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タラスコン救急ポケットブック

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「タラスコン」は小さなサイズからは想像できない膨大な臨床情報をわかりやすく簡潔に記載し、海外で高い人気を誇るポケットマニュアルのシリーズ。本書は救急で遭遇する多くの疾病のクリニカルプレディクションルール(CPR)やガイドラインを網羅し、要所にリファレンスを掲載。単なるエキスパートオピニオンではない、エビデンスに基づいた診療方針をコンパクトに提示する。
原著 Richard J. Hamilton
監訳 舩越 拓 / 本間 洋輔 / 関 藍
発行 2018年06月判型:A6変頁:308
ISBN 978-4-260-03547-7
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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監訳の序

 救急診療は研修医のみならず全ての科の医師が担当しうる分野です.そして救急診療では対応する疾患は多岐に渡ります.不安な気持ちで専門外の主訴の患者の初療を担当することも少なくありません.
 われわれは救急診療を指導するなかで,数多く来院する患者さんを診療しながらいかに効率よくTipsを伝えるかに苦心してきました.国内海外含め多くのマニュアル本があるなか,当時救急科チーフレジデントであった,本書監訳者の1人である関先生が持っていたのが本書です.本書はもともと米国で出版されており,米国の救急診療におけるポケットマニュアルとして一番の評価を得ています.私の考える本書の素晴らしいところは以下の点です.

1.コンパクトさ
 スクラブのポケットに入るサイズの本書は常に手元に置いておくことができます.文字もそのぶん小さいですが,なによりも「すぐ見られる」というのは忙しい救急外来において重要だと思っています.さらに,実臨床で頻用するClinical Prediction Ruleやガイドラインが網羅され薬剤も具体的投与量まで記載されており,まさに「診療中に痒いところに手がとどく」1冊です.

2.幅広い疾患を網羅
 日本では救急外来診療は当直業務から発展してきた側面もあるため,どうしても内科系のみ,外科系のみ,など情報が特化しているものが多いです.本書は救急診療のための本ですので,前述のものに加え泌尿器,眼科,耳鼻科などの救急でよく遭遇するマイナーエマージェンシー系から中毒,環境障害,生物/化学/放射線被曝といった救急ならではの疾患まで,救急で遭遇するであろう幅広い疾患をカバーしています.

3.リファレンスの記載
 いわゆるマニュアル本はそのサイズをいかすためにリファレンスの記載を省略させることがあります.しかし本書はリファレンスがしっかり記載されており,元文献やガイドラインを確認することができます.単なるエキスパートオピニオンではなく,文献に基づいた診療をすることができます.

 われわれが本書を使い診療するなかで,「より日本において使いやすくしたい」と思うようになり,本書を翻訳する企画が立ち上がりました.本書を翻訳するにあたり日本国内の実情,ガイドライン,薬剤の保険投与量の内容も反映し,わが国においても実践的に使用できるよう工夫しました.翻訳したことでより多くの先生方が救急診療の場面で使えるようになると思っています.
 本書は救急で従事する医師,日々忙しく最前線に立つ若手救急医の先生方のみならず,当直や当番で救急診療に携わる全ての先生方にとって有用な本になったと自負しております.ぜひお手にとって,よろしければスクラブのポケットに入れてみてその有用性をご確認ください.

 最後になりましたが,本書の翻訳に尽力してくれた当院救急科のスタッフ,レジデント,卒業生の先生方,われわれの本書にかける熱い想いを汲み取っていただき根気強く付き合ってくださった医学書院の西村氏,大西氏,永安氏には厚く御礼申し上げます.そして私の妻と息子に感謝をこめて.

