序
毎年異なる執筆者によって書き下ろされている「今日の治療指針」は,2019年版も1,126名もの新しい執筆者によって全27章,過去最高の1,163項目が執筆された.1959年に第1巻が刊行されて以来,毎年改訂されてきており本書は第61巻になる.
本書は毎年新しい企画を採用して改善に努めているが,今年度版においてもいくつかの新企画がある.1つは薬の「使い分けのポイント」を示したことである.従来処方例としては基本的に第1候補をあげ,場合によっては第2候補を推奨していたが,多くの薬物治療において,複数の治療薬があり,通常は使い分けがなされている.薬の使い分けに関しては診療ガイドラインにも載っていないことが多いが,それこそが医師の腕の見せ所であり一番知りたいところである.また使い分けの指標や根拠となるような情報も記載されており,患者によって上手な使い分けができるように工夫されている.「使い分けのポイント」を自家薬籠中のものとしていただくことによって,一歩進んだ治療が可能となると思われる.もう1つの新企画は「ガイドライン」欄である.各項目で治療の参考となる診療ガイドラインがある場合に,そのタイトルと発行年を項目冒頭に記載した.200項目ほどに診療ガイドラインを記載したが,診断法や治療法についてさらに詳細を知りたいときに便利である.今年度版のもう1つの特徴は,「治療のポイント」の掲載数を増やしたことである.2014年版より治療の要点を箇条書きでまとめた「治療のポイント」を主要な約200項目の冒頭に掲載してきたが,本見出しは読者から大変好評であったため,2019年版では大幅に増やし約700項目に掲載した.
昨年に続くことであるが,今年度版にも電子版が無料で付いている.書籍に付与されたシリアル番号を用い,オンライン上で電子版閲覧権を発行すると電子版の閲覧が可能となる.全文検索機能を搭載しているので,書籍よりも素早く検索・閲覧可能であろう.また電子版のみ「文献」および「エビデンス」が閲覧できるので深く知ることが可能である.重い本体を持ち運ぶことなく,スマートフォンやタブレットで検索・閲覧できるため,特に若手医師からは非常に好評である.また「治療薬マニュアル」も購入すると相互リンクし,治療指針の処方例から「治療薬マニュアル」の薬剤情報を確認することができることも大変便利である.このように「今日の治療指針」は毎年新しい企画を盛り込み,常に読者にとって使いやすい書籍であることを目指している.本書が皆様の診療のお役に立つことを心から願っている.
2018年12月
総編集を代表して
小室一成