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ENGアトラス

めまい・平衡機能障害診断のために

著:小松崎 篤

  • 判型 A4
  • 頁 448
  • 発行 2017年05月
  • 定価 8,856円 (本体8,200円+税8%)
  • ISBN978-4-260-02131-9
著者の長年にわたる臨床経験に裏付けされた渾身の1冊
めまい・平衡機能障害の他覚的所見としての眼振や異常眼球運動は、電気眼振検査(ENG)により正確に記録され、診断・治療に大きく貢献する。本書には、著者が長年にわたり記録した多数のENG記録が収載され、その豊富な経験をもとに解説されている。さらに、めまい・平衡機能障害に関係ある疾患の特徴についての説明が的確になされ、その分野の診療に従事する医師、臨床検査技師、看護師等の座右の書となる1冊である。
序 文


 眼振や異常眼球運動の病態生理の研究は20世紀後半から飛躍的な進歩を遂げて現在に至っている。
 一方,めまい・平衡障害を主症状とする疾患では,その他覚的所見として眼振や異常眼球運動が出現してそれらの所見は病巣局在診断,病状の推移あるいは治療の効果判定に貢献することが知られて...


 眼振や異常眼球運動の病態生理の研究は20世紀後半から飛躍的な進歩を遂げて現在に至っている。
 一方,めまい・平衡障害を主症状とする疾患では,その他覚的所見として眼振や異常眼球運動が出現してそれらの所見は病巣局在診断,病状の推移あるいは治療の効果判定に貢献することが知られている。
 従来,眼球運動異常は肉眼観察が主であったが,他覚的に記録することにより,記録として残るのみだけではなく定量的な検討を加えることが可能となった。この記録法として電気眼振計(electronystagmography:ENG)がある。
 本書ではめまい・平衡障害あるいは異常眼球運動の症例に対してENGで記録することにより病態の把握に貢献することを主眼に執筆された。
 ENGの記録においては単に自発徴候を記録するのみならず,視刺激あるいは前庭刺激を負荷することにより,より詳細な病巣局在診断が可能となっている。
 めまい・平衡障害の症例が対象となるため末梢前庭系のみならず,小脳や脳幹障害を中心とした中枢前庭系疾患も対象となり,検査法の診断的意義のみならず,各疾患に出現する眼振や異常眼球運動の実際の記録を示すことにより,各々の疾患のもつ特徴も解説した。
 ただ,得られた記録の解釈のためには患者の示す眼振や異常眼球運動が的確に記録されていることが重要で,アーチファクトの少ない記録をとるためには記録中に出現するアーチファクトについての知識も必要となる。そのためアーチファクトの内容のみならず,それらの対応についても記載した。
 一方,めまい・平衡障害の諸疾患に対して得られた所見の病態生理学的解釈は臨床の場に携わるものにとって重要なことではあるが,アトラスという本書の趣旨の範囲内とした。なお,疾患によっては記録の解釈のみならず疾患のもつ問題点にも言及したところもある。
 本書には700余のENG記録が示されているが,その90%以上の記録は過去10年来著者自身が診療に当たっている現場で得られた症例が選ばれており,症例の特徴をより明確に提示するため大多数の記録は著者自身が記録したスライドを使用していることを付言する。その理由として的確な記録は病態の解明に役立つことは当然であるが,得られた記録の解釈については現在十分でないことでも,将来この分野の進歩によってより的確な解釈がなされる可能性があり,そのためにも明確な記録の必要性が問われることになるためその点にも配慮した。
 一方,ENG記録になじみの少ない読者にも各疾患の特徴を理解できるように配慮してある。
 本書の出版にあたっては,千葉大学神経内科・服部孝道前教授(現名誉教授),小林誠博士に患者の紹介など諸種のご協力を,また東邦大学佐倉病院耳鼻咽喉科・山本昌彦前教授(現名誉教授),吉田友英准教授には文献渉猟などでご尽力を,さらに神田耳鼻咽喉科・神田敬院長にもご協力いただいたことを申し述べたい。なお,藤本容子氏には原稿作成などにつきご尽力をいただいたことに感謝を申し上げたい。
 さらに,本著の作成に関して長期間にわたり忍耐をいただいた林裕氏はじめ医学書院の方々には原稿校正など多くのお世話になったことに改めて御礼申し上げる。
 本書がめまい・平衡障害の実際の臨床の場に携わる医師,臨床検査技師,看護師らに何らかの参考になれば存外の喜びである。

