神経理学療法学 第2版

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理学療法士の養成校で多くの時間が割かれる「脳卒中の理学療法」を重点的に学べるよう編集された初版を引き継ぎ、神経理学療法の最前線の内容も盛り込んでリニューアルされたスタンダードテキスト。今版からは、実際の臨床場面を症例で学べる新たな編も加わり、座学でも実習でも使える教科書を目指した。一流の執筆陣が漏れなく、分かりやすく神経理学療法を教授する!
*「標準理学療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準理学療法学 専門分野
シリーズ監修 奈良 勲
編集 吉尾 雅春 / 森岡 周 / 阿部 浩明
発行 2018年12月判型:B5頁:468
ISBN 978-4-260-03621-4
定価 5,500円 (本体5,000円+税)
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第2版 序

 本書は「標準理学療法学 専門分野」に2013年に追加・発行され,これまで理学療法士を目指す学生のみならず,臨床現場で活躍されている現役理学療法士をも読者として獲得し,多くの学生や理学療法士らに支持されてきた.それに関しては,編集者としてこのうえもない喜びである.学生のみならず,現役理学療法士にとっての「一生ものの教科書」として認知された背景には,現場で通用する脳・神経機能の正確な理解,そして目に見える関節運動のみから神経障害の病態をとらえるのではなく,脳・神経系のメカニズムからも病態をとらえなければ,本質的な解決の糸口にはならないという意識が現場で沸々と立ち上がったことに一因があったように思う.
 初版発行における編集者らの意図は大きく2つあった.神経障害の病態は,主に神経系の機能不全に主たる背景があることから,神経理学療法の対象となる病態・障害に関しては,運動行動のみならず,神経機能(機能不全)の側面も合わせて科学的にとらえることの重要性を読者に伝えること,そして,その解釈過程であるクリニカルリーズニング作業をサイエンスとエビデンスの両面から根拠に基づいて行うことの重要性を読者に伝えること,この2つを意図して執筆をお願いし,編集にあたった.
 それから5年半が経過し,神経理学療法の実際において,運動行動の問題だけから介入指針を考案せず,脳画像所見や運動行動の背景となる神経メカニズムも考慮しながら,病態を把握し,介入指針を決定すべきであるという点に関しては,一定の共通認識を得たように思える.しかし,わが国の理学療法にかかわるすべての臨床機関においてそれらが徹底されているかは,いまだ疑問が残る.
 今回の改訂では,新進気鋭の基礎・臨床研究を行っている理学療法士に執筆者として新たに参画していただき,新しい根拠となる知見を提供していただいた.
 また,初版では神経メカニズム・ネットワークの視点から,神経障害の病態をとらえる意図を込めて「脳卒中に対するクリニカルリーズニング」の編を設けたが,今版では神経障害を有する患者とその病態をとらえて意思決定する手続きの重要性を読者に示すため,編の構成・内容を抜本的に見直した.すなわち,新たな取り組みとして,執筆者が経験した実際の症例の運動行動や病態をもとに,画像所見や神経メカニズム,疫学研究成果などの多方面から解説を加え,臨床での意思決定のプロセスを提示することを試みた.
 ともすれば,われわれの臨床意思決定は自己の経験によるバイアスのみによって行われてしまう問題がある.病態を適切に把握する手続きなくして,臨床の成功には至らない.病態把握は臨床介入の羅針盤である.本書が神経障害の理学療法に携わる多くの関係者に手に取られることを期待したい.

