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ほんとうに確かなことから考える妊娠・出産の話

コクランレビューからひもとく

著:森 臨太郎/森 享子

  • 判型 A5
  • 頁 128
  • 発行 2018年03月
  • 定価 2,376円 (本体2,200円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03542-2
「確かなこと」を共有し、話し合おう
医療や健康の分野で最も信頼性が高いと言われている情報源であるコクランレビュー。本書では、その中から妊娠・出産にかかわるものを集め、紹介している。適度な距離感をもって、医療や健康の情報とつきあうために。妊産婦さんにとってのよりよい診療・ケアを考える、話し合いを始めるためのツールとなる1冊。
序 文
はじめに

 この本は,妊娠・出産に関して,「これはある程度確かなことだ」ということを示したうえで,実際にはどのように考えればよいのか,ということをお伝えしたいと考える中で生まれました。主に,一般の日常診療に従事している産科・小児科の医師や,助産師・看護師などの医療従事者に向けて,...
はじめに

 この本は,妊娠・出産に関して,「これはある程度確かなことだ」ということを示したうえで,実際にはどのように考えればよいのか,ということをお伝えしたいと考える中で生まれました。主に,一般の日常診療に従事している産科・小児科の医師や,助産師・看護師などの医療従事者に向けて,また,少し深く勉強してみたいと考えている一般の方,妊娠している女性とその家族を念頭において執筆しています。
 ひとくちに「確かなこと」といっても,その「確からしさ」にはピンからキリまでいろいろあります。今回は,「コクランレビュー」という,医療や健康の分野で最も信頼性が高いとされている国際的な組織でまとめた情報を紹介しています。全医療分野にまたがる10,000件近いコクランレビューから,妊娠・出産にかかわるものを集め,その中でも高度に医療的ではないもの,医療介入が多くは入らずに進行している(した)妊娠・出産に関して取り上げた内容は,ほぼすべて紹介するようにしました。

「確かなこと」を考えるときの情報源
 コクランとは,医療や健康にかかわる現場での判断をお手伝いするために,企業などから影響を受けない形で,できるだけ客観的な情報を集めてまとめ,それを公表している,医療者,研究者,市民からなる国際的な集まりです。1992年に設立され,25年を超える歴史をもつ組織です。設立当初は,権威主義的な医療を市民に取り戻し,客観的な情報(根拠)に基づく医療を樹立するための改革運動として始まりましたが,今では,どこの国の医療現場においても参照される,医療のスタンダードになりました。この「客観的な情報のまとめ方(=系統的レビューといいます)」を考えて確立したのが,コクランであり,その核にある考え方「根拠に基づく医療」は,近年の医療分野の十大発明にも数えられています。

「確かなこと」と適切な距離感をもつ
 さて,実際に私たちは,この「確かなこと」とどのように付き合うべきでしょうか。
 私たち1人ひとりは,妊娠・出産にかかわる現場においても,すべて異なる身体と異なる社会やつながりの中で暮らしています。この本で紹介している「確かなこと」も,ある属性で個人を集めた集団としてみた場合に言えることであって,1人ひとりに100%合致するというわけではありません。しかしながら,その属性をある程度の人が持っているのも事実です。このため,日常の現場で判断をする際には,「確かなこと」とのつかず離れずの適切な距離感が重要になってきます。「確かなこと」との距離感を念頭におき,そのうえで,医療従事者と市民(あるいは妊産婦やその家族)が話をするときの共有のツールとして,この本をお使いいただけるとよいのではないかと思います。
 実際に各章を読み進めていくと,「確かなこと」というものは実のところあまりない,ということがわかると思います。さまざまな専門家が,それぞれに「こうだ」という意見を持っていますが,案外,誰もがみな納得するような事実というのは少ないものです。
 読み進める中で,自分の常識と異なることがあれば,一度立ち止まって自分の常識を疑ってみる,あるいは,示されている研究結果に本当に間違いがないのか考えてみることもよいでしょう。また,示されている研究結果が自分の常識に合うのであれば,その常識に一層自信を持って,日々の診療やケアにいかしていくというようにも活用いただけるのではないかと思います。

 2018年2月
 著者を代表して 森 臨太郎
目 次
はじめに
系統的レビューとコクランレビュー

妊娠中~産褥期の医療サポート
 ・妊婦健診・指導
  自身の妊娠についての医学的な記録をもつこと
  妊婦健診の回数
  妊娠中の指導を個別に行なうか,集団で行なうか
  妊婦健診を集団で行なうこと
 ・出産場所
  医療介入を最小限にするような場所での出産
  助産師が主導する妊娠・出産・産褥ケア
  自宅分娩
 ・継続したサポート体制
  電話による妊娠中や産褥期のサポート
  妊娠・出産期間中の継続したケアの提供
  出産後に健康な母子の早期退院

