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OCTアンギオグラフィコアアトラス
ケースで学ぶ読影のポイント

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OCTアンギオグラフィ(OCTA)は、非侵襲的に眼底の血管像が得られることから注目されている。本書では、OCTAの原理・正常眼底について概説し、疾患各論では症例を通して読影ポイントを示した。各症例では、カラー眼底、蛍光眼底造影、OCTなど他の検査との対比により、OCTAで何が分かるかを詳説。また、特有のアーチファクトについても随所で解説し、注意を喚起した。OCTAについて知りたい眼科医の必携書。
編集 𠮷村 長久
編集協力 加登本 伸
発行 2017年04月判型:B5頁:168
ISBN 978-4-260-03005-2
定価 9,900円 (本体9,000円+税)

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 日本に光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)が導入されたのは1997年です.それから20年が経ち,OCTは長足の進歩を遂げました.今やOCTなしに眼底疾患の診療をすることは不可能といって差し支えありません.導入当初のOCTはtime-domain方式によるもので,撮像時間も長く,また画像の解像度もよくありませんでした.しかし,2006年にspectral-domain OCTが市販され,撮像速度も画像の質も大幅に向上しました.その後,spectral-domain OCTが標準となり,国内外の会社がいくつものspectral-domain OCTを販売しています.spectral-domain方式では,反射鏡を機械的に動かす必要がないためもあって,撮像速度を大幅に短縮することが可能となります.このことは,単位時間に取得できる画像の枚数が大きく増加することにつながります.本書が扱っているOCTアンギオグラフィ技術が可能となったのには,spectral-domain方式がしっかりと定着したことが大きな役割を果たしています.
 私がOCTアンギオグラフィを最初に見たのは2005年だったと記憶しています.当時から,この技術を非常に興味深く見ていましたが,直ちに臨床応用できるものだとは思いませんでした.それから10年余りが経ち,OCTアンギオグラフィは新しい眼底画像診断技術としての地位をしっかりと築きつつあります.蛍光色素を使用することなく,眼底の微細な血管構造を描出できるこの技術は,OCTが眼底疾患の診療をすっかり変えてしまったことと同様に,眼底疾患の診療に大きな変革をもたらす可能性があります.
 しかし,OCTアンギオグラフィが臨床現場に本格導入されてからの時間が短いため,その利用方法,得られる情報の臨床的価値など,OCTアンギオグラフィについては,まだまだ研究が必要です.数多くの臨床現場で使用して初めて明らかになる臨床的な価値の探索がまだ十分ではありません.このため,OCTアンギオグラフィを現時点で成書にまとめるのは早すぎるとする考え方もあるように思います.私自身も,そのように考えています.ただ,昨年,医学書院から『加齢黄斑変性 第2版』を出版したときにOCTアンギオグラフィの情報を盛り込めなかったことがずっと気に掛かっていました.本書は『加齢黄斑変性 第2版』のOCTアンギオグラフィ所見を補うことはもちろん,糖尿病網膜症,網膜血管閉塞症,緑内障,視神経疾患などできるだけ広い範囲の眼科疾患について記載を試みました.また,OCTアンギオグラフィの利用方法,臨床的価値をできるだけわかりやすくまとめたつもりです.本書がこれからOCTアンギオグラフィの勉強をしてみたい,あるいはOCTアンギオグラフィの知識を整理したい読者の皆様のお役に立つことを希望致します.
 最後に,京都大学眼科学教室の皆様,そして,編集に多大な協力をいただいた加登本伸先生に深謝いたします.また,医学書院の方々にも厚くお礼を申し上げます.

