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≪標準言語聴覚障害学≫

聴覚障害学


(在庫なし)

シリーズ監修:藤田 郁代
編集:中村 公枝/城間 将江/鈴木 恵子

  • 判型 B5
  • 頁 368
  • 発行 2010年12月
  • 定価 5,720円 (本体5,200円+税10%)
  • ISBN978-4-260-00993-5
聴覚障害領域の基礎から臨床まで臨床現場も意識したテキスト
言語聴覚士を目指す学生のための教科書シリーズの1冊。聴覚の機能や医学、聴覚障害および聴覚障害リハビリの概要といった基礎的知識から、評価・指導・訓練に関する実践的知識に至るまでわかりやすく丁寧に解説。臨床で遭遇する特異的な聴覚障害も紹介している。実際に聴覚障害の仕事に携わる言語聴覚士が聴覚障害者に対応する際に必ず抑えておくべき事項も重視。社会資源や聴覚障害領域の“いま”を知るコラムも豊富に収載。
*「標準言語聴覚障害学」は株式会社医学書院の登録商標です。
序 文


 「聴覚障害」といっても,「聞こえ」による障害をひとまとめに括るのは難しい.歴史的にみると聴覚障害への社会的な関心や取り組みは,主に「聾」といわれた人々への教育から始まり,すでに400年以上の歴史がある.20世紀に入り,「聴覚の科学」として“Audiology”が成立し,リハ...


 「聴覚障害」といっても,「聞こえ」による障害をひとまとめに括るのは難しい.歴史的にみると聴覚障害への社会的な関心や取り組みは,主に「聾」といわれた人々への教育から始まり,すでに400年以上の歴史がある.20世紀に入り,「聴覚の科学」として“Audiology”が成立し,リハビリテーションの概念が広く普及した.それらを背景に聴覚障害に対する専門的なアプローチは,医療・福祉・教育の各領域で可能となり,いまや言語聴覚士は日本における聴覚障害児者のハビリテーション/リハビリテーションの中核的な仕事を担っている.
 聴覚障害の専門職としての言語聴覚士の歴史はまだ浅いが,その業務は幅広く,学ぶべき内容も,医学・音響学・心理学・言語学・音声学・社会学・教育学など極めて学際的である.また最近では,新生児聴覚スクリーニング検査で軽中等度難聴や一側性難聴も乳児期早期に発見される一方,高齢社会の進展に伴い高齢者の聴覚障害の問題も軽視できない.さらに補聴器や人工内耳などのテクノロジーの目覚ましい進歩は,聴覚障害の世界を大きく変えている.またそれとは異なり,手話言語により聾者を生きるという選択もある.いまや言語聴覚士は乳児から高齢者までのあらゆる年代の聴覚障害に対応し,多様な考え方とさまざまなニーズに直面する時代といえる.
 本書は,このような現状を踏まえ,広く聴覚障害を理解し,言語聴覚士として聴覚障害の臨床に携わるに必要な内容について解説した.執筆にあたっては,方法論の網羅的紹介に終わることがないよう,その方法のもつ意味や理論的背景を明らかにするよう留意した.
 第1章は,聴覚障害についての基本的理解を図るために,聴覚の機能と聴覚障害について概説した.とくに,聞こえる世界と,聞こえないまたは聞こえにくい世界の違いを十分認識したうえで,聴覚障害を理解できるよう配慮した.第2章の聴覚の医学では,言語聴覚士が理解すべき医学的・生理学的事項につき詳細に解説した.第3章では聴覚障害の評価,第4章では聴覚障害の指導・訓練について,それぞれ臨床の実際とその理論的背景を,最新の知見も含めて詳述した.第5章では特異な聴覚障害を取り上げ,また第6章では情報保障や社会福祉制度,教育制度および社会資源の活用について解説した.
 本書では,シリーズ共通要素であるSide MemoやTopicsとは別にColumnの欄を設け,理解に役立つ知見や先駆的試みを取り上げ,それぞれの専門家に解説を仰いだ.なお多様な考えがある用語については著者に一任し,あえて統一しなかった.それは医療・福祉・教育など各領域よって使用される用語は必ずしも同じではないことによる.
 本書の執筆者は,長年聴覚障害領域で臨床・研究・教育に携わってこられた言語聴覚士と医師である.またColumnではそれぞれのテーマに相応しい関連領域の方々に御執筆いただいた.豊富な臨床・研究に裏打ちされた内容が,基礎的な知識から最新の知見まで詳細かつ実践的に解説されている.時に初学者には難解な部分もあろうが,臨床に出てからその意味に新たな気づきが生まれるであろう.また本書で取り上げた考え方や方法が,聴覚障害のある方々へのさらなる理解と実践を進めるきっかけとなるかもしれない.聴覚障害の臨床の全貌が見渡せる教科書として,言語聴覚士を目指す学生や関連領域の方々に有用な書となれば幸いである.
 最後に,この領域の発展を願い,熱意をこめて御執筆くださった方々に心から感謝申し上げる.併せて発刊に際し忍耐強い励ましと献身的なご尽力をいただいた医学書院編集部の皆様に深い謝意を表したい.

