疾病のなりたちと回復の促進[4]
微生物学 第13版

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・大きく3部構成となっています。第1部では、病原微生物がどのような生物的特徴や病原性・感染機構を持っているか、第2部では、病原微生物の感染のしくみと、ヒトがそれをいかに防いでいるか、という点を概括的に学びます。そして第3部では、各種の細菌・真菌・原虫・ウイルスについて、ヒトに引きおこす感染症とともに詳しく学んでいきます。
・本書は、微生物の持つ病原性(感染力)というものを、生物としての微生物の営みとしてとらえ、それと同次元でヒトの感染防御機構を説明します。両者の巧みなかけ引きや相互の進化の様子がよく理解されます。
・​​​​​​​MERSウイルス、SFTSウイルス、デングウイルス、ジカウイルスなどについても、最新の知見を盛り込んでいます。
・​​​​​​​各論では医療の専門職として知っていなければならない病原微生物を網羅し、事典としても使えるような詳細な情報を盛り込んでいます。

*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座-専門基礎分野 4
南嶋 洋一 / 吉田 眞一 / 永淵 正法 / 齋藤 光正 / 大野 真治
発行 2018年01月判型:B5頁:392
ISBN 978-4-260-03183-7
定価 2,420円 (本体2,200円+税)
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  • 序文
  • 目次

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はしがき

 みなさんは,「バイ菌,カビ,ウイルス」などと聞いて,どのようなイメージをいだくでしょうか。多くの方々が,不潔,こわい,くさい,不気味など,いやなイメージをもつことでしょう。そして,こんなものがいなかったなら,病気もなくて,安全で,住みよい世界になるのに,と想像するに違いありません。確かに,微生物のなかには食物の腐敗や,健康と生命をおびやかす感染症を引きおこすものがいます。このような感染症をなくすことは人類の悲願ではあります。
 しかし,微生物が地球上のこの世界からいなくなったらどうなるかを,想像できますか。この世界はたちまち動物の死骸や排泄物,枯れた植物などで埋めつくされ,青々とした台地も,幽玄な山々や渓谷も,清らかな川も海もなくなってしまうことでしょう。なぜなら,微生物は有機物を分解して地球の環境を美しく保ってくれているからです。これは,地球規模の元素循環を微生物が担ってくれているからであり,このはたらきは「生物浄化」ともよばれています。みなさんが生物学で学んだ「食物連鎖」も,細菌とアメーバの関係から出発するということに気づいていましたか。そして,生物浄化はその食物連鎖に先だつ営みだということを。
 私たちがいただいているパンやチーズ,醤油や味噌などの発酵食品をつくってくれているのも細菌やカビの仲間です。産業に利用されているこれらの微生物は「有用微生物」とよばれ,私たちの食生活を支えてくれる,なくてはならないパートナーなのです。
 一方,人間と微生物との不幸な関係もあり,微生物には人間や動物,植物に病気をおこすものがたくさんいます。おそらく人類誕生と同時に,結核,コレラ,ジフテリア,マラリア,ポリオなどの感染症が,人類を苦しめはじめました。そしていまも,私たちは生まれ出ると同時に微生物と出会います。生きることは,微生物と付き合うことです。病原微生物に対処するには,相手の正体を知り,それを迎え撃つ私たちのからだのまもりの仕組みを理解することが不可欠です。古くから,「彼を知り己を知らば,百戦して危うからず」「彼を知らず己を知らざれば,戦う毎に必ず危うし」(孫子)という言葉があります。
 感染症という疾患には,その病因である病原微生物が肉眼で見えない,増える,ヒトからヒトへ広がる,というほかの疾患には見られない特徴があります。みなさん,本書を通じて,目に見えない病原微生物を“見える化”しましょう。
 20世紀,人類は抗生物質という「魔法の弾丸」を手にしました。しかし,それを乱射した結果,耐性獲得という細菌側の逆襲にあい,今世紀に入り「抗菌薬無効時代の到来」が危惧されています。わが国では,2011年,肺炎が死因の第3位になりました。その患者の96%以上が高齢者です。人類の歴史は,今日まで,いや今日なお,感染症とのたたかいの歴史でもあります。
 医療施設には,感染源となる患者と,高齢者や基礎疾患をもつ感染しやすい別の患者が,同一空間にいます。両者に接触する皆さんには,医療従事者媒介感染をおこさないための知識と技術,そして細心の注意と遵守が求められます。感染の制御は医療従事者の必須業務なのです。医療従事者1人の無知と無視が,ほかのすべての人の努力をむだにしてしまいます。まず,相手が感染症の患者であろうとなかろうと,誰にでも,どこででも,いつでも行う手指衛生(手洗いと手指消毒)を「魔法の習慣」にしましょう。
 本書は,職業教育上必須の微生物学的知識を,平易に説明し,感染症の最新情報を加えて,系統的に提供することを意図して執筆しました。みなさんは,微生物とはどのようなものか,我々にどのような病気をおこすのか,それに対して我々はどのように対処すべきか,という3つの側面から,それらを学びとってください。本書が,みなさんと微生物との新たな出会いの場となり,みなさんが微生物学という学問の理解を深めて,その知識を医療の現場で生かしていってくれることを願っています。

