Electrocardiography A to Z
心電図のリズムと波を見極める
医師に必須の心電図解読のまたとない入門書
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心電図で迷ったらこの1冊。すべての医師・看護師に必須の心電図の基礎から臨床までを、第一線で活躍する医師が丁寧にわかりやすく解説。豊富な心電図症例や図版、フローチャートが直感的でビジュアルな理解を可能にしている。心電図の読み方の手順から、最新の治療や検査法までくまなく収載。医師・看護師のみならず、医学生や看護学生も必携の心電図入門書の決定版。
*本書は日本医師会生涯教育シリーズ-89[日本医師会雑誌 第144巻・特別号(2)/平成27年10月15日刊]をそのまま単行本化したものです。
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
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序(横倉義武)/監修・編集のことば(磯部光章)
序
心血管疾患は,悪性新生物とならんでわが国における死因の上位を占める重大な疾患である.加齢と共に,動脈硬化に起因した心臓,腎臓,脳循環などの広い意味での循環器疾患が増加することは広く知られており,超高齢社会を迎えたわが国において,今後さらに増加するであろう心血管疾患にどう対応していくかは喫緊の課題である.
第一線の臨床医は,日々さまざまな症状をもった循環器疾患患者に遭遇していると思われる.そのときに,心血管疾患の簡便かつ有効なスクリーニング方法としての心電図の意義は大きい.循環器内科の専門医のみならず,すべての医師が習熟しておきたい基本の検査法と言えるだろう.
このたび,診療・研究の最前線で活躍されている先生方のお力によって,心電図による診断の入門書として,本書が刊行の運びとなった.心電図の基礎知識から,判読の手順,波形の異常,調律の異常,臨床的知識までを網羅しており,心電図の知識をブラッシュアップしていただくのに格好の書に仕上がっている.本書が先生方の日常診療の一助となり,広く活用していただけることを願う次第である.
最後に,本書の刊行に当たり,ご多忙の中,監修に当たっていただいた磯部光章先生,奥村 謙先生,編集に当たっていただいた清水 渉先生,村川裕二先生,弓倉 整先生,編集協力としてご尽力いただいた合屋雅彦先生,山根禎一先生をはじめ,ご執筆いただいた諸先生に厚く御礼申し上げる.
平成27年10月
日本医師会会長
横倉義武
監修・編集のことば
心電図は実地診療において最も身近で日常診療に欠かすことのできない臨床検査であり,ME機器である.心疾患の診断は,正確な病歴聴取と身体所見,心電図,心エコー,胸部X線だけでほとんどが可能である.緊急の対応を必要とする疾患も多いため,心電図の判読に習熟していることは一般臨床医として必須である.
初学者を対象とした心電図判読の入門書から専門医を対象としたテキストまで,心電図に関する著作物は非常に多い.判読の学習に困難を感ずる初学者が多いことと臨床的有用性を反映していると思われる.日本医師会では平成元年に生涯教育シリーズとして『心電図のABC』を発刊した.改訂も重ね,日本医師会の出版物を代表するロングセラーとして多くの読者に親しまれてきた.
この間,心疾患の疾患概念は拡大し,治療法は革新的な進歩を遂げている.不整脈では心筋焼灼術(アブレーション)や新しいデバイスを用いた治療法などが開発された.虚血性心疾患や心筋疾患の治療も進化し続けている.あらゆる心疾患の診断・治療に心電図は不可欠の検査である.この中にあって,日本医師会として『心電図のABC』をさらにパワーアップする新しい刊行物が企画された.
心電図は通常の画像診断と異なり,単なる視覚情報だけでは判読が困難である.初学者に敬遠される原因となっているが,実際は異常所見の数は限られており,基本を押さえ,ステップを踏み,ポイントを知れば決して難しいものではない.本書では,基本事項とこれらのステップ方式での判読のポイントを分かりやすく解説し,さらに現在の新しい治療法にも対応しうる不整脈の判読について解説した.入門書であり,かつ専門書であると言ってよく,そのため,書名を『Electrocardiography A to Z』とした.医師会会員を中心に,医学生,研修医,コメディカルスタッフ,あるいは循環器専門医までも含めて対象として編纂したものである.この場を借りて,お忙しい中,執筆にあたった諸氏に心からお礼を申し上げる次第である.