 2010年12月
 編集
 中村公枝
 城間将江
 鈴木恵子
書 評
  • 広く深い聴覚障害領域をバランス良く取り上げた良書
    書評者:加我 君孝(東京医療センター臨床研究センター・感覚器センター名誉センター長)

     言語聴覚士教育のカリキュラムの中で聴覚障害の分野ほど教える側にとっても学ぶ側にとっても難しい領域はない。大きな理由は4つある。(1)背景にある理論は物理学と音響学を基礎としている,(2)耳と中枢聴覚伝導路の解剖と構造,生理学や薬理学など必要な基礎知識が広く深い,(3)聴覚障害は外耳,中耳,蝸牛,聴...
    広く深い聴覚障害領域をバランス良く取り上げた良書
    書評者:加我 君孝(東京医療センター臨床研究センター・感覚器センター名誉センター長)

     言語聴覚士教育のカリキュラムの中で聴覚障害の分野ほど教える側にとっても学ぶ側にとっても難しい領域はない。大きな理由は4つある。(1)背景にある理論は物理学と音響学を基礎としている,(2)耳と中枢聴覚伝導路の解剖と構造,生理学や薬理学など必要な基礎知識が広く深い,(3)聴覚障害は外耳,中耳,蝸牛,聴神経,脳幹,大脳の各レベルで症状と検査所見が異なる。先天性難聴から老人性難聴,さらに中枢聴覚障害までも含まれる。それぞれの障害に合わせた聴覚心理学的検査から,耳音響放射やABR(聴性脳幹反応聴力検査)のような他覚的聴力検査がある,(4)治療法が多様で,中耳の鼓室形成術や人工内耳手術のように外科的なものと同時に,補聴器のフィッティングや聴能訓練や指文字,手話のような視覚的言語教育も含まれる。

     聴覚障害学は海外ではAudiologyといい,修士の教育であり,卒後研修を受けAudiologistという専門家として活躍している。わが国では学部教育の中で詰め込んだ教育をせざるを得ない。おそらく学生は聴覚障害の患者を見たことも接したこともないのにバーチャルに想像しながら学ばざるを得ないのではないか。

     評者はあらゆる聴覚障害症例の診断治療に過去40年の間取り組んできた。その間,言語聴覚士とともに失語症にも嚥下障害にも取り組んだが,聴覚障害ほど魅力的な領域はない。最初に述べた4つの点が自分の頭の中で次第に統合され,整理されると,その知識と検査法を基に手術まで含め縦横無尽に活躍でき,結果的に患者に貢献できるようになるからである。

     本書は6章からなり,いずれの章も大半が個人的にも存じ上げている言語聴覚を専門とする先生が書かれている。これまでにも類書は存在していたが,本書の特徴は,(1)その難しい領域をわかりやすく,できる限り図を工夫して明解になるように書かれている。多くのSide Memoが理解を深めるのに役に立っている,(2)聴覚障害の医療の現場もバランス良く取り上げている,(3)基本的な事項だけでなく,最新の知識や情報を取り上げて紹介している,(4)言語聴覚士の国家試験を意識しながら書かれている,ことなどが挙げられる。また,各章末のKey Pointでは,理解度をチェックするための質問が用意されている。このほか,学習しやすいように目次も索引も工夫されていることも学習の便宜を図っている。

     教科書としては少し厚いようにも思えるが,分野が広く深いため仕方がない。言語聴覚士をめざす人だけでなく,耳鼻咽喉科の医師にも大いに参考になる。良書として薦めたい。この本の内容を手中にすれば聴覚障害の臨床では鬼に金棒であろう。
  • 待望の標準的「聴覚障害学」のテキスト
    書評者:大沼 直紀(東大先端科学技術研究センター客員教授/前 筑波技術大学長)