 2017年2月 大阪にて
 吉村長久

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第1章 OCTアンギオグラフィの原理
 OCTの基本
 OCTAの基本
 OCTA読影のうえで注意すべきアーチファクト

第2章 正常眼底
 OCTAによる正常眼底像
 FA/ICGAとOCTAの描出の違い
 正常視神経乳頭

第3章 黄斑疾患
 滲出型AMD(type1 CNV)
 滲出型AMD(type2 CNV)
 PCV
 pachychoroid neovasculopathy
 RAP(type 3 neovascularization)
 萎縮型AMD
 近視性CNVと単純出血
 網膜色素線条
 黄斑部毛細血管拡張症

第4章 緑内障
 視神経乳頭
 原発開放隅角緑内障
 続発緑内障
 強度近視を伴う緑内障
 preperimetric glaucoma

第5章 糖尿病網膜症
 網膜内細小血管異常
 無灌流領域
 毛細血管瘤
 糖尿病黄斑浮腫
 抗VEGF薬投与前後の糖尿病黄斑浮腫
 抗VEGF薬投与後1年の治療経過
 虚血性黄斑症
 虚血性黄斑症の程度別評価
 増殖糖尿病網膜症
 硬性白斑

第6章 網膜動静脈閉塞性疾患
 網膜静脈閉塞症(RVO)に認める無灌流領域(NPA)
 RVOに伴うNPAと視機能との関連
 RVOに伴う乳頭新生血管(NVD)
 陳旧期BRVOに認める毛細血管瘤(MA)
 RVOに認める異常血管網
 CRVOに認める乳頭部側副血行路
 BRAOに認める網膜虚血(軽度)
 BRAOに認める網膜虚血(重度)
 大動脈炎症候群(高安病,脈なし病)

第7章 神経眼科疾患・その他
 前部虚血性視神経症(AION)
 視神経網膜炎
 圧迫性視神経症
 視神経鞘髄膜腫
 乳頭腫瘍

索引

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OCTアンギオグラフィについて詳細に解説された初めての成書
書評者: 寺崎 浩子 (名大大学院教授・眼科学)
 光干渉断層計(OCT)は機能向上,保険収載などにより眼科日常診療で広く使われるようになってきており,眼科診療の精度は大きく向上している。このOCTに網膜血管ネットワークを描出するOCTアンギオグラフィ機能が約2年前に一般外来に登場した。OCTアンギオグラフィはまさに“OCTで断層像を撮影するだけ”で網膜毛細血管ネットワークを層別に描出,あるいは脈絡膜新生血管や網膜新生血管を描出することができる機能である。

 このOCTアンギオグラフィの登場により,フルオレセインやインドシアニングリーン蛍光眼底造影の前にこの機能でスクリーニングを行うなどして,蛍光眼底造影の必要性を調べたり,ときによっては蛍光眼底造影をむしろ省くことができたりして,眼科診療が大きく変わっていきそうな状況になってきている。

 OCTアンギオグラフィ画像は論文レベルでは多数報告され,また眼科雑誌の総説あるいは講演会でも取り上げられるようになってきて,徐々にどのようなものかは知られるようになってきているが,まとまって詳細に解説された成書はまだなかった。

 本書は,京大吉村名誉教授とその門下により執筆され,OCTアンギオグラフィについて,その原理から始まり,正常像,黄斑疾患,緑内障,糖尿病網膜症,網膜動静脈閉塞性疾患,神経眼科疾患について,具体的な症例を提示しながら解説をされており,この一冊でOCTアンギオグラフィについてどのような疾患でどのように読影したらよいかがわかるようになっている。特に,OCTアンギオグラフィ画像は断層像がベースに作られているとはいっても,「プロジェクションアーチファクト」などの独特の読影のコツがあり,蛍光眼底造影での知識だけでは正確な読影はできないことから,本書で書かれている正常像についての第2章は非常に重要である。

 本を広げてみると,なんとOCTアンギオグラフィの所見とフルオレセイン蛍光眼底造影の所見が対比されて見開きになっており,半分以上が図にページが割かれている楽しい本である。最初の一歩,今後フルオレセイン蛍光眼底造影を使った診療からOCTアンギオグラフィを使った診療に徐々に移行していく際にも非常に所見の理解がしやすい。蛍光眼底造影ではわからなかった所見も沢山記載されており,これが新しい病態解明にいかに貢献できるかを示しており,眼科の未来が見えてくるような気がする。

