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看護理論家の業績と理論評価


編集:筒井 真優美

  • 判型 B5
  • 頁 576
  • 発行 2015年03月
  • 定価 6,912円 (本体6,400円+税8%)
  • ISBN978-4-260-02085-5
看護学のさらなる発展のために知っておきたい看護理論
日本の看護者が、28人の看護理論家の業績および理論の紹介にとどまらず、それぞれの理論の評価を解説。本書で紹介される看護理論家とその理論は、看護系大学院生、学部生の基礎教養として知っておくべきもの。これからの看護学・看護科学の発展のために、取り上げられた看護理論の理解は欠かせない。
序 文


 本書は『看護理論家とその業績』翻訳第3版の後継書籍となるものです.同書は,1991年に邦訳初版が発行され,翻訳第3版(原著第5版)が2004年に刊行されました.2006年発行の原著『Nursing Theorists and Their Work』第6版より,歴史的に重要な...


 本書は『看護理論家とその業績』翻訳第3版の後継書籍となるものです.同書は,1991年に邦訳初版が発行され,翻訳第3版(原著第5版)が2004年に刊行されました.2006年発行の原著『Nursing Theorists and Their Work』第6版より,歴史的に重要な理論家(Abdellah, Adam, Barnard, Hall, Henderson, Logan, Orlando, Peplau, Roper, Tierney, Travelbee, Wiedenbach)は,文献が限られているという理由で,理論の簡単な紹介のみの掲載に変更されました.これらの理論家の業績は日本における看護学の発展を理解するうえで重要なので,『看護理論家とその業績』翻訳第3版の監訳者である都留伸子先生とも相談し,改版をせずに様子を見てまいりました.しかし,翻訳第3版の出版から10年以上経ち,この間,理論のさらなる発展があり,改版が必要となりました.そこで,翻訳ではなく,日本における看護者の執筆によって,本書を発刊する決意をいたしました.

 本書は,第Ⅰ部で,看護理論の評価をしていくうえで基盤となる知識をまとめています.「第1章 看護学・看護科学の発展」では,看護学・看護科学の学問体系,看護理論研究者の業績などとともに,日本の看護理論および邦訳を一覧表にし,先達の看護理論への熱い思いを掲載しております.「第2章 看護理論」では,看護理論を哲学,看護モデルなどに分類せずに看護理論として解説しております.「第3章 理論評価」は本書の主軸となる理論評価の内容について,「第4章 看護理論の歴史」は巻末の年表とあわせ看護学・看護科学の発展を理解するために書かれています.「第5章 看護理論と倫理」では,今後,看護学・看護科学が発展するために重要となる倫理について取り上げています.
 第Ⅱ部以降では,各看護理論家を,理論の出発点となるような書籍や論文等の「最初の代表的著作」の発行年代順に掲載します.最初の代表的著作が発行された時期をもとに,第Ⅱ部「『看護覚え書』発行~1959年」,第Ⅲ部「1960~1969年」,第Ⅳ部「1970~1979年」,第Ⅴ部「1980年以降」と分類をしています.それぞれの理論家の背景と理論を紹介したうえで,理論の評価(第Ⅰ部第3章参照)を主軸として展開しております.日本への受け入れの記述とあわせ,その構成自体が本書の特色となっています.
 また,看護理論を理解するには,理論家の生きた時代背景や国・地域の文化が重要となりますので,巻末に日本と世界における看護および看護理論の発展に関する年表と,各理論家の生誕地と主に活躍した都市を紹介した地図を掲載しました.

 本書で取り上げる看護理論家と紹介する理論の内容は,今日の日本の大学・大学院教育に即したものとし,看護理論家と看護理論について看護系大学・大学院生の基礎教養として知っておくべき水準を示すことを目指しました.日本では博士課程が増えており,看護理論の評価における著作,看護学・看護科学についての著作も今後期待できますが,そのためには修士課程・博士課程,とくに看護理論を評価し理論を開発する博士課程においては,看護学・看護科学についての授業科目が必須です.本書が看護学・看護科学の発展に少しでもお役に立てれば幸いです.

 看護学・看護科学は実践の科学であり,人間の健康と安寧を対象にしていることは,多くの看護学者によって明らかにされています(第Ⅰ部第1,2章).看護実践をより良いものに導き,人々により良いケアを提供するために,看護の知識体系が発展しました.その発展には,実践を記述し,説明し,より良い結果を予測する看護理論が大きな役割を果たしています.
 ただし,多くの看護理論は西洋の文化の中で発展してきていますので,日本で活用する場合は,日本の文化や価値観などを吟味することが必要になります.今後,人々の健康・安寧に貢献する看護学をさらに探究することが必要であり,災害看護なども考えると,日本人のための看護理論だけでなく,西洋と東洋を越えグローバル化された看護理論と,対象を限定化した中範囲理論の両方が必要でしょう.

