総合診療 Vol.33 No.1
2023年 01月号

ISSN 2188-8051
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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パンデミック対策は1日にして成らず

山中克郎(福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科)

 世界中の人々の生活を劇的に変えたCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックから3年が経過しました。これは、人類初のパンデミックでもなければ、おそらく最後のパンデミックでもありません。私たちは、歴史から学ぶと同時に、体験したことを後世に語り継ぐ責任があります。
 これまでも人類は、致死的な疫病に何度か襲われました。遺体から古代の微生物DNAを解析した結果、4つのパンデミック(新石器時代、中世の2回、1900年前後)の原因は「ペスト菌」であったことがわかりました。また、スペインによるアステカ帝国の征服後に発生した疫病は「サルモネラ属」の菌であることが明らかになっています。さらに1918~1919年に流行したスペインかぜは「H1N1亜型インフルエンザ」でした。世界中で5億人が感染し、5千万~1億人が亡くなったと考えられています。
 本特集の【COVID-19診療・対策振り返り編】では、COVID-19感染症にどう立ち向かい、問題点は何だったのかを、さまざまな立場の医療関係者に語っていただきました。次に【未来のパンデミック対策編】では、今後パンデミックを起こしうる感染症(新型インフルエンザ、多剤耐性菌、ウイルス性出血熱、真菌感染症、結核)についての最新知識を得ることができます。【コラム】では、医学の急速な進歩により可能となった抗HIV薬やmRNAワクチン、インフルエンザとCOVID-19に対する抗体医薬(モノクローナル抗体製剤)について、わかりやすく解説していただきました。
 


鎌田一宏(福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科/奥会津在宅医療センター)

 Daje Giappone! 日本の快進撃に、あるローマの病院では日々歓声がわいていた。興奮のあまりサッカー日本代表のユニフォームを取り寄せ着用して応援するスタッフもいた。悲しくもその熱狂は、“ロストフの14秒”とされるベルギーの高速カウンターにより終焉を迎えた。ロシアW杯の興奮さめやらぬなか、仲間との別れを噛みしめ、次なる勤務地であるミャンマーのヤンゴンへと向かった。
 あれから4年──。世界は様変わりした。イタリアが遠くの異国になってしまった。グローバル化の進展により小さくなったかに見えた世界は、COVID-19の発生により一瞬にして再膨張した。COVID-19はこの4年間、人類における最大の脅威であり、まさにストレスであった。そんななか、2022年12月にローマから突然の祝報が続々と届いた。残念なことにイタリアは、ロシアに続きカタールW杯への本戦出場も逃してしまったが、日本は“ロストフの14秒”を払拭するかのごとく、再び快進撃をみせていた。
 ローマは1日にして成らず。Jリーグは今年、30周年を迎える。W杯での好成績は、綿密な計画のもとに、日本サッカー界全体で積み上げてきた努力が、着実に実を結びつつあることの証明だ。ロストフでの経験もカタールの地で活かされたに違いない。「Experience is the teacher of all things」とカエサルは言った。医療者にもできるはずだ。本特集を執筆してくださった臨床や研究、行政などさまざまな第一線のプロフェッショナルの経験に学び、包括的な視野を養い、きたるべき相手の好敵手になることが。

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 COVID-19パンデミック──振り返りと将来への備え

■COVID-19診療・対策振り返り編──新型コロナウイルスが教えてくれたこと
臨床①感染症専門医──COVID-19流行が浮き彫りにした臨床現場の3つの問題
黒田浩一

臨床②集中治療専門医──COVID-19による「重症呼吸不全」の治療戦略 そして、医療資源が不足した時どうするか?
鍋島正慶

臨床③病院総合診療医──パンデミックにおける「ホスピタリスト」ならではの働き
安本有佑│小坂鎮太郎

臨床④診療所医師──COVID-19が板橋区の「地域医療」にもたらしたもの
石川元直

ウイルス学・疫学──平時にやっていないことは緊急時にはできない
谷口清州

公衆衛生──日本はCOVID-19のクライシスにどう向き合ったか
高鳥毛敏雄

行政・国際保健──COVID-19対応から見えてきた「健康危機管理」の重要性とその変遷
松澤幸正

■未来のパンデミック対策編
①新型インフルエンザ
伊藤澄信

②多剤耐性菌
具 芳明

③ウイルス性出血熱
加藤康幸

④真菌感染症
槇村浩一

⑤結核
吉山 崇

■コラム
①抗HIV薬の進歩
塚田訓久

②mRNAワクチンの現在と未来
平岡陽花│阿部 洋

③インフルエンザとCOVID-19の治療薬開発
新井宗仁

今月のQuestions
今月の「めざせ!総合診療専門医!」問題


●Editorial
パンデミック対策は1日にして成らず
山中克郎|鎌田一宏

●新春特別座談会 ゲストライブ  Improvisation|21
次なるパンデミックはきっと来る──COVID-19が教えてくれた今すべきこと
谷口清州×具 芳明×鎌田一宏×山中克郎

●新連載 対談|医のアートを求めて|1
医療×死──遺書というAdvance Care Planning
田村 淳|平島 修

●新連載 臨床教育お悩み相談室|どうする!?サロン|1
「笑わない指導医」ってどう思う?
佐田竜一|木村武司|長野広之

●What’s your diagnosis?|241
感染を合併した最悪な症例
柴田裕介|上田剛士

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|72
忘れるな! 川遊びの落とし穴
伊志嶺朝哉|佐々木秀章|徳田安春(監修)

●Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?|34
気になるプラセボの効果
上田剛士

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|33
“実践”でこそ価値あるもの
塩尻俊明

●臨床小説|後悔しない医者|今と未来をつなぐもの|33
成長する医者
國松淳和

●投稿 総合診療病棟
大腿静脈に限局した深部静脈血栓症の2症例──2点圧迫法の限界について
秋山美沙子|財川英紀|亀田 徹

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