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サルコペニアを防ぐ!
看護師によるリハビリテーション栄養

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サルコペニアに対し有用なリハビリテーション栄養の基本的知識、実践を解説する1冊。臨床では“とりあえず安静・禁食”という指示により、医原性サルコペニアが生じている実態がある。そういったサルコペニアにはリハビリテーション栄養が有用であるとされ、アセスメント・診断推論、診断、ゴール設定、介入、モニタリング等のリハ栄養ケアプロセスが大切であり、看護師の果たす役割は大きい。リハ栄養を実践するための必携書!
編集 若林 秀隆 / 荒木 暁子 / 森 みさ子
発行 2017年11月判型:A5頁:244
ISBN 978-4-260-03225-4
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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はじめに

 看護師向けのリハビリテーション(以下,リハ)栄養の書籍を今回,初めて刊行しました。書籍名にある「サルコペニアを防ぐ!」ということを言い換えれば,現在の医療では,看護師がサルコペニアを十分に防いでいないということです。特に急性期病院では,無自覚のうちに医師と看護師が医原性サルコペニアをつくっている現状があります。その結果,入院前は日常生活活動が自立していた患者が,入院後に寝たきりや摂食嚥下障害となり,入院期間が延長され,自宅退院が困難となります。本書では,看護師がサルコペニアをつくってしまう理由や背景を明らかにし,どうしたら看護師がサルコペニアを防げるかということを企画意図としました。

 第1章は,リハ栄養とサルコペニアに関する総論です。サルコペニアに関する基礎知識や,サルコペニアの予防と治療にリハ栄養の考え方が有用なことを知らなければサルコペニアは防げません。第2章は,病院での医原性サルコペニアのつくられ方に関する医師と看護師の視点です。医原性サルコペニアの栄養改善には管理栄養士が,機能・活動・参加の改善には理学療法士,作業療法士,言語聴覚士がそれぞれがんばっています。しかし,そもそも医師と看護師がつくった医原性サルコペニアによる低栄養,機能障害,活動制限,参加制約という一面があるため,実態をわかりやすく示しました。第3章は,疾患別リハ栄養についてです。医原性サルコペニアはすべての疾患で生じる可能性がありますが,特に生じやすい疾患を紹介しました。

 看護師は「とりあえず安静・禁食・水電解質輸液」という医師の指示に対して,よかれと思って指示通りに看護しているのかもしれません。しかし,その医師の指示は適切な評価の結果によるものでしょうか。「とりあえず安静・禁食・水電解質輸液」が適切なことはまれです。適切な評価を行い,可能であれば,早期リハ,早期経口摂取,早期からの適切な栄養管理が看護の基本です。本書がサルコペニアを防ぎ,リハ栄養に関心をもつ看護師が増える一助になれば幸いです。
 最後に執筆してくださった皆様,企画,編集,制作に携わってくださった医学書院の吉田拓也さん,柳沢耕平さんに心より御礼申し上げます。

 2017年11月
 横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科講師
 若林 秀隆

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第1章 リハビリテーション栄養・サルコペニア総論
 リハビリテーション栄養
 リハビリテーション栄養における看護師の役割
 サルコペニアと医原性サルコペニア
 医原性サルコペニアの予防と治療
 ICF(国際生活機能分類)
 リハビリテーション看護
 リハビリテーション栄養に必要な基礎知識 栄養,消化・吸収,代謝
 リハビリテーション栄養に必要な基礎知識 栄養アセスメント
 リハビリテーション栄養に必要な基礎知識 排泄アセスメント
 小児の発達段階による栄養の特徴と栄養障害リスク

第2章 医原性サルコペニアの原因
 なぜ病院で医原性サルコペニアがつくられるか
 医原性サルコペニアをつくるのも防ぐのも看護師

第3章 疾患別リハビリテーション栄養
 誤嚥性肺炎
 重症疾患によるICU管理
 消化器疾患術後-短腸症候群(short bowel syndrome:SBS)
 大腿骨近位部骨折
 脳卒中
 慢性腎臓病(人工透析)
 慢性呼吸不全急性増悪
 肝硬変
 胃がん
 重症心身障害児

索引

Column
 BADLだけでなく,IADL,AADLの自立を目指したい
 アセスメントとゴール
 セルフマネジメントの究極の質問
 どんなふうに生きてきたかを頼りに,その人の希望を見出す
 お口の中,見ていますか?
 多職種による包括的アプローチの推進
 低栄養の原因となる食事量表記方法に注意!
 求められる積極的な「療養上の世話」と「診療の補助」
 食事もリハビリの1つ-エネルギー充足のために
 患者の声なき声,聞こえますか?
 薬剤による貧血に注意
 呼吸困難から起こる症状にも注意
 看護師が患者の脅威になっていませんか?