本書が会員の皆様の心電図についての座右の書として活用されることを願うものである.
平成27年10月
監修・編集者を代表して
磯部光章
序
心血管疾患は,悪性新生物とならんでわが国における死因の上位を占める重大な疾患である.加齢と共に,動脈硬化に起因した心臓,腎臓,脳循環などの広い意味での循環器疾患が増加することは広く知られており,超高齢社会を迎えたわが国において,今後さらに増加するであろう心血管疾患にどう対応していくかは喫緊の課題である.
第一線の臨床医は,日々さまざまな症状をもった循環器疾患患者に遭遇していると思われる.そのときに,心血管疾患の簡便かつ有効なスクリーニング方法としての心電図の意義は大きい.循環器内科の専門医のみならず,すべての医師が習熟しておきたい基本の検査法と言えるだろう.
このたび,診療・研究の最前線で活躍されている先生方のお力によって,心電図による診断の入門書として,本書が刊行の運びとなった.心電図の基礎知識から,判読の手順,波形の異常,調律の異常,臨床的知識までを網羅しており,心電図の知識をブラッシュアップしていただくのに格好の書に仕上がっている.本書が先生方の日常診療の一助となり,広く活用していただけることを願う次第である.
最後に,本書の刊行に当たり,ご多忙の中,監修に当たっていただいた磯部光章先生,奥村 謙先生,編集に当たっていただいた清水 渉先生,村川裕二先生,弓倉 整先生,編集協力としてご尽力いただいた合屋雅彦先生,山根禎一先生をはじめ,ご執筆いただいた諸先生に厚く御礼申し上げる.
平成27年10月
日本医師会会長
横倉義武
監修・編集のことば
心電図は実地診療において最も身近で日常診療に欠かすことのできない臨床検査であり,ME機器である.心疾患の診断は,正確な病歴聴取と身体所見,心電図,心エコー,胸部X線だけでほとんどが可能である.緊急の対応を必要とする疾患も多いため,心電図の判読に習熟していることは一般臨床医として必須である.
初学者を対象とした心電図判読の入門書から専門医を対象としたテキストまで,心電図に関する著作物は非常に多い.判読の学習に困難を感ずる初学者が多いことと臨床的有用性を反映していると思われる.日本医師会では平成元年に生涯教育シリーズとして『心電図のABC』を発刊した.改訂も重ね,日本医師会の出版物を代表するロングセラーとして多くの読者に親しまれてきた.
この間,心疾患の疾患概念は拡大し,治療法は革新的な進歩を遂げている.不整脈では心筋焼灼術(アブレーション)や新しいデバイスを用いた治療法などが開発された.虚血性心疾患や心筋疾患の治療も進化し続けている.あらゆる心疾患の診断・治療に心電図は不可欠の検査である.この中にあって,日本医師会として『心電図のABC』をさらにパワーアップする新しい刊行物が企画された.
心電図は通常の画像診断と異なり,単なる視覚情報だけでは判読が困難である.初学者に敬遠される原因となっているが,実際は異常所見の数は限られており,基本を押さえ,ステップを踏み,ポイントを知れば決して難しいものではない.本書では,基本事項とこれらのステップ方式での判読のポイントを分かりやすく解説し,さらに現在の新しい治療法にも対応しうる不整脈の判読について解説した.入門書であり,かつ専門書であると言ってよく,そのため,書名を『Electrocardiography A to Z』とした.医師会会員を中心に,医学生,研修医,コメディカルスタッフ,あるいは循環器専門医までも含めて対象として編纂したものである.この場を借りて,お忙しい中,執筆にあたった諸氏に心からお礼を申し上げる次第である.