 2018年5月 監訳者を代表して
 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科
 本間洋輔

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1章 心肺蘇生(一次・二次救命処置)
 一次救命処置
 二次救命処置

2章 麻酔と気道管理

3章 アナフィラキシー

4章 循環器
 不整脈,ブロック,薬剤性不整脈の心電図診断
 不整脈
 心房細動(Afib)のレートコントロール
 心筋梗塞(MI)と急性冠症候群(ACS)
 静注循環器治療薬とAHAガイドライン
 肺水腫,低血圧,心原性ショックのマネジメント
 腹部大動脈瘤(AAA)
 胸部大動脈解離(TAD)
 失神

5章 高血圧(無症候性,切迫症,緊急症)

6章 呼吸器科
 上気道感染
 気管支喘息とCOPD
 NIV(非侵襲的換気療法)
 市中肺炎
 肺塞栓(PF)と深部静脈血栓症(DVT)

7章 消化管出血

8章 神経内科
 めまい(DizzinessとVertigo)
 頭痛
 脱力
 一過性脳虚血発作(TIA)
 クモ膜下出血(SAH)
 脳卒中(Stroke)
 急性虚血性脳卒中への血栓溶解療法(rt-PA)
 虚血性脳卒中(脳梗塞)
 頭蓋内出血
 NIHSS(脳卒中スケール)
 デルマトームと運動神経分節

9章 痙攣と痙攣重積

10章 内分泌科
 内分泌疾患
 糖尿病
 甲状腺疾患

11章 電解質
 電解質異常

12章 酸塩基平衡障害

13章 感染症
 感染性心内膜炎(IE)予防を必要とする疾患
 発熱と好中球減少
 発熱と皮疹
 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)
 敗血症
 治療:成人における経験的な抗菌薬のカバーと特異的な感染症
 感染症:ダニ媒介疾患
 トキシックショック症候群(Toxic shock syndrome)

14章 予防接種と曝露
 HIVへの非職業的曝露
 医療従事者のHIV曝露後予防(PEP)
 HBVへの曝露
 破傷風予防接種

15章 血液内科と腫瘍内科
 貧血
 鎌状赤血球性貧血
 出血性疾患
 脊髄圧迫症
 上大静脈症候群
 腫瘍崩壊症候群

16章 外科
 急性腹症

17章 外傷
 アプローチ
 腹部と腎
 鋭的腹部損傷
 胸部外傷
 泌尿生殖器外傷
 頭部外傷
 頸部穿通性外傷
 骨盤・四肢外傷
 頸椎,胸椎,腰椎,肩外傷
 創傷被覆材についてのコンセンサス勧告

18章 熱傷

19章 整形外科
 関節炎と関節液評価
 コンパートメント症候群

20章 泌尿器科

21章 産婦人科
 臨床的に安定している患者における異所性妊娠の診断
 分娩困難(骨盤位娩出困難と肩甲娩出困難)
 妊娠高血圧,子癇前症,子癇
 重症妊娠高血圧腎症(子癇前症)/子癇の治療
 妊娠後期の性器出血と分娩後出血
 RH同種免疫
 機能性子宮出血(不正性器出血)

22章 眼科

23章 精神科

24章 放射線科
 放射線と造影剤腎症
 造影剤副作用と超音波検査
 超音波

25章 環境障害
 スキューバダイビングに伴う傷病(減圧病)
 高地障害症候群(HAS:High Altitude Syndrome)
 高体温症と低体温症
 ヘビ咬傷
 海洋生物による中毒

26章 中毒
 バイタルや身体所見に影響する薬物
 Toxidrome(中毒症候学)
 SSRI,非三環系抗うつ薬

27章 生物・化学・放射線曝露(NBCテロ・災害)

付録
索引

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手のひらサイズに詰め込まれた驚くべき情報量
書評者: 藤谷 茂樹 (聖マリアンナ医大教授・救急医学)
 タラスコン救急の待望の日本語翻訳本が刊行された。評者はすでに国内でも多くの研修医が使用しているものと思っていた。それぐらい需要の高い書籍である。この監訳にかかわった先生方は,日頃北米式ER方式で,多くの救急車を含む救急患者を診療されており,訳者は,第一線で活躍をされている若手救急医からなっている。日本では,北米式ER方式を採用しているところはまだそれほど多くない。昨今の新専門医制度,地域包括ケアで,救急の在り方が変わろうとしている。今回のこの書籍が,このタイミングで出版されたことは,まさに好機が到来したかのようである。

