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縛らない看護


編著:吉岡 充/田中 とも江

  • 判型 A5
  • 頁 276
  • 発行 1999年09月
  • 定価 2,160円 (本体2,000円+税8%)
  • ISBN978-4-260-33017-6
抑制はずしのノウハウを具体的に解説
「抑制」をしない、そこから「看護」がはじまる。抑制廃止運動が各地で巻き起こり、厚生省令でも身体拘束が禁止された。いま問題は「どうすれば抑制をなくすことができるか」だ。本書は抑制が抑制を生むメカニズムを明らかにしつつ、患者・看護者双方が“自由になれる”抑制はずしのノウハウを具体的に示す。「縛らないですむ方法を考えることが看護そのものだった」と気づいた看護者は元気になれる。
書 評
  • ラディカルな問いに満ちた衝撃の書
    書評者:広井 良典(千葉大助教授・総合政策学科)

     「縛らない看護」……何というインパクトのあるタイトルだろうか。しかしこれは単なるタイトルの問題ではない。この本に書かれていることは,文字どおり「縛らない看護」を着実に実現させていった,その過程の記録であり,またそこから一気に開かれる新しいケアの地平である。

    ◆「抑制」について多面的に論じる...
    ラディカルな問いに満ちた衝撃の書
    書評者:広井 良典(千葉大助教授・総合政策学科)

     「縛らない看護」……何というインパクトのあるタイトルだろうか。しかしこれは単なるタイトルの問題ではない。この本に書かれていることは,文字どおり「縛らない看護」を着実に実現させていった,その過程の記録であり,またそこから一気に開かれる新しいケアの地平である。

    ◆「抑制」について多面的に論じる
     舞台の中心は東京・八王子にある上川病院。読者の多くはすでにご存じのことと思うが,「抑制」のない看護つまり縛らない看護に先駆的に取り組み,それをまず自らの病院において実現させ,さらには「抑制廃止福岡宣言」(98年10月)や厚生省による身体的拘束の禁止令を導くまでのパイオニア的な役割を果たしてきた病院である。

     内容的に見ると,本書の「思想」の核ともいうべきものは,「縛られているのはだれか」と象徴的に題された序章に,ほぼ集約されていると思われる。この表題(とこの章の内容)は読者をたじろがせるほどの衝撃力を持っている。同時にこの本の魅力は,それを単なる理念に終わらせることなく,続く章において「縛らない看護」を現実に実践していくための具体的な方法論をわかりやすく提示していること,またそれが老人医療に180度の発想の転換ともいえる変革をもたらすほどの広がりを持つものであることを,多面的な角度から論じていることである。

    ◆なぜこのような医療が行なわれてきたのか

     この本を読んで,読者が持つ読後感はさしあたって次の2つであろうと思われる。1つは,ともかくもこうした先駆的な取り組みや努力により「抑制」廃止に向けた大きな一歩が踏み出され,かつそれが現在急速に進行中であることについての喜びや期待,希望等々である。しかし同時に他方で,なぜ今の今までこうした姿の医療が,大手を振って,とまではいかないにしてもある種の権威を伴って行なわれ続けてきたのか,という基本的な疑問が浮かんでくる。

     筆者自身の関心にやや引きつけた読み方になってしまうが,そのように考えていくと,この本が提起しているのは,「ケア(ないし看護)とは何か」という問いであるだけでなく,そもそも医療技術とは何か,医学が「科学」であるとはどういう意味においてなのか,治療とは何をもってそう言えるのかといった,医学や(近代)科学の意味についての根源的な問いであるように思えてくる。

     ここで医療技術史や科学史的な議論に深入りする余裕はないが,医学,というより科学全体が現代という時代において大きな転換点に立っていることは言うまでもない。なぜなら,科学の体系(や学問の分類)は,基本的に19世紀という産業化の時代にほぼ現在のような形に作られたものであり,逆に言えば,現行の科学や学問分類の姿は,現代という時代のニーズ(医療の場合でいえば疾病構造)に対して構造的に対応し切れていない部分が大きいからである。ということは,本書は老人医療における「抑制」をテーマとするものであるけれども,この「抑制」に類することは,実は探していけば現在の医療において他にも多々あるのではないか,ということである(例えば,がんの治療においてそうしたことはないだろうか)。本書を踏まえてさらに考えていくべきは,こうした方向のことなのではなかろうか。

    ◆新しい「ケアの科学」を

     ニードの変化に対応できていない科学・医学を,もう一度本来の姿に戻す途はどこにあるのだろうか。おそらくそれは2つだろうと思われる。1つは徹底して「生活者の視点」に立ち返り,抑制ってどう考えてもやっぱり変だ,と思える“ふつうの感覚”にしっかりと立脚し,そこから医療の全体を再点検していくことである(編者の1人である田中とも江氏の強みはここにある)。もう1つの可能性は,「学」としての看護学が,それ自体近代科学の枠組みを乗り越えるポテンシャルを持つ分野であることを自覚して,新しい「ケアの科学」を生み出していくことである。いずれにしても,本書から見えてくるのは,看護,ケア,そして科学というもののそうしたラディカルな=根底的な可能性なのではなかろうか。
目 次
序章 縛られているのは誰か
1章 実践!縛らない看護
2章 こうすれば抑制はいらない
3章 看護管理者としてどう取り組むべきか
4章 老人を看るということ
5章 日本の老人医療 この20年
6章 海外「抑制」事情
7章 抑制クロストーク 他
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