作業療法評価学 第3版

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作業療法を実践するうえで、対象者の「評価」は欠かせない。本書は、評価の基礎知識から、身体・精神・発達・高齢期といった作業療法の全領域に共通の評価法、および各領域特有の評価法に至るまで、理論を交えて紹介し、治療に結び付ける視点を養える。第3版では、「高次脳機能評価法」の章を新設し、また「排泄機能検査」、「生活行為向上マネジメント」、「内部疾患」の項目を設けた。学生も臨床の作業療法士も必携の1冊。
*「標準作業療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準作業療法学 専門分野
シリーズ監修 矢谷 令子
編集 能登 真一 / 山口 昇 / 玉垣 努 / 新宮 尚人 / 加藤 寿宏 / 松房 利憲
発行 2017年12月判型:B5頁:704
ISBN 978-4-260-03003-8
定価 6,380円 (本体5,800円+税)
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第3版 序

 本書の初版が出版されたのは2005年6月であった.その後,2011年2月には第2版が出版され,そしてこのたび第3版が刊行されることとなった.この間,作業療法士の有資格者は約3万人から約8.5万人へと約3倍近くに増加した.養成校の数も156校から189校へと増えた.この関連した2つの数の増加は,日本という,世界でもっとも高齢化の進んだ国において,サービスを提供する側からも,あるいはそのサービスを享受する側からも寄せられた作業療法士に対する期待の表れなのだと思う.今後もこの流れと期待が減ることはないと考えられるが,作業療法士の数が増えれば,質は多少落ちても良い,というものでは決してない.むしろ,その大きな期待に応えられるように,より一層の責任を感じ,知識と技術を研鑽していかなければならないということを宣明しておきたい.
 さて,あらためて言うまでもないが,作業療法士は医療の専門職である.このことは地域など福祉の現場で従事する作業療法士が増加した昨今でも変わることはない.つまり,医療職として,対象者の病気を治療したり,対象者が元の生活に戻れるよう支援したりするために存在するのが作業療法士である,ということだ.そのため,第3版では評価は治療を実践するためのエビデンス探しであることに繰り返し言及した.また論理的な思考や科学的な解釈が必要であることも強調した.このことを前もって断ったうえで,第3版で改編した内容について記しておきたい.
 まず,本書全般に関する点について,シリーズ第3版に共通して当てはまることでもあるが,カラー化し,図表や全体のレイアウトが大変見やすくなった.特に写真はモノクロにはない立体感が出て,非常に理解しやすくなったと思う.次に紹介しておきたいことは,第3, 5, 6章では評価尺度の一覧を設けたことである.これを一瞥することでそれぞれの対象疾患あるいは領域ごとの評価法の全体像を把握できるだけではなく,すばやく目標とする評価尺度にたどり着けることにもなるはずである.GIO(一般教育目標)やSBO(行動目標)といった,教科を学ぶうえで学習の指針となる具体的な目標については各節ごとに掲載するように変更し,個別の目標を抱きやすくした.
 また個別の評価法に関しては,時代のニーズに合った評価項目を追加し,新しく開発された評価尺度やup to dateされた評価尺度を掲載した.具体的には,排泄機能に関する評価法や生活行為向上マネジメントなど,作業療法士が新たに身に付けるべき領域の評価法やマネジメント手法を加えた.さらに個々の評価表は可能な限りそのまま掲載するようにもした.このようなことから,本の厚み(=重み),すなわち紙面の量を減らすことはできなかったが,逆の見方をすれば,作業療法で使用するほぼすべての評価法が網羅されているため,本書さえ携えてさえいれば絶大な安心感を抱いて学校や臨床の場に向かうことができるものになったと太鼓判を押したい.
 また第3版では編集者の多くが交代した.これは評価学に続く各領域の治療学の編集者が評価学の編集に加わることで,評価学と治療学を整合性の取れた内容で出版しようとしたためである.専門領域の治療学各巻は順次,改訂されていくので今後改訂される巻を楽しみに待っていていただきたい.
 最後に,社会に目を向けてみると,少子高齢化の進展により,社会保障制度の見直しが喫緊の課題となっている.財政の面からも,増え続ける医療費を抑制し,介護などの福祉現場へと負担をシフトさせようとする圧力が強まりつつある.このような社会の変化の只中にあって,作業療法士もまた,医療現場から福祉現場,特に作業療法の対象者が暮らす地域へとその職域を広げる変化を余儀なくされている.国が目指す地域包括ケアシステムにおいても,あるいは認知症対策の中でも作業療法士の活躍が期待されている.このような社会の要請に応えるためにも,医療の知識と技術を兼ね備えた作業療法士が地域,福祉へとつなぐ橋渡し役として活躍しなければならない時が来ている.作業療法士が医療職である以上,病院はもちろん,福祉現場や地域に出たとしても,医学的な知識に基づいた評価の実施と,それに基づいた治療計画,そして再評価をとおして効果判定を行わなければいけないことは決して変わらない.むしろ,そのような作業療法の効果の検証が今まで以上に求められていくものと容易に想像できる.その意味からも評価と再評価は作業療法によって重要な過程なのである.本書が作業療法評価学のバイブル的役割を果たせることを切に願っている.