本書が会員の皆様の心電図についての座右の書として活用されることを願うものである.
平成27年10月
監修・編集者を代表して
磯部光章
目次
開く
カラー口絵 心電図を易しく理解するために
心電図の記録法
心臓の刺激伝導系と活動電位
よい心電図を記録するには
12誘導心電図とは
心電図波形の成り立ち
興奮の伝わり方と心電図波形の関係
心電図の読み方の実際
疾患と心電図
(1)急性心筋梗塞
(2)狭心症
(3)心肥大
(4)リエントリー頻脈のいろいろ
序
監修・編集のことば
監修・編集・執筆者紹介
I章 心電図の基本的知識
1 誘導法
2 心電図波形とその成り立ち
3 波形の計測
4 心電図の正常範囲
5 正常範囲内とされる心電図の実例
II章 心電図判読の手順と異常所見
1 判読の手順
2 リズムの異常
3 波形・間隔の異常
[1] P波の異常
[2] PQ間隔の異常
[3] QRS波の異常
(1)wide QRS
(2)高電位差
ひとくちMEMO 電気的交互脈とは?
(3)低電位差
[4] QT間隔の異常
[5] 平均QRS電気軸の異常
ひとくちMEMO 年齢や体格と心電図
[6] 異常Q波
[7] ST部分の異常
[8] T波の異常
[9] U波の異常
III章 波形の異常
異常心電図
1 虚血性心疾患
[1] 心筋梗塞
(1)極早期の心筋梗塞
(2)前壁梗塞
(3)下壁梗塞
ひとくちMEMO 急性心筋梗塞かどうか自信がないとき
(4)高位後壁梗塞
(5)右室梗塞
(6)非ST上昇型心筋梗塞
ひとくちMEMO 心内膜下梗塞
ひとくちMEMO 急性心筋梗塞の治療
[2] 狭心症
(1)労作狭心症
(2)異型狭心症
2 心筋炎
3 心膜炎
4 たこつぼ心筋症
5 心筋障害(非特異的ST-T変化)
6 心室肥大
[1] 左室肥大と拡大
[2] 右室肥大
7 心室内伝導障害
[1] 右脚ブロック
[2] 左脚ブロック
[3] 左脚分枝ブロック
8 電解質異常
[1] 高K血症
[2] 低K血症
[3] 高Ca血症
[4] 低Ca血症
9 不整脈原性右室心筋症
10 右胸心
IV章 調律の異常
A.不整脈をどう読んでいくか
1 不整脈基本解析のステップ
2 基本調律は何か
[1] P波がある場合
[2] P波がない場合
3 P波とQRS波の関係(1:1に対応しているか)
4 RR間隔が突然変動する場合
5 心拍数が50拍/分未満の場合
6 心拍数が100拍/分以上の場合
[1] wide QRS頻拍の鑑別診断
ひとくちMEMO torsade de pointesとは?
[2] narrow QRS頻拍の鑑別診断
7 植込みデバイスのリズムをどう読んでいくか
8 心室期外収縮の起源
9 心室期外収縮の性質
B.不整脈心電図の実際
1 洞リズムの異常
[1] 呼吸不整脈
[2] 洞頻脈
[3] 洞徐脈
2 頻脈性不整脈
[1] 期外収縮
(1)上室期外収縮/心房期外収縮
(2)心室期外収縮
[2] 心房細動
[3] 心房粗動
[4] 発作性頻拍
(1)上室頻拍
ひとくちMEMO 心房期外収縮が多いと危険か?