妊娠中~産褥期の栄養
 ・栄養管理
  妊娠中の摂取カロリーとタンパク質
  妊娠前後の葉酸投与
  妊娠中の葉酸投与
  妊娠中の塩分制限
  妊娠中のビタミンA投与
  妊娠中のビタミンC投与
  妊娠中のビタミンD投与
  妊娠中のビタミンE投与
  カルシウム投与と妊娠高血圧症候群
  妊娠中のカルシウム投与
  妊娠中の亜鉛投与
  産後の食事や運動
 ・体重管理
  妊娠中の有酸素運動
  肥満妊婦の体重増加を防ぐ方法
  体重減少を目的とした胃バンディング術
  妊娠糖尿病を予防するための運動
 ・嗜好品の摂取
  社会心理的な方法による妊娠中の禁煙
  ニコチン置換療法を含めた薬物による妊娠中の禁煙
  妊娠中の飲酒制限
  妊娠中のカフェイン摂取

妊娠後期~分娩期のケア
 ・早産の予防
  早産につながるリスクの評価方法
  自宅での陣痛監視
  超音波を使用した子宮頸管の評価
  胎児性フィブロネクチンの測定
  下部生殖器官の感染症のスクリーニングと治療
  単胎妊婦への経口β受容体刺激薬の予防的投与
  双胎妊婦への経口β受容体刺激薬の予防的投与
  シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬の投与
  プロゲステロンの投与
  細菌性腟症への抗菌薬の投与
  プロバイオティクスの投与
  ペッサリーの使用
  子宮頸管縫縮術
  ベッド上安静
  リラクゼーション
  特殊外来の設置
  妊娠中の支援
 ・骨盤位のケア
  妊娠37週以前の外回転術の効果
  妊娠満期時の外回転術の効果
  外回転術に補足的に行なう診療の効果
  さまざまな体位変化による骨盤位の矯正効果
  妊娠後期や分娩中の膝胸位の効果
  お灸の効果
  予定帝王切開の効果
  迅速経腟分娩と通常の経腟分娩
 ・多胎妊娠への対応
  多胎妊娠専用の健診プログラム
  多胎妊娠における栄養
  入院やベッド上安静による早産予防
  子宮頸管縫縮術による早産予防
  経口β受容体刺激薬の予防的投与
  早期に分娩を開始すること
  妊娠37週時点での分娩
  予定帝王切開
  早産の双生児を同じコットでケアする効果
  不妊治療の方法

出産に関するさまざまなルーチン
  【剃毛】
  【浣腸】
  【分娩中の入浴と水中出産】
  【分娩第1期における姿勢】
  【分娩第2期の姿勢】
  【パルトグラム(分娩進行表)の使用】
  【内診】
  【分娩中の食事や水分制限】
  【分娩中に起こるケトーシス】
  【点滴補液による分娩時間の短縮】
  【会陰裂傷を予防する介入】
  【会陰切開】

母子のメンタルヘルスケア
 ・妊娠早期からのケア
  妊娠中・出産後のメンタルヘルスの評価
  社会心理学的・心理学的な方法による妊娠うつ病の治療
  マッサージ,鍼治療,光療法,ω-3脂肪酸による妊娠うつ病の治療
  産後うつの予防
  社会心理学的・心理学的な産後うつの治療
  抗うつ薬による産後うつ病の治療
  ホルモン療法による産後うつの予防・治療
  妊婦への家庭内暴力の予防・軽減
 ・産後の継続支援
  産後の母児関係形成
  集団で行なうペアレンティング・トレーニング
  ベビーマッサージの効果
  親のメンタルヘルス
  若年出産の親のメンタルヘルス

赤ちゃんのケアと子育て
 ・母乳育児
  母乳哺育開始の方法
  早期皮膚接触の効果
  母子同室の影響
  自律哺乳の影響
  カップ授乳の効果
  おしゃぶりの影響
  搾乳方法
  水分摂取量と母乳
  離乳食の開始
  完全母乳哺育の期間とアレルギー性疾患発症
  母乳哺育中の食事制限
  長鎖多価不飽和脂肪酸摂取の影響
  経口避妊薬の影響
  母乳哺育促進のための制度
  支援による母乳哺育期間の延長
  乳房ケアの効果
  産後乳腺炎の予防法
 ・皮膚ケア
  おむつかぶれ
  おむつかぶれの治療法
  とびひ
  栄養補助によるアトピー性皮膚炎の治療
  プロバイオティクスによる湿疹治療
  食事制限によるアトピー性皮膚炎の治療
  アトピー性皮膚炎をもつ子どもたちへの心理教育的介入
 ・発達支援
  言語発達遅延や障害への治療介入
  ディスレキシア
  自閉症スペクトラムに対する早期行動療法
  親による早期介入
  ソーシャルスキル向上のための介入
  音楽療法
  心の理論認知モデルによる介入
  グルテン,カゼイン除去食
  ω-3脂肪酸補助療法
  ビタミンB6およびマグネシウム補助療法
  鍼指圧治療
  ADHDに対するペアレンティング・トレーニング
  家族療法
  ソーシャルスキル介入

おわりに

索引