 この手のひらほどのポケットブックにこれだけの情報を詰め込めるかというぐらいの驚くべき情報量である。循環器,神経内科,呼吸器科,感染症,外傷,環境障害,中毒のジャンルが比較的多く記載されており,実践的に役に立つ内容が厳選されている。

 実際に使用するには,ポケットサイズであるため文字が所狭しと記載されている状況で,どのように上手に活用をするのかという疑問が出るかもしれない。実は,評者は,米国の内科レジデントをしていたころに,総合内科&集中治療のタラスコンポケットブックを愛用していたので,その活用方法を説明したい。おそらく米国の学生・研修医も同様に使用しているものと思われる。

 この小さなポケットブックは,基本的なことが記載されているが,全てのことがいつも頭の中に入っているわけではない。そのため,「あれ,これってどうだったかな」という疑問は必ず臨床現場では生じる。まず,事前に大きなジャンルがどのようになっているか目次を押さえておき,どこに何が記載されているか,ページを流し読みしてうろ覚え状態にしておく。症例を経験し,また議論になった項目を毎回確認する。時間がない中でカルテ記載,オーダー書き,プレゼンテーションなどが要求されるため,自分のメモなども極細のペンで記載して,スピード重視の反復訓練をするように努める。そもそも,症例の暴露と反復訓練で研修をすることで標準的な診療が確立する国が米国であるので,その需要にとても合致している。例として,NSTEMI(非ST上昇型心筋梗塞),STEMI(ST上昇型心筋梗塞),DKA(糖尿病性ケトアシドーシス),HHS(高浸透圧高血糖症候群)などのコモンな疾患に対して,どのようなオーダーが必要かなどもコンパクトに記載されている。最初はオーダー出しに関してもおぼつかない研修医も,毎回このポケットブックを見ながらオーダーなどをしていくうちに自然と診療の力が身につき,シニアレジデントに成長をしていく。

 文字が小さいといわれるかもしれないが,海外でもこのサイズで多くの学生・研修医が使用しているので,対象をある程度小さな文字にも対応できる世代にすれば,機動力と情報を兼ね備えることができる良書となろう。

 最後に,このようにとても実績のある書籍であり,これからER患者を多く診ることのある研修医や診療看護師・特定看護師にはぜひともお薦めの本である。
ERのミニマムリクワイアメントって何だろう?
書評者: 志賀 隆 (国際医療福祉大准教授・救急医学)
 2002年の夏に那覇空港に東京から研修医が到着した。空港からバスに乗ってたどり着いた先は沖縄米海軍病院だった。研修医は米軍病院の救急部門で採用をめざして必死に実習をしていた。その際に,米国の救急医学レジデンシーを卒業したばかりの日焼けした指導医がパラパラとポケットブックをめくっていた。

 「すみません。ちょっと私にも見せてもらえませんか?」とポケットブックを手にとった研修医はびっくりした。手のひらサイズのポケットブックの1ページ1ページにぎっしり情報が詰まっている。頭部CTの適応,頚椎画像撮影の適応から抗生物質の使い方,肺塞栓のプレディクションルールなど,まさにこれが「ERのミニマムリクワイアメントだ!」と研修医は思った。エビデンスの大事なところが見やすくコンサイスにまとまっている。しかも,日本のハンドブックにありがちな根拠文献のない「俺流」の列挙ではない。

 その本の名前は『タラスコン救急ポケットブック』である。まだ,スマートフォンのなかった時代も今も非常に使い勝手のよい本である。そして,人気の証として改訂が続いている。今回この名著が翻訳された。翻訳チームは私と一緒に今は日本屈指のERとなった東京ベイ・浦安市川医療センターを2011年から作り上げた救急の仲間たちである。

