グラント解剖学図譜 第6版

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図譜のわかりやすさで定評ある地位を築いてきた「グラント解剖学図譜」原書第12版の翻訳。工夫された剖出面と実物を忠実に再現した図譜という、これまでの良さを引き継ぎつつ、CT、MRI、血管造影などの画像診断や立体画像が充実し、より臨床に役立つ構成となった。簡潔な解説と臨床事項をまとめた表が増え、教科書的な要素も大きくなった。
監訳 坂井 建雄
小林 靖 / 小林 直人 / 市村 浩一郎
発行 2011年03月判型:A4変頁:912
ISBN 978-4-260-00931-7
定価 16,500円 (本体15,000円+税)
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訳者 序(坂井 建雄)/(Anne M. R. Agur, Arthur F. Dalley II)

訳者 序
 本書は“Grant's Atlas of Anatomy”第12版の日本語訳である.原著の初版はトロント大学のJ. C. B. Grant教授により1943年に出版された.人体解剖標本を忠実に描いた本格派の解剖図譜として定評があり,世界の医学・医療関係者に愛用され,版を重ねている.
 日本語版は,森田茂,楠豊和両氏の翻訳により原書第6版が『グラント解剖学図譜』として1977年に,原書第7版が『グラント解剖学図譜 第2版』として1980年に,原書第8版が『グラント解剖学図譜 第3版』として1984年に発行された.原書第9版に基づく『グラント解剖学図譜 第4版』は,山下廣,岸清,楠豊和,岸田令次の4氏の翻訳により2004年に発行された.原書第11版に基づく『グラント解剖学図譜 第5版』からは坂井が監訳を担当し,翻訳は小林靖,小林直人,市村浩一郎の3名に担当していただいた.いずれも,解剖学をこよなく愛しており,その実力をよく承知している人たちである.今回の第6版でも,前版と同じ訳者が担当した.
 『グラント解剖学図譜』は,人体解剖をよく知る人がこよなく愛する解剖図譜である.なんといっても,人体解剖の奥深さと,本物だけがもつ迫真の力がそこにある.カナダのトロント大学のJ. C. B. Grant教授が繊細な解剖を行って剖出した多数の解剖標本をもとに,忠実に描いた解剖図がもとになっているのだから,当たり前といえば当たり前である.本物の解剖図を作り上げることがいかに大変なことであるか,またいかに得がたいものであるかは,人体解剖の専門家であればよく理解している.世の中に満ちあふれている解剖図の多くは,美と理想を求めて再構成されており,見方を変えれば知識をもとに頭の中で組み立てられたものになっている.さらにそこから引き写されて,著しく変形したものも少なくない.画像を通して伝えられる情報は,見る人に単なる知識を与えるだけではない.図には,構造の意味を理解し判断する枠組みをつくる力がある.どのようにすぐれた解剖図であれ,頭の中でつくられたものには,描いた人の理解の限界とバイアスとが埋め込まれている.解剖学を学ぶ人たちには,できるかぎり人体そのものから,少なくとも本物から学ぶことを願う由縁である.
 今回翻訳した原書第12版では,解剖標本を写実的に描いた古典的な解剖図の価値を高め,現代の学生たちのニーズに合わせた改訂が行われている.たとえば解剖図の彩色をより鮮やかなものにして臨場感を高めること,模式図と表を増補して知識の理解を助けること,各章の最後にMRIやCTなどの医用画像を集めて画像診断と関連づけること,などである.これらの改訂は前版でも行われていたが,今回はそれをさらに徹底させている.とくに臨床との関連を重視して,図の説明の中で臨床に関わりのある部分を青の地色で示している.また表については筋だけでなく,神経,血管の表を付け加えて,知識の整理に役立てている.今回の改訂により,本書は単に解剖図を見るだけのアトラスから,解剖学の学習に役立つ総合的な教材として,さらに臨床でも役立つ医師の伴侶として,その価値を高めている.
 訳の分担は,市村浩一郎が第1~3章と第5章を,小林靖が第4章と第7~9章を,小林直人が第6章を担当し,用語の統一と全体の調整を坂井が行った.
 訳出にあたっては,日本解剖学会監修『解剖学用語』(改訂13版)を用いた.また『解剖学用語』にない用語は,臨床各科の辞典,教科書などを参考にして和訳した.

 本書が,広く医学・医療関係者が解剖学を学習するための座右の書として,大いに活用されることを願うものである.