 いまOCTアンギオグラフィの付いているOCTを持っている人もいない人も,蛍光眼底造影を習ったように,まずはこの本でポイントを学び,さらなる本検査の発展についていけるよう備えていきましょう。
卓越した画像診断技術の書
書評者: 大野 京子 (医科歯科大教授・眼科学)
 今,眼底画像診断における最もホットなトピックは,まぎれもなく,OCTアンギオグラフィである。つい先日までは,OCTアンギオグラフィは研究レベルの技術であり,臨床でのルチーンな応用には程遠いように思われていたが,昨今の撮影スピードや撮影範囲の改良,画質解像度の著しい向上などにより,蛍光眼底造影に代わる,もしくはかなりの分野では,蛍光眼底造影と異なる情報を得ることができ,造影検査を凌駕する診断機器となっている。しかも非侵襲である。これからも,OCTアンギオグラフィが画像診断の最もホットなトピックであり続けることは間違いない。

 このようなニーズを背景に,今回,満を持して出版されたのが,吉村長久先生(北野病院病院長)編集の本書『OCTアンギオグラフィコアアトラス』である。手に取って表紙を見ただけで,選び抜かれた表紙を飾る画像が美しく,画像診断に卓越したセンスを有する吉村先生ならではのこだわりを感じさせる。序で吉村先生自身が,OCTアンギオグラフィはまだ新しい診断機器であり,この時点でアトラスを出版することが良いか考えたが,名著『加齢黄斑変性 第2版』(医学書院,2016)を出されたときにOCTアンギオグラフィの所見を盛り込めなかったことが,本書を執筆された動機であると述べられている。なるほど,本書は単独で素晴らしい名著であるが,さらに『加齢黄斑変性 第2版』とともに読むと,吉村先生の一貫した画像に対する美学を痛感していただけるのではないかと思われる。

 本書では,最初にOCTアンギオグラフィの基本として,原理やアーチファクトについてわかりやすく解説されている。基本を理解し,正常眼底のアンギオグラフィ所見が解説された後,第3章からはいよいよさまざまな疾患のアンギオグラフィ所見へと進む。

 そこでは,京大に蓄積された豊富な症例を背景に,実際の症例のアンギオ画像が,眼底写真や蛍光眼底造影,眼底自発蛍光,OCT画像などのmultimodal imagingの画像とともに提示されている。実際の症例で,OCTアンギオグラフィの所見がどのように見られるのか,症例を経験することが理解を深める最善の方法であると,吉村先生がおっしゃっているように思われる。疾患もAMDから,pachychoroid neovasculopathyやMacTelに至るまで,新しい疾患概念が全て網羅されている。また,黄斑疾患だけでなく,第4章では緑内障におけるOCTアンギオ所見が示されている。特に,放射状乳頭周囲毛細血管や篩状板レベルでの血管の脱落と視野障害が如何に関連しているかが示されている。第6章の網膜血管閉塞性疾患では,まるで血管鋳型標本を見ているかのごとく,虚血型RVOに見られた乳頭部新生血管の美しい網目状構造に目を引きつけられる。さらに,陳旧期CRVOで見られる乳頭上の側副路のうねうねととぐろを巻いている様子を一本一本観察できることに感動を覚える。

 眼底画像診断に卓越したセンスを持たれ,網膜疾患だけでなく緑内障をはじめとする視神経疾患に長い伝統を有する京大ならではの素晴らしい書である。普段の臨床でこれだけのさまざまな疾患や貴重な画像を見られるチャンスはなかなかない。ぜひ本書を通じて,さまざまな症例をバーチャル体験することにより,この最先端の画像診断技術を自分のものにしていただきたい。症例を積み重ねることこそが良き臨床医になる最も確実な道である,しかしそのために緻密かつ正確な観察眼を持っていなくてはならない。そのメッセージを吉村先生が教えてくれる書である。

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