(2)心室頻拍
ひとくちMEMO 上室頻拍とまぎらわしい心室頻拍
(3)異所性心房頻拍
3 徐脈性不整脈
[1] 房室ブロック
(1)1度房室ブロック
(2)2度(Mobitz I型・Wenckebach型)房室ブロック
(3)2度(Mobitz II型)房室ブロック
(4)高度房室ブロック
(5)3度房室ブロック
[2] 洞不全症候群
4 特殊な症候群
[1] QT延長症候群
[2] WPW症候群
[3] ブルガダ症候群
[4] 早期再分極症候群
[5] QT短縮症候群
ひとくちMEMO 心房細動のカテーテルアブレーション治療
(心房細動アブレーションとは何をするのか?)
5 人工ペースメーカリズム
[1] ペースメーカ心電図
[2] 植込み型除細動器の心電図
[3] 両室ペーシングの心電図
6 致死性不整脈
[1] 極端な徐脈・心停止
[2] 心室細動
ひとくちMEMO 流出路起源心室期外収縮の治療方針
V章 心電図に関連する臨床的知識
1 Holter心電図
2 携帯型心電計
3 運動負荷試験
4 小児心電図の特徴
5 心腔内心電図
6 平均加算化心電図
ひとくちMEMO 遺伝子診断
7 モニター心電図のみかた
8 心電図自動診断
9 自動解析心電計の上手な使い方
用語解説
索引
心電図の記録法
心臓の刺激伝導系と活動電位
よい心電図を記録するには
12誘導心電図とは
心電図波形の成り立ち
興奮の伝わり方と心電図波形の関係
心電図の読み方の実際
疾患と心電図
(1)急性心筋梗塞
(2)狭心症
(3)心肥大
(4)リエントリー頻脈のいろいろ
序
監修・編集のことば
監修・編集・執筆者紹介
I章 心電図の基本的知識
1 誘導法
2 心電図波形とその成り立ち
3 波形の計測
4 心電図の正常範囲
5 正常範囲内とされる心電図の実例
II章 心電図判読の手順と異常所見
1 判読の手順
2 リズムの異常
3 波形・間隔の異常
[1] P波の異常
[2] PQ間隔の異常
[3] QRS波の異常
(1)wide QRS
(2)高電位差
ひとくちMEMO 電気的交互脈とは?
(3)低電位差
[4] QT間隔の異常
[5] 平均QRS電気軸の異常
ひとくちMEMO 年齢や体格と心電図
[6] 異常Q波
[7] ST部分の異常
[8] T波の異常
[9] U波の異常
III章 波形の異常
異常心電図
1 虚血性心疾患
[1] 心筋梗塞
(1)極早期の心筋梗塞
(2)前壁梗塞
(3)下壁梗塞
ひとくちMEMO 急性心筋梗塞かどうか自信がないとき
(4)高位後壁梗塞
(5)右室梗塞
(6)非ST上昇型心筋梗塞
ひとくちMEMO 心内膜下梗塞
ひとくちMEMO 急性心筋梗塞の治療
[2] 狭心症
(1)労作狭心症
(2)異型狭心症
2 心筋炎
3 心膜炎
4 たこつぼ心筋症
5 心筋障害(非特異的ST-T変化)
6 心室肥大
[1] 左室肥大と拡大
[2] 右室肥大
7 心室内伝導障害
[1] 右脚ブロック
[2] 左脚ブロック
[3] 左脚分枝ブロック
8 電解質異常
[1] 高K血症
[2] 低K血症
[3] 高Ca血症
[4] 低Ca血症
9 不整脈原性右室心筋症
10 右胸心
IV章 調律の異常
A.不整脈をどう読んでいくか
1 不整脈基本解析のステップ
2 基本調律は何か
[1] P波がある場合
[2] P波がない場合
3 P波とQRS波の関係(1:1に対応しているか)
4 RR間隔が突然変動する場合
5 心拍数が50拍/分未満の場合
6 心拍数が100拍/分以上の場合
[1] wide QRS頻拍の鑑別診断
ひとくちMEMO torsade de pointesとは?