 2010年12月
 八王子の寓居にて
 坂井 建雄



 “Grant's Atlas of Anatomy”の今版では,前版までと同様に強力な調査,市場投入,創造性が必要であった.手堅い評判に頼るだけでは不十分であり,私たちは新版ごとにアトラスの多くの側面を修正・変更しながら,本書の長い歴史を豊かにしてきた教育面での卓越性と解剖学的な写実性への責務を保持してきた.医学および健康科学の教育,およびそこにおける解剖学の教育と応用の役割は,新しい教育方法や教育モデルを反映して,不断に発展している.医療システムそのものも変化し続けており,未来の医療従事者が習得しなければならない技術と知識もそれとともに変化し続けている.最後に,出版とくにネット情報と電子メディアの技術的進歩により,学生たちが内容を利用するやり方や教師が内容を教える方法が変化してきた.これらすべての進歩が,この“Grant's Atlas of Anatomy”第12版の構想を形づくり,製作の方向を決めた.その特徴は以下の通りである.

 古典的な“Grant's”のイメージを今日の学生向けに一新:“Grant's Atlas of Anatomy”の独自の特徴は,人体解剖の理想化された像ではなく,実際の解剖を具現する古典的な解剖図を提供し,実習室で学生たちが標本と直接見比べられるようにすることである.これらの解剖図のために用いた素材は実際の遺体であるので,これらの解剖図の正確さは比類ないものであり,学生たちに解剖学の最良の手引きを与えてくれる.年余にわたってわれわれは,学生の期待の移り変わりに合うように解剖図に多くの変更を加え,より鮮やかな彩色を加え,オリジナルの木炭画表現からスタイルを一新した.今回の版では批評家の意見によりこの方向を継続して,より生命感のある皮膚色調を取り入れ,解剖学のより現実的な(より正確というわけではないが)描画を提供する.さらにこれらの解剖体の図のほとんどすべてを精査して,ラベル文字の位置が効果的であり,解剖図の妥当性が明確であることを確保した.“Grant's Atlas of Anatomy”の今回の版の図のほとんどすべてにおいて,単純なラベル文字の変更から全般的な改訂までの変更を行った.
 学習を助ける模式的な図版:フルカラーの模式図を解剖体の図に加えて解剖学的な概念を明確にし,構造の関係を示し,該当する身体の部位を概観できるようにした.この版では数多くの新しい模式図を加えた.他の模式図も改訂して,教育的側面を強化した.すべてDr. Grantの「簡潔さを保つ」という訓示に従った.余分なラベル文字は削除し,重要な構造を指示するラベル文字を加え,図が学生にとって可能な限り有用になるようにした.さらに多くの新しい簡単な位置取り図を加えて,解剖の領域を見出しやすいようにした.
 図の説明で臨床応用が見つかりやすい:よく知られているように,図版はあらゆるアトラスの焦点である.しかし“Grant's Atlas of Anatomy”の図の説明は,このアトラスの独自で価値ある特徴だと長らく見なされてきた.図に付属する観察と説明により,注意を逃れがちな顕著な特徴や意味ある構造に注意が引き寄せられる.その目的は,過剰な記述をすることなく,解剖図を解釈することである.読みやすさ,明快さ,実用性を,この版の編集において強調した.初めて,解剖学的特徴と医療実地における意義を結びつける実際的な「珠玉」を伝える臨床コメントを,図の説明の中で青の地色で区別した.臨床コメントはこの版で拡張して,学生が解剖学的概念の医学応用を探すのに役立つだろう.
 画像診断,体表解剖学の強化:医用画像は外傷と疾病の診断と治療において重要性を増してきているので,医用画像を各章を通じて豊富に使用し,各章の末尾に特別に画像を扱う頁をつくった.臨床に役立つ100枚以上の磁気共鳴画像(MRI),コンピューター断層像(CT),超音波エコー像と,対応する位置取り図を今版で採用した.指示文字をつけた体表解剖写真を増やし,人種による多様性を体表解剖において導入した.
 表を一新し,拡張し,改善した:“Grant's Atlas of Anatomy”のもう1つの特徴は,学生が複雑な情報を簡単に使えて概観や学習に役立つ理想的な形式にまとめた表を用いたことである.第11版では筋の表を導入した.この版では表を拡張して,神経,動脈,静脈および他の構造を含めた.また今版での表の形式は,根本的に一新した.列を明確に区別するために一貫した色分けを用いた.表の多くは,重要な場所で,表に挙げた構造を示す図と同じ頁に配置した.
 論理的な構成と割付:アトラスの構成と割付は,いつも使いやすさを目標に決められてきた.身体の領域による基本的な構成をこの版でも維持したが,各章の中での図版の順番は論理的で教育に役立つことを確保するために精査した.各章の中の節は,領域の中の個別の細領域に分けて構成した.これらの細領域は,頁の「表題」として表示される.読者は,これらの表題を眺めるだけで,その頁の図がどの領域のどの細領域のものであるか,位置づけることができる.節のすべてを,各章の冒頭の「目次」にも示した.
 みなさんに“Grant's Atlas of Anatomy”のこの第12版を喜んで使っていただき,教育場面において信頼できる伴侶となることを願っている.われわれはこの新版が,アトラスの歴史的な強さを守りながら,今日の学生にとっての有用性を強めるものと確信している.