     聴覚にかかわる問題は人の一生を通じて扱われる。特に近年は“聞こえのバリアフリー”を必要とする二つの世代ピークがある。一つは加齢による聞こえの不自由さに悩み,周囲とのコミュニケーションに困難を感じる高齢者。もう一つは,新生児聴覚スクリーニングにより早期に難聴が発見されるようになった聴覚障害幼児とその...
    待望の標準的「聴覚障害学」のテキスト
    書評者:大沼 直紀(東大先端科学技術研究センター客員教授/前 筑波技術大学長)

     聴覚にかかわる問題は人の一生を通じて扱われる。特に近年は“聞こえのバリアフリー”を必要とする二つの世代ピークがある。一つは加齢による聞こえの不自由さに悩み,周囲とのコミュニケーションに困難を感じる高齢者。もう一つは,新生児聴覚スクリーニングにより早期に難聴が発見されるようになった聴覚障害幼児とその家族である。世界では言語聴覚障害にかかわる“ST”と“Audiologist”の資格や専門領域が独自に定められているのが一般的であるが,日本では「言語士」と「聴覚士」のどちらをも合わせた「言語聴覚士」として広範な専門性を身につけなければならない。かねてから,オーディオロジーに詳しい「言語聴覚士」の養成が質量ともに遅れがちなことを私は心配していた。

     補聴器フィッティング理論の基礎をつくり“Father of Audiology”と呼ばれたカーハート博士(Raymond Carhart, 1912-1975)が,ノースウエスタン大学に初の「オーディオロジー学科」を設置したのは1946年のことである。その後,20世紀後半には欧米先進国ではAudiologist制度が確立され,専門家を育てるための多くの成書が出版された。

     なかでも耳鼻科医やオーディオロジストの必読教科書として世界中で読まれた名著の一つが,CID(Central Institute for the Deaf;ワシントン大学医学部附属中央聾研究所)のデービス博士とシルバーマン博士の編著による“Hearing and Deafness”である。版を重ね,その第4版は1980年に出版された。

     当時の日本にはオーディオロジーの専門書がほとんどなかったので,CID留学仲間の数名の研究者が集まりこの第4版を翻訳することになった。原本名の“Hearing and Deafness”を何と訳したらよいか議論する中で,私が“聴覚障害学”という訳語を提案し,ある医学出版社から訳本『聴覚障害学』が刊行された。これが「聴覚障害学」の用語が活字となって広まるきっかけとなったわけである。

     本書は聴覚障害乳幼児から高齢難聴者まで,生涯にわたる聞こえの補償と支援を行う専門家(言語聴覚士や補聴器相談医に限らず,教育オーディオロジー担当教師,認定補聴器技能者,情報保障支援者など)になるための内容が充実している。最新の理論・技術を紹介する「Topics」や,先駆的な試み・知見・展望を解説する「Column」は臨床家や研究者にとっても有用である。

     章ごとの知識を整理させてくれる「Key Point」は言語聴覚士を志す学生に役立つであろう。特にページの要所に配置されている多くの「Side Memo」が専門用語の理解を助けてくれる。これらの「Side Memo」を集めただけでも新しい「聴覚障害学の用語辞典」となりそうで嬉しい。

     日本で初めての多チャンネル人工内耳手術が行われてから25周年に当たる今,標準的「聴覚障害学」のテキストが世に出たことは意義が深い。私にとっても“Hearing and Deafness”(第4版,「聴覚障害学」)以来,待ち望んでいた教科書といえる。
目 次
第1章 聴覚と聴覚障害
 1 聴覚の機能
 2 聴覚障害とはなにか
 3 聴覚障害のリハビリテーションの歴史と現状
 4 聴覚障害のリハビリテーションの概要
第2章 聴覚の医学
 1 聴覚の発生・解剖・生理
 2 聴覚の病理
第3章 聴覚障害の評価
 1 評価の概要
 2 聴覚機能検査
 3 選別聴力検査
 4 小児の評価
 5 成人の評価
第4章 聴覚障害の指導・訓練
 1 聴覚補償機器
 2 小児の指導・訓練
 3 成人の指導・訓練
第5章 特異的な聴覚障害
 1 中枢性聴覚障害
 2 機能性聴覚障害
 3 視覚聴覚二重障害
 4 その他の重複障害
第6章 聴覚障害のバリアフリーと社会資源
 1 聴覚障害のバリアフリー
 2 情報保障
 3 聴覚障害と社会資源

参考図書
索引
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