 2017年10月
 執筆者を代表して
 編者一同

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1 評価学の基礎
 GIO,SBO,修得チェックリスト
 I 作業療法と評価
 II 再評価と作業療法の効果判定
 III 記録・報告の意義と特徴
 本章のキーワード

2 領域共通の評価法
 I 面接法・観察法
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 II 意識の評価およびバイタルサインの測定,臨床検査値の読み方
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 III 形態計測
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 IV 関節可動域測定
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 V 筋力検査
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 VI 感覚検査
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 VII 反射検査
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 VIII 姿勢反射検査
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 IX 筋緊張検査
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 X 協調性検査
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 XI 脳神経検査
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 XII 摂食・嚥下機能検査
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 XIII 排泄機能評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 XIV 上肢機能検査
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 XV 日常生活活動の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 XVI QOL,興味,役割の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 XVII 生活行為向上マネジメント
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 本章のキーワード

3 身体機能評価法
 I 脳血管障害・頭部外傷の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 II 脊髄損傷の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 III 上肢の末梢神経損傷の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 IV 関節リウマチおよびその類縁疾患の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
   1 関節リウマチ
   2 全身性エリテマトーデス
   3 多発性筋炎・皮膚筋炎
 V その他の神経疾患,神経・筋疾患の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 VI 内部疾患の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 本章のキーワード

4 高次脳機能評価法
 GIO,SBO,修得チェックリスト
 本章のキーワード

5 精神機能評価法
 I 精神機能作業療法評価学の基礎
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 II 精神機能作業療法における情報収集
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 III 精神機能作業療法における観察法と面接法
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 IV 精神機能作業療法における検査法
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 V 集団における評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 VI 精神機能作業療法の実際
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 VII 疾患別の評価事例
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 VIII 臨床的思考に向けて-対象者を立体的に理解することの重要性
 本章のキーワード

6 発達過程評価法
 I 発達過程作業療法における家族との面接
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 II 発達過程作業療法における発達検査の目的と留意点
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 III 発達全般を評価する検査
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 IV 運動機能の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 V 感覚統合機能の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 VI 視知覚・視覚認知の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 VII 知能・認知機能の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 VIII 行動の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 IX 作業遂行・身辺処理の評価
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 X 疾患・障害による評価の選択
 本章のキーワード

7 高齢期機能評価法
 GIO,SBO,修得チェックリスト
 本章のキーワード

8 就労の評価
 GIO,SBO,修得チェックリスト
 本章のキーワード

作業療法評価学の発展に向けて
さらに深く学ぶために

索引

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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