 2017年11月
 著者ら


初版の序
 微生物学領域における最近の進歩は著しいものがあり,多くの教科書が次々と改訂を余儀なくされているのが現状である。著者らは先に「高看双書」の1つとして『病原微生物学』を執筆したが,新しいカリキュラムの実施に伴って,今回,現時点における進歩をできるだけ取り入れ,しかもより平易にと心がけながら全面的に書き改めたのが,本書である。
 今回は書名を『病原微生物学』としないで,『微生物学』とした。これは,看護を業とする以上,病原微生物が問題となるのは当然であるが,その前提となる微生物学そのものをしっかりと理解してもらいたいからであり,また最近は必ずしも病気をおこさない微生物も,医学的に問題となる場合が比較的多くなっているからでもある。本書を通じて微生物学の基礎を把握し,実際の看護を行ううえに少しでも役だてていただければ幸いである。
 内容その他に不備な点が少なくないと思うが,これらについては今後読者の方々のご意見に基づいて改訂していきたいと考えている。

 1968年2月
 武谷健二
 小池聖淳

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第1部 微生物学の基礎
 第1章 微生物と微生物学(吉田眞一・齋藤光正)
  A 微生物の性質
  B 微生物と人間
  C 微生物学の対象と目的
  D 微生物学の歩み
 第2章 細菌の性質(吉田眞一・齋藤光正)
  A 細菌の形態と特徴
  B 培養環境と栄養
  C 細菌の遺伝
  D 細菌の分類
  E 常在細菌叢
 第3章 真菌の性質(吉田眞一・齋藤光正)
  A 真菌の形態と特徴
  B 真菌の増殖
  C 真菌の分類と命名法
  D 栄養と培養
 第4章 原虫の性質(南嶋洋一・大野真治)
  A 原虫の特徴と基本構造
  B 病原原虫の種類
 第5章 ウイルスの性質(南嶋洋一・大野真治)
  A ウイルスの特徴
  B ウイルスの構造と各部分の機能
  C ウイルスの増殖
  D ウイルスの分類

第2部 感染とその防御
 第6章 感染と感染症(吉田眞一・南嶋洋一・齋藤光正・大野真治)
  A 微生物感染の機構
  B 感染の成立から発症・治癒まで
  C 細菌感染の機構
  D 真菌感染の機構
  E 原虫感染の機構
  F ウイルス感染の機構
 第7章 感染に対する生体防御機構(吉田眞一・大野真治)
  A 自然免疫のしくみ
  B 獲得免疫のしくみ
  C 粘膜免疫のしくみ
  D 感染の徴候と症状
 第8章 感染源・感染経路からみた感染症(吉田眞一・齋藤光正)
  A 経口感染
  B 経気道感染
  C 接触感染
  D 経皮感染
  E 母児感染
 第9章 滅菌と消毒(吉田眞一・齋藤光正)
  A バイオハザードとバイオセーフティ
  B 滅菌・消毒の意義と定義
  C 滅菌法
  D 濾過除菌
  F 消毒と消毒薬
 第10章 感染症の検査と診断(吉田眞一・永淵正法・大野真治)
  A 病原体を検出する方法
  B 生体の反応から診断する方法
 第11章 感染症の治療(吉田眞一・南嶋洋一・齋藤光正・大野真治)
  A 化学療法の基礎
  B 各種の化学療法薬
  C その他の治療法
 第12章 感染症の現状と対策(吉田眞一・齋藤光正)
  A 感染症の変遷
  B 感染症の現状と問題点
  C 感染症への対策

第3部 おもな病原微生物
 第13章 病原細菌と細菌感染症(吉田眞一・齋藤光正)
  A グラム陽性球菌
  B グラム陰性球菌
  C グラム陰性好気性桿菌
  D グラム陰性通性桿菌
  E カンピロバクター属,ヘリコバクター属
  F グラム陽性桿菌
  G 抗酸菌と放線菌
  H 嫌気性菌
  I スピロヘータ
  J マイコプラズマ
  K リケッチア目
  L クラミジア科
 第14章 病原真菌と真菌感染症(吉田眞一・齋藤光正)
  A 深在性真菌症をおこす真菌
  B 深部皮膚真菌症をおこす真菌
  C 表在性真菌症をおこす真菌
 第15章 病原原虫と原虫感染症(南嶋洋一・大野真治)
  A 根足虫類
  B 鞭毛虫類
  C 胞子虫類
  D 繊毛虫類
 第16章 病原ウイルスとウイルス感染症(南嶋洋一・永淵正法・大野真治)
  A DNAウイルス
  B RNAウイルス
  C ウイルスの臨床的分類

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