[2] narrow QRS頻拍の鑑別診断
7 植込みデバイスのリズムをどう読んでいくか
8 心室期外収縮の起源
9 心室期外収縮の性質
B.不整脈心電図の実際
1 洞リズムの異常
[1] 呼吸不整脈
[2] 洞頻脈
[3] 洞徐脈
2 頻脈性不整脈
[1] 期外収縮
(1)上室期外収縮/心房期外収縮
(2)心室期外収縮
[2] 心房細動
[3] 心房粗動
[4] 発作性頻拍
(1)上室頻拍
ひとくちMEMO 心房期外収縮が多いと危険か?
(2)心室頻拍
ひとくちMEMO 上室頻拍とまぎらわしい心室頻拍
(3)異所性心房頻拍
3 徐脈性不整脈
[1] 房室ブロック
(1)1度房室ブロック
(2)2度(Mobitz I型・Wenckebach型)房室ブロック
(3)2度(Mobitz II型)房室ブロック
(4)高度房室ブロック
(5)3度房室ブロック
[2] 洞不全症候群
4 特殊な症候群
[1] QT延長症候群
[2] WPW症候群
[3] ブルガダ症候群
[4] 早期再分極症候群
[5] QT短縮症候群
ひとくちMEMO 心房細動のカテーテルアブレーション治療
(心房細動アブレーションとは何をするのか?)
5 人工ペースメーカリズム
[1] ペースメーカ心電図
[2] 植込み型除細動器の心電図
[3] 両室ペーシングの心電図
6 致死性不整脈
[1] 極端な徐脈・心停止
[2] 心室細動
ひとくちMEMO 流出路起源心室期外収縮の治療方針
V章 心電図に関連する臨床的知識
1 Holter心電図
2 携帯型心電計
3 運動負荷試験
4 小児心電図の特徴
5 心腔内心電図
6 平均加算化心電図
ひとくちMEMO 遺伝子診断
7 モニター心電図のみかた
8 心電図自動診断
9 自動解析心電計の上手な使い方
用語解説
索引
書評
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専門医にもコメディカルスタッフにも役立ててほしい解説書
書評者: 杉本 恒明 (東大名誉教授)
本書は≪日本医師会生涯教育シリーズ≫の一つである。このシリーズでは,タイトルが“ABC”となっているものはよく見るが,“A to Z”というのは初めてである。書評の依頼をいただいたこともあって,「監修・編集のことば」を改めて拝見し,医学生,研修医,コメディカルスタッフ,あるいは専門医までも含めて対象とした,とあったのを見て,そのスケールの大きいことを知った。殊に,コメディカルスタッフを対象に含めたことに感心したのである。今日,看護師が専門領域を持つようになって,若い看護師たちの心電図に対する関心は極めて高く,よく知ってもいる。
評者は平素,医療機器の一般家庭への普及を願ってきた。心電計もまた,そのような大衆化された医療機器と言える時代になっているのではないか,と考えていた。狭心症症状にしても,不整脈にしても,症状があるときの心電図が極めて大事である。このためには携帯型心電計がもっと利用されてよい。家庭血圧計の普及は日常の管理の面ばかりでなく,血圧というものの生理的,病態学的意義について医学的な新知見を提供しつつある。心電図記録においても,携帯型心電計はこのような付加的価値をもち得るものであり,医学・医療に貢献するところは極めて大きいはずなのだ,という思いがある。
心電図波形は視覚的,直観的に読み取る訓練が極めて有用で,役立つ領域である。本書の冒頭には口絵がある。本書を通読する前と後とでこれを見比べると,得られた知識が確認できよう。
本書は「心電図の基本的知識」「心電図判読の手順と異常所見」「波形の異常」「調律の異常」「心電図に関連する臨床的知識」の5章構成である。各章の内容は基本的には臨床を離れることなく,心電図,診断,病態が中心であり,メカニズムの記述には執筆担当者の思いが込められている。最終章の「心電図に関連する臨床的知識」には,Holter心電図,携帯型心電計から自動解析心電計に至る9項目がある。自動解析は利用されるものであり,頼られるものではない。そのゆえに手引き書としての本書は極めて大事である。