 理論評価を担当してくださった執筆者は,理論家との面識があったり,その理論家や理論に強く惹かれ研究を続けている方々などで,お忙しい中それぞれ情熱を持って執筆してくださいました.ご自身の看護における集大成として取り組まれた執筆者もおられます.本書の意図を理解していただき,快く執筆を引き受けてくださり,真摯に取り組んでくださいました執筆者の皆様に感謝します.
 都留伸子先生には,『看護理論家とその業績』の翻訳時から「看護とは」という観点で多くの刺激を受けました.都留先生がおられなければ本書の出版には至りませんでした.日本赤十字看護大学図書館司書の根間敦子様,小松久美様,ニューヨーク大学およびハワイ大学図書館の司書の方々に文献に関してお世話になりました.最後に医学書院の七尾清様には本書の企画時に,決断する勇気を与えられました.北原拓也様,石塚純一様には企画から発刊を通して,さまざまな形で支援していただきました.ありがとうございました.
 築かれてきたさまざまな財産をいかに後世に伝えていくのか,実践の科学である看護学がどのように発展してきたのか,我々に残されたさらなる発展への課題は何か.本書は日本の看護者が看護学への情熱を持ってこの課題に迫る,新たな挑戦です.
 多くの方の支えにより,本書に取り組むことができました.本書の編集を通して,自分の世界の狭さ,知識の少なさなどの限界も感じました.皆様からの忌憚のないご意見をいただければ幸いです.

 2015年菫の咲くころ
 筒井真優美
目 次
第Ⅰ部 看護理論の発展と理論評価の基盤となるもの
 第1章 看護学・看護科学の発展 (筒井真優美)
 第2章 看護理論 (筒井真優美)
 第3章 理論の評価 (筒井真優美,川名るり)
 第4章 看護理論の歴史 (川原由佳里)
 第5章 看護理論と倫理 (高田早苗,吉田みつ子)

第Ⅱ部 『看護覚え書』発行~1959年
 第6章 フローレンス・ナイチンゲール:創まりの看護理論 (川島みどり)
 第7章 ヒルデガード E. ペプロウ:看護における人間関係の概念枠組 (中山洋子)
 第8章 ヴァージニア・ヘンダーソン:人間のニードと看護独自の機能 (守田美奈子)
 第9章 アーネスティン・ウィーデンバック:臨床看護における援助技術 (池田明子)
 第10章 ドロシー E. ジョンソン:ジョンソン行動システムモデル (兼松百合子)

第Ⅲ部 1960~1969年
 第11章 フェイ・グレン・アブデラ:21の看護問題 (矢野正子)
 第12章 マドレン M. レイニンガー:文化ケアの多様性と普遍性 (草柳浩子)
 第13章 アイダ・ジーン・オーランド:看護過程の教育訓練 (池田明子)
 第14章 ジョイス・トラベルビー:人間対人間の看護 (岡谷恵子)
 第15章 マイラ E. レヴァイン:保存モデル (宮脇美保子)

第Ⅳ部 1970~1979年
 第16章 マーサ E. ロジャーズ:ユニタリ・ヒューマン・ビーイングズ (筒井真優美)
 第17章 ドロセア E. オレム:セルフケア不足看護理論 (数間恵子,田中真琴)
 第18章 アイモジン M. キング:目標達成理論 (舟島なをみ)
 第19章 ベティ・ニューマン:ベティ・ニューマン・システムモデル (黒田裕子)
 第20章 シスター・カリスタ・ロイ:人と環境の統合を創生する変化に対する
       レジリエンス(能力) (津波古澄子)
 第21章 ラモナ T. マーサー:母親役割移行過程理論(Becoming a Mother) (新道幸惠)
 第22章 ジーン・ワトソン:ヒューマン・ケアリング・サイエンス (江本リナ)
 第23章 マーガレット A. ニューマン:拡張する意識としての健康の理論
       (Health as Expanding Consciousness) (遠藤恵美子)
 第24章 マリリン A. レイ:ビューロクラティック・ケアリング理論 (法橋尚宏,本田順子)

第Ⅴ部 1980年以降
 第25章 ローズマリー・リゾ・パースィ:人間生成(humanbecoming)理論 (高橋照子)
 第26章 ノラ J. ペンダー:ヘルスプロモーション・モデル (小西恵美子)
 第27章 パトリシア・ベナー:看護実践の明示化(articulation)から
       看護学教育法のたゆまぬ探求 (山本則子)
 第28章 パメラ G. リード:セルフ・トランセンデンス (金井 Pak 雅子)
 第29章 マール H. ミシェル:不確かさ (鈴木真知子,山口未久)
 第30章 クリステン M. スワンソン:ケアリング中範囲理論 (グレッグ美鈴)
 第31章 アン・ボイキン:ケアリングとしての看護 (多田敏子)
 第32章 シェリル・タタノ・ベック:産後うつ病理論 (村上明美)
 第33章 クリストファー・ジョーンズ:リフレクティブ ナラティブ (田村由美)

付録
 年表:日本・世界の出来事と看護の理論化の流れ (川原由佳里)
 地図:看護理論家の生誕地・活躍した都市

索引