは
 B.医学的治療
 C.作業療法評価
 D.治療・指導・援助
 E.注意事項
V 神経・筋疾患
 A.神経疾患
 B.筋疾患
VI 熱傷
 A.熱傷とは
 B.熱傷の特徴
 C.医学的治療
 D.作業療法評価
 E.治療・指導・援助
 F.注意事項
VII 関節リウマチ
 A.関節リウマチとは
 B.医学的治療
 C.作業療法の歴史的背景
 D.作業療法評価
 E.治療開始までの必要事項
 F.治療・指導・援助
VIII 骨・関節疾患
 A.骨折
  A-1.上腕骨骨折
  A-2.前腕骨骨折
  A-3.手指の骨折
  A-4.下肢骨折(大腿骨頸部骨折)
  A-5.骨折に対する共通概念としてのADL自立へのサポート
 B.脱臼・亜脱臼
 C.五十肩・肩関節周囲炎
 D.腰痛,ぎっくり腰
 E.変形性関節症
IX 切断
 A.切断・離断とは
 B.切断の原因
 C.切断の適応
 D.切断の分類
 E.医学的治療
 F.作業療法評価
 G.治療・指導・援助
X 呼吸器疾患
 A.呼吸とは
 B.呼吸器の解剖
 C.呼吸器の運動と生理
 D.呼吸器疾患
 E.呼吸リハビリテーション
 F.作業療法
XI ターミナルケアと作業療法
 A.ターミナルケアとは
 B.終末期症状とトータルペイン
 C.人生の最後にあたって
 D.作業療法評価
 E.作業療法の役割
 F.チームアプローチの重要性
 G.癌治療における終末期リハビリテーション
 本章のキーワード
身体機能作業療法学の発展に向けて

さらに深く学ぶために
索引

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要点を押さえた最適な教科書
書評者: 望月 秀郎 (長野医療技術専門学校教務部長)
 近年,身体障害に関する作業療法の書も大分増えてきたが,学生にとって使いやすく優秀な書は少ない。というのは,卒業後,国家試験に合格してからの技術書的な専門書が多く,初歩から基本,応用,臨床にまで流れよく書かれているものが少ないように感じていた。

 今回出版された本書は,『標準作業療法学 専門分野』シリーズの1冊で,学生にとっては至れり尽くせりの編集形式となっており,前述した基本,応用,臨床を一貫して学べるようになっている。

 まず,教師の側からみてみると,一般教育目標(GIO),行動目標(SBO)の一覧表によって教授目標が各章ごとに明確に出されていることに目がいく。もし,教師側で内容的な追加をしようとしたら,この目標に必要項目を追加すれば,自分の考える教育内容としての充実がより図りやすいといえるだろう。また,学生側から考えてみても,予習復習がしやすいよう,随所にキーワードマークがつき,各章末にキーワード集として解説してある。そして,GIO,SBOと並んで,自己の修得度を確認できるように習得のチェックリストが設けられていることも,学習意欲をそそる工夫といってよいであろう。

 本書の内容の特色は,従来,「身体障害作業療法学」と呼んでいたものを,生活機能分類(ICF)の立場から「身体機能作業療法学」と言い換えた点にある。作業療法士にとっては,残存機能や能力の評価利用は当然のことであり,ポジティブ,ネガティブの両面を考えることが一人の人間を正しくとらえる要点であることに社会がようやく気づいて頂けたとの思いであるが,書のタイトルが与える影響にまで言及したことは素晴らしいことである。

 本書の構成も,約4割で基礎的な内容と身体機能作業療法の流れを説明し,残り6割を実践事例として,具体的な疾患別に,大まかな書式統一を図りながら,臨床経験豊かな作業療法士によって書かれている。いずれもその道での実体験と豊富な文献を駆使しての疾患別の解説・技術内容であり,その疾患の種類も,脳血管障害,頸髄損傷,神経変性疾患,末梢神経損傷,神経・筋疾患,熱傷,関節リウマチ,骨・関節疾患,切断,呼吸器疾患,ターミナルケアに及んでいる。さらに,神経変性疾患,神経・筋疾患や骨・関節疾患などは具体的な多数の疾患名を項立てして1つひとつに対して解説してあり,教師側が未経験な分野については大変役に立つ。

 全体を通じての編集にも配慮が行き届いており,各頁に図表や写真を適宜配置してあり,文字だけのページは数えるほどしかない。これも今どきの学生の心理に配慮している結果であろう。時折淡いグリーンの文字や図表を用いて固い内容に柔らかさを与えているなど随所に執筆者,編集者の心遣いが感じられる良書である。本書はこれから作業療法士を目指そうという学生諸君には,身体機能に関する作業療法の書として,最も基本となる1冊としてぜひ推薦したい書である。

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