ページの間に「ひとくちMEMO」がある。これが必ずしも「ひとくち」ではない。多くは1ページを超えていて,結構,面白い。評者はこれを担当された執筆者のお人柄を想像しながら楽しんで読んだ。
まずは医学生,研修医,コメディカルスタッフにお勧めしたい。とにかく,通読することである。思いもよらず,楽に通読できて驚くであろう。そして読み返す。それは骨の折れることではない。こうして得られる心電図所見が医療スタッフの日常会話の中で,また患者との会話の中で,何気ない話題となっていく時代となることを願いたい。
リズムを見極め,波形を見極め,かつ治療方針を確かにする書
書評者: 相澤 義房 (新潟大名誉教授)
このたび,磯部光章先生,奥村謙先生の監修による,『Electrocardiography A to Z 心電図のリズムと波を見極める』が刊行された。本書は日本医師会企画による第一線の臨床医に向けた循環器領域のシリーズ『心電図のABC』のいわば改訂版とも言えるものである。
「監修・編集のことばにあるように,心電図や不整脈のわかりやすい入門書であると同時に,最近の不整脈治療の進歩が理解できるように企画されている。その結果,非専門医であっても,心電図と不整脈を自ら診断し,臨床的意義を再確認できるとともに,最新治療との関わりを確認することができる。また退屈になりがちな心電図の記録法や波形の成り立ちの記述も,カラーで見やすく,簡潔かつ十分に内容のある口絵としてまとめられている。このカラー口絵と第I章で,心電図の基本的知識が十分に身につく。第II章では心電図や不整脈診断における一般的な流れが示されている。このようなアプローチは,心電図や不整脈診断や判読の基本で,その流れの先にはおのずと正しい診断があると言える。第III章以下,異常所見や不整脈があった場合,その病態やメカニズムはどうなっているのか,どのような治療がありかつ必要とされるかも述べられており,大変に実用的でもある。
一般に一冊の解説書を読み上げることは日常の臨床の中では大変な労力になる。しかし本書は,目下必要性が迫られている項目から始め,時間のある時には他の項目を読み進めるということで,ページは前後しても,本書の意図する診断から治療までの心電図と不整脈の基本と最新情報(AからZまで)が整理でき理解できるようになっていると思われる。
執筆陣はいずれも第一線で活躍中の,脂の乗りきった専門医である。といって,自身の得意分野に関する心電図や不整脈の高度の知識や技量についての記述は抑制されて,どこを読んでも基本と最新情報まできちんと述べられている。随所に挿入されている「ひとくちMEMO」も,最新の知識の整理に効果的である。
あまたの心電図の解説書が刊行されているが,リズムを見極め,波形を見極め,かつ治療方針を確かにするという点から,本書は必要かつ十分な条件を満たしている。日常臨床に役立つ書として確信をもってお勧めできる。
書評者: 杉本 恒明 (東大名誉教授)
本書は≪日本医師会生涯教育シリーズ≫の一つである。このシリーズでは,タイトルが“ABC”となっているものはよく見るが,“A to Z”というのは初めてである。書評の依頼をいただいたこともあって,「監修・編集のことば」を改めて拝見し,医学生,研修医,コメディカルスタッフ,あるいは専門医までも含めて対象とした,とあったのを見て,そのスケールの大きいことを知った。殊に,コメディカルスタッフを対象に含めたことに感心したのである。今日,看護師が専門領域を持つようになって,若い看護師たちの心電図に対する関心は極めて高く,よく知ってもいる。
評者は平素,医療機器の一般家庭への普及を願ってきた。心電計もまた,そのような大衆化された医療機器と言える時代になっているのではないか,と考えていた。狭心症症状にしても,不整脈にしても,症状があるときの心電図が極めて大事である。このためには携帯型心電計がもっと利用されてよい。家庭血圧計の普及は日常の管理の面ばかりでなく,血圧というものの生理的,病態学的意義について医学的な新知見を提供しつつある。心電図記録においても,携帯型心電計はこのような付加的価値をもち得るものであり,医学・医療に貢献するところは極めて大きいはずなのだ,という思いがある。
