理論にもとづく看護実践
心理学・社会学の理論の応用

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看護実践をするには看護理論だけを知っていれば十分というわけではない。本書はさまざまな背景をもつ患者に対応するために必要な,心理学や社会学の視点を養うためのものである。ある患者の事例を紹介し,次にその事例に適応できる理論の概要を説明,最後にその理論を用いて事例に相応しい看護過程を展開している。
原著 Shirley M. Ziegler
監訳 竹尾 惠子
発行 2002年03月判型:A5頁:312
ISBN 978-4-260-33179-1
定価 3,520円 (本体3,200円+税)
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  • 目次
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1 理論にもとづく看護実践とは
2 危機介入に関するアギュララとメズイックの理論
3 バンデューラの社会的認知理論
4 抑うつ症に関するベックの認知理論
5 ボーエンの家族理論
6 エリクソンによる心理社会的発達理論
7 ラザラスのコーピング理論
8 不安に重点を置いたペプロウ理論
9 レヴィンの変化に焦点をおいた場の理論
10 トーマスの葛藤理論
11 理論にもとづく看護実践の方法
付録A 看護過程に関する用語
付録B 理論に関する用語集
付録C 理論レベルと理論選定の根拠

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看護実践のもとになる理論構築のために
書評者: 山西 文子 (国立国際医療センター看護部長)
 看護をしている者が,書店でこの本を見ると,すぐ手にとって内容を確認したくなる書名である。近年,変化の激しい看護の状況の中で,日々の看護実践に追われている者は,実践のもとになる理論に自信がないのである。臨床の現場は,患者様が1人ひとり異なっており,厳密に言えばケアの方法も皆同一ではないからであろう。看護師国家試験は,わが国のその道の専門家が叡智をしぼって問題を作成し,検討を重ねて模範解答を出しているととらえている。しかし,公開されていくと臨床家からは模範解答が1つだけではなく,複数あるといった反応がある。このように学問と現場との乖離がこのような結果を呈するという1つの例である。

◆看護現場に必要な理論とは

 確かに学問を追究する立場にある者は,先端の理論を追い,一方,現場の者は,現実的な問題を解決するのに追われ,理論的に行動しようとしても,とっさに動かなくては命に影響するなどから,指示を優先したり,終わってから考えて理論構成したりする。また,先輩の行なっている看護を見聞きしても,はっとしたり,じっくり振り返ってその中に潜んでいる法則性を発見することがまれである。私自身を含めて現場にいる者は,どちらかというと論理的な思考や理論的な取り組みに弱く,その反対に感覚的な鋭さや感性は非常に豊かである。したがって,ケアの回数を重ねていると,以前体験したことが活用できるのではないかと経験則で実践を行ない,うまくいくとまた,次のケースに当てはめ,よい結果を出していることのほうが多い。
 研究的な取り組みも,現場においてはそれを実施する能力が不足しているうえに,莫大な時間をさいて研究に取り組むことは至難の業と言えるのである。したがって,看護管理者としては,無理な取り組みを強要しないで,研究的な資質を持って意欲のある者を援助していくことの方がよいのではないかと考えている。
 以上のような状況の中で,少しでもよい方向に変えていく方法として,看護実践に潜む理論をできるだけ実践家に教え,意識的なかかわりや行動ができるようにしたほうがよいと考えている。つまり,多くの実践家が多くの理論があることを知り(多くの知識を得て),研究者の研究結果から得られる多くの理論を得,看護の実践を通して理論を消化し,問題解決に活用できるよう教育・訓練することが臨床家として必要なことであると認識している。理論もあらゆる学問分野から,時代時代に変化している理論,現場の状況にマッチしたものを選択していける能力を養いながら実践家を育てなくてはならないと思う。そのことが,臨床の看護の質の向上に即結びつくと思うからである。

◆看護実践家の教育訓練用テキストとして最適

 今回,この本を読み終えた時,この考えを確信したところである。実践家の教育訓練その時のテキストとして用いるのには最適であろう。理論を応用,活用した具体的な事例を紹介して,解説されていることが最大のポイントである。なぜかと思われる方は,まずこの本を読んでいただきたい。きっと私の言っていることが理解できるであろう。
 本書で取り上げている理論は,以下のとおりである。
 (1)危機介入に関するアギュララとメズイックの理論,(2)バンデューラの社会的認知理論,(3)抑うつ症に関するベックノ認知理論,(4)ボーエンの家族理論,(5)エリクソンによる心理社会的発達理論,(6)ラザラスのコーピング理論,(7)不安に重点を置いたペプロウ理論,(8)レヴィンの変化に焦点をおいた場の理論,(9)トーマスの葛藤理論である。各理論,「ケース」紹介に始まって,「この事例から得られる手がかりの整理」,「関連する理論の選択」,「○○○理論とは」,「○○○理論の臨床実践への応用」,「ケースに対する○○○理論にもとづく看護ケア」,「まとめ」というプロセスで進んでおり,臨床家にとってスムーズに入っていく思考プロセスである。
 最後には,「理論にもとづく看護実践の方法」が解説してあり,付録として「看護過程に関する用語」,「理論に関する用語集」,「理論レベルと理論選定の根拠」がある。
 ベテラン実践家は,自分の行なってきた看護に自信をつけるために,また,臨床に入って間もない人には1つのお手本として,看護管理者には施設内看護の質をレベルアップするためのスタッフ研修テキストとして活用してみてはいかがかと思う。さらに発展して,わが国においてもこのような理論の応用事例集が,一刻も早く出版できることを願っている。

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