はじめての漢方診療ノート

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既刊『≪総合診療ブックス≫ はじめての漢方診療 十五話』の姉妹書。概説篇と症候篇の2部構成。概説篇は漢方医学の基本概念に沿って図表主体の構成。読者は診療しながら書き込んで、自分自身のオリジナルの漢方診療の本を作り上げることができる。症候篇では日常臨床でしばしば遭遇する症候や疾患を取り上げた。
三潴 忠道
発行 2007年02月判型:B5頁:144
ISBN 978-4-260-00452-7
定価 3,520円 (本体3,200円+税)
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序文
執筆者/三潴 忠道

 漢方医学は,中国で誕生し日本に渡来して発展した伝統医学である.そのバイブルともいわれる『傷寒論』は,西暦200年頃に傷寒雑病論として編まれた書の一翼といわれ,急性熱性疾患の臨床経過とそれに対応する治療法(薬方)を経験に基づいて記した,EBMの医書である.『傷寒論』は理論を説明することを極力避け,具体的な臨床所見とその病態に用いるべき薬方を提示しつつ,漢方医学的な病態である証の空間を描いている.すなわち,収載されている薬方群は治療手段であると同時に,人が病に陥った際に呈する病態(証)空間に対応する.『傷寒論』と,傷寒雑病論のもう一翼である慢性疾患篇『金匱要略』に収載の方剤の証(適応病態)を学ぶことは,漢方医学の基本的な証空間を学ぶこととなる.
 本書では『傷寒論』『金匱要略』収載の薬方(古方)を軸に,六病位および気血水の観点から主要な薬方を整理して掲載した.さらに,その実践篇として,症候篇をまとめた.
 著者が在籍した千葉大学東洋医学研究会において,藤平健先生と小倉重成先生からのお教えを基に,先輩の土佐寛順先生は学生時代に「夏合宿のテキスト」を残された.これを基本に,著者は平成3年頃に『漢方診療の概説』を手作りし,種々の医師向け漢方講座で用いてきた.これを軸として平成8(1996)年に開始した麻生飯塚漢方診療研究会での講義記録は,平成17(2005)年5月に上梓した拙著『はじめての漢方診療 十五話』の基となった.今回はその配布資料である『漢方診療の概説』を,できるだけ実用の便を考慮しつつ整備し,症候篇を加えてまとめた.『はじめての漢方診療 十五話』が系統講義なら,本書はそのノートである.
 著者が在籍した千葉大学,富山医科薬科大学(現・富山大学),麻生飯塚病院を通し,ご指導を受けた多くの先生,先輩,諸兄,さらに受診患者各位のご恩に感謝します.この本の作成の中心となり症候篇をまとめていただいた木村豪雄先生,ご配慮いただいた医学書院の尾島茂氏に厚く御礼申し上げます.

平成19(2007)年 飯塚で15回目の正月に

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概説編
 I章 漢方診療の概要
 II章 六病位とその漢方治療
 III章 気血水の変調とその漢方治療
 IV章 証の変化と方剤の運用
 V章 腹診の手順と主な特異的徴候
症候編
 1 かぜ症候群に対する漢方
 2 神経痛・関節痛に対する漢方
 3 腹満と便秘に対する漢方
 4 腹痛と下痢の漢方
 5 女性のための漢方
 6 皮膚疾患に対する漢方
 7 高齢者のための漢方
 8 冷えに対する漢方
付録 収載漢方方剤集・索引
健康調査表
索引

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漢方医学の基本を解説し実践につなげる良書
書評者: 石野 尚吾 ((社)日本東洋医学会長)
 (社)日本東洋医学会,漢方専門医・指導医である三潴忠道博士は,千葉大学医学部学生時代から千葉大学東洋医学研究会で活躍され,故藤平健,小倉重成両先生に直接師事して漢方医学を学ばれた。卒業後は千葉大学医学部附属病院第2内科で現代医学を研鑽し,その後10年間,富山医科薬科大学(現富山大学)附属病院和漢診療部寺澤捷年教授の下で漢方診療に従事した。

 1992年,麻生飯塚病院漢方診療科初代部長に就任され現在に至っている。わが国で漢方治療専門での入院施設は非常に少ない。麻生飯塚病院は急性疾患,重症例,難症などの入院治療を行っている数少ない病院のひとつであり,著者はそれら疾患と対峙しオールラウンドに漢方治療に深い経験を積んでいる。

 本書は,序文にもあるように,2005年に出版した『はじめての漢方診療 十五話』(医学書院)の姉妹編であり,前書掲載事項のまとめの役割を果たすものである。
 本書の目次を見てみよう。概説編5章と症候編8項目,そして収載漢方方剤集・索引,健康調査票と漢方治療の特徴を記している。概説編は,漢方医学とはどういうものか,漢方の歴史から始まり,三陰三陽,気血水,腹診の手順などの漢方的な診察法,本書を理解するために必要な漢方用語の簡明な解説などが記されている。第V章の「腹診の手順と主な特異的徴候」では,手順から始まり特異的な徴候の把握法と,そこから得られる情報と処方にいたるまでの考え方が記してある。

 症候編では,実地臨床の豊富な経験をもとに,かぜ症候群,便秘,下痢など日常しばしば遭遇する急性・慢性の症状,症候に,さらに高齢者や女性特有の症状など8項目について漢方治療が仔細に記されている。

 本書はごく身近な疾患に対する漢方医学の基本的な取り組み,考え方が初学者にも理解しやすいようにわかりやすく解説されている。漢方初学者に,大学での漢方講義,特に臨床講義のサブノートとしての活用に役立つものである。また漢方治療に取り組む医師にも大変参考になる。

 本書を広く江湖に紹介し,漢方治療の実践の書として推薦する次第である。
情報に翻弄されないための漢方診療の実践書
書評者: 寺澤 捷年 (千葉大大学院教授・和漢診療学)
 漢方についての初心者向けの講演会などで,「漢方を手早く使えるようになるにはどうしたらよいでしょうか?」という質問をよく受ける。東洋の知と西洋の知は異なったパラダイム(思考の枠組み)であるから,あたかも囲碁の名人が,手早くチェスの名人になれないのと同様に,それなりの別の努力が必要である。

 「学問に王道なし」という諺があるが,漢方修得に王道はない。しかし,ある高山の登頂をしようとした場合,装備はもちろんだが,正確な地図や案内書を持ち,コンパスを持参することは遭難しないための必須の要件である。この意味で,「王道はある」かもしれない。

 著者の三潴忠道先生とは「千葉大学東洋医学研究会」で同じ師匠(藤平健,小倉重成両先生)に師事し,富山医科薬科大学附属病院で「和漢診療科」を立ち上げた同志(嬉しいことに私が先輩)であるが,二年前に出版された『はじめての漢方診療・十五話』(医学書院)に続く,今回の「ノート」は,前著が「正確な地図」であるとすると,本書が「地図の読み方と諸注意事項」と位置づけることができる。しかも自分自身で学び会得した事柄を記録するスペースが用意されている。

 現代は情報化の時代であり,漢方についても情報が溢れている。そこで,私が提言したいことは,さまざまな情報に翻弄されるのではなく,「これと決めた地図と案内書」に沿って,まずは臨床実践の指針とするということである。『はじめての漢方診療・十五話』と『はじめての漢方診療ノート』は誠にこれに相応しい教材である。まず,「これと決めてよい」ものとし,推薦する次第である。

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