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リハ栄養を実践するための臨床思考過程がわかる
書評者: 吉田 剛 (日本理学療法士学会栄養・嚥下理学療法部門代表運営幹事)
 リハビリテーション(以下,リハ)栄養についてはすでに多くの出版物がありますが,看護師向けは本書が初めてと聞いて意外に感じられる人も多いでしょう。リハ栄養という考え方は,本書をまとめた若林秀隆先生から発信され,すでに全国的に定着してきており,2017年には日本リハビリテーション栄養学会が発足しました。その過程で,医原性サルコペニアと呼ぶべき状態が生じていることを認識し,予防するべきであるというメッセージが出されています。

 本書は,装丁やフォントがおしゃれで,A5判,244ページながら手にしやすい価格に設定され,専門書というハードルを下げてとても読みやすいものになっています。しかし,その中身は濃く,総論から各論(疾患別リハ栄養)まで網羅されています。特に半分の紙面を割き,10疾患を挙げ,疾患概要,エビデンス,症例についてまとめている「第3章 疾患別リハビリテーション栄養」は本書の魅力であり,症例は「リハビリテーション栄養アセスメント」「リハビリテーション栄養ケアプラン」「介入後の経過」で構成され,看護の実際,ゴール達成状況などが項目を立てて整理され,リハ栄養を実践するための臨床思考過程がとてもよくわかる内容になっています。つまり,本書は職種を超えて最新のリハ栄養を実践するための指南書になるわけです。

 私たち理学療法士は,病棟看護師と同じように病棟での患者の生活にかかわり,活動状態を把握し,看護師と共同して医原性サルコペニアを予防する役割を果たしていかなければなりません。本書では,NST専門療法士や摂食・嚥下障害看護認定看護師など,研さんを積んできた看護師たちが執筆しています。看護師の視点からの考え方を知ることが,一緒に病棟患者の生活にかかわり医原性サルコペニアの予防に立ち向かっていく理学療法士にとって大事なことだと思います。
 私たち理学療法士も,若林先生のように日頃の臨床を厳しい目で見直し,良いと考えることを社会に広め,文化となり普及していくように戦略と強い意思を持って進めていくことが必要であると感じます。

 コラムの一つに「セルフマネジメントの究極の質問」(p.16)があり,そこで若林先生は,何によって憶えられたいかと考えたとき,「医原性サルコペニアを病院から(少)なくした人として憶えられたい」と述べています。この信念が貫かれた良書として,最新のリハ栄養の手引きとされてはいかがでしょうか。
「サルコペニア」を共有するために最適な一冊
書評者: 丸山 泉 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長)
 「サルコペニア」は間違いなく,QOLの維持,改善のために知っておかなければならないキーワードです。そして,患者や介護サービスの利用者にかかわる全ての者が共有しておかなければ,サルコペニアを防ぐことはできません。

 日本の医療と介護の課題は,専門職と非専門職と患者(住民)が,いまだに,お互いの力量や可能性を十分に認め合っていないことだと思っています。専門家は,専門的技量は独占的に与えられたものと考える傾向にあり,さらに職能集団としての力が加わると,領域主義という閉鎖性に変質してくるのです。開かれた職種間連携を体験的に最も理解しているのがリハビリテーション,そしてプライマリ・ケアの現場です。

 人口構成の変化,認知症,フレイル,多疾病併存に代表される高齢者特有の疾病構造の変化,医療・介護保険制度の持続可能性,そして働く世代の減少,次世代の高負担など,医療・介護に関係する多くの課題にわれわれは直面しています。これを解決するシステムとして,「地域包括ケアシステム」の構築が全国的に始まりました。