 2018年10月
 編集者を代表して
 森岡 周

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I.脳卒中の理学療法
 1.脳卒中の障害総論
  第1章 中枢神経系の構造と機能
   A.神経系の構成
   B.中枢神経系の構造と機能
  第2章 神経ネットワークと高次脳機能障害
   A.大脳皮質連合野
   B.各連合野間の神経ネットワーク
   C.各連合野およびネットワークの損傷と症状との関連
   D.おわりに
  第3章 脳卒中の病態とリスク管理
   A.脳卒中の病態
   B.脳卒中理学療法におけるリスク管理
   C.理学療法開始時期と中止基準
   ●コラム:水頭症
  第4章 脳画像と各種経路の把握
   A.理学療法領域で脳画像を把握する意義
   B.各種脳画像の特徴と各種病変のとらえ方
   C.脳血管の走行と支配領域
   D.水平断面像で把握する脳解剖
   E.脳画像における各種経路の把握
   ●コラム:眼症状
  第5章 脳卒中の回復メカニズム
   A.神経の可塑性
   B.脳卒中後の機能回復に影響する因子
   ●コラム:維持期リハビリテーション
  第6章 脳卒中の障害構造
   A.脳卒中と障害
   B.脳卒中後の障害に対する評価の意義
   C.脳卒中の理学療法で頻用される評価方法
   D.脳卒中後の障害に対する病期別の理学療法士の役割
   ●コラム:脳卒中ユニット
 2.脳卒中の障害と理学療法
  第1章 意識障害
   A.意識障害とは
   B.意識維持・調節の機構
   C.意識障害の原因
   D.意識障害患者の診方
   E.意識レベルの判定
   F.意識狭窄
   G.意識変容
   H.特殊な意識障害
   I.軽度意識障害の留意点
   J.意識障害に対する理学療法
  第2章 運動麻痺
   A.運動制御に関与する神経機構
   B.運動麻痺
   C.理学療法士に求められるもの
   ●コラム:装具
  第3章 感覚障害
   A.感覚の定義と検査の意義
   B.感覚の神経機構と障害のメカニズム
   C.理学療法評価の実際
   D.理学療法への展開(アプローチの考え方)
   ●コラム:視床
  第4章 異常筋緊張
   A.筋緊張を規定する因子
   B.筋緊張の神経機構
   C.異常筋緊張の種類
   D.痙縮の病態と発生機序
   E.筋緊張の評価
   F.異常筋緊張に対する理学療法
  第5章 運動失調
   A.運動失調とは
   B.協調運動の神経機構
   C.運動失調の発生メカニズム
   D.運動失調の種類とその症状
   E.運動失調の評価
   F.運動失調の理学療法
  第6章 身体失認,病態失認
   A.身体の認識とは
   B.身体失認
   C.病態失認
  第7章 半側空間無視
   A.半側空間無視とは
   B.空間性注意と空間認知
   C.半側空間無視の発生メカニズム
   D.半側空間無視の評価
   E.半側空間無視の理学療法
  第8章 失行
   A.失行の定義と種類
   B.失行の評価
   C.失行の病巣と発生メカニズム
   D.失行に対するリハビリテーション
   ●コラム:失語症
  第9章 注意・遂行機能障害
   A.注意・遂行機能障害とは
   B.注意・遂行機能障害の評価
   C.注意・遂行機能障害と脳領域
   D.注意・遂行機能障害の理学療法
   E.理学療法上の留意点
  第10章 精神・知能障害
   A.脳卒中後の精神障害
   B.脳卒中後の知能障害
  第11章 痛み
   A.痛みの定義と分類
   B.脳卒中の痛みの概要
   C.脳卒中後の末梢性疼痛
   D.脳卒中後の中枢性疼痛
   E.診断
   F.治療
   G.肩手症候群
   H.評価
   I.理学療法
   ●コラム:中枢性疲労
  第12章 二次的機能障害(関節可動域制限など)
   A.脳卒中後の関節可動域制限の発生メカニズム
   B.脳卒中後の筋力低下のメカニズム
   C.脳卒中後の体力低下のメカニズム
   ●コラム:患者教育
  第13章 姿勢定位障害
   A.pusher現象
   B.lateropulsion
  第14章 姿勢バランス障害
   A.バランスおよび姿勢制御とその病態
   B.バランス能力評価
   C.バランス能力改善のための理学療法
  第15章 起居動作障害
   A.起居動作とは
   B.適応的な運動機能に関与する神経機構
   C.理学療法士にとっての動作分析とは
   D.健常者と片麻痺者の起居動作
   E.症状別にみる介入のポイント
   F.まとめ
   ●コラム:排尿・排便障害
  第16章 歩行障害
   A.歩行に関する神経機構
   B.脳卒中片麻痺の歩行障害
   C.歩行分析
   D.理学療法の目的と実際
   ●コラム:歩行自立度
  第17章 上肢機能障害
   A.上肢運動にかかわる神経機構とその障害の特徴
   B.上肢機能障害の評価
   C.上肢機能障害に対するアプローチとそのエビデンス
   D.上肢機能障害に対するアプローチの構造

II.神経筋疾患の理学療法
  第1章 Parkinson病の理学療法
   A.疾患概要
   B.理学療法評価
   C.理学療法の実際
   ●コラム:嚥下障害
  第2章 脊髄小脳変性症の理学療法
   A.脊髄小脳変性症(SCD)とは
   B.SCDの評価
   C.SCDの理学療法
  第3章 筋萎縮性側索硬化症の理学療法
   A.疾患の概要
   B.疾患・障害のとらえ方
   C.理学療法の実際
   D.理学療法士の役割
  第4章 多発性硬化症の理学療法
   A.疾患の概要
   B.疾患・障害のとらえ方
   C.理学療法の実際
   D.理学療法に求められるもの
   ●コラム:神経筋疾患患者への理学療法時のリスク管理
  第5章 Guillain-Barré症候群の理学療法
   A.疾患概念
   B.亜型
   C.診断
   D.病態
   E.治療
   F.理学療法
   ●コラム:褥瘡ケア

III.ケースで学ぶ神経理学療法――クリニカルリーズニングの実際
  第1章 クリニカルリーズニングとは
   A.はじめに
   B.クリニカルリーズニングを行う前に
   C.クリニカルリーズニングに必要な基本的知識と臨床現象
   D.おわりに
  第2章 急性期脳卒中片麻痺
   A.はじめに
   B.症例紹介
   C.病態解釈のための評価
   D.介入経過
   E.考察
   F.再評価
   G.考察と問題点の修正
   H.おわりに
  第3章 回復期脳卒中片麻痺
   A.はじめに
   B.症例紹介
   C.病態把握のための評価
   D.介入経過
   E.考察
   F.再評価
   G.おわりに
  第4章 半側空間無視を伴う脳卒中片麻痺
   A.はじめに
   B.症例紹介
   C.病態把握のための評価
   D.介入経過
   E.考察
   F.再評価
   G.考察と問題点の修正
   H.おわりに
  第5章 Parkinson病
   A.はじめに
   B.歩行開始時および方向転換時にすくみ足を呈する症例
   C.狭い間口の通り抜けにすくみ足を呈する症例
   D.おわりに

索引

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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