 本書は,
・翻訳本にありがちな出版時に情報が遅れていることを避けた
・日本に採用されていない薬剤には脚注を豊富に設けた
・日米の薬剤対比表を巻末に設けた
 といった特徴がある。初期臨床研修必修化が始まり10年以上が経った今でも,わが国の救急外来でも不安な気持ちを持ちながら忙しい救急外来で診療をしている初期研修医の皆さんがいる。眼の前の患者さんにベストを提供しながら,「短い時間でその場で学ぶ!」のが救急外来の醍醐味である。そんな研修医の皆さんや「腹痛はいつも怖い……」「胸痛には嫌な思い出がある」といった専門外の領域を担当せねばならない当直医の先生方に強い味方になる本である。専攻医の先生方は,「君の判断の背景にはエビデンスがあるのか?」といってこのポケットブックの1ページを見せて3分レクチャーをしてもよい。ぜひ本書を手にとって一歩進んだ救急診療につなげていただけたらとお薦めする。
救急を専門としない医師や当直で四苦八苦する研修医たちの「心の友」
書評者: 林 寛之 (福井大病院教授・救急科総合診療部長)
 タラスコンといえば南仏プロヴァンスの町。紀元前に退治されたという怪物タラスクに思いを馳せる盛大なお祭りが,落ち着いた街中で盛大に行われるという。でも救急の世界ではタラスコンは怪物にも似たものすごい膨大な情報を詰め込んだ『タラスコン救急ポケットブック』を意味する。コンピューターや電子書籍が発達した昨今,膨大な量の情報を持ち歩けるようになったとは言うものの,検索の素早さ,目の通しやすさにおいては,やはり目の前にある書籍に勝るものはない。

 救急の良書は最近たくさん世に出ている。診断学を鍛える本は多いものの,診断が付いた後の治療まで手を伸ばすのはなかなか難しい。そんな膨大な情報を包括できる本など持ち歩けるはずもない。ところが,パッパラパッパパァ~ララ~(ドラえもんのひみつの道具を出すときのジングルで)! このタラスコンはまさしく知識の宝庫,実臨床で使う情報が細かく書いてある。

 実際の臨床では「あの診断基準ってなんだっけ?」「吐血のBlatchford scoreってなんだっけ」などの状況下では記憶の助けになる。めまいも,Epley法のみならずHINTS examにも言及してあり,情報が新しく日本語訳も読みやすい。敗血症においてはSepsis-3にも対応し,情報は原本よりもしっかりアップデートされているので,この日本語版はとってもお得。

 鑑別診断もただ羅列するのではなく,頻度も記載してあるのはうれしい。内科のみならず外科系,産婦人科なども広くカバーされ,救急を専門としない医師や当直で四苦八苦する研修医たちの「心の友よぉ~(ジャイアン風に読んでください)」になれる一冊。

 タラスコンでは感染症に対しては実に多くのページを割いている。ハリソンだって感染症の項目は最も多いもんね。中毒なんて普通の当直医が知るはずもなく,本書は実にコンパクトにうまくまとまっているので,どこに何が書いてあるかを知っておくだけで夜の強い味方になる。生物・化学・放射線曝露に関しては,救急のプロでさえ覚えていないことが多く,ホントに役立つ。

 非常にコンパクトでただ普通のポケットに入るだけでなく,胸ポケットに入っちゃうのが実に凄い。胸ポケットから緑色の本書が見え隠れするのは何となく格好いいぞ!

 ただ,これだけの膨大な内容を細かく記載するとなると,文字も細かく,びっしり埋まっていてどうにもこうにも老眼が進んだ医師には実に読みづらい……。でもこれだけ現場で使える情報を詰め込んだとなれば,きっといざとなったときにあなたを助けてくれる。まぁ,読み物というより,しっかりした辞書みたいな完成度だからね。そこは実用性をてんびんにかけて大いに活用しようではないか。

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