 地域包括ケアシステムは,地域を基盤とするケアと統合されたケアを二大柱とするものです。地域を基盤とする要点は,コミュニティ・エンパワメントに尽きます。では,私たちの働く病院や診療所,医師や看護師が勤務する,その他の施設ではどうでしょうか。専門職は専門的知識を組織全体に広めているでしょうか。専門職がその力量をどのようにして組織内で広めていくかが求められています。それは,組織内エンパワメントとも言えます。「サルコペニア」という切り口での組織内エンパワメントが住民まで拡大していけば,サルコペニアはコミュニティ共有の課題になり,予防にもつながります。

 本書『サルコペニアを防ぐ! 看護師によるリハビリテーション栄養』は,サルコペニアの問題を医療および介護のシステム全体として解決すべきだと考えて全国的な啓蒙活動を続け,国際的にも評価されている若林秀隆医師をはじめ多くの専門家が,看護師による栄養管理の重要性を確信して書いたものです。多くの医療職がサルコペニアへの理解を深め,自分たちの役割を本書によって確認していただき,その重要性を看護職から介護やその他の多くの職種,そして患者さんやそのご家族に広めていただければ幸いです。
リハビリテーションと栄養管理を関連付けることの大切さを説いた一冊
書評者: 藤島 一郎 (浜松市リハビリテーション病院 病院長)
 本書は,看護が栄養についてもっと責任を持つべきだという主張に貫かれている。読みやすく,サルコペニアと栄養管理を学ぶためには,看護師ばかりでなく,医師,歯科医師,リハビリテーション関連職種を含めた多職種にとっても極めて役立ち,優れた内容となっている。題はリハビリテーション栄養となっているが,一般栄養管理としてのポイントを学ぶこともできる。疾患ごとの実例も多数取り上げられていて,臨場感があるし,コラムもおもしろい。実際の臨床現場では,経験の浅い研修医や,栄養に関心の薄い医師が出す指示に栄養管理上の問題があるケースは相当数存在する。NSTの活躍している病院においてさえ例外ではない。これに対して看護が積極的に関与して,チームで医療を展開すべきであるという考えには心から賛同する。さらに踏み込んで,編者の一人である森みさ子さんが「サルコペニアという概念が広まり一般市民にも周知されるようになれば,医原性サルコペニアをつくった看護師が過失を問われる時代がくるであろう」(p.114)とまで述べている箇所には驚いた。看護師が果たす役割は,それほど大きいのである。

 近年,「リハビリテーション栄養」が注目を浴びている。評者は10年ほど前に「栄養を与えないでリハビリテーション訓練が行われている弊害」について日本リハビリテーション医学会の専門医会で若林秀隆先生の講演を聞いて感銘を受けた。それまでも栄養に関しては関心があり,大変重要であると認識してはいたが,日本の医療現場の実情は異なっている。実際,1日1000 kcalにも満たないエネルギー量で「るいそう」が進んだ状態で入院してくるリハビリ患者は当院でも少なくないし,油断するとそのまま低栄養が継続されてしまうケースさえある。栄養管理がなされない状態でのリハビリテーションは有害無益であり,罪悪でさえあると考えられる。栄養管理の必要性はいくら強調してもしすぎるということはない。

 栄養は人が生きていくために不可欠の要素であり,医学が進歩する前は,「口から食べられなくなる=栄養摂取ができなくなる」ことは死を意味していた。人類の素晴らしい英知の結集として医学が発達し,点滴や経管栄養という優れた技術が命を救うようになった。しかし,皮肉なことに最先端の技術に頼るあまり,栄養管理が疎かになってしまった。それに対してNSTの機能と活躍が不可欠とされ,診療報酬もついて栄養管理は病院の大切な役割とされ発展してきている。

 サルコペニア(sarcopenia)は1989年にIrwin Rosenbergによって提案された概念で,加齢(老化)により骨格筋量の低下に伴う筋力低下と身体機能低下を来す極めて臨床的な概念である。身体機能障害,QOL低下,死のリスクなどにつながるものとされ,注目を浴びた。本邦では2017年に日本サルコペニア・フレイル学会と国立長寿医療研究センターから『サルコペニア診療ガイドライン2017年版』が出版された。サルコペニアは栄養と運動に関係している。本書はリハビリテーションにおけるその大切さについて正面から切り込んでおり,多くの読者に読んでいただき,手元に置いていただきたい書である。

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