心電図波形は視覚的,直観的に読み取る訓練が極めて有用で,役立つ領域である。本書の冒頭には口絵がある。本書を通読する前と後とでこれを見比べると,得られた知識が確認できよう。
本書は「心電図の基本的知識」「心電図判読の手順と異常所見」「波形の異常」「調律の異常」「心電図に関連する臨床的知識」の5章構成である。各章の内容は基本的には臨床を離れることなく,心電図,診断,病態が中心であり,メカニズムの記述には執筆担当者の思いが込められている。最終章の「心電図に関連する臨床的知識」には,Holter心電図,携帯型心電計から自動解析心電計に至る9項目がある。自動解析は利用されるものであり,頼られるものではない。そのゆえに手引き書としての本書は極めて大事である。
ページの間に「ひとくちMEMO」がある。これが必ずしも「ひとくち」ではない。多くは1ページを超えていて,結構,面白い。評者はこれを担当された執筆者のお人柄を想像しながら楽しんで読んだ。
まずは医学生,研修医,コメディカルスタッフにお勧めしたい。とにかく,通読することである。思いもよらず,楽に通読できて驚くであろう。そして読み返す。それは骨の折れることではない。こうして得られる心電図所見が医療スタッフの日常会話の中で,また患者との会話の中で,何気ない話題となっていく時代となることを願いたい。
リズムを見極め,波形を見極め,かつ治療方針を確かにする書
書評者: 相澤 義房 (新潟大名誉教授)
このたび,磯部光章先生,奥村謙先生の監修による,『Electrocardiography A to Z 心電図のリズムと波を見極める』が刊行された。本書は日本医師会企画による第一線の臨床医に向けた循環器領域のシリーズ『心電図のABC』のいわば改訂版とも言えるものである。
「監修・編集のことばにあるように,心電図や不整脈のわかりやすい入門書であると同時に,最近の不整脈治療の進歩が理解できるように企画されている。その結果,非専門医であっても,心電図と不整脈を自ら診断し,臨床的意義を再確認できるとともに,最新治療との関わりを確認することができる。また退屈になりがちな心電図の記録法や波形の成り立ちの記述も,カラーで見やすく,簡潔かつ十分に内容のある口絵としてまとめられている。このカラー口絵と第I章で,心電図の基本的知識が十分に身につく。第II章では心電図や不整脈診断における一般的な流れが示されている。このようなアプローチは,心電図や不整脈診断や判読の基本で,その流れの先にはおのずと正しい診断があると言える。第III章以下,異常所見や不整脈があった場合,その病態やメカニズムはどうなっているのか,どのような治療がありかつ必要とされるかも述べられており,大変に実用的でもある。
一般に一冊の解説書を読み上げることは日常の臨床の中では大変な労力になる。しかし本書は,目下必要性が迫られている項目から始め,時間のある時には他の項目を読み進めるということで,ページは前後しても,本書の意図する診断から治療までの心電図と不整脈の基本と最新情報(AからZまで)が整理でき理解できるようになっていると思われる。
執筆陣はいずれも第一線で活躍中の,脂の乗りきった専門医である。といって,自身の得意分野に関する心電図や不整脈の高度の知識や技量についての記述は抑制されて,どこを読んでも基本と最新情報まできちんと述べられている。随所に挿入されている「ひとくちMEMO」も,最新の知識の整理に効果的である。
あまたの心電図の解説書が刊行されているが,リズムを見極め,波形を見極め,かつ治療方針を確かにするという点から,本書は必要かつ十分な条件を満たしている。日常臨床に役立つ書として確信をもってお勧めできる。
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