 Anne M. R. Agur
 Arthur F. Dalley II

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訳者 序
Dr. John Charles Boileau Grant

謝辞
表一覧
図表出典一覧
文献

1 胸郭
胸部/乳房/骨性胸郭と関節/胸壁/胸郭の内容/胸膜腔/縦隔/肺と胸膜/
区域気管支と肺区域/肺の神経支配とリンパ流路/心臓の外観/心臓の動静脈/
心臓の内観と弁/刺激伝導系/心膜嚢(心膜と心膜腔)/上縦隔と大血管/
横隔膜/胸郭の後部/自律神経支配の概観/胸郭のリンパ流路の概観/
断層解剖と断層画像

2 腹部
胸腹部内臓の外観/前腹壁と側腹壁/鼡径部/精巣/腹膜と腹膜腔/消化器系/
胃/膵臓,十二指腸と脾臓/腸/肝臓と胆嚢/胆管/門脈系/後復壁/腎臓/
腰神経叢/横隔膜/腹大動脈と下大静脈/自律神経の神経支配/リンパ流路/
断層解剖と断層画像

3 骨盤と会陰
下肢帯/下肢帯の靱帯/骨盤底と側壁/仙骨神経叢と尾骨神経叢/
骨盤の腹膜反転部/直腸と肛門管/男性の骨盤内臓/男性骨盤の血管/
男性骨盤と会陰のリンパ流路/男性骨盤内臓の神経支配/女性の骨盤内臓/
女性骨盤の血管/女性骨盤と会陰のリンパ流路/女性骨盤内臓の神経支配/
骨盤の腹膜下領域/会陰の体表解剖学/会陰の概観/男性の会陰/女性の会陰/
骨盤と会陰の画像

4 背部
脊柱と椎骨の概観/頚椎/頭蓋頚椎移行部/胸椎/腰椎/靱帯と椎間円板/
椎骨静脈叢/下肢帯の骨,関節,靱帯/椎骨の異常/背部の筋/後頭下領域/
脊髄と髄膜/脊髄神経の成分/皮膚分節と筋分節/脊柱の画像

5 下肢
下肢の系統的概観(骨/神経/血管/リンパ/筋膜と筋膜区画)/
鼡径部と大腿三角/大腿の前面と内側面/大腿の外側面/殿部と大腿の後面/
股関節/膝の領域/膝関節/下腿の前面,側面,足背/下腿の後面/脛腓関節/
足底/距腿関節,距骨下関節,足関節/足底弓/骨の変異/断面解剖と画像

6 上肢
上肢の系統的概観(骨/神経/血管/筋膜区画)/胸筋の領域/
腋窩,腋窩の血管,腕神経叢/肩甲骨の領域と背部浅層/上腕と回旋筋腱板/
上肢帯の関節と肩関節/肘の領域/肘関節/前腕の前面/手根部の前面と手掌/
前腕の後面/手根部の後面と手背/手根部と手の外側面/手根部と手の内側面/
手根部と手の骨と関節/手の機能:つかむ,つまむ,母指の動き/断面解剖と画像

7 頭部
頭蓋/顔面と頭皮/頭蓋腔の循環と神経支配/髄膜と髄膜腔/頭蓋底と脳神経/
脳の血管分布/眼窩と眼球/耳下腺部/側頭部と側頭下窩/顎関節/舌/口蓋/歯/
鼻,副鼻腔,翼口蓋窩/耳/頭部のリンパ流路/頭部の自律神経支配/頭部の画像/
神経解剖:概観と脳室系/終脳と間脳/脳幹と小脳/脳の画像

8 頚部
皮下構造と頚筋膜/頚部の骨格/頚部の領域〔側頚部(後頚三角)/前頚部(前頚三角)
〈頚部の神経と血管/頚部の内臓区画/頚の基部と椎前部/下顎と口腔底〉/後頚部〕/
咽頭/口峡峡部/喉頭/頚部の断層解剖と画像

9 脳神経
脳神経の概観/脳神経核/第I脳神経:嗅神経/第II脳神経:視神経/
第III・IV・VI脳神経:動眼神経,滑車神経,外転神経/第V脳神経:三叉神経/
第VII脳神経:顔面神経/第VIII脳神経:内耳神経/第IX脳神経:舌咽神経/
第X脳神経:迷走神経/第XI脳神経:副神経/第XII脳神経:舌下神経/
頭部の自律神経節/脳神経障害/脳神経の断層画像

索引

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