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精神看護

2019年09月号 (通常号) ( Vol.22 No.5)
特集 感情・関係・状況を可視化できるグラフィックレコーディングのインパクト なぜこのツールは希望を生み出すのか

 ホワイトボードに描くという光景は、べてるの家が始めた「当事者研究」と切り離せないものです。
 私と共同研究者の綾屋さつきさんは、なぜ当事者研究には、こんなにも当事者が行き詰った状況をドラスティックに変える効果があるのだろうということを研究しているのですが、そのなかでわかってきたのは、どうやら「ホワイトボードに描く」という点にも、何か秘密がありそうだ、ということでした。
 当事者研究にとって、そもそもホワイトボードを使うというのはどんな意義があるのか。考察してみると、1つは「情報保障」だろうと。情報を共有する時に、ホワイトボードがあることで、ついていけない人を少なくするという効果があると言えます。
 もう1つの意義は、ホワイトボードがあることで、当事者研究の極めて重要なエッセンスである「外在化」という現象を引き起こしているのではないか、という点です。
 当事者研究では、「ホワイトボード」「ファシリテートする人」「当事者」の三者が三角形を作る状態が、外在化の準備状態なんだということを言います。
 ホワイトボード上に本人の苦労を描き、本人自身はそれを“研究者の視線”で眺める。そして傍らにファシリテーターがいるというのもミソなんですが、ファシリテーターも、視線を本人に注ぐのではなくて、ホワイトボードに注ぐ。
 つまり両者ともにホワイトボードに視線を注ぐ、その時に、本人と、本人の苦労を切り離す外在化が発生するということです。ですからホワイトボードはそれを生じさせる重要な仕組みになっていると私たちは考えています。
 最近「メタ認知」という言葉をよく聞きますが、メタ認知は、本人にとっての現実を一緒にながめてくれる、もう1人の仲間がいて、初めて発生するのかもしれないということです。1人でトレーニングできるようなものではなくて、外在化は2人から起きる、というのが、べてるの家のホワイトボードの実践が教えてくれたことかなと思っています。
 本日は、そんな大事なホワイトボードの役割が、グラフィックレコーディングを学ぶことによって補完・強化されるのではないかという期待をもって、このカンファレンスを開きました。このスキルをみんなで学び、高めるための会にできればと思います。よろしくお願いいたします。

■グラフィックレコーディングへの期待
向谷地 生良、池松 麻穂
■即興 当事者研究をグラレコする
会場参加者×向谷地 生良×清水 淳子
■基礎講座「グラレコって何だ!?」
清水 淳子
■[グラレコ体験談]線は光-ぼくの輪郭を取り戻すために
武田 俊


■対談
地域に出るなら、勇気と覚悟と本2冊!
春日 武彦×小瀬古 伸幸
■特別記事
介護職とにおい-語られずにきたものを語る
金井 聡


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手加減なしにグーで殴ってくるAさん
田辺 有理子
[連載]
●間の間…8
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●当事者研究のスキルバンク…13
本日の研究者:坂 雅則さん
本日のスキル:自分を助けるオリジナルグッズの開発と活用
べてるの家
●次号(11月号) 特集1 琵琶湖病院で始まっているオープンダイアローグを取り入れた日常診療/特集2 相手の世界におじゃまして、立ち位置に寄り添う。医療観察法病棟で幻聴妄想を聞く

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定価 1,512円
(本体1,400円+税8%)