 平成29年4月吉日
 著者 識
目 次
I ENGの歴史

II ENGの原理

III ENGの利点と欠点
  1 ENGの利点
  2 ENGの欠点

IV ENG記録の実際
 第1章 記録時の注意事項
   A ENG機器および周辺機器についての注意点
   B 患者に対しての注意点
 第2章 ENGにおけるよい記録とは何か
 第3章 電極の接着
   A 両眼が共同眼球運動をする場合の接着法
   B 左右の眼が非共同眼球運動の場合の接着法
 第4章 眼球運動の原波形および速度波形の較正
 第5章 眼振波形の計測
 第6章 AC記録とDC記録
 第7章 ENG記録のアーチファクト
   A 機械的なアーチファクト
   B 生体的なアーチファクト

V 眼振の記録と検査法
 第1章 自発眼振検査
   A 水平性眼振
   B 垂直性眼振
   C 回旋性眼振
   D 周期性交代性眼振
 第2章 注視眼振検査
 第3章 非注視下の記録
 第4章 視刺激による検査
   A 2点交互注視検査
   B random saccadeの検査
   C 急速眼球運動系の検査
   D 視標追跡検査
   E 視運動眼振検査
   F 視運動後眼振検査
 第5章 前庭刺激による検査
  1 頭位眼振検査
  2 頭振眼振検査
  3 温度刺激眼振検査
  4 visual suppression test
  5 回転眼振検査
VI 各疾患におけるENG記録所見
 第1章 末梢前庭障害総論
   A 急性障害
   B 慢性障害
 第2章 末梢前庭障害各論
  1 メニエール病と遅発性内リンパ水腫
   A メニエール病
   B 遅発性内リンパ水腫
  2 前庭神経炎
  3 めまいと急性感音難聴
   A めまいを伴う突発性難聴
   B 急性低音障害型感音難聴とめまい
   C 遅発性内リンパ水腫
   D 急性感音難聴後の発作性頭位めまい症
   E 急性感音難聴と聴神経腫瘍
   F めまいを伴う突発性難聴類似の中枢性疾患
  4 良性発作性頭位めまい症
   A 良性発作性頭位めまい症の歴史的背景
   B BPPVの分類
   C 症候学的特徴
   D 方向交代向地性眼振
   E 方向交代背地性眼振
   F 外側半規管型BPPVにおける患側の決定
  5 内耳炎
   A 限局性内耳炎
   B ウイルス性内耳炎
   C ハント症候群
   D 梅毒性内耳炎
  6 両側性前庭障害
   A 両側性前庭障害における急性障害と慢性障害
   B 特発性両側性前庭障害
   C 特発性両側性前庭障害と小脳失調症の合併
  7 聴神経腫瘍と小脳橋角部障害
   A 一側性聴神経腫瘍
   B 両側性聴神経腫瘍
   C 小脳橋角部髄膜腫
   D その他の小脳橋角部障害
 第3章 中枢性疾患
  1 脳幹障害と眼球運動の異常
   A 延髄障害
   B 橋部脳幹障害
    1.外転神経核障害
    2.内側縦束の障害(内側縦束症候群:MLF 症候群)
    3.橋部脳幹網様体傍正中帯(PPRF)の障害
   C 中脳障害
    1.動眼神経麻痺
    2.進行性核上性麻痺
    3.中脳背側部障害
  2 小脳障害と眼球運動の異常
   A 小脳障害総論
    1.自発性眼球運動
     (1)水平性自発眼振
     (2)自発性下眼瞼向き垂直眼振
     (3)周期性交代性眼振
     (4)square wave jerks(SWJ)
     (5)ocular flutter,opsoclonus
     (6)transitory alternating saccadic jump
    2.誘発性眼球運動
     (1)視刺激で誘発される眼球運動の異常
     (2)前庭刺激で誘発される眼球運動の異常
   B 脊髄小脳変性症
    1.孤発性皮質性小脳変性症
    2.多系統萎縮症
    3.ウェルニッケ症候群
    4.傍腫瘍性小脳変性症
    5.遺伝性脊髄小脳変性症
     (1)脊髄小脳失調症 1(SCA1)
     (2)脊髄小脳失調症 2(SCA2)
     (3)脊髄小脳失調症 3(SCA3,MJD)
     (4)脊髄小脳失調症 6(SCA6)
     (5)脊髄小脳失調症 8(SCA8)
   C その他の小脳疾患
  3 大脳障害と眼球運動の異常
 第4章 先天性眼振
   A 眼振と平衡障害
   B 眼振の波形
   C 注視による眼振の増強
   D 先天性眼振に対する閉眼の影響
   E 先天性眼振と視標追跡検査
   F 先天性眼振と視運動刺激-いわゆる錯倒現象について
   G 先天性周期性交代性眼振
   H 潜伏性眼振
   I 家族性先天性眼振
   J 先天性眼振と